コーホート分析を用いたフードサービス産業の分析

外食の消費に関する経時的変化への
考察
~中食の成長と今後の展望~
学籍番号
Zwei
研究の枠組み
ニーズ(欲求・
目的・必要性)
情報探査
購買・消費
ライフスタイル
がニーズをはじ
めとする全ての
購買行動に大
きな影響を持っ
ているのでは?
ライフスタイル
意思決定
態度形成
研究の枠組み(中食の購買)
社会的要因
•少子高齢化
順調に成長!!
•女性の社会進出
•技術革新
など
テイクアウト
独身男性
デリバリー
主に30代~40代の
女性層
(お届け)
ケータリング
個人的要因
高齢者
(作ってもらう)
•価値観などのライフ
スタイルが変化
•時間の有効活用
など
参考:Health Biz Report
メインターゲット
中食市場のキーとな
りうる層として注目!!
中食産業の成長要因
①女性の社会進出の増加による調理時間の減少
②週休二日制や週40時間労働制実施等による余暇時間の増
加
③家族構成員のライフスタイルの多様化
④単身世帯の増加や高齢者世帯の増加等、家族構成員数の
減少
⑤経済成長による生活水準の向上
⑥技術向上による、持ち帰り製品の品質・品種増大
⇒好きな時間に、好きなものを、好きなだけ買い、食べられる
⇒好きなもの・趣味への消費に回すため食費はなるべく切り詰
める
⇔有名店の~・おいしいものといったグルメ志向・本物志向の
ニーズの登場とそれを満たす調理技術・保存技術の発達
なぜ、 高齢者層なのか?
• 平均寿命が延び、人生50年時代から人生90年時代になった。
⇒加齢に伴う食品嗜好の変化(肉から魚へ:森(1997)、量も減
少)
⇒外食消費の減少
⇒長くなった老後を「楽しく・健康に」という意識の高まりが予想
される
• 高齢者・高齢者世帯の増加(次スライド参照)
1980年:4.0% 1994年:12.4%
• 家族の小規模化・単身者の増加(次々スライド参照)
1980年:11.9% 1994年:29.2%
⇒孤食の増加(栄養のアンバランス化・調理、片付けの問題)
以上の点から好きなものを、食べられるだけ買える中食の消費
が今後も伸びると考えられる。
高齢者の暮らし方(千人、%)
高齢者世帯
割合
高齢者総数 単独
夫婦
子供と同居 その他
1980
4.0
10729
8.5
19.6
69
3
1985
6.9
12111
9.3
23
64.6
3
1990
10.4
14453 11.2
25.7
59.7
3.5
1994
12.4
17540
29
55.3
3.6
12
出展:「フードシステムの経済学」 時子山 ひろみ 医歯薬出版
(2001)
単身者世帯の年齢分布(%)
1970年
1994年
男女総計
~29歳
30~59歳
60歳~
男女総計
男
女
66.1
38.3
45.9
30.6
22
32.5
40.7
24.1
11.9
29.2
13.3
45.2
出展:「フードシステムの経済学」 時子山 ひろみ 医歯薬出版
(2001)
なぜ、 30代~40代の女性層なのか?
• 女性の社会進出の増加による調理時間の減少
• 惣菜などの調理済み食品に対する認識の変化
⇒手抜きと見られていた出来合いの商品に対する認識が変わ
り、主婦層としては買いやすい時代になった。
例:惣菜に関する意見
(「惣菜白書2004」社団法人 日本惣菜協会著より)
①惣菜の鮮度が良くなっている⇒約50%
②惣菜は美味しいものが増えた⇒約80%
③惣菜は家族でできたての味が楽しめてよい⇒約55%
• 高齢者、30~40代女性を取り巻く環境の変化により、これら
の層のライフスタイルも変わったのではないかと考えられる。
新たな時代への見通しから
• 戦後日本の消費を支えた「団塊世代」が高齢者の仲間入り
⇒高齢者の巨大化
• 30代独身女性が市場の担い手になる可能性
⇒かつて、女性は30代になると結婚し、家庭に入ることが多
かったが、現代は女性の晩婚化が進み働き続けている。
⇒多くの未婚女性がコレ、というモデルのない人生を歩む事に
⇒新しいライフスタイルの発見、消費の潮流などが見られるか
も?
