生物学入門 目標 1.自分の力で調べ考える姿勢を身につけ、同時 に、これを通じて論理的思考力を養成する。 2.細胞、つまり『生命の基本単位』の構造と機 能を理解し、生物学全般を細胞レベルで理解す る視点を養う。 3.生物の共通性と多様性を理解する。 科目前半は筆記試験、後半はノート提出(後半の内容のみ)により採点する。 前半のテーマ(後藤担当分) 1.生命界 エネルギー流概観 2.水と生体分子 3.細胞 生命の基本単位 4.第二法則と酵素 5.蛋白質と生体膜(1) 6.蛋白質と生体膜(2) 7.定期試験(6月7日) 主な参考書として エッセンシャル細胞生物学(南江堂、8600円)を使う。 ①高価なこと、本科目が必須科目であることを考慮し、教科書 としては指定しない ②ただし、二年次の科目『細胞生物学』では教科書指定する ③全18章のうち、第1~5章、第11~13章の内容(8章分)をカバー する予定。ただし、取扱いの『濃淡』は章毎に異なるし、本書 に100%準拠するわけではない(準拠率50%程度か)。 ④本書から図を引用する場合には『ECBより』と記載する。 ECB:Essential Cell Biology (本書の英語版の略) ⑤東京医科歯科大の和田勝教授は本書に依拠した生物学講義内 容を ⇒http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textbook/celltop.htmの サイトで公開している。本書の図版も多く引用されている。大 いに参考にして欲しい。 ⑥福岡大学の機能生物化学研究室では生化学に関する膨大な講 義資料を公開しており、大変参考になる⇒ http://133.100.212.50/~bc1/index.htm 推奨Web(日本語) ①東京医歯大 和田勝教授の細胞生物学 ⇒http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textbook/celltop.htm ②福岡大 機能生物化学研究室 『生化学の基礎』『代謝マッ プ』『核酸の化学』 ⇒http://133.100.212.50/~bc1/index.htm 推奨Web(英語) ①Dr. M. Farabee (Estrella Mountain Community College ) Online Biology Book ⇒http://www.emc.maricopa.edu/faculty/farabee/BIOBK/ BioBookTOC.html 1.生命界 エネルギー概観 2.水と生体分子 3.細胞 生命の基本単位 4.第二法則と酵素 5.蛋白質と生体膜(1) 6.蛋白質と生体膜(2) 7.定期試験(6月7日) ・生命界のエネルギー的基礎:太陽と光合成 ・生態系=食物網からなるエネルギー変換系(動的秩序) ・生物学における物理・化学・数学の一部入門 ・対数の計算ができるか ・モル濃度の計算ができるか ・光の波長とエネルギーの関係を理解する ・光を吸収するとは、どういうことか 生命界 Ⅰ Ⅱ Ⅲ エネルギー流概観 生物学における物理・化学的諸量 エネルギー代謝の初歩(生命と生態系) 地球生態系 生産力の海陸比較 生物学における物理・化学的諸量(1) アヴォガドロ数とモル量 ①水1L(㍑)=10-3m3に含まれる水分子の数は? 水1Lは1000g 水1mol(モル) ⇒6.02×1023(アヴォガドロ数)個の水分子 ⇒18gの水 (1molの炭素原子=12g) C=12、H2O=18 ∴水1L=1000/18mol=56mol=3.3×1025分子 生物学における物理・化学的諸量(2) モル濃度 M(mol/L; molar; モル溶液) ①細胞体積を2pL、水分含量を70%とする。 細胞内Ca2+濃度は200nM、K+濃度は300mM、 各々のイオンの個数を求めよ。 Ca2+ (200x10-9mol/L)x(2x10-12x0.7L)x(6x1023) =2x105 K+ (2x105)x(300/200)x(10-3/10-9)=3x1011 なお、水1L=56mol=3.3×1025分子 上記細胞における水分子 =(1.4x10-12)x (3.3x1025)=5x1013 m(ミリ)10-3、μ(マイクロ)10-6、n(ナノ)10-9、 p(ピコ)10-12、f(フェムト)10-15 生物学における物理・化学的諸量(3) モル濃度 M(mol/L; molar; モル溶液) ②バクテリアの細胞体積は、動物細胞のほぼ千分の 一である。他の条件は同じとして、Ca2+とK+の細胞 内における個数を求めよ。 