東日本大震災からの復興と エネルギー政策 筑波研究学園都市交流協議会講演 和光大学経済経営学部教授 経済学科長 岩間 剛一 2012年1月11日 1 戦後最悪の自然災害 マグニチュード9.0という超巨大地震、死 者・行方不明者合計2万人は、戦後最悪の 自然災害、避難所生活者も9万人 ①東北地方のサプライ・チェーンの分断、 ②大幅な電力不足、③円高の進展、④長 引くデフレーション、という四重苦に直面 日本の製造業は、2011年8月には早くも本 格復旧へ、多くのエコノミストの予想よりも 半年早い→日本経済のモノづくりの底力 2 未曾有の国難に見舞われた 日本経済の現状 失われた20年と形容される長期的なデフ レーション(物価の持続的な下落)と累積 する公的債務残高→924兆円2011年3月末 中国をはじめとしたアジア諸国による特需 により2011年3月期は好決算→欧米諸国 の2011年後半の景気動向の不透明感 マグニチュード9.0という地震規模は日本の 観測史上最大→地震による揺れと津波は 現代の地震学の想定外→特に津波の規 3 模が戦後最悪の自然災害に拡大 膨張する政府債務 日本政府借入金(単位:億円) 区分 2011年9月末残高 2011年3月末比増減 普通国債 6,565,393 202,276 その他国債 1,173,064 -49,509 借入金 517,284 -32,774 政府短期証券 1,288,439 180,591 総合計 9,544,180 300,584 4 未曾有の国難に見舞われた 日本経済の現状 自動車、電子機器の部品・素材製造拠点 は東北地方に集積→世界の製品サプラ イ・チェーンの分断→モノづくりシステムの 崩壊→国際競争力維持のため早急な復旧 福島第一原子力発電所事故により放射能 汚染の風説被害により、農産物、工業製 品の輸出に大きな打撃→電力不足の今後 日本在住の外国人の相次ぐ母国への帰国 5 と海外からの観光客が急減 急減する訪日外国人 訪日外国人比較(単位:千人) 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 2010年1月8月 合計 その他 米国 豪州 シンガポール タイ 香港 台湾 中国 韓国 2011年1月8月 6 内憂外患の日本 東日本大震災後の長引く円高、1ドル75円 は戦後最高値→政府・日銀は2011年10月 31日に介入を行うものの、日本単独の介 入には円高是正の限界も 欧州の信用危機は長期化の様相を示し、 米国経済も不透明に→日本の2011年上半 期貿易収支赤字はリーマン・ショック超え タイの洪水の長期化により部品の製造拠 点の操業停止長期化→日本の製造業の 7 相次ぐ業績見通し下方修正 日本の貿易収支動向 日本の貿易収支動向(単位:百万円) 4,000 2,552 2,000 253 0 -2,000 4月 月 月 月 5月 6月 7 8 9 年 年 年-1,8291年 1 1 1 1年 -4,000011年 1 1 1 1 1 2 20 20 20 20 20 -6,000 -8,000 -7,921 -7,906 -10,000 -8,773 8 未曾有の国難に見舞われた 日本経済の現状 原油価格は、北海ブレント原油が1バレル11ド ル、WTI原油が1バレル100ドルと2008年夏以 来の高値水準 ①産油国リビアのカダフィ政権は崩壊したもの の、内政混迷の長期化による欧州諸国におけ る軽質原油需給逼迫、②米国の金融緩和政策 による過剰流動性の原油先物市場への流入→ 米国の金融緩和政策の長期化、③ドル安の進 展によるドル建てで見た原油価格の割安感→ 9 金価格も史上最高値、④イランの核開発 IEAによる緊急備蓄放出は 効果があるのか 2011年6月23日にIEA(国際エネルギー機 関)が、200万b/dを30日間、合計6,000万バ レルの石油備蓄緊急放出を決める 200万b/dは世界の石油消費量の2.3%に相 当し、WTI原油は直後に1バレル90ドルを 割り込む局面に しかし、IEAによる備蓄放出量が少ないこ とを市場が見透かし、原油価格は放出前 の水準に逆戻り→IEAの備蓄石油放出は 10 市場メカニズムを歪めるという批判 IEAとOPECの対立 IEAの立場:リビアからの軽質原油の輸出 停止、新興経済発展諸国による石油の需 要増、東日本大震災による復興特需によ る石油需給逼迫→OPECに増産求める OPECの立場:世界の原油在庫、石油在 庫は高水準、石油需給は逼迫していない。 本来、IEAの備蓄は石油供給途絶という非 常事態にのみ放出されるものであり、市場 価格を引き下げるためのものではない 11 急激に下方修正された 世界経済→欧州危機の打撃 IMF世界経済見通し2011年9月 2008年 2009年 世界 3.0 -0.7 日本 0.5 -6.3 米国 0.4 -3.5 ユーロ 0.6 -4.3 中国 9.6 9.2 インド 6.4 6.8 ブラジル 5.1 -0.6 アセアン5 4.7 1.7 中東アフリカ 5.3 2.6 2010年 5.1 4.0 3.0 1.8 10.3 10.1 7.5 6.9 4.4 2011年 4.0 -0.5 1.5 1.6 9.5 7.8 3.8 5.3 4.0 2012年 4.0 2.3 1.8 1.1 9.0 7.5 3.6 5.6 3.6 12 分かれる世界経済への見方 中国、インドをはじめとした新興経済発展 諸国の高度経済成長が続き、日本も復興 特需の発生→世界経済は年率5%程度の 高成長→中国政府による積極的公共投資 原油価格、食糧価格の高騰により新興経 済発展諸国におけるインフレーションの進 行→金融引き締め、欧州財政危機、福島 第一原子力発電所の放射能被害が拡大し、 国際貿易の縮小へ 13 世界第2位となった中国経済 日中経済概況比較2010年末 概要 日本 名目GDP 5兆4,742億ドル 一人当たりGDP 42,431ドル 人口 