• ひそかな「贅沢」としての食の楽しみの広がり
⇒例:デパ地下の高級デザート
参考: 「これからの10年 団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!―マーケティング戦略
の狙い目はここだ!」 三浦 展 著 中経出版 2002
食事の目的
自己実現
交流
その他
食事
生命維持
参考:「外食産業の虚構と現実」 塩田長英 日本経済新聞社(1980)
食事の目的
①生命維持
⇒生命活動を維持するだけの栄養の補給
②交流
⇒職場・コミニュティ・親類関係・友人関係などの円滑化
⇒団らんの場として楽しいひとときを
③自己実現
⇒肉体的充足(ダイエット・健康食など)
⇒精神的充足(グルメ志向・本物志向)
④その他
⇒・・・何かあるかな?
態度形成に影響を与える諸要因
態度形成
内的要因(ライフスタイル要因)
⇒活動性・関心・意見など(AIO
アプローチ)
⇒VALSによる9つのカテゴリー
分類
⇒価値観アプローチ
デモグラフィック要因
⇒性別・年齢・居住地域など
例:女性だから立ち食いそばは
入りにくい
:昼下がりのサラリーマンなら
マックよりフレッシュネス・・・?
外的(デモグラフィック)要因
内的要因
出展:日本マーケティング研究所
(http://www.jmr-g.co.jp/proposal/177.html)から一部抜粋
コーホート分析について
• コーホート分析とは、観測される経時的な社会変化を、社会
成員全体に及ぶ時代の効果、どの成員にも共通に生起する
加齢の効果、および各コーホートに固有の効果の3つの要素
に分解して説明する分析。社会全体の大きな流れをつかむ
ために、社会学の分野において用いられる事が多い。
• コーホート(cohort) とは元々古代ローマ軍を指すもので、現
在は「世代」を表す言葉として用いられる。世代とは、同じ時
期に人生における重大な出来事を体験した人々のことで、必
ずしも同じ時期に生まれた事を意味するわけではない。修正
コーホート、結婚コーホート、就職コーホートのように重大な
出来事を頭につけて使われる。
「コーホート分析法」 藤田英典 朝倉書店より
• 人口統計学・生物学・発達心理学・社会学・政治学などがコーホートの概
念を導入。(コーホートという観点を最初に導入したのは人口統計学で死
亡率・出生率の変動などを見るのに用いられたのが最初と見られる。
⇒加齢による死・戦争や疫病の流行などによる死以外の要因だけで説明で
きない要因の発見(コーホート効果))
• 1940年ごろまでは「世代」という言葉が用いられてきたが、多義性や曖昧
さが指摘されるようになり、次第に「コーホート」と呼ばれるようになった。
• 人口統計学や発達心理学においては年齢変化に対する関心が強く、発
達心理学においては時代変化は変数として扱わない。
=識別問題が起こらない。
⇔年齢変化よりも社会的変化に注目したのが社会学(田中重人,1996、
Blau, Peter ,M1967など)であり、その後Evanが世論研究におけるコー
ホート分析の有用性を例示した(1950)。
コーホート分析の比較(MICとNBC)
標準コーホート表
1970年 1980年 1990年 2000年
20~29歳
5
6
7
8
30~39歳
4
5
6
7
40~49歳
3
4
5
6
50~59歳
2
3
4
5
60歳以上
1
2
3
4
「食料消費のコウホート分析 : 年齢・世代・時代」 森宏 専修大学出版局より
文献レビュー
②内野の研究「主食パターン転換構造のメカニズムに関する