動物細胞のCa2+は2x105個であるから、 Ca2+ 2x105x10-3=200 動物細胞のK+は3x1011個であるから、 K+ 3x1011x10-3=3x108 m(ミリ)10-3、μ(マイクロ)10-6、n(ナノ)10-9、 p(ピコ)10-12、f(フェムト)10-15 補足 細胞の大きさと数 1ml(1cm四方;角砂糖の大きさ)の容器の中に隙間 なく細胞を詰め込むことができたとすると、動物細 胞やバクテリアの細胞は各々何個詰め込まれるか。 各々の体積を2pl、2flとする。 動物細胞 バクテリア 1x10-3/(2x10-12)=5x108 5x108x103=5x1011 m(ミリ)10-3、μ(マイクロ)10-6、n(ナノ)10-9、 p(ピコ)10-12、f(フェムト)10-15 生物学における物理・化学的諸量(4) 光の速さ 3.0×105 km/s と 20 し㍉ て秒 感以 じ内 るの (出 融来 合事 閾は )同 時 『光』は東京⇔静岡を1ms(㍉秒)で往復、1秒間に千回往復 生物学における物理・化学的諸量(5) 光速(c=3.0×108 m/s)=波長(l)×振動数(n) 波長(l) 一振動で進む距離(山と山の間の距離) 振動数(n) 一秒間に振動する回数(ヘルツ、Hz) 波の速さ(c)一秒間に進む距離 周期(t) 一振動する時間 nt=1 電波(l=1m~100km) VHF 30MHz~300MHz 3×108=l×(30~300)×106 l=10~1m マイクロ波(l=1mm~1m) 電子レンジ(microwave oven) 3×108=12.2×10-2×n n=2.45×109Hz=2.45GHz l=12.2cm K(キロ)103、M(メガ)106、 G(ギガ)109、T(テラ)1012、P(ペタ)1015 生物学における物理・化学的諸量(6) 波長l(nm)の光子1モルのエネルギー 波長が短いほど(振動数が大きいほど)大きなエネルギー 1.2 105 l = kJ / mol / nm 2.9 104 l 400nm(紫)の1モル=73kcal 700nm(赤)の1モル=41kcal kcal / mol / nm 可視光線(400~700nm) 400nm(紫)~700nm(赤) 1cal=4.24J(ジュール) 1W(㍗)= 1J/s 10Å(オングストローム)= 1nm 物質が光を吸収するとは、物質が励起されることである れいき 基底状態 エネルギー準位が低い状態 反応性が低い状態 光の吸収 励起状態 エネルギー準位が高い状態 反応性が高い状態 生物学における物理・化学的諸量(7) ECBより 254nm (UV) の1モル= 114kcal 400nm(紫)の1モル= 73kcal 700nm(赤)の1モル= 41kcal 分子1モルの熱運動=約1kcal 水の吸収スペクトル ATP Chl 両軸とも対数目盛であることに注意(両対数グラフという) log0.01=-2, log0.1=-1, log1=0, log10=1, log100=2, log103=3, log104=4 基本演算⇒ log(a×b) = log a + log b pH=-log(H+); 中性ではH+=10-7 MだからpH=7 対数演算は高校数学の常識であり、かつ生物学の理解には必須である。 クロロフィル(葉緑素)の吸収スペクトル 紫外光 Pigment lmax(nm) 近赤外光 Chl a Chl b BChl a BChl b black red magenta orange 430, 663 463, 648 364, 770 373, 795 BChl c BChl d BChl e cyan blue green 434,66 6 427,65 5 469, 654 Adapted from the web at http://www.personal.psu.edu/faculty/n/x/nxf10/scitab/chlabs/ 生命界 Ⅰ Ⅱ Ⅲ エネルギー流概観 生物学における物理・化学的諸量 エネルギー代謝の初歩(生命と生態系) 地球生態系生産力の海陸比較 二つの栄養形態 大日本図書『生物ⅠB』より 食物連鎖 生産者⇒一次消費者⇒二次消費者⇒ ↓ ↓ ↓ 分解者(還元者) 食物網 food web は 食物連鎖 food chain のネットワー ク 大日本図書『生物ⅠB』より 生態系:食物網によってエネルギー変換と物質循環を行う物質系 啓林館『生物ⅠB』より 光合成生物も呼吸する:見かけの光合成=真の光合成-呼吸 大日本図書『生物ⅠB』より 生命のエネルギーは太陽光から 光 合 成 第と 6呼 講吸 での 詳 細 は 光合成:光エネルギーを生物エネルギー(糖)へ 呼吸 :糖をATP(生体のエネルギー通貨)へ 酸素は光合成の副産物 光合成には酸素を発生しないタイプもあるが、 特に断らない限り、酸素発生型光合成のことを光合成と呼ぶ ECBより 光合成が停止すれば、動物は呼吸もできない もちろん、 食物(呼吸基 質)もない ECBより 補足:ATPの化学構造 0.73nm ×0. 