1億2,700万人 失業率 5.10% 消費者物価指数 0.10% 外貨準備高 1兆1,000億ドル 株式時価総額 4兆1,000億ドル 石油消費量 439万b/d 新車販売台数 496万台 中国 5兆8,786億ドル 4,412ドル 13億3,400万人 4.10% 4.60% 2兆8,500億ドル 6兆7,000億ドル 891万b/d 1,806万台 14 世界的な原子力政策の見直し IAEAによる発電能力見通し(単位:百万キロワット)2011年9月 地域 2010年 原子力発電 2020年 原子力発電 北米 1,165 113.8(9.8) 1,310 126(9.6) 中南米 313 4.1(1.3) 587 6.4(1.1) 西欧 843 122.9(14.6) 1,058 126(11.9) 東欧 465 47.4(10.2) 661 80(12.1) アフリカ 130 1.8(1.4) 422 1.8(0.4) 中東・南アジア 418 4.6(1.1) 954 22(2.3) 東南アジア大洋州 173 0 312 0 極東 1,564 80.6(5.2) 2,407 164(6.8) 世界合計 5,071 375.3(7.4) 7,711 525(6.8) 2030年 1,526 1,403 1,389 914 1,093 1,885 526 3,381 12,118 原子力発電 149(9.7) 18(1.3) 141(10.1) 108(11.8) 16(1.5) 53(2.8) 6(1.1) 255(7.5) 746(6.2) 2050年 1,475 1,990 1,586 1,031 2,630 5,223 1,242 5,215 20,391 原子力発電 120(8.1) 15(0.8) 60(3.8) 80(7.8) 10(0.4) 50(1.0) 5(0.4) 220(4.2) 560(2.7) 15 北米で始まったシェール・ガス、 シェール・オイル革命 エネルギーの基本技術は短期間では大き く変化しない→非在来型の革命的発展 19世紀は石炭、20世紀は石油、21世紀は 天然ガスの世紀と呼ばれる 21世紀は環境の世紀として、炭酸ガス排 出量の少ない天然ガス需要増が期待され る→従来は在来型天然ガスのみに焦点が 当てられ、需給逼迫懸念→非在来型天然 16 ガスの生産増から供給過剰が恒常化 北米で始まったシェール・ガス、 シェール・オイル革命 福島原子力発電所事故により、今後の日 本における原子力推進政策は事実上困難 日本の原子力発電所の新規建設は今後 30年間は事実上不可能→LNG火力増強 東京電力管内だけで、福島原子力発電所 (910万キロワット)、柏崎刈羽原子力発電 所(821万キロワット)をLNGで代替すると、 年間1,700万トン必要→カタール、ロシア、 豪州のLNGの輸入増→合計2,000万トン 17 非在来型天然ガス資源量 非在来型天然ガス資源量(単位:兆立方フィート) コール・ベッド・メタン シェール・ガス タイト・サンド・ガス 小計 北米 3,017 3,840 1,371 8,228 中南米 39 2,116 1,293 3,448 西欧 157 509 353 1,019 東欧 118 39 78 235 ロシア 3,957 627 901 5,485 中東 0 2,547 823 3,370 アフリカ 39 274 784 1,097 中国 1,215 3,526 353 5,094 その他 509 2,625 1,450 4,584 世界合計 9,051 16,103 7,406 32,560 18 大きく伸びる天然ガス需要 世界の炭化水素の年平均伸び率予測(%) 1980年-2007年 2007年-2035年 炭化水素合計 2.0% 1.5% 天然ガス 2.7% 2.1% 石油 1.0% 1.0% 石炭 2.2% 1.2% 19 天然ガス黄金時代 IEAエネルギー需要見通し2011年6月(石油換算百万トン) エネルギー源 2008年需要 2008年シェア 2035年需要 2035年シェア 年平均伸び率(%) 石炭 3315 27% 3666 22% 0.60% 石油 4059 33% 4543 27% 0.50% 天然ガス 2596 21% 4244 25% 2.10% 原子力 712 6% 1196 7% 1.60% 水力 276 2% 477 3% 1.80% バイオマス 1225 10% 1944 12% 1.60% その他再生可能エネルギー 89 1% 697 4% 8.20% 20 大きく伸びるアジアの石油需要 アジアの石油需要見通し(単位:万b/d) 5,000 3,688 4,000 4,050 2,950 3,000 2,170 2,000 1,000 958 0 1980年 2007年 2020年 2030年 2035年 21 チュニジアを震源地とした 中東アフリカ情勢の混迷 2010年12月のチュニジアの青年の市庁舎 前における焼身自殺が、フェース・ブック、 ツイッター等により民衆の反政府運動に拡 大→2011年1月時点で中東アフリカ諸国に おける反政府運動の勃発を予測した専門 家はまったく存在しなかった 中東アフリカ諸国は、①独裁政権による徹 底的な言論統制、②秘密警察による反政 府運動の封じ込め→政権は磐石? 