コーホート分析」(年度不詳)
• 米・パン・麺といった主食の割合が時代とともにどのように変
化したかを分析
⇒コーホート分析における転換構造のメカニズムに注目。
(例:1980年:米が主食の人⇒45人
1985年:米が主食の人⇒23人
単純に22人の減少ではなく、減少30人、増加8かもしれないし、
減少50人、増加28人かもしれない)
⇒肝心の3効果の分解がなされていない
APCモデル
調査年度tにおける年齢層iの一人当たりの消費量をμとすると、
A
P
C
it
i
t
k
ti
         ・・・(1)
i  1,2,, I ; t  1,2,, T ; k  1,2,, K
μは各データから総平均μを引いた平均偏差データで、その個数はn×i
個存在する
A,P,Cはそれぞれのカテゴリー水準に該当した条件下でデータが観測
される事を仮定している
⇒パラメータの自由度は
m  I T C 3
なお、NBCモデルではパラメータを一意に定めるために以下の制約を
置いている

A
i
  t    k  0 ・・・(2)
P
C
以下「食料消費のコウホート分析 : 年齢・世代・時代」 森宏 専修大学出版局より
識別問題
• コーホート表において、I,t,kのいずれか2つが定まれば残り
の一つは自動的に確定する(一次従属、ランク落ちという)
例:年齢と時代がわかれば世代がわかる(下式参照)
:世代と時代がわかれば年齢がわかる
k  t  i  I ・・・(3)
• (1),(2)式のコーホートモデルはAPCの3要素モデルのよう
に見えるが、実際にはそれぞれの要素が混在している
⇒3要素モデルとして解を求めようとして(1)を解こうとしても解
が求まらない(どの効果がデータに強く効いているのかが明
らかにならない)
⇒コーホート分析の識別問題(Blalok(1966,1967))という
識別問題
年 度
年齢
1940
1950
1960
1970
20~29
60
50
40
30
30~39
62
52
42
32
40~49
66
56
46
36
50~59
72
62
52
42
60~69
80
70
60
50
識別問題⇒基本的な3つの効果が残りの2つの効果に混交されてしまってい
る(Uslaner,例:1950年におけるコーホート効果には年齢効果・時代効果が
含まれ、1970年における時代効果には年齢効果とコーホート効果が含まれ
てしまう)。
「コーホート分析法」 藤田英典 朝倉書店より
例:年齢変化における政治的関心
ある時期において(コーホート表を縦に見たとき)高年齢ほど政
治的関心が高い
⇒加齢によって政治に関心を持ち始めた
⇒特殊な発達経験(コーホート環境)を積んだゆえに関心を持っ
た
ある期間における(コーホート表を横に見たとき)政治的関心が
高まった
⇒社会全体の変化として政治的関心が高まった
⇒加齢・ライフスタイルの変化による関心の高まりなどが考えら
れる
⇒ある値は2つの効果の組み合わせとして与えられ、厳密に3
効果を分解する事は不可能だった(ベイズ型の登場まで)
識別問題への対応とその批判
①3要素ではなく、2要素モデルとして解く(Attanasio,1992)
⇒3要素から2つを選ぶ方法に恣意的な点が批判されている
②特定のパラメータを定数と仮定して推定すべきパラメータを
減らす
⇒定数とする仮定になんの根拠もない
③A,P,Cのいずれかをカテゴリーではなく量的変数とみて質量
混合の共分散分析で解く(量的変数については基準変数と
の直線関係を仮定することになる・・・(?))