94nm × 1.84nm ECBより 補足:生体エネルギー通貨としてのATP ATP+H2O⇔ADP+Pi+エネルギー ECBより 生命界 Ⅰ Ⅱ Ⅲ エネルギー流概観 生物学における物理・化学的諸量 エネルギー代謝の初歩(生命と生態系) 地球生態系生産力の海陸比較 純生産量=総生産量-呼吸量 『~量』とあるが、すべて『速度』 啓林館『生物ⅠB』より 地球生態系 古いデータ 生産力の海陸比較 現存量 biomass 109×106g=1015g=1 Pg 啓林館『生物ⅠB』より Adapted from the images presented in SeaDAS Made from the images presented in SeaDAS Global annual NPP (grams of C/m2/yr), calculated from the integrated CASA-VGPM model. Input data for ocean color from the CZCS sensor are averages from 1978 to 1983. The land vegetation index from the AVHRR sensors is the average from 1982 to 1990. Global NPP is 104.9 Pg of C year 1 (104.9 × 1015 g of C year 1), with 46.2% contributed by the oceans and 53.8% contributed by the land. Adapted from Field et al. Science 281: 237-240 (1998) http://seawifs.gsfc.nasa.gov/SEAWIFS/IMAGES/IMAGES.html 地球生態系 生産力の海陸比較 W h ittak er 1970 純一次生産量 現存量 P g 乾量/年 P g C量/年 tera W P g 乾量 P g C tu rn ov er 陸 115 52 66 1837 827 16 年 海 55 25 31 3.9 2 29 日 地球 170 77 97 1841 828 11 年 Sch lesin g er 1997 陸 107 海 113 地球 220 B 48 51 99 C 61 64 125 D E 560 1.8 562 F 12 年 13 日 6 年 G C=B*0.45 D =B*18*1000/(365*24*3600)*1000 G =F /C Latitudinal distribution of the global NPP. (A)The global total (land plus ocean) NPP (solid line), land total NPP (dotted line), and ocean total NPP (dashed line). (B) Land NPP: April to June (solid line), July to September (dotted line), October to December (short dashed line), and January to March (long dashed line). (C) Ocean NPP: The four seasonal periods are as in (B). 生命界 エネルギー流概観 まとめ(1) Ⅰ 生物学における物理・化学的諸量 光の吸収と分子のエネルギー Ⅱ エネルギー代謝の初歩(生命と生態系) 光合成と呼吸の関係 光合成:エネルギー変換と酸素発生 Ⅲ 地球生態系 生産力の海陸比較 海と陸とでほぼ互角 海の生産者の現存量は地球の約3% 生命界 エネルギー流概観 まとめ(2) ・生命界のエネルギー的基礎:太陽と光合成 ・生態系=食物網からなるエネルギー変換系(動的秩序) ・生物学における物理・化学・数学の一部入門 ・対数の計算ができるか ・モル濃度の計算ができるか ・光の波長とエネルギーの関係を理解する ・光を吸収するとは、どういうことか
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