22 チュニジアを震源地とした 中東アフリカ情勢の混迷 反政府運動の背景には、①若年層におけ る高い失業率、②米国の金融緩和政策(Q E2)による過剰なマネー流入を契機とした 資源エネルギー価格の高騰、食糧価格の 高騰→打撃の大きい貧困層の不満拡大 中東アフリカ諸国の共通点:①長期独裁政 権、②徹底的な言論統制、③増大する若 年層の高い失業率、④石油の富の一部特 権階級への集中、⑤スンニー派とシーア派23 中東アフリカ諸国における 独裁政権 中東・アフリカ独裁政権 国家名 独裁者 エジプト ムバラク氏 チュニジア ベンアリ氏 リビア カダフィ氏 イエメン サレハ氏 アルジェリア ベーテフリカ氏 在任期間 29年間 23年間 41年間 20年間 11年間 24 拡大する中東アフリカ諸国 における反政府運動 中東情勢の混迷 1月14日 チュニジアのベンアリ大統領が反政府運動で亡命 1月25日 エジプトにおいて反政府運動が始まる 1月27日 イエメンの首都サヌアで反政府デモ 2月2日 イエメンのサレハ大統領は2013年の大統領選挙に不出馬 2月11日 エジプトのムバラク大統領は退任 2月14日 バハレーンで反政府運動が始まる 2月15日 リビアで反政府運動が始まる 2月20日 リビアの東部都市ベンガジを反政府組織が制圧 2月24日 サウジアラビアのアブドラ国王が帰国 2月25日 リビアの首都トリポリで政権が反政府デモに発砲 3月5日 リビアの反政府組織が正統政府として国民評議会を発足 3月12日 サウジアラビア東部において数百人規模のデモ発生 3月14日 バハレーンにサウジアラビア軍部隊が入国 3月17日 国連安全保障理事会がリビアに飛行禁止区域を設定決議 3月19日 米英仏がリビアを空爆 3月23日 イエメンのサレハ大統領は2011年末に退陣表明 3月26日 サウジアラビアにおいてシーア派が反政府デモ 6月23日 イエメンのサレハ大統領がテロにより負傷 8月14日 反体制派が首都トリポリ西方のザウィヤ制圧 8月21日 反体制派が首都トリポリの大部分を制圧 10月20日 リビアの最高指導者カダフィ大佐を反体制派が殺害 11月23日 イエメンのサレハ大統領が権限委譲により退任 11月27日 アラブ連盟がシリアのアサド政権に対し経済制裁を決定 25 伝播する反政府運動 26 産油国リビアの今後の見通し 2011年3月19日の米国、英国、フランスを 中心とした空爆時点では、短期間で解決 するという楽観的見通し→長期化へ カダフィ政権は、石油の富を原資とした強 力な武器とアフリカの傭兵により根強い抵 抗→カダフィ政権崩壊には半年の時間 リビアにおける石油利権を巡り、反政府勢 力を支援したイタリア、フランスによるリビ ア原油開発とカダフィ政権を支援した中国、 ロシアとのリビア資源争奪戦→国内の石 油関連法制度整備には1年以上の時間 27 産油国リビアの原油生産量推移 リビアの原油生産量推移(単位:千b/d) 2000 1500 1425 1475 1427 1375 1485 1623 1745 1815 1820 1820 1652 1659 1000 500 245 19 99 年 20 00 年 20 01 年 20 02 年 20 03 年 20 04 年 20 05 年 20 06 年 20 07 年 20 08 年 20 09 年 20 10 年 20 11 年 0 28 イランの現状と今後の動向 イランのアハマドネジャド大統領は、中東 アフリカ諸国における反政府運動による反 米政権樹立を支持→核開発を続ける しかし、イラン自身も2月14日に改革派が 首都テヘランで大規模デモ アハマドネジャド大統領は、米国政府によ る陰謀と声明 改革派のムサビ元首相、カルビ元国会議 29 長を軟禁 イランの原油生産量 イランの原油生産量推移(単位:千b/d) 4322 4327 4199 4245 4183 4248 4234 4286 4500 4000 3855 3892 3603 3709 3500 3000 2500 19 99 年 20 00 年 20 01 年 20 02 年 20 03 年 20 04 年 20 05 年 20 06 年 20 07 年 20 08 年 20 09 年 20 10 年 2000 30 イラン原油輸出先 イラン原油輸出先(%) 2010年原油輸出量224万b/d 28 20 17 9 10 16 中国 日本 インド イタリア 韓国 その他 31 日本にとって重要なイラン原油 国別原油輸入割合2010年 原油輸入合計3,717千b/d 323 120 122 1,069 264 265 356 439 759 サウジアラビア UAE カタール イラン クウェート ロシア オマーン イラク その他 32 国別原油生産量 国別原油生産量割合2010年(単位:千b/d) 世界生産量合計82,095千b/d 10,270 10,007 31,867 7,513 4,245 2,471 2,508 4,071 2,958 3,336 ロシア サウジアラビア 米国 イラン 中国 カナダ メキシコ UAE クウェート ベネズエラ その他 2,849 33 再び高騰する原油価格 主要原油価格推移(単位:ドル/バレル) 150.00 130.00 110.00 北海ブレ ント原油 70.00 50.00 2011年11月 2011年10月 2011年9月 2011年8月 2011年7月 2011年6月 2011年5月 2011年4月 2011年3月 2011年2月 2011年1月 2010年12月 2010年11月 2010年10月 2010年9月 2010年8月 2010年7月 2010年6月 2010年5月 2010年4月 2010年3月 2010年2月 2010年1月 2009年12月 2009年11月 2009年10月 2009年9月 2009年8月 2009年7月 2009年6月 2009年5月 2009年4月 2009年3月 2009年2月 2009年1月 2008年12月 2008年11月 2008年10月 2008年9月 2008年8月 2008年7月 2008年6月 2008年5月 2008年4月 2008年3月 2008年2月 2008年1月 WTI原 油 30.00 ドバイ原 油 90.00 34 長期的な原油価格推移 WTI原油価格推移(ドル/バレル) 110.00 100.00 90.00 80.00 70.00 60.00 50.00 40.00 30.00 20.00 10.00 0.00 