研究活動の不正行為対策について

研究活動における不正行為防止につ
いて
研究プロジェクト戦略室
マネージメントプロフェッサー
山崎 淳一郎
2006年7月25日(火)
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背景
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数年前から、東京大学、京都大学をはじめ多く
の研究機関で研究費の不正経理が発覚
文部科学省科研費を中心に不正使用の再発防
止対策を策定・充実
昨年末、韓国の黄教授の論文捏造事件報道、
我が国でも東京大学多比良教授、大阪大学学
生による論文データ捏造・改ざん事件が次々に
発覚
不正行為とは?
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研究者の不正行為が新聞報道等でクローズ
アップ
預け金、カラ謝金、カラ出張、不正受給などの
不正経理
→研究費使用上の不正行為
論文データの捏造、改ざん、盗用などの不正
行為
→研究活動における不正行為
問題意識
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政府としては、第3期科学技術基本計画におい
て、25兆円の投資目標を提示
一方で、国費による競争的資金において、研究
費の不正使用や研究活動における不正行為が
頻発
これが科学技術関係予算拡充のブレーキをもた
らすとして危機感
不正行為防止対策を緊急に制度化の動き
研究費の不正使用対策について
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不正使用の態様
不正使用の事例
不正使用認定の際のペナルティ
国会審議
会計検査院実地検査
不正使用防止対策<機関の義務>
1. 不正使用の態様例①
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預け金=架空の取引により大学を騙して代金
を支払わせ、業者にその代金を預け、管理さ
せること。研究室で管理することも同様。
カラ謝金=実体を伴わない作業の謝金の全部
又は一部を大学を騙して支払わせ、管理する
こと。
カラ出張=実体を伴わない旅費の全部又は一
部を大学を騙して支払わせ、管理すること。
1.不正使用の態様例②
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このほか、研究費の交付前の「不正受給」や研究チー
ムにいない研究者による「共謀」など。
不正受給=関連病院の医師や雇用関係にない大学院
生など、応募資格のない者が有資格と偽って不正に研
究費を受給すること。他に、研究計画の虚偽記載など。
共謀=研究チームにいない講座責任者が無資格受給
や研究計画の虚偽記載等を指示し、不正に研究費を
受給し、当該研究と異なる目的のために当該研究費を
使用することを謀ること。
2.不正使用の事例①
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〔預け金〕
架空の取引により大学に研究費を請求し、支
払われた代金を業者に預け金として管理させ、
動物実験施設の工事費用に充当
備品を購入したにもかかわらず、消耗品を購入
したとして虚偽の取引により大学に研究費を請
求し、支払われた代金と備品購入費の差額を
業者に預け金として管理させ、次年度以降の
研究費として準備
2.不正使用の事例②
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〔カラ謝金〕
実体の伴わない謝金の請求を行い、支出され
た謝金を出勤表に記載せずに実施させた別の
研究支援業務に対する謝金に充当
実体の伴わない謝金の請求を行い、支出され
た謝金をNPO法人の運営費やサークル活動
の資金に充当
2.不正使用の事例③
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〔カラ出張〕
出張していないのにもかかわらず出張したとし
て旅費の請求を行い、支出された旅費を当該
研究と無関係の旅費(研修出張や私的旅行)
に充当。
出張はしたが、当該研究と無関係の用務(教
育の準備や執筆活動)のために用務日を水増
し請求し、支出された旅費の差額を他の経費
に充当
2.不正使用の事例④
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〔不正受給〕
応募・受給資格のない研究者が研究費の応
募・交付申請を行い、不正に研究費を受給。
応募・受給資格のない大学院生に研究計画調
書の作成を行わせ、研究代表者の研究実績と
異なる内容を記載して、不正に研究費の受給
を企図。
2.不正使用の事例⑤
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〔他用途使用、混合使用〕
本来、基盤的経費で支払うべき消耗品の代金
に科学研究費補助金で充当。
本来、厚生労働科学研究費補助金で支払うべ
き消耗品の代金を、科学研究費補助金で充当。
本来、基盤的経費で支払うべき物品の代金を
予算が足らないために、その差額を科学研究
費補助金で充当。
3.不正使用認定の際のペナルティ
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研究費の全部又は一部の返還、執行停止
応募・受給資格の停止措置
大学における内部処分(懲戒処分等)
刑事罰→詐欺、補助金適正化法違反など
*大学として刑事告発の対応も!
