審査区分決定までのフローチャート 迅速審査が可能な範囲とは? 日本QA研究会GCP部会 2003/9/12 【審査区分決定までのフローチャート】 作成の経緯 迅速審査は、本来簡略審査を意味するが、迅速という言葉が使われているため に、緊急性の高い審査の意味に誤解されることがある。 また、迅速審査の対象とされる軽微な変更の範囲が明らかにされていないこと から、医療機関及び治験依頼者の間で様々な解釈が行われている。 結果として一部ではあるがGCPに沿ったIRB審査が行われないこともあり、規制 当局によるGCP適合性調査でもしばしば問題にされている。 IRBの運用は、基本的には医療機関が定める事項であるが、GCP省令ではGCP を遵守するため、治験依頼者に治験の管理に関する基準を定めている。 そこで、GCP遵守の観点から、IRBについても関係者の間で可能な限り同じ解釈 が行われるよう、日本QA研究会では進行中の治験における審査の必要性、及び 審査が必要とされた場合の手順を示したフローチャートを作成した。 このフローチャートには基本的な考え方のみを示したため、やや具体性に欠ける 面もあるが、補足説明を末尾に加えたので参考としていただきたい。 2003年9月 日本QA研究会GCP部会 【審査区分決定までのフローチャート】 I R Bで承認された進行中の治験に係る変更・追加情報の取扱い 審査を必要とする事項であるか Yes No (審査対象 外) (審査対象) 治験継続の可否の判定に影響を及ぼす内容か (グレーゾーンはすべて Yes へ) (緊急性の高い事 項) Yes ※4 緊急召集 (軽微な変 更) No ※2 ※3 定期開催 委員会審査 報告 IR B 迅速審査 ※1 報告事項 (IRB事務局) フローチャートの補足説明 ※1 報告事項 治験依頼者の組織名変更のように、治験の適切な実施には何ら影響を及ぼさず、IRB 審査の必要ない案件もある。そこでまず、適切な治験を実施するために「審査を必要と する事項であるか」否かを判断し、審査が必要なものとそれ以外のIRB事務局報告事項 に分ける。報告後の処理は医療機関の実態に合わせて定めて構わない。 ※2 迅速審査 被験者のリスクの上昇やベネフィットの低下などの倫理的観点、及び治験の適切な実施 が可能かどうかの科学的観点から「治験継続の可否の判定に影響を及ぼす内容か」を 判断し、影響のないものを「軽微な変更」と見なす。但し、迅速審査を行う範囲をSOPに 具体的に規定しておくことが重要である。なお迅速審査後のIRB報告についてはGCPに 規定はないが、当然報告は必要であろう。 ※3 委員会審査(定期開催) 審査対象のうち「軽微な変更」以外はすべて委員会審査が必要である。すべてを委員会 で審議するから迅速審査は不要との考えもあるが、迅速審査を有効に活用すれば重要 案件の審議により多くの時間を割くことができるメリットもあると考えられる。 ※4 委員会審査(緊急召集) 被験者の不利益を避けるため緊急に委員会を召集することも必要である。その際、成立 要件に満たない可能性のある医療機関では、GCPを逸脱しない範囲で緊急時の手順を 定めておくことが望ましい。しかし根本的な解決のためには、メンバー構成や成立要件、 開催形態などの見直しによる “柔軟に対応できる体制づくり”が必要である。
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