モーダルシフト推進のための 品目別阻害要因の分析と提案 流通情報工学課程 2002749 吉田 栄美 1 研究背景 地球温暖化・酸性雨・資源の枯渇・異常気象 等の地球規模での環境破壊 京都議定書の発効 環境に対する意識の高まり 運輸部門ではモーダルシフトが有効な手段 十分推進されていないのが現状 2 研究目的 モーダルシフト推進に向けて・・・ モーダルシフト推進が実現されていない原 因を品目別の視点から究明する 阻害要因に対する解決策を提案する モーダルシフト推進の実現 3 0~ 5~ 5 10 10 ~ 15 15 ~ 20 20 ~ 25 25 ~ 30 30 ~ 35 35 ~ 40 40 ~ 45 45 ~ 50 50 ~ 55 55 ~ 60 60 ~ 65 65 ~ 70 70 ~ 7 75 5 ~ 80 80 ~ 85 85 ~ 90 90 ~ 95 95 ~ 10 0 品目のグルーピングについて 40 35 30 10 Aグループ モーダルシフトの割合= 鉄道・海運の輸送量(t) Bグループ 5 *100 総流動量(t) 品 25 目 20 数 15 Cグループ 0 モーダルシフトの割合(%) 4 各グループに含まれる品目一覧 品目 内容例 生コンクリート、精密機械、自動車部品、飲料、水 時計・カメラ・ビール・清酒・魚介類・牛乳・冷 Aグループ 産品、その他の食料工業品・LNG・LPG、 等 凍食品 等 石灰石、パルプ、化学薬品、セメント、揮発油、石 製紙パルプ・硫酸・アンモニア・各種ガソリン・ Bグループ 炭、その他の石油 等 石油アスファルト 等 Cグループ 重油、コークス、りん鉱石 A重油・B重油・C重油、コークス、りん鉱石 5 阻害要因の分析方法 品目別(グループ別)の特徴を導き出す 代表輸送機関別の特徴を導き出す 両者の比較の結果から、品目別と輸送機関 別に生じる特徴の違いやズレを明確にして阻 害要因の分析を行う 6 グループ別の比較 Aグループ 日 割時 合指 定 平均輸送量(万トン) ロットサイズ(トン/件) 費用(円/トンキロ) 温度管理の有無 日指定 午前・午後指定 時間指定 なし 同県内輸送の割合(%) 36 6 74 有 37 19 17 27 52 Bグループ 36 74 31 無 44 11 25 19 50 Cグループ 20 142 23 無 62 9 2 28 15 7 代表輸送機関別の比較 日指定 33 48 30 22 20 46 19 28 63 66 346 45 午前・午後指定 16 17 10 16 時間指定 33 14 10 22 なし 20 218 22 811 18 492 17 1163 平均物流スピード(㎞/時間) 費用(円/トンキロ) 日 時 指 定 割 合 航空 海運 鉄道 トラック 平均輸送距離(km) 輸送機器サイズなど ~2t,2~4t,4~10t, 20ft,40ftコン 12ft,20ft,40ft テナ、フェリー 10t~ 温度管理に対しての輸送容器技 ◎(多温度帯輸送・遠隔 ○(単一温度で単 ○(鉄道と同 一の貨物輸送) 操作等) 術など 様) 8 阻害要因 ① (温度管理) 品目別温度管理の必要性と輸送機関別の技術 ② (ロットサイズ) 品目別ロットサイズと輸送機関別輸送容器サイズ ③ (時間への対応) 品目別時間指定の割合と輸送機関の選択 ④ (輸送距離) 品目別同県内輸送の割合と平均輸送距離 9 阻害要因①(温度管理) Aグループ 温度管理貨物の有無 Bグループ 有 Cグループ 無 無 ・冷凍食品・アイスクリーム:-40~-10℃ ・牛肉・豚肉:0~10℃ ・野菜(キャベツ):0~2℃ ・牛乳:0~10℃ トラック 鉄道 海運 温度管理に対しての ◎(多温度帯輸 ○(単一温度で単 ○(鉄道と同様) 輸送容器技術など 送・遠隔操作等) 一の貨物輸送) ・トラック(低温輸送車両):-50℃以下~定温まで、幅広い温度 帯の温度設定可能 ・鉄道(JRコンテナ):-29~+25℃ 温度設定をする設備・技術面に問題 10 阻害要因②(ロットサイズ) Aグループ ロットサイズ(トン/件) 6 Bグループ 74 Cグループ 142 ・Aグループのロットサイズ ロットサイズの1トン未満の品目 が半数以上を占めている。 B・Cグループではロットサイズ が5t以下のものはない。 トラック ~2t,2~4t,4~10 輸送機器サイズなど t,10t~ 鉄道 海運 12ft,20ft,40ft 20ft,40ftコンテナ、フェリー ・コンテナ:12ft・・・約5t、20ft・・・約10t、40ft・・・約20t ロットサイズに適合しないことが問題 11 阻害要因 ① (温度管理) 品目別温度管理の必要性と輸送機関別の技術 ② (ロットサイズ) 品目別ロットサイズと輸送機関別輸送容器サイズ ③ (時間への対応) 品目別時間指定の割合と輸送機関の選択 ④ (輸送距離) 品目別同県内輸送の割合と平均輸送距離 12 解決策提案 技術面での向上 温度の遠隔監視・操作 多温度帯輸送の普及 港湾・貨物駅施設設備の共有化 コンテナの仕様の工夫 コンテナ内部の細分化 コールドボックスの搬入 一貫した温度 管理の実現 ロットサイズに 合わせた輸送、 小口輸送への 対応 13 結論 品目と輸送機関の間にモーダルシフトを行う うえでのズレが生じ、それが阻害要因となっ ていることが明らかになった。 