輸血・血液製剤 亀井奈津子、小泉 哲、大坪毅人 血液製剤の種類 赤血球濃厚液(RCC) 血小板濃厚液(PC) 新鮮凍結血漿(FFP) アルブミン製剤 赤血球濃厚液(RCC) 目的 末梢循環系への十分な酸素供給と 循環血液量を維持すること。 RCC 1バック 2単位 400ml RCCのHb値:14~15g/dl 赤血球濃厚液(RCC) 適応 ① 慢性貧血に対する適応 ② 急性出血に対する適応 ③ 周術期の輸血 赤血球濃厚液(RCC) ① 慢性貧血に対する適応 原則、原疾患の治療を行う。 輸血が必要な目安 血液疾患に伴う貧血→Hb 7g/dl 慢性出血性貧血→Hb 6g/dl 貧血の進行、罹患期間等により必要量が異なり、 一律に決めることは困難。 貧血症状に応じて個々に設定する。 赤血球濃厚液(RCC) ② 急性出血に対する適応 Hb 6g/dl以下では輸血はほぼ必須。 Vitalや状態に応じて判断。 赤血球濃厚液(RCC) ③ 周術期の輸血 A) 術前投与 患者の病態、全身状態に応じて判断。 Hb 7g/dl以下では輸血を行う。 冠動脈疾患、肺機能障害、脳循環障害 →Hb 10g/dl程度になるように。 赤血球濃厚液(RCC) ③ 周術期の輸血 B) 術中投与 赤血球濃厚液(RCC) ③ 周術期の輸血 C) 術後投与 Vital signが安定している場合は原則 として細胞外液補充液の投与を行う。 急激に貧血が進行する術後出血の場合は、 止血処置とともにRCCの投与を行う。 赤血球濃厚液(RCC) 投与量の算定 循環血液量(ml)=70ml/kg×体重 RCCのHb値:14~15g/dl RCC 2単位 400ml 赤血球濃厚液(RCC) 体重50kgの人にRCC 2単位投与すると、 予測上昇Hb値は・・・? 循環血液量(dl)=70ml/kg×50kg÷100 =35dl RCC 2単位含有Hb量=14~15g/dl×4dl =56~60g 予測上昇Hb値(g/dl)=56~60g÷35dl =1.6~1.7g/dl 答え.1.6~1.7g/dl 血小板濃厚液(PC) 目的 血小板成分を補充することにより止血 を図り(治療的投与)、又は出血を防止 (予防的投与)すること。 PC 10単位:200ml、PLT 2.0×1011個以上 PC 15単位:250ml、PLT 3.0×1011個以上 PC 20単位:250ml、PLT 4.0×1011個以上 最初の10~15分間 1ml/分、その後 5ml/分 血小板濃厚液(PC) 適応 血小板数 血小板輸血の必要性 5万/μl以上 一般に必要となることはない 2~5万/μl 止血困難な場合には必要となる 1~2万/μl 必要となる場合がある 1万μl未満 必要とする 血小板濃厚液(PC) ① 活動性出血 重篤な活動性出血を認める場合。 PLT 5万/μl以上を維持するように輸血。 ② 大量輸血時 急速失血により24時間以内に循環血液量 相当量ないし2倍量以上の大量輸血が 行われ、止血困難な出血症状とともにPLT 減少を認める場合。 血小板濃厚液(PC) ③ 播種性血管内凝固(DIC) ・PLTが急速に5万/μl未満へと低下し、出血症状を 認める場合。 ・DICの治療とともに、必要に応じてFFPも投与。 ※血栓による臓器症状が強く疑われる場合は、 慎重投与。 ④ 血液疾患・化学療法によるPLT低下 1~2万/μl以上を保つように輸血。 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)→PC輸血禁忌 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP) PC輸血は 溶血性尿毒症症候群(HUS) 原則行わない 血小板濃厚液(PC) ⑤ 周術期の輸血 A) 術前投与 PLT 5万/μl以上になるように輸血。 B) 術中・術後投与 ・PLT 3万/μl未満に低下している場合には、 PC輸血の適応。 ・人工心肺使用例、慢性の腎臓や肝臓の疾患で 出血傾向を認める例は、PLT 5~10万/μlになる ように輸血。 