9 金融グローバリゼーション アメリカ型「錬金術」が地球を駆けめぐる 9.1 外国為替市場と国際金融市場 9.2 金融グロバリとデリバティブ 9.3 国際資本移動と国際金融危機 mohri r 1 9.1 外国為替市場と国際金融市場 a 外国為替市場 • 電話や電子通信で取引するオープン市場 • 顧客市場:銀行vs個人,輸出入業者,多国籍企業,機関投資家 • 銀行間市場:銀行,為替ブローカー,通貨当局 • 取引の最近の特徴:①実需取引減少,金融取引増大,②ドル, ユーロ,円など特定通貨への集中,ドル/ユーロ30%,ドル/円20%,ドル/ 英ポンド11%,③取引額市場ランキングの入れ替わり:ロンドン32%, NY16%,東京9%,シンガポール6%,フランクフルト5% • 直物(スポット取引)1/3,先物取引,為替スワップ(2種 の通貨の直物取引と,売り買いが逆向きの先物取引の組み合わせ) mohri r 2 9.1 外国為替市場と国際金融市場 b 国際金融市場 • 金融取引:資金に余裕のある部門から資金の不足してい る部門に資金を融通する取引 • 国際金融取引:居住者・非居住者間の取引 • 国際資金フロー • ロンドン金融市場:ロンドン・バランス.大英帝国~現 在も.外貨建てカレンシー市場.ウィンブルドン現象. • NY金融市場:NYバランス.規模最大.アメリカ国債市 場の厚み.NY証券取引所 外国企業もADR利用 • 東京市場:1980年代後半に世界の資本供給源.空洞化 mohri r 3 9.1 外国為替市場と国際金融市場 c オフショア市場 • 本来のoff-shore:国外から資金調達しても国内市場に 流入させず,国外で運用する.内外分離型:NY,東京,シン ガポール • 内外一体型:ロンドン,香港,バンコク • タックスヘイブン(租税避難地)型:カリブ海オフ ショア市場,英,蘭の植民地.ヘッジファンドや大銀行による 国際資本取引の回転台. • 円キャリー・トレード • 井上ひさし『吉利吉利人』 mohri r 4 9.2 金融グロバリとデリバティブ a 金融グローバリゼーションの展開 • 定義:金融の自由化・国際化が地球規模で拡大し,先進国 大手金融機関が途上国や移行経済諸国に対し証券投資や 融資活動をシームレスに展開できるようになった事態.1990 年代. • 金融革命:1972年シカゴ・マーカンタイル取引所(CME) で通貨の先物取引開始→変動相場制の不確実性対策と して,金融デリバティブ(派生)商品市場が拡大 • IMF協定第8条経常勘定取引の自由化 国際機関の後押し 1980年代から90年代 あわせて為 替・資本取引の自由化,外国投資家への市場開放 mohri r 5 9.2 金融グロバリとデリバティブ b デリバティブの拡大 • 意義:将来の為替レート,金利,証券価格などの変動に伴 うリスクを除去し相殺する手段として,そして将来の変動を確 率的に予測してその変動から投機的な利益を得る手段とし て発達.原資産をベースに価格決定がなされる.オフバラン ス・シート(簿外)取引. • 方法 ①先渡し・先物取引:将来の確定日に,予め契約し た条件で,金融商品を売買する取引.現物の引渡しを伴わ ない(低率の証拠金だけでよい). ②スワップ取引:♪金利スワップ,♪通貨スワップ ③オプション取引:資産自体ではなく,将来,金融資産を買う または得る権利の取引.ブラック=ショールズ方程式. mohri r 6 9.2 金融グロバリとデリバティブ c 店頭デリバティブ市場 • 外国為替市場の取引の大半は,ヘッジ(価格の変動による 損失を回避する取引),裁定(同一・類似商品が異なる市場で異なる 価格で取引されているときに,鞘取りをする取引),投機(確率的な予 測にもとづき為替差益やキャピタルゲインを得る)などを目的とする純粋 な金融的取引. • 店頭(OTC)デリバティブ市場:非伝統的な通貨スワッ プ,通貨オプション,および金利関連デリバティブ取引.さまざまな派生的 取引を連鎖的に引き起こし,取引額を増大させる. • 市場取引規模:想定元本ベースで100兆ドル,実際の市場取引 額残高では3兆ドル,すなわち33倍のレベレッジ(てこ). ロンドン36%,NY18%,フランクフルト13%,東京3%. mohri r 7 9.3 国際資本移動と国際金融危機 a 1990年代の国際資本移動 • 国際資金フロー:国際収支表で,移転収支(無償資金 援助,国際機関拠出金,労働者送金)および資本取引(直接 投資,証券投資,貸付・借入,貿易信用,現預金など) • 時代別類型化:①1970年代半ば~80年代初め オイルマ ネー還流,②債務危機の1980年代 先進国間の国際収支 不均衡ファイナンスが中心,途上国向けでは直接投資のみ, 日欧の経常収支黒字と途上国の資本逃避が対米証券投資, 対米企業買収, ③1990年代 先進国内ではアメリカ一極集中とエマージン グ市場向け還流の復活 「帝国循環」 ニューエコノミー→ 対米投資>経常赤字→対外投資余力 mohri r 8 9.3 国際資本移動と国際金融危機 b 1990年代における国際金融危機 • • • • • • 1992年ポンドのEMSからの離脱 1995年メキシコ危機 証券化危機 1997年アジア危機 資本収支危機 1998年ロシア危機 制度構築なしの移行 2001年アルゼンチン危機 ドル化経済 IMF・世銀の処方箋:緊縮政策+金融構造改 革 mohri r 9 9.3 国際資本移動と国際金融危機 c アメリカ基準の問題点 • アメリカ基準(American standard)の世界化 ①政府や公的機関ではなく,民間,市場機能に依存 するという市場原理主義,②銀行中心は古い,証券 市場が優位だとする考え,③リスクを「商品」と捉え, 投資銀行業が重要な地位 • 問題点:①株主価値の増大のみに関心,他者への 影響に無関心,②格付会社,会計事務所の役割増 大,③迅速さ+収益性→アウトソーシングの拡大,④ 「ワシントン・コンセンサス」とウォール街の結合 mohri r 10
© Copyright 2025 ExpyDoc