阻害要因の解決策の提案を温度管理が必要 な貨物を対象として行ったことで、品目によっ て、時間や費用だけではなく技術や設備も モーダルシフトの推進を考える上で重要であ ることがわかった。 14 モーダルシフトとは 主として幹線貨物輸送の手段をトラック から環境負荷の小さい大量輸送機関で ある鉄道や海運に転換する取り組みを 指し、トラック輸送に依存しない輸送シス テムの構築を目指すことである。 効果:二酸化炭素・窒素酸化物の排出抑制 交通渋滞緩和 安定的輸送が可能 etc 15 代表輸送機関別比較項目と検討 比較項目 平均物流スピード(km/時間) 費用(円/トンキロ) 平均輸送距離(km) 輸送機関の容器サイズなど 温度管理に対しての輸送容器技術など 16 グループ別比較項目の検討 比較項目 平均輸送量(トン) ロットサイズ(トン/件) 費用(円/トンキロ) 同県内輸送の割合(%) 温度管理の有無 到着日時指定の割合(%) 17 温度管理が必要な品目について 品目 内容例 米 もみ,玄米,精米,白米 野菜・果物 里芋,大根,玉ねぎ,キャベツ,わさび その他の畜産品 牛肉,豚肉,鶏卵,未加工乳,牛,馬,豚 水産品 魚介類(生鮮・冷凍・乾燥),昆布,のり その他の農産品 花き,茶,葉たばこ その他の食料工業品 牛乳,ヨーグルト,アイスクリーム,豆腐,冷凍食品 飲料 ビール,清酒,洋酒,清涼飲料水,ミネラルウォーター 出典:国土交通省 第7回物流センサス 品類・品目分類表 18 阻害要因③(時間への対応) 日指定(%) 午前・午後指定(%) 時間指定(%) Aグループ 37.32 18.62 17.47 Bグループ 44.42 11.35 24.96 Cグループ 61.58 8.56 1.75 ・各グループの時間指定の割合・・・AグループはCグループよりも時間指 定の割合が高い 時間の制約の存在 平均物流スピード(㎞/時間) トラック 32.56 鉄道 21.58 海運 19.33 ・鉄道や海運はダイヤや便数の制限に加え、結節点での荷役時間・手持 ち時間の存在が物流スピードに影響を及ぼしている。 時間指定への対応の問題 19 阻害要因④(輸送距離) Aグループ 同県内輸送の割合(%) Bグループ 52.11 トラック 平均輸送距離(km) Cグループ 50.04 鉄道 217.53 15.17 海運 811.34 491.70 同県内輸送は基本的に近距離輸送になる。 トラックは、平均輸送距離が短く比較的、近距離の輸送に力を発揮する。 近距離で鉄道や海運を利用した場合・・・消費者への輸送(末端)はトラック 貨物駅・港での荷役時間の発生 時間ロス 輸送距離の違いからくるサービス低下の問題 20 解決策提案 時間対応 コンスタントに重要がある貨物の集約 輸送距離 近距離でもトラックに劣らないシステム を作ることが必要 湾内のピストン輸送 貨物専用車両の利用 鉄道や海運のダイヤを上手く利用し、 時間指定に対応できる その他、量販店への「せりを通さない納品」を行うことによって、時間の制 約を緩和させることや、消費者に対して、環境にやさしいモードで運ばれ た商品であることをアピールすることが、大切である。 21 解決策提案 技術面での向上・・・単一の温度だけで はなく多温度帯での輸送、温度の遠隔 監視・操作の普及 コンテナ内部を仕切る、コールドボックス のコンテナ内への搬入など、ロットサイ ズに合わせた輸送、小口輸送への対応 22 解決策提案 積み替え時間 技術面での向上・・・単一の温度だけではなく多温 の短縮によって、 温度のブレを最 度帯での輸送、温度の遠隔監視・操作の普及 小限に抑えるこ コンテナ内部を仕切る、コールドボックスのコンテナ とが可能 内への搬入など ロットサイズに合わせた輸送、 小口輸送への対応 鉄道や海運のダイヤを上手く利用し、 小口の貨物でコンスタントに運ぶものであれば、一 時間指定に対応できる 度に集約して鉄道や海運を利用し輸送を行う 近距離でも湾内のピストン輸送や貨物専用列車の 近距離でもトラックに劣らないシステム 車両を短くし停車駅を増やすことによる輸送の実現 を作ることが必要 その他、量販店への「せりを通さない納品」を行うことによって、時間の制約を緩 和させることや、消費者に対して、環境にやさしいモードで運ばれた商品であるこ とをアピールすることが、大切である。 23
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