特殊の不法行為の種類分け

特殊の不法行為
1.特殊の不法行為の種類分け
2.責任無能力者の監督者の責任
3.使用者の責任
4.共同不法行為
5.物の支配管理から生ずる責任
6.特別法による解決
特殊の不法行為の種類分け
根拠条文
名称
種類
責任形態
714条
責任無能力者の監督者の
責任
特殊な責任主
体
中間責任
715条
使用者責任
特殊な責任主
体
中間責任
717条
土地工作物の瑕疵による
責任
物の支配管理
占有者-中間責任 所有者-
無過失責任(民法上の唯一の
例外規定)(危険責任)
718条
動物の占有者の責任
物の支配管理
中間責任(危険責任)
719条
共同不法行為
複数主体による
不法行為
因果関係要件について特殊な
扱いがされる。
特殊の不法行為への補足
中間責任

過失の立証責任を転換することにより過失責任
より責任が重く、無過失責任との中間の責任と解
されている。
特別法に基づく不法行為



自動車事故における運行供用者責任 自賠法
3条
失火責任法
製造物責任法(1995年7月1月施行)
2.責任無能力者の監督者の責任
意義

不法行為によって損害を加えた
者が責任能力を備えていなかっ
たという理由から免責される場
合には(712条,713条)、その行
為者の監督者は監督義務を
怠っていなかったことを証明しな
い限り、その損害に対して賠償
責任を負担しなければならない
監督者

法定の監督義務者
未成年者--親権者(820条)、後
見人(858条)
禁治産者--後見人(858条)
精神病障害者--精神保健及び
精神障害者福祉に関する法律
の定める保護者(精神20~22-2
条)とその者に代わって無能力
者を監督する代理監督者(714
条2、保母、教員、精神病院の
医師、少年院の職員)
監督者の補充的責任

行為者に責任能力が具備されて
いれば賠償資力がなくても、被
害者は監督者責任を問えないと
いう問題。これは独立の不法行
為が監督者との間に成立すると
考える(判例)。
3.使用者の責任
意義


使用者は、被用者が第三者に損害
を加えた場合には、それが事業の執
行につきなされたものである限り、み
ずからが賠償責任を負担しなければ
ならない。
免責事由として、選任・監督につい
て過失がなかったこと、または相当
の注意をしても損害が生じたことを
証明する。
賠償者責任との求償関係


企業自体の不法行為責任

使用者責任の成立要件




1.使用者と不法行為者との間に使
用関係があること
2.被用者が「事業の執行につき」損
害を加えたこと ←これが重要
3.その損害は第三者に対して加え
られたものであること
4.使用者に免責事由がないこと
使用者と被用者は、被害者に対し不
真正連帯債務の関係に立つ。
求償715条3 被用者への求償を制
限する論拠
事業活動が大規模に組織化されて
いる場合には、加害被用者の特定
が困難である。企業の事業活動自
体に伴う危険が実現されたと捉え、
企業自体の不法行為責任を認める。
注文者の責任(716条)

請負人
独立性ゆえに使用関係に該当しな
い。
4.共同不法行為
共同不法行為の効果
意義

不法行為の発生に複数者が関
与する場合、共同不法行為とな
り、それによって生じた損害に対
して各自に連帯責任を負わせる。

434条以下の連帯債務に関
する絶対的効力を適用させ
ないため
共同不法行為の成立要件

1.複数主体間に関連共同性が
ある場合(1項前段)狭義の共同
不法行為
(ア)それぞれが独立に不法行
為の要件を備えていること。
(イ)関連共同性 主観説と客観
説

2.加害者が不明の場合(1項後
段)
因果関係の推定規定

3.教唆者・幇助者がいる場合
(2項)
(ア)全部賠償の義務 - 不
真正連帯債務

(イ)求償関係
5.物の支配管理から生ずる責任
工作物の瑕疵による責任(717条)

意義

土地の工作物の設置または保存に
瑕疵がある場合には、その瑕疵から
生じた損害の賠償について、工作物
の占有者または所有者に対して特
別の責任を負わせている。
過失責任主義をとる民法の唯一の
例外