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 1998年 1997年 1996年 1995年 1994年 1993年 1992年 1991年 1990年 1989年 1988年 1987年 1986年 35 スウィング・プロデューサー サウジアラビアの原油生産量 サウジアラビア原油生産量推移(単位:千b/d) 11,114 10,853 10,846 10,638 10,449 10,164 9,89310,007 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 8,928 2005年 2001年 2000年 1999年 8,853 2004年 9,209 2003年 9,491 2002年 9,502 1998年 12,000 11,500 11,000 10,500 10,000 9,500 9,000 8,500 8,000 36 OPECの原油生産実績 OPEC原油生産実績(単位:百万b/d) 加盟国 目標生産量 2011年8月生産量 2011年9月生産量 生産能力 余剰生産能力 アルジェリア 1.20 1.28 1.29 1.34 0.08 アンゴラ 1.52 1.69 1.74 1.98 0.23 エクアドル 0.43 0.49 0.50 0.53 0.03 イラン 3.34 3.51 3.54 3.68 0.14 クウェート 2.22 2.53 2.55 2.56 0.01 リビア 1.47 0.00 0.08 0.35 0.28 ナイジェリア 1.67 2.28 2.18 2.55 0.37 カタール 0.73 0.82 0.82 1.04 0.22 サウジアラビア 8.05 9.80 9.60 12.04 2.44 UAE 2.32 2.53 2.55 2.74 0.19 ベネズエラ 1.99 2.56 2.56 2.64 0.08 OPEC11ヵ国合計 24.84 27.49 27.41 31.44 4.03 イラク 2.68 2.74 2.85 0.11 OPEC合計 30.17 30.15 34.29 4.14 37 非在来型天然ガスとは 従来の技術では経済的に採取することが 困難と考えられた特殊な地層のメタン タイト・サンド・ガス:浸透性の低い(浸透率 0.1ミリダルシー未満)砂岩に含まれるメタ ン→非在来型天然ガスは層というより構造 コール・ベッド・メタン:炭鉱の石炭層に含 有されたメタン→資源量は石炭と同量 シェール・ガス:炭化水素形成の根源岩と いえる頁岩(浸透率0.001ミリダルシー未 38 満)に含まれるメタン 非在来型天然ガスの技術革新 水平掘削、シームレス・パイプラインの枝 分かれによるフラクチャリング(水圧破砕)、 界面活性剤等の技術の組み合わせ 既存技術の積み重ねによる静かなる革命 (Quiet Revolution) メジャー(国際石油資本)は経済合理性の 観点から早期に見切り、チェサピーク等の 中堅石油会社が天然ガス価格高値推移か ら米国本土の開発促進→メジャーも経営 39 戦略を見誤った 世界最大となった米国の 天然ガス生産量 米国の天然ガス生産量推移 (単位:10億立方メートル) 19 97 年 19 98 年 19 99 年 20 00 年 20 01 年 20 02 年 20 03 年 20 04 年 20 05 年 20 06 年 20 07 年 20 08 年 20 09 年 20 10 年 620.0 600.0 580.0 560.0 540.0 520.0 500.0 40 シェール・ガス革命により 乖離する日米のLNG価格 41 シェール・ガス革命により 急落した天然ガス価格 42 世界的な原子力発電政策 見直しの中でも下落 43 米国におけるLNGを巡る 環境の急変 2004年時点における米国のエネルギー省 の見通しでは、国内天然ガス生産量の減 退から、LNG輸入量を2004年の1,300万ト ンから2030年には3億9,000万トンにまで増 加させる必要ありと予測 2009年の米国エネルギー省見通しでは、 非在来型天然ガスの生産増から、2030年 時点で国内天然ガス需要の3%、3,000万ト ンで十分、さらには1,000万トン以下にも 44 世界最大のLNG国カタール 45 カタールのLNGプロジェクト カタールのLNGプロジェクト プロジェクト名 年間生産量 カタール・ガス1 310万トン カタール・ガス2 290万トン カタール・ガス2拡張 50万トン カタール・ガス3 310万トン カタール・ガスⅡ4 780万トン カタール・ガスⅡ5 780万トン カタール・ガスⅢ6 780万トン カタール・ガスⅣ7 780万トン ラス・ガス1 320万トン ラス・ガス2 320万トン ラス・ガスⅡ3 340万トン ラス・ガスⅡ3拡張 140万トン ラス・ガスⅡ4 470万トン ラス・ガスⅡ5 470万トン ラス・ガスⅢ6 780万トン ラス・ガスⅢ7 780万トン 合計 7,700万トン 操業開始 1997年 1997年 2001年 1997年 2009年 2009年 2010年 2010年 1999年 1999年 2004年 2007年 2005年 2007年 2009年 2009年 2010年 参加企業 QP、エクソンモービル、トタール、丸紅、三井物産 QP、エクソンモービル、トタール、丸紅、三井物産 QP、エクソンモービル、トタール、丸紅、三井物産 QP、エクソンモービル、トタール、丸紅、三井物産 QP、エクソンモービル QP、エクソンモービル、トタール QP、コノコフィリップス、三井物産 QP、シェル QP、エクソンモービル、KOGAS、伊藤忠、LNGJAPAN QP、エクソンモービル、KOGAS、伊藤忠、LNGJAPAN QP、エクソンモービル QP、エクソンモービル QP、エクソンモービル QP、エクソンモービル