医用工学 地域資源管理科学専攻 A0702002 加藤雅史 はじめに ・近年,医療機関での検査,診断,治療の多面にわ たって工学が密接に関係し,医療の発展に大きく貢献 している. ・最も身近な電子体温計から高度医療分野でのMRIや 人工心肺の例を見ても,広い分野で工学と医学は深く 関わり合っている. 電子体温計 体温を計測するために用いる MRI(Magnetic Resonance Imaging system) 磁場と電波を用いて体内などの画像を撮 影する装置 人工心肺 心臓及び肺の働きを代用しつつ、全身の血 液循環を保つ機械 医用工学とは 医用工学(medical engineering)は,医療に工学的な理論 や技術手法を導入することにより科学化を図ろうとするもの. 検査機器や人工臓器,生命維持管理装置などさまざまな医 療機器(ME機器)の研究開発が 行われている 医学の研究,そして,病気の早期発見,正確な診断,より正 確な治療,より明確な治療後の状態の判定,リハビリテー ションに活用されている ・最近では,各種画像計測診断,患者監視システム,看護支援システム, 電子カルテ,遠隔医療のための医療情報通信システムなどコン ピュー タの使用が不可欠となり,ますます工学の役割が重要になってきている 医用工学の位置づけ ・医用工学は医療に役立つべく一方的に医学に貢献しているのではなく, 医学と工学の境界領域に位置する学問 ・医用工学は工学の立場からは生体を理論的に理解し,医学の立場から は生体を客観的に眺めることによって両者を融合することで成り立っている 医学と工学それぞれの学問分野に立脚し生体を介して結合する学問 生体 理論的 客観的 考察 観察 工学 医学 医用 工学 一方で・・・ 生体のもっているすぐれた機能やシステムを工学に反映させるな ど,医学や生物学の概念や知識を工学に導入し応用を図る領域 を生体工学(biological engineering)と呼ぶ. ※例えば,ニューラルネットワークの研究など そして,この生体工学と医用工学は不可分の関係にある. 生体工学 + 医用工学 医用生体工学 医用工学部・科 近年のめざましい医療の進歩を支えているのは,MRIや超音波診断装置 などの医療機器,また,人体に無害な超薄膜や人工骨などで使われる医 用素材の発展である.しかしこうした医療機器や素材が高度化・専門化す るほど,これらを開発し,使いこなすことのできる人材,つまり医学的な視 点に立ち、工学技術を駆使できる高度専門職が求められている.これまで のように,工学技術に臨床医や看護師が対応するのはすでに限界に来て いる. よって,これからの医療現場で大きな役割を担う,医療分野に特 化した専門技術者や研究者を育成している. すでにアメリカでは,医用工学のエンジニアが臨床チームの一員として参 加する医療施設は少なくない. ME機器の安全対策 医療の分野でも,当然患者に対する安全性の確保に努力を続け ており,ME機器もさまざまな面から安全対策が検討されている 機器自体が安全性の高いものでなくてはならないのは当然で,そ れに加えて,機器を操作するのは人間であるから,人間も一つの 要素に含めた安全対策も必要. 人間工学的な配慮を加えた安全対策 機器の人間工学的安全対策 人間は必ずミスを起こしてしまう.よって機器の設計を行うにあ たっては,人間の特性を考慮し人為的過誤(ヒューマンエラー)の 発生要因を除去する対策を行う 機器の人間工学的安全対策 (a) 異常を引き起こさない機器の構造・構成 (b) 人間工学的な配慮・設計 ①本質的に異常の生じない構造・構成 ①人間の特性に合ったインターフェース ②異常状態またはその兆候の検知・検出 ②配置,位置の標準化(つまみやコネクタ) ③異常状態を悪化させる条件の除去 ③操作手順の適正化と標準化 ④異常状態の結果生ずる危険の最小化 ④コーディングの採用(形・色などの統一) ⑤異常状態拡大の防止 ⑤操作方向と機能変化方向の一致 ⑥正常状態に戻す機能 ⑥変化速度の適正化 ⑦異常状態の表示 ⑦情報を整理して表示 ⑧異常状態の防止 人に優しい機器 機器を操作する人にとって,人間工学的な配慮と設計がなされている機 器が操作者にとって優しい機器(使いやすい)といえる + 患者に対しても優しい機器でなくてはならない 患者に恐怖心を与える検査機器や治療器ではいけない!! 