⇒量的要因と基準変数の間に本来存在していたかもしれない
非線型的な関係が同定できなくなる。
識別問題への対応(NBCモデル)
•
隣り合うパラメータは漸進的に変化するという条件を取り込んだ
I 1
1
 A2
 (
i 1
A
i
 i 1 ) 
1
A 2
 P2
P 1
 (
p 1
P
t
 t 1 ) 
P 2
1
C2
K 1
 (
k 1
C
k
  k 1 ) 2  min ・・・(4)
C
(σは3要素の分散を定めるハイパーパラメータとして事前に指定する)
•
NBCではm次のパラメータの事前分布を正規分布の密度関数πを用いて表す
 (*  A ,  P ,  C ) ・・・(5)
2
•
•
2
2
各パラメータの値に差がなくなるほどβはm次元正規分布の中心に近づくので、πが
大きくなる。よって、(4)の最小化は(5)の最大化ということになる
NBCの最適化は(5)に観測データの尤度をかけた事後密度の最大化によって行う
f (  ( ))・  (*  A ,  P ,  C )  max ・・・(6)
2
2
2
NBCモデルのアルゴリズム
①・・・ハイパーパラメータの総組み合わせから1つを
選ぶ
②・・・βに初期値を与える
③・・・観測地μのもとで(6)式の事後密度が大きくなる
ようにNewton-Raphson法でβを収束させる
④・・・①にもどる
⑤・・・各ハイパーパラメータごとに赤池(1980)の
ABICを評価してABICが最小のβを選択する
文献レビュー
③内野の研究2「人口移動の食行動への影響」(年度不詳)
• 高度経済成長における人口の都市への移動と食行動の変
化を大都市移動層・非大都市移動層・定着層ごとの違いを
分析
⇒都市への移動を経験したものの方が非大都市への移動層よ
り、また非移動層よりも3食米飯パターンの離脱が多かった。
• ベイズ型コーホート分析を用いた3効果の分解
⇒人口移動における食行動には時代効果が最も強い事を発見。
⇒年齢効果はほとんどないことも発見。
• その他データを様々な視点から見た食行動の変化を掲載
参考文献・資料
論文
• 「果物消費の停滞と年齢要因」森宏、 稲葉敏夫 (1996)
• 「各種食肉消費と年齢」 森宏 (1997)
• 「人口移動の食行動への影響」 内野澄子
• 「主食パターン転換構造のメカニズムに関するコーホート分析」内野澄子
• 「職業構造と女性の労働市場定着性──結婚・出産退職傾向のコーホート分析」
田中重人,1996
参考文献・資料
書籍
• 「21世紀に向かっての外食ビジョン」 土井利雄 (株)外食産業新聞社
• 「外食産業21世紀戦略」 島田陽介 柴田書店
• 「日本の食文化と外食産業」(財)外食産業総合調査研究センター
• 「外食産業の競争戦略」 浅井慶三郎 (株)ビジネス社
• 「フードサービス10の戦略」 茂木信太郎 編著 商業界
• 「外食企業、給食企業、惣菜企業の発展要因の変化と対応」 外食産業総合調査研究セ
ンター編集 1992
• 「大都市圏公害の外食産業:藤沢市の外食産業と消費者の調査分析」 外食産業総合調
査研究センター
• 「『たべものや』と『くらし』:第三世界の外食産業」 岩崎輝行 アジア経済研究所
• 「外食関連企業の経営動向」 農業総合研究所 1983
• 「外食産業・成長期の中のニューモデル戦略」 茂木信太郎編 日本能率協会
• 「外食産業の虚構と現実」 塩田長英著 日本経済新聞社 1980
• 「外食産業の知識」 原勉 稲垣勉著 日本経済新聞社(日経文庫) 1980
• 「外食産業論:外食産業の競争と成長」 岩渕道生 農林統計協会 1996
• 「現代の外食産業」 茂木信太郎著 日本経済新聞社 1993
• 「フードシステムの経済学」 時子山 ひろみ 医歯薬出版 (2001)
参考文献・資料
書籍
• 「コーホート分析法」N.D・グレン著 藤田英典訳 朝倉書店
• 「食料消費のコウホート分析 : 年齢・世代・時代」 森宏 専修大学出版局
• 「マンハイム全集3 『社会学の課題』」 マンハイム著 石川康子ほか訳 潮出版
社 1976
• 「これからの10年 団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!―マーケティング戦
略の狙い目はここだ!」 三浦 展 著 中経出版 2002
• 「消費行動の心理学」 飽戸弘 福村出版 1994
• 「ライフコースの心理学」 齋藤耕二・本田時雄 編著 金子書房 2001
• 「「ゆとり」時代のライフスタイル」飽戸弘 松田義幸編 日本経済新聞社 1989
• 「消費文化論 新しいライフスタイルからの発想」 飽戸弘著 中央経済社 1985
• 「複雑さに挑む社会心理学 適応エージェントとしての人間」亀田達也 村田光二
著 有斐閣アルマ 2000
• 「新しい消費者行動」 清水 聰著 千倉書房 1999
HP
• 社団法人日本フードサービス協会(http://www.jfnet.or.jp/data.htm)
• E-yasai.com(http://www.e-yasai.com)
• foodbiz-net.com(http://www.foodbiz-net.com/)
• 外食総研(http://www.gaishokusoken.jp/index.htm)