QP、エクソンモービル QP、エクソンモービル 46 世界におけるLNG生産能力 世界のLNG生産能力2010年末(万トン/年) トレイン数 生産能力 世界全体 93 2億6,300万トン うちカタール 14 7,720万トン 47 急増する中国の石油需要 2010年秋以降に中国政府はエネルギー消 費量削減のために電力供給抑制政策を実 施→各企業は操業維持のためにディーゼ ル自家発電の利用→軽油輸入の増加 BPの予測によれば、中国の2030年におけ る石油消費量は1,750万b/dに達し、世界第 1位に→実際には中国の石油消費量は 2,000万b/d超になる可能性→2020年には 米国を抜く石油消費国へ 48 前年比伸び率(%) 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 石油消費量(千b/d) 中国の石油消費量 中国の石油需要推移と伸び率(単位:千b/d) 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 1998年 1997年 1996年 49 急増するインドの石油消費量 インドの石油消費量 (単位:千b/d) 2,573 2,569 2,571 2,284 2,374 2,420 2,835 3,319 3,068 3,211 20 01 年 20 02 年 20 03 年 20 04 年 20 05 年 20 06 年 20 07 年 20 08 年 20 09 年 20 10 年 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 50 急増する中国の天然ガス需要 120 100 80 60 40 20 0 40 35 30 25 20 15 10 5 0 前年比伸び率(%) 天然ガス消費量 (10億立方メートル) 中国の天然ガス需要推移と伸び率 (単位:10億立方メートル) 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 51 急増する中国のLNG輸入量 中国のLNG輸入量推移(単位:万トン) 1000 800 600 400 200 0 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 52 中国の電力事情 中国の電力需要は年率10%の割合で増加 電力の8割は石炭火力発電 2011年夏と2012年冬には4,000万キロワッ トの電力不足が発生→軽油輸入の急増 中国は既に、2007年に世界最大の温室効 果ガス排出国、2009年に世界最大のエネ ルギー消費国→国際的責務増大 温室効果ガス排出削減のため、LNG輸入 量を2020年まで年間4,800万トンと8倍増加 53 させる計画 国別炭酸ガス排出量 炭酸ガス国別排出量割合%2008年 世界合計294億トン 22.3 33.8 19.0 3.9 4.9 10.7 中国 米国 EU諸国 ロシア インド 日本 その他 5.4 54 主要国の電力需要の伸び 55 主要国の電源構成 56 東日本大震災が日本の エネルギー市場に与える影響 1979年のスリー・マイル島事故から30年以 上にわたって、米国における新規の原子 力発電所の建設はない 福島第一原子力発電所の事故はチェルノ ブイリ事故と同じレベル7→今後20年から 30年は新規原子力発電所の建設は、地元 住民の合意を得られる可能性は低い 運転停止中の原子力発電所の運転再開 にも1年以上は必要→2012年冬と夏も電力57 不足 東日本大震災が日本の エネルギー市場に与える影響 100万キロワット級の火力発電所における 年間の石油消費量は1,000万バレル→現 在の原油価格においては、年間12億ドル (1,200億円)の燃料費に相当 現状においては、2011年中に500万キロ ワット相当の石油火力発電を追加利用、そ れに伴い年間5,000万バレル(13.6万b/d) の原油・重油の需要増→国際石油市場は 日本の動向を織り込み済み 58 東日本大震災が日本の エネルギー市場に与える影響 日本の原子力発電所すべてにストレス・テ スト(耐性試験)の実施→2012年5月には 54基すべてが運転停止する可能性 関西電力の大飯原子力発電所も緊急停止 →電力不足は東日本から西日本に拡大 企業、家庭による自主的節電努力により 最大電力需要は予想を15%以上も下回る →将来的には電力インフラストラクチャー の不足が企業の海外移転に 59 エネルギー別燃料消費量 100万キロワットを1年間発電するための エネルギー消費量(単位:トン) 2,500,000 2,210,000 2,000,000 1,430,000 1,500,000 930,000 1,000,000 500,000 0 21 ウラン 天然ガス 石油 石炭 60 世界最大のLNG輸入国日本 国別LNG輸入量2010年(単位:万トン) 総輸入量2億1,693万トン 2,386.2 日本 韓国 スペイン 650.8 650.8 6,941.8 英国 台湾 867.7 フランス 867.7 中国 米国 867.7 インド 1,084.7 トルコ 1,084.7 3,037.0 1,301.6 イタリア その他 1,952.4 61 東日本大震災が世界の 原油需給にもたらす影響 世界の石油需要動向2011年11月(単位:百万b/d) 2007年 2008年 2009年 2010年 OECD諸国 49.3 47.6 45.6 46.2 非OECD諸国 37.7 39.0 39.9 42.1 世界合計 87.0 86.6 85.6 88.3 2011年 45.8 43.4 89.2 2012年 45.5 44.9 90.5 62 従来の発電コスト安い石炭火力 エネルギー源別発電コスト(円/キロワット時) 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 