瑕疵判定についての客観説(通説)
と義務違反説(有力説)
効果
1.占有者と所有者
2.求償関係 3項
要件
動物は家畜か否かに関わらない 損
害は物損のみでもよい
免責事由 相当の注意を持って保管
をしたこと
要件

意義
動物が他人に加えた損害に対する
賠償義務を動物の占有者に負わせ
る。ペットブームで注目を浴びる条
項。
無過失責任 - 根拠として危険責
任
1.「土地の工作物」の瑕疵
2.設置・保存の瑕疵であること

動物占有者の責任(718条)

効果
占有者のみならず、保管者(賃借人、
運送人、受寄者)も同じ責任を負う(2
項)。
6.特別法による解決
自動車事故と自動車損害賠償保障法
製造者の責任(製造物責任
失火責任法

「失火ノ責任ニ関スル法律」明治32年
その他の特別法






原子力損害賠償法3条
鉱業法109条
大気汚染防止法25条
水質汚濁防止法19条
労働基準法75条
独占禁止法25条
運行供用者の責任(自賠法3条)
運行供用者の責任


自動車事故と自動車損害賠償保障法(昭和30年
7月29日)
運行供用者の3つの免責事由 ← 中間責任主
義
1.自己および運転者に運行上の不注意がなかっ
たこと
2.被害者または運転者以外の第三者の故意・過
失があったこと
3.自動車の構造上の欠陥または機能に障害がな
かったこと
強制的な賠償責任保険制度 直接請求権(16条)

運行供用者
自己のために自動車を運行の用に供する者
運行支配と運行利益
賠償義務者となる者 事故運転者、運行供用者(事
故車の使用権を有する者、事故車を現実に支配管
理する者)、使用者および代理監督者、親権者(未
成年者の場合)

運行



他人 妻は他人事件
損害賠償の範囲 人身損害のみ
運転者などの責任
運行供用者=保有者+若干その他の者
1.正当な権限に基づく使用権を持つ者
2.自己のために自動車を運行の用に今日する者

運行支配(危険責任)と運行利益(報償責任)に
よる二元説から一元説へ
判例





判例は「運行」の概念を自動車の走行だけに限定
せず、車両に構造上設備されている固有の装置を
目的にしたがって操作・使用することを含むとする。

運行供用者とは


1.自動車の所有者 717条による管理責任、被
用者の場合715条の人的管理責任 アリ
2.名義貸与者 人的物的管理責任を負う場合
アリ
3.使用貸借、賃貸借の貸主(レンタカー会社)ア
リ
4.無断運転 使用を許可されている者が無断運
転 監督不十分 アリ 泥棒運転 自賠法の適用
はなく、物的管理責任の問題として、原告が立証
して運行供用者の責任を問う
5.元請人 下請人に対して責任アリ
6.陸送業者、修理業者 この二者のみ責任アリ、
持ち主にはナシ。
7.担保者 担保価値のみ把握しているので責任
ナシ。引渡をうけていると管理責任を負う。
製造物責任
製造者の責任(製造物責任)



(ア)消費者保護と製造者の責
任
(イ)裁判例による製造物責任の
強化
(ウ)製造物責任法の制定
製造物責任法の内容



(a)製造物
(b)欠陥責任と欠陥の定義
(c)免責事由
(1)開発危険の抗弁
(2)部品・原材料に関わる免責事由
(d)責任主体




(1)製造業者
(2)輸入業者
(3)表示製造業者
(4)実質的製造業者と認められる表示者
(e)損害賠償の範囲

製造物の欠陥と損害との間の相当因果関係の
有無により決まる。3条
(f)損害賠償責任に関するその他の規定



(1)時効期間 知ったときから3年の消滅時効
(2)責任期間 引き渡しから10年で責任追及で
きなくなる。
(3)その他の規定 6条
(g)証明責任

特別の規定がないため、製造物の欠陥の存在、
損害、欠陥と損害との因果関係を被害者側が立
証する。