平常心で治療を受けられてこそ患者への負担を軽減し,かつ患者の生体 情報を正確に把握することができる 小児/成人用人工呼吸器 Servo s ●12型のカラー液晶の大きくて見やすい 波形ディスプレイ搭載 ●タッチスクリーンとダイレクトアクセスノブ で素早く確実な設定が可能 ●アラーム状態も分かり易く日本語で表示、 危険度に応じた色別表示 ●24時間分の患者データトレンド機能を搭 載 ●アラーム履歴,操作履歴ログのリスト表 示機能を搭載 汎用型フルデジタル白黒超音波診断装置 Sarano ●高い操作性=操作する手にフィットしやすく、か つ周辺のキー操作がしやすい形状のパームフィッ トトラックボールを採用し,その周辺に使用頻度の 高いキーを配置している.トラックボールもキーも バックライトで光り、機能のON/OFFを関連キー の色分けにより分かりやすくしている.人間工学に 基づいた使いやすい操作盤である ●コンパクトで小回りの効くデザイン=場所をとら ないコンパクト,スマートな形状で,ハンドルを片手 で引き寄せできる安定した本体バランスと,4つの キャスターがスムーズに旋回する小回りの効く設 計により,使用する際に即時に引き寄せて使用で きる FUJINON社の電子内視鏡 ●高画質内視鏡が病巣の早期発見に威力を発揮 ●人間工学に基づいた設計から、優れた操作性の ニューグリップが誕生 ●従来タイプに比べ約20%の軽量化と,-10m mのスリム化,更に新開発のアングルワイヤー巻 取機構の採用により,操作トルクを約20%軽減し た ●手の小さな方でもアングル操作ノブにしっかり指 がかかり,これまで以上のフィット感と抜群の操作 性を発揮 心臓運動負荷モニタリングシステム マルチエクササイズテストシステム ML-3600 ●センター装置1台で最高8人の運動時の 心電図,血圧,脈波などの情報を同時に測 定モニタリング ●オペレーションが快適な誤操作が少ない 人間工学設計の新ワンウェイ操作キーパ ネル ●負荷装置は,シニア層にもやさしい医療 用トレッドミルや各種自転車エルゴメータが 使用可能 全身用臨床PETシステム Eminence-G ●円をモチーフに「優しさ」を表現する曲面 をふんだんに取り入れた,柔らかく親しみに あふれたデザイン.スイッチ類は円を基本 として、動作が解りやすい人間工学に基づ いてレイアウト ● ベッドポジションや収集状況を表示する モニターには,高輝度大型カラー液晶モニ ターを採用して視認性を向上させている. 表示する文字も比較的大きくしてあり,遠く からでも収集状況が一目でわかるように なっている ●患者ベッドは39cmまで下がるので,高齢 者や子供の患者でも楽に乗り降りできる 自己検査用グルコース測定器 「アキュチェックアビバ」 ●信頼性の高いデータを得られるのはもち ろんのこと,滑りにくいラバーグリップを本 体に採用し,手にフィットする人間工学に基 づいたデザインにより,卓上に置いて片手 で操作することも可能 ●目の不自由な患者さまにも使いやすいよ うに試験紙のサイズも太く大きくしたことで, ユーザー層を広げた ●財団法人日本産業デザイン振興会主催 の「2006年度グッドデザイン賞」を受賞 ファイザー社の成長ホルモン注射器 成長ホルモンの投与が必要な子供たちが 自分で使うための注射器はサインペンのよ うな形になっており,針の部分が隠れてい るので注射器といわれなければわからない. 「いかにも注射器,という形だったら学校や 友達のいる場所では使いにくいですよね. これなら注射を打つ時,子供たち自身も針 を見なくてすみますし,針をカバーする部分 が痛みをやわらげる効果もあるんです」色 やイラストのパターンもさまざまで,ストラッ プも付けられる,まさに子供が喜びそうなデ ザイン.
© Copyright 2024 ExpyDoc