46.0 15.0 14.0 8.2 10.0 5.8 5.0 4.8 電 電 力 電 電 電 力 力 発 発 火 発 発 発 火 火 G 光 力 熱 力 力 油 炭 N 陽 子 地 風 水 石 石 L 太 原 63 見直された発電コスト 電源別発電コスト比較2011年 (単位:円/キロワット時) 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 38.9 36.0 30.1 電 8.98.9 発 力 子 原 炭 火 力 力 石 G 火 力 LN 石 油 火 電 発 力 風 地 熱 発 発 光 陽 太 10.9 9.5 10.7 10.8 9.98.8 8.38.3 電 電 12.1 2010年 2030年 64 20 07 年 1月 20 07 年 7月 20 08 年 1月 20 08 年 7月 20 09 年 1月 20 09 年 7月 20 10 年 1月 20 10 年 7月 20 11 年 1月 20 11 年 7月 化石燃料の輸入価格 炭化水素別輸入CIF価格 (円/千キロカロリー) 12 10 8 6 4 2 0 原油 一般炭 LNG LPG 65 国別石炭埋蔵量 94943国別石炭埋蔵量(単位:百万トン)2010年 150 全世界確認埋蔵量860,938百万トン 5529 5709 237925 33600 33873 40699 60600 76400 157010 米国 ロシア 中国 豪州 インド ドイツ ウクライナ カザフスタン ポーランド インドネシア ベトナム その他 114500 66 国別石炭輸入量 国別石炭輸入量(単位:百万トン) 世界総輸入量917百万トン 182 380 88 46 48 69 5054 日本 韓国 台湾 インド 英国 中国 ドイツ その他 67 長期的石炭価格推移 日本における石炭輸入価格推移(ドル/トン) 原料炭 一般炭 190 180 170 160 150 140 130 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 1998年 1997年 1996年 1995年 1994年 1993年 1992年 1991年 68 高騰する石炭価格推移 石炭輸入CIF価格推移(ドル/トン) 原料炭 一般炭 2011年10月 2011年9月 2011年8月 2011年7月 2011年6月 2011年5月 2011年4月 2011年3月 2011年2月 2011年1月 2010年12月 2010年11月 2010年10月 2010年9月 2010年8月 2010年7月 2010年6月 2010年5月 2010年4月 2010年3月 2010年2月 2010年1月 300.00 250.00 200.00 150.00 100.00 50.00 0.00 69 石炭市場を巡る環境変化 2009年に中国は石炭純輸入国に転落 原料炭に加えて、一般炭の海外からの買 い漁りによる石炭価格の上昇 資源メジャーはBHPビリトンをはじめとして 寡占化→石炭市場は売り手市場に 2011年12月時点における一般炭スポット 価格(豪州ニューカッスル港)は1トン150ド ル超へ→2011年には中国が世界最大の 石炭輸入国へ 70 急増する中国の石炭消費量 中国における石炭消費量推移 (単位:百万トン石油換算) 1713.5 1556.8 1438.41479.3 1343.9 1218.7 1084.3 936.3 656.2 737.1 751.9 794.9 19 99 年 20 00 年 20 01 年 20 02 年 20 03 年 20 04 年 20 05 年 20 06 年 20 07 年 20 08 年 20 09 年 20 10 年 1800.0 1600.0 1400.0 1200.0 1000.0 800.0 600.0 400.0 200.0 0.0 71 重油価格推移 C重油、ナフサ価格推移(ドル/キロリットル) C重油 ナフサ 2011年10月 2011年9月 2011年8月 2011年7月 2011年6月 2011年5月 2011年4月 2011年3月 2011年2月 2011年1月 2010年12月 2010年11月 2010年10月 2010年9月 2010年8月 2010年7月 2010年6月 2010年5月 2010年4月 2010年3月 2010年2月 2010年1月 1000.00 800.00 600.00 400.00 200.00 0.00 72 2012年冬と2012年夏の 電力不足を乗り切れるか 近年のエアコン、パソコンの普及によるラ イフ・スタイルの向上によって、夏場の最大 電力需要は東京電力管内で6,000万キロ ワットを超える水準に それに対する発電能力は5,500万キロワッ ト、さらに企業による自家発電を加えても、 500万キロワットから1,000万キロワット不 足する→冬と夏も電力不足の可能性が強 まる→製造拠点の海外移転を促す 73 オール電化は見直しの方向 東京電力は既に、オール電化営業を中止 している→オール電化と原子力推進見直 そもそも欧米諸国において天然ガスによっ て行われている冷暖房、給湯、調理までも 電気で行うことに無理が ベース電源としての原子力発電の有効利 用が前提→原子力推進政策の崩壊→原 子力の稼働率低下は電力料金引き上げに →オール電化は高コスト 74 東京電力最大電力推移 東京電力最大電力量(単位:万キロワット) 5,924 6,089 5,449 6,147 年 度 20 10 年 度 20 09 年 度 20 08 年 度 20 07 年 度 20 00 年 度 2,831 19 90 19 80 6,147 4,930 年 度 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 