漁民の津波沖出し行動の適正化支援を 介した地域の津波防災への波及展開 ―防災無関心層への コミュニケーション・チャンネル 開拓の試み― 論文著者:村澤直樹・片田敏孝 掲載雑誌:災害情報 2011.No.9 p.148-160 紹介者:3年 澤井真夢子 はじめに 沖出しの現状 津波の際、漁民が沖出し行動の最中、 流される被害が多発 ガイドラインでは沖出しは禁止され ているが、遵守されていない 理由 ・漁船が被災した場合の経済的損失が大きい ・正常化の偏見 しかし・・・ 沖出しが可能な場合もある 課題 漁民の津波に対する知識が不十分 →漁民の津波情報リテラシーの醸成 が必要 住民参加型の避難訓練などの多くは 希望者参加型の形式 →防災無関心層とのコミュニケー ション・チャンネル開拓が必要 研究目的 沖出し行動適正化を通じ、家族や直 接参加していない漁民も巻き込んだ 地域全体の防災力向上 つまり・・・ 直接コミュニケーションをとれる漁民を通じ、 それ以外の無関心層に対し何らかの 防災上の効果を期待 取り組み 津波防災講演会の開催 津波情報リテラシー醸成の重要性へ の理解を促した ワーキンググループにおける検討 適切な津波対応に向けた対策実施を 促した 研究会による支援 漁民支援策の検討 チリ地震津波(2010) 震源が遠地だったため、地震発生か ら21時間以上経って日本沿岸に津波到 達 安全に漁船の沖出しが可能なら 沖出しした方が望ましい津波 チリ地震津波における調査 津波襲来時の対応の実態把握が目的 落石漁協組合員166名が対象 海上で操業していた漁民、陸上に滞 在し漁船を沖出しした漁民、上架の ため沖出しできなかった漁民の3パ ターン想定 調査結果 沖出しできる状況にあった漁民 →全員が沖出しを行った 上架のため沖出しできなかった漁民 →37%が警報発表後に避難 沖出しした漁民の対応(1) 警報発表時、港内に係留中 →無回答を除く全ての漁船が、安全と思わ れる水深30 m以上の海域に待機 警報発表時、海上で操業 →無回答を除く全ての漁船が、安全と思わ れる水深40 m以上の海域に待機 以前は波が局所的に高くなる恐れのある島 影や岬の突端などに沖出ししていた 待機した海域について大きな改善が図られた 沖出しした漁民の対応(2) 沖合で待機していた漁船の内、約 52 %の漁民が落石漁協から帰港指示 が出るまで沖合に留まっていた 北海道の他地域の漁船は午後3時から 夕方までに帰港、紀伊半島では第1波 到達後に帰港したケースが多かった 他地域の漁民よりも帰港の タイミングが良好であった 沖出しできなかった漁民の対応 北海道想定の500年間隔地震津波による浸 水予測区域内に居住する漁民の約54 %が避 難 約87 %が第1波予想到達時刻までに避難 約54 %が最大波到達の発表があるまで避難 先に留まり、約30 %は警報解除まで避難継 続 青森・岩手・宮城の避難率は約38 %、この うち約85 %は警報解除前に帰宅 他地域の住民より避難率、避難継続時間が良好 沖出しした漁民と家族の対応 自宅から漁船まで車で移動した漁民 の内、無回答を除く全ての漁民が家 族と連絡を取り、車を移動させても らっていた 車の移動のタイミングは第1波予想到 達時刻前であった 被害軽減のための適切な対応をしていた 取り組みの効果 チリ地震津波時の行動実態から 沖出しを行った漁民は全員が、安全 と思われる海域へ沖出しした 沖出しできなかった漁民は、多くが 適切と思われる避難行動をとった 沖出しした漁民の家族は多くが適切 と思われる避難行動をとっただけで なく、被害軽減行動をとった 取り組みの効果 知識レベル向上から 津波や沖出しに関する知識レベルが 取り組み後、向上している 理解が深まった事で 沖出し行動が適正化された 今後の課題 ワーキンググループ以外の漁民への 波及 家族や漁民以外の世帯への波及 自主的、継続的な取り組みの実施 必要最低限のハード対策の実行
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