3-1.研究費の返還
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〔科学研究費補助金の場合〕
研究者の不正行為による場合
<適正化法第17条>
不正使用を行った額+加算金(10.95%)
研究者の不正行為以外の場合
<適正化法第15条>
不適正使用を行った額
*経理担当者の不適正行為、横領など
〔科学技術振興調整費等委託契約の場合〕
契約書に基づく研究費の返還、執行停止など
3-2.応募資格の停止措置
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不正使用の態様に応じて、最長5年。
不正使用を行った研究者
◇科研費の研究に使用(補助条件違反)
2年
◇科研費以外の研究に使用
3年
◇研究以外に使用、虚偽の請求に基づく支出
4年
◇個人の経済的利益
5年
共同研究者
新規応募について 1年
不正又は虚偽による科研費の受給
5年
科研費以外の競争的資金制度での不正
不正研究者
当該制度による停止期間と同期間
4.国会審議
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平成15年4月5日参議院決算委員会
【与党議員】
「 ある大学で科研費の不正が起こった場合、1回目は
研究者本人に対して制裁措置を取り、同じ機関で再度
科研費の不正が起こった場合には、大学に所属する全
員が科研費の申請資格少なくとも1年失うという厳しい措
置を取らなければいけない」
↓
こ
れにより共同研究者ペナルティ制度創設
5.会計検査院実地監査
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《キーワード》
大学の会計書類に対する不信
業者の売上伝票とのとつ合調査
研究者による経理は不正の温床
マウス、RI
日本クレア
過年度支出
6.不正使用防止策<機関の義務>
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研究機関による補助金管理
研修会・説明会の開催
内部監査の実施
不正使用に係る調査の実施
研究活動における不正行為
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主な不正行為
捏造=データ、研究結果等を偽造すること、又はこれら
偽造したものを記録したり報告又は論文等に利用した
りすること
改ざん=研究資料・機器・過程を変更する操作を行う
こと、又は変更・変造したデータ・実験結果等を用いて
研究の報告、論文等を作成・発表すること。
盗用=他の研究者のアイディア、研究過程、研究成果、
論文又は用語を、当該研究者の了解若しくは適切な表
示なく流用すること。
経過
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平成18年2月1日
文部科学省の科学技術・学術審議会で「研究
活動の不正行為に関する特別委員会」設置
平成18年3月17日
特別委員会第1回会合(現在までに6回開催)
平成18年7月8日
ガイドラインについてパブリック・コメント(7月2
3日まで)
平成18年8月
ガイドライン策定、研究機関に周知予定
研究活動の不正行為への対応のガイドライ
ンについて(案)
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<2部構成>
不正行為に関する基本的考え方
◇はじめに-検討の背景
◇不正行為に対する基本的考え方
◇不正行為が起こる背景
◇不正行為に対する取り組み
競争的資金に係る不正行為対応ガイドライン
◇目的◇定義◇告発等の受付
◇事案の調査
(1)調査を行う機関(2)調査体制・方法(予備調査・本調査)(3)認定
◇告発者及び被告発者に対する措置
◇不正行為と認定された者に対する資源配分機関の措置
ガイドライン(案)のポイント
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不正行為を「捏造、改ざん、盗用」に限定。
対象経費を「国費による競争的資金」に限定。
告発等の受付窓口を必置。
調査機関は、大学等研究機関が原則。
予備調査及び本調査の2段階調査により実施。
調査機関による調査結果の公表。
資源配分機関における検討体制、措置の決定。
資金配分機関による競争的資金の返還、申請制限な
どの措置。
資源配分機関の措置
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競争的資金の打ち切り
競争的資金申請の不採択、採択の取消
競争的資金の返還
競争的資金の申請制限
措置内容の公表
措置内容等の公募要領等への記載
競争的資金の申請制限
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不正行為が認定された研究について、不正行
為の重大性、悪質性及び関与の程度に応じて
以下の年数
不正行為に関与した著者
5~10年
不正行為に関与していない著者
2~ 4年
著者ではないが不正行為関与者
5~10年
不正行為防止策の方向
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《事後策》
調査委員会の設置
研究資金の返還・執行停止
研究資金の応募資格の停止等の措置
人事上の処分
《予防策》
告発窓口の設置
研究者による自己点検の実施
内部監査の実施による牽制体制の強化
研修会・説明会の実施
若手研究者及び学生に対する研修・教育-授業科目開設、教材開発等
不正行為に対する基本姿勢
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不正行為は、科学そのものに対する背信行為。
不正行為は、研究費の多寡や出所の如何を問
わず絶対に許されない。
不正行為は、科学者としての存在意義を自ら
否定するもの。自己破壊につながるもの。 ↓
研究者生命を絶つことになろうとも、大学の学
術研究の信頼保持(回復)のためには、厳正な
態度で臨む方針。