75 東京電力原子力発電所 東京電力原子力発電所一覧 発電所名 号機 形式 福島第一 1号機 BWR 2号機 BWR 3号機 BWR 4号機 BWR 5号機 BWR 6号機 BWR 福島第二 1号機 BWR 2号機 BWR 3号機 BWR 4号機 BWR 柏崎刈羽 1号機 BWR 2号機 BWR 3号機 BWR 4号機 BWR 5号機 BWR 6号機 ABWR 7号機 ABWR 最大出力 46万KW 78.4万KW 78.4万KW 78.4万KW 78.4万KW 110万KW 110万KW 110万KW 110万KW 110万KW 110万KW 110万KW 110万KW 110万KW 110万KW 135.6万KW 135.6万KW 運転開始 1971年 1974年 1976年 1978年 1978年 1979年 1982年 1984年 1985年 1987年 1985年 1990年 1993年 1994年 1990年 1996年 1997年 76 東京電力再開火力発電所 東京電力稼動開始予定発電所 発電所 発電能力 鹿島火力発電所 440万キロワット 袖ヶ浦火力発電所 360万キロワット 横須賀火力発電所 220万キロワット 東扇島火力発電所 200万キロワット 品川火力発電所 114万キロワット 77 東日本大震災が世界のLNG 需給にもたらす影響 現状においては、世界のLNGは供給過剰 の状況にあり、日本が年間2,000万トン程 度のLNGを追加調達をしても、供給的に 問題はない→しかし、LNG購入価格は、 百万Btu当たり17ドル~18ドル カタールが年間7,700万トンのLNG生産能 力を2010年12月に持ったことにより、欧州 諸国は石油製品価格等価のロシア、アル ジェリアからのパイプライン購入からスポッ 78 トLNG購入に一部転換 東日本大震災が世界のLNG 需給にもたらす影響 現状においては、余剰LNGスポット玉は、 ドイツ、イタリア、スペインが購入し、ガスプ ロムはやむを得ず、天然ガス販売量の 15%から30%を市場価格連動で販売→価 格よりも販売量を維持 日本によるLNG購入量増加により、安い スポット玉が減少(百万Btu当たり3ドル程 度)→日本は長期固定価格契約により百 万Btu当たり13ドルさらには18ドルで購入 79 東日本大震災が世界のLNG 需給にもたらす影響 短期的な発電能力拡大には、LNGを利用 したガス・タービン発電機が有効→柔軟な 環境アセスメント運用により、既存火力発 電所内にLNG火力を増設 カタール、ロシア、豪州にとっては、高値で LNGを購入してくれる日本に大きな期待 日本の場合には、原燃料費調整制度があ るため、価格合理性よりもエネルギー安全 80 保障を重視→電力自由化も検討 北米におけるLNGプロジェクト 北米LNG輸出プロジェクト 地域 プロジェクト名 事業主体 アラスカ ケナイLNG コノコフィリップス、マラソン カナダ キティマットLNG 三菱商事 テキサス サビーンパスLNG シェニエール・エナジー テキサス フリーポートLNG フリーポート、豪州マッコーリー 81 急増するLNGプロジェクト プロジェクト名 イラン・パースLNG イラン・ペルシアンLNG イラン・NIOCLNG インドネシア・ボンタンIトレイン 豪州・グレーターサンライズLNG 豪州・プルートLNG 豪州・ゴーゴンLNG 豪州・ブラウズLNG カタール・カタール拡張 カタール・ラスガス拡張 インドネシア・タングー第3トレイン ロシア・サハリンⅡ第3トレイン 計 開始予定年 2010以降 2010以降 2010以降 2010以降 2010以降 2010以降 2010以降 2011以降 - - - - 規模 1,000万t 1,500万t 960万t 350万t 500万t 430万t 1,500万t 1,400万t 780万t 780万t 380万t 240万t 10,090万t 82 豪州におけるLNGプロジェクト オーストラリアのLNG案件 オペレーター シェブロン シェブロン ウッドサイド 国際石油開発帝石 ウッドサイド ウッドサイド 年間生産能力 ゴーゴン(西豪州) 1,500万トン ウィートストーン(西豪州) 2,500万トン プルート(西豪州) 2,000万トン イクシス(西豪州) 800万トン ブラウズ(西豪州) 1,500万トン サンライズ(西豪州) n.a. 西豪州合計 8,300万トン グラッドストーン(QLD州) サントス、ペトロナス 1,000万トン クイーンズランド・クルティス(QLD州) BG 1,200万トン G LNG(QLD州) アロー、ゴラー 300万トン オーストラリア・パシフィック(QLD州) オリジン、コノコフィリップス 1,400万トン シェル・クイーンズランド(QLD州) シェル、アロー n.a. QLD州合計 3,900万トン NWA(西豪州) ウッドサイド 1,630万トン ダーウィン(北部豪州) コノコフィリップス 320万トン オーストラリア合計 14,150万トン 83 米国におけるシェール・オイル 革命の進展 チェサピーク、EOGをはじめとした中堅石 油企業は、シェール・ガスの技術をシェー ル・オイルの開発に応用 米国の原油生産量は2010年に50万b/dも 増加→オイル・ピーク論は覆される 欧米メジャー(国際石油資本)も欧州、中 国でシェール・オイル開発を開始 日本の総合商社もシェール・オイル開発に 参画 84 回復する米国の原油生産 米国の原油生産量推移(単位:千b/d) 8,000 7,500 7,000 6,500 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 6,000 85 日本の総合商社の動き 総合商社・プラント・メーカー油田・ガス田開発 商社名 開発概要 三菱商事 カナダ西部のシェール・ガス開発、投資額3,000億円、大阪ガス、東京ガスも参加 