“Classical Be Stars” J. M. Porter & T. Rivinius, PASP, 2003, 115, 1153 夏の学校ゼミ 05/15/07 森谷 友由希 概要 古典的B型輝線星は、光球からのスペクト ルに輝線が1度でも確認されたことのあるB 型の主系列星のことである。輝線は光球赤 道面付近周りにある光学的に薄いdiscに起 因すると考えられている。1866年に発見さ れて以来Be星について様々な議論が発展 してきたが、未だに解明されていない部分も 多い。Be星について理解するには恒星物理 学の様々な分野に絡んだ議論が必要となる。 この論文ではBe星に関して現段階までに発 展してきた事をレビューする。 内容 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. Introduction 光球について Be星の短時間変動について decretion disc disc 形成機構 連星系におけるBe星 Conclusion 1. Introduction:定義と観測的特徴 “古典的”Be星:『Balmer線が過去に1度で も輝線として観測されたことのある超巨星で はないB型星』 Hα Herbig Ae/Be、Algol星 は除く 上図:B型星のスペクトル 右図:B型輝線星のスペクトル 1. Introduction:定義と観測的特徴 光球の吸収線はB型星としてnormal discの輝線はdouble peakを示すものが多 い ⇒V/R比変動を示すものも・・・ 偏光 Star disc 1. Introduction:研究意義 Be星は超高速で自転している。(赤道面 で遠心力~重力) ・・・角運動量を得る??(Heger et al. 1998) ⇒高速回転により誘発される不安定性 星震学への可能性(§3.1)や磁場 decretion disc ・・・非対称恒星風により形成?? 1. Introduction:先行研究 Struve (1931):Be星は高速回転→赤道面に 質量放出をしてdiscを形成すると示唆。 しかし、その後の研究で高速回転が即質量 放出に繋がらないのではないかということに。 ⇒非球対称の恒星風が原因なのかも?? disc形成メカニズムは謎のまま。 分かっているのはBe星が高速で自転してい るということと、赤道面にdiscがあるということ。 また、そのdiscはいわゆる『降着円盤』とは関 係が無いということ。 2. 光球について Be星現象(Be星の様にBalmer線が輝線とし て現れる現象)を示すのはlate O~early B型 の星。(B1e~B2eに最も集中している) Be星現象は進化のどの段階で 現れるのか。 主系列星として後半の時期にあ る傾向(Fabregat et al. 2000) 系内のBe星はどの光度階級に も存在(V~III) ・・・結論を出すには更なる研究が 必要 Be星の分光型分布(Negueruela 1998) 2. 光球について:自転 自転は重要。→星回りのガス(decretion disc)を形成するのに寄与している筈。 (例:Struve 1931) 吸収線の広がりから見積もられる自転 速度はVsiniになるが、臨界値(赤道で重 力と遠心力が釣合うときの速さ)の70~ 80%と考えられる。(下限値:重力減光の 可能性から) 3. 短時間変動 古典的Be星のdecretion discに起因する輝 線は長期的変動(≧yr)を行う。 定義『過去に”一度でも”・・・・・・』 輝線のdouble peak profile変動 輝線 ⇔ 吸収線 変動 etc 短期的変動(min ~ dy)を示すBe星も存在す る。(disc形成機構に関係があるのかも??) 観測手法の向上から、短期的変動を観測しよ う、という動きがますます活発になってる・・・ 3. 短時間変動:pulsation Baade (1982):時間スケールが0.5~2dyの 線輪郭変動(LPV)は非動径振動(NRP)による のではないかと提案。 Balona (1990,1995):この時間スケールは星 の自転から説明し、LPVは星のspotsや一緒 に回転しているガスによると提唱。 どちらの仮説の立場からも、測光観測の multi-periodicityはNRPによるのではないか と考えている。しかし、星に複数の振動数を 起こさせるような物理的な要素があるかを示 せていない。 3. 短時間変動:pulsation Rivinius et al. (1998):μCenの観測から multi‐mode pulsationはdecretion disc質量輸 送の引き金になっていることを示唆。(但し、殆ど のBe星では見られない可能性大) activity Maintz et al. (2003):NRP の数値計算(μCen)。ある振 動モード(l=m=+2)でLPVが 説明できるとした。 80%のBe星がこの振動モー ドに当てはまるのではないか。 pulsation 3. 短時間変動:回転の効果 回転の効果:光球にstarspots(回りより温度 の低い領域)が形成される。 ⇒でも、観測から期待されるスペクトル変動を示す ためにはspotsは大き過ぎ、低温過ぎた。 回転の効果はdecretion discに起因するので はないかという考えに移行しつつ・・・ もしかして磁場の効果もあるの??