血小板濃厚液(PC) 投与量の算定 循環血液量(ml)=70ml/kg×体重 PC 10単位:200ml、PLT 2.0×1011個以上 PC 15単位:250ml、PLT 3.0×1011個以上 PC 20単位:250ml、PLT 4.0×1011個以上 1時間 5単位の速度で投与 血小板濃厚液(PC) 効果の評価 PLT増加の評価は、輸血後約1時間又は翌朝か24時間 後の補正血小板増加数(Corrected Count Increment :CCI)により行う。 輸血後1時間CCI≧7500/μl 翌朝又は24時間後≧4500/μl 血小板濃厚液(PC) 10単位を投与すると、 予測PLT増加数は・・・? 体重50kgの人にPC 新鮮凍結血漿(FFP) 目的 凝固因子の補充による治療的 投与を目的とする。 FFP 1単位:120ml 最初の10~15分間 1ml/分、 その後 5ml/分 新鮮凍結血漿(FFP) 使用指針 ① 凝固因子の補充 ② 凝固阻害因子や線溶因子の補充 ③ 血漿因子の補充 (PT、APTTが正常な場合) 新鮮凍結血漿(FFP) ① 凝固因子の補充 A) PT、APTTが延長している場合 PT:INR 2.0以上、30%以下 APTT:基準値上限の2倍以上、25%以下 肝障害、L-アスパラギナーゼ投与、DIC、 大量輸血時、ワーファリン効果の緊急補正、 濃縮製剤の無い凝固因子欠乏症(第Ⅴ因子、第Ⅺ因子) B) 低フィブリン血症 フィブリノゲン:100mg/dl未満 DIC、L-アスパラギナーゼ投与後 新鮮凍結血漿(FFP) ② 凝固阻害因子や線溶因子の補充 プロテインC、プロテインS欠乏症における血栓症 ③ 血漿因子の補充(PT、APTTが正常な場合) 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP) 新鮮凍結血漿(FFP) 不適切な使用 ① ② ③ ④ ⑤ 循環血漿量減少の改善と補充 タンパク質源としての栄養補給 創傷治癒の促進 末期患者への投与 肝硬変、人工心肺使用時などの出血予防 新鮮凍結血漿(FFP) 投与量の算定 生理的な止血効果を期待するための凝固因子 の最小血中活性値:正常値の20~30%程度 循環血漿量(ml)=循環血液量(ml)×(1-Ht/100) 約40ml/kg=70ml/kg×(1-Ht/100) 凝固因子の血中回収率は目的とする凝固因子により異 なる。 アルブミン製剤 目的 血漿膠質浸透圧を維持することにより循環血 漿量を確保すること、及び体腔内液や組織間液 を血管内に移行させることによって治療抵抗性の 重度の浮腫を治療すること。 5%Alb 100ml、250ml 25%Alb 20ml、50ml アルブミン製剤 使用指針 ① 出血性ショック 循環血液量の50%以上の出血が疑われる場合 血清Alb 3.0g/dl未満の場合 人工膠質液を1000ml以上必要とする場合 腎機能障害などで人工膠質液の使用が不適切な場合 ② 人工心肺を使用する心臓手術 等張アルブミン製剤 アルブミン製剤 ③ 肝硬変に伴う難治性腹水 大量(4L以上)の腹水穿刺時 治療抵抗性腹水 ④ 難治性の浮腫・肺水腫を伴うネフローゼ症候群 ⑤ 低蛋白血症に起因する肺水腫・著明な浮腫を 認める場合 高張アルブミン製剤 利尿剤併用 アルブミン製剤 ⑥ 循環動態が不安定な血液透析等の体外循環 施行時 ⑦ 凝固因子の補充を必要としない治療的血漿 交換療法 ギランバレー症候群、急性重症筋無力症など ⑧ 重症熱傷 50%以上の熱傷で、Alb 1.5g/dl未満の時 ⑨ 循環血漿量の著明な低下を伴う急性膵炎等 等張アルブミン製剤 アルブミン製剤 不適切な使用 ① ② ③ ④ 蛋白質源としての栄養補給 脳虚血 単なる血清Alb濃度の維持 末期患者への投与 アルブミン製剤 投与量の算定 目標値:急性時 3.0g/dl以上 慢性時 2.5g/dl以上 必要投与量を2~3日で分割投与 必要投与量(g)=期待上昇濃度(g/dl)×循環血漿量(dl)÷0.4 =期待上昇濃度×体重(kg) 循環血漿量(dl)=0.4dl/kg 投与Albの血管内回収率:40% まとめ 適切に迅速に判断し、輸血を行 いましょう。
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