三菱商事 豪州のシェール・ガス権益取得 三井物産 米国東部のシェール・ガス開発、投資額4,000億円超 三井物産 米国南部でシェール・ガス、シェール・オイル開発、総投資額1,000億円 伊藤忠商事 米国中西部でシェール・オイル開発、総事業費1,500億円 伊藤忠商事 米国オクラホマ州のサムスン・インベストメントを70億ドルで買収、シェール・ガスを2015年にLNGとして日本へ輸出 丸紅 豪州東部で炭層ガスをLNG輸出、総事業費2,000億円 丸紅 米国中西部でシェール・オイル開発 住友商事 米国東部と南部でシェール・ガス開発 日揮 米国南部でシェール・オイル開発 インペックス・日揮 カナダのブリティッシュ・コロンビア州のシェール・ガス権益取得 双日 米国南部でシェール・ガス開発 86 在来型天然ガスに匹敵する シェール・ガス埋蔵量 シェールガス埋蔵量(米国を除く、単位:兆立方フィート) 地域 リスクを含む原始埋蔵量 回収可能資源量 北米 3,856 1,069 南米 4,569 1,225 欧州 2,587 624 アフリカ 3,962 1,042 アジア 5,661 1,404 豪州 1,381 396 世界合計 22,016 5,760 87 活発なシェール・ガス開発 2011年に入ってからの非在来型天然ガス田・油田の開発状況 企業名 月 概要 CNOOC 2月 チェサピークから米国シェール・ガス田権益を33.3%取得 BHPビリトン 3月 チェサピークから米国シェール・ガス田権益を取得 サソール 3月 カナダのタリスマン・エナジーからシェール・ガス田権益を取得 東京ガス 3月 豪州のコール・ベッド・メタン権益をBGから1.25%取得 丸紅 4月 マラソン・オイルから米国シェール・オイル油田権益を取得 日揮 6月 トライテック・ワンから米国シェール・オイル油田権益を取得 三井物産 6月 SMエナジーから米国シェール・ガス、シェール・オイル権益を取得 三井物産 6月 マラソン・オイルからポーランドのシェール・ガス田権益を取得 BP 6月 TNK-BPがウクライナのシェール・ガス田を18億ドルで開発 BHPビリトン 7月 米国ペトロホーク社を121億ドルで買収 88 深海部油田の開発動向 2010年4月20日のBPによる米国メキシコ 湾における原油流出事故から1年たらずで 米国においては深海部油田開発再開→米 国南部の産油州の強い働きかけ 欧米メジャーは、米国メキシコ湾、西アフリ カ沖合い、ブラジル沖合いで深海部油田 開発を推進 メジャー5社の2011年の投資総額は1,200 億ドル超(12兆円) 89 地域別油田生産コスト 地域別油田発見・生産コスト(ドル/バレル) 80.25 57.2 40.15 中 東 ノ オ リ オ イ ル コ 重 サ ン ド カ フ リ ア 質 油 14.85 欧 州 ナ ダ カ ル 21.11 ・オ イ ー ル ェ シ 45.96 40.29 31.2 23.45 米 国 陸 上 米 国 海 上 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 90 2012年の原油価格は 日本における石油火力発電増、企業にお けるディーゼル自家発電増によって、生炊 き用原油、重油、軽油の需要が20万b/dか ら30万b/d増加 中国においても、10%近い高度経済成長 から、石油消費量は1,000万b/dを突破→ 夏場の電力不足は原油価格高騰要因に 欧州危機と米国経済の不透明感から、先 進国の石油需要は低迷 91 イランとの緊張関係は長期化 2012年の原油価格は リビア情勢は解決しても、原油生産回復に は時間が必要、バハレーン、イランの情勢 も混迷が続く→100ドル超が続く 今後はクウェート、オマーン、サウジアラビ アへの影響に注視 米国は、チュニジア、エジプト、リビアにつ いては民主化運動を支援→中東産油国の シーア派運動には距離を置く→ダブル・ス タンダード政策の矛盾が明らかに イランによるホルムズ海峡封鎖によって、1 92 バレル150ドル超も 2012年の天然ガス価格は 日本のLNG火力増によるLNG輸入量増 加は、多くても年間1,000万トンから2,000万 トン→現状のLNG供給能力からは十分に 吸収可能→量的には大丈夫 世界的な天然ガス余剰感は残る→天然ガ ス先物価格は百万Btu当たり3ドル以下で 低迷→長期的にも安値安定 欧州諸国に安値で販売していたカタール、 ロシアにとっては、日本への輸出によりLN 93 G収入増に 2012年の天然ガス価格は 世界の天然ガス市場は、①北米市場、② 欧州市場、③アジア市場 北米市場はシェール・ガス革命により天然 ガス価格は低位安定、欧州市場はカター ルの余剰LNG玉が減少することから、石 油製品等価見直しの圧力減少 アジア市場は、パイプライン等の代替調達 手段がなく、エネルギー安全保障の観点 から引き続き百万Btu当たり15ドル以上 94 2012年の石炭価格は 中国、インドの粗鋼生産、電力需要の好調 により、中国による海外からの石炭買い漁 りは2012年も進む 自動車の世界生産台数は8,000万台の可 能性→欧州危機の影響は→アジア市場の 主力はリッター・カーのガソリン車 十分な石炭供給能力は豪州とインドネシア に集中 一般炭は1トン150ドル超、原料炭は1トン 95 250ドル超の時代へ 望ましいエネルギー政策 原子力か再生可能エネルギーかという単 純な二元論は意味がない 電力の瞬時の需要変動に対して、原子力 も再生可能エネルギーも対応できない→ エネルギーとして自立していない 現実的なエネルギー政策の解は、短期的 には天然ガス・コンバインド・サイクル発電 の利用促進→天然ガスの供給安定性は今 後5年程度は大丈夫→今後の技術革新に 96 よって、可採年数400年に
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