(磁場の 存在を確認されたBe星はごく僅かだが・・・) 4.decretion disc:幾何的配置 Be星周りのガスは球対称に分布しているわ けではない。→decretion disc 偏光の観測が貢献 discは赤道面から5° ~20°に広がっている。 光球からの距離(discの 半径)によって角が変化 するBe星も(外ほど広 がっている)。 偏光方向は赤道面に直 交。 Hα線の強度分布 4.decretion disc:密度・温度構造 赤外超過(IR域の光度が高い)はdiscでのfreefree / free-bound輝線と解釈される。 discの半径と密度については”power-law”則: (ρ=r -n)が経験的に、また理論計算からも得ら れている。(但しモデルは”steady”としている) 赤外のデータから2 < n < 4位ではないか(厳 密な値はモデルによるが・・・) 温度構造は赤外超過からは検証され難いが 恐らく一様。(光球の半分程度?) 4.decretion disc:Kinematics 輝線(や吸収線)のprofileはdiscの速度場を 考える上で重要。 profileのモデル化にはdiscの密度分布や kinematicsが必要となる。 1. outflowを無視できるケプラー円盤 2. 角運動量保存、密度の濃い風のある構造 ケプラー円盤の方が有力 1 2 4.decretion disc:discの変動 double peakの輝線でV/R比(blue側とred側の peakの強度比)が周期変動する。(周期:数~ 数十年) V/R比振動はOkazaki (1991)が提唱したonearmed振動で説明ができそう。 速度分布のケプラー回転からのず れ(密度揺らぎ)が1本腕の摂動と して伝播。この機構が正しいなら、 outflowより回転速度のほうが高 い(discにあるガスは数回回転し ていないといけないから)。 disc Star 4.decretion disc:discの変動 Be星のemission-lineとshell-lineの違いは傾 斜角の違いで説明できるが同じ星で2種類の profile間変動をする星がある。 Hummel (1998):星の赤道面disc軌道面がずれ たことによる!? Porter (1998):discのwarpingによる。 輝線が見えなくなりnormal B型星のスペクトル 線に変化することもある(再び輝線を示したり)。 ・・・その機構には謎な部分が多い。 5.disc形成:光球の質量放出 disc形成一番の謎:discへの角運動量の供給。 Be星からガスが出す機構(どちらも可能性): 輻射型恒星風でガスが加速される:終端速度は~ 1000km/s 光球のpulsationによって表面重力が変化しガス が出る(または出やすくなる) 5.disc形成:wind-compressed (WCD) Bjorkman et al. (1993):自転速度の高い星 からの恒星風は球対称から赤道面方向にず れる→流線は赤道面に達するのでは?! 両半球からの流線が合流 disc するところでは衝撃波が形 成され、高密度部分を作り shock & disc 出しdiscとなるのではない か。 赤外超過を再現できない。重力 減光などの効果を考えると恒星 風は極方向成分の方が高いの ではないか?! mass eject 5.disc形成:magnetically WCD (MWCD) WCDに磁場の効果を取り入れる。 恒星風に影響する為に必要 な磁場 ≾ 数100G Zeeman効果で観測できるに はギリギリ・・・ 流線が磁場に沿って曲げら れ、赤道面で合流→WCDに。 shock & disc disc magnetic field 本当にこんな磁場が存在出来 得るのか?! mass eject 5.disc形成:viscous accretion discの様に粘性の効果を考える。 (但しdisc内の角運動量のやり取りは考えな い。) 赤道面辺りのガスがケプ disc ラー速度を超え、角運動量 を受け続けたらdiscが出来 る。 ケプラー回転円盤が出来る。 構造が観測と合いそう。 有力。でも、角運動量はどう やって供給されるのか?? mass eject 6.連星系におけるBe星 連星系にあるBe星を観測することからBe星の 物理にアプローチする: 伴星がはっきり決まっているような系から観測的 な制限が付けられるかも。(⇒特にBe/X線連星) 伴星からの潮汐力でBe星からの質量輸送、disc 形成が促されるかも。 近接連星系(軌道周期≦年)や離心率の高い系 Be/X線連星のX線アウトバースト 連星系との相互作用でBe星が高速回転するよう になったのかも。 両星間の距離が小さいと角運動量のやり取りでspinup?Be星現象が連星系と関係あるのか。 7.まとめ Be星のdecretion discはほぼケプラー回転し ている。またdisc形成は粘性の効果を考える 必要がある。 Be星現象を示すのは早期B型のみ:質量放 出過程の違いを示唆する可能性。 Be星がどの進化段階にあるのか、何故自転 速度が高いのか、磁場は存在するのか、また 起源は何か、質量及び角運動量の移送はど う行われるかについてはまだまだ解明されて いない。
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