第37回応用物理学会北海道支部第7回レーザー学会東北

平成13年度 電気システム工学講座 卒業研究発表会 平成14年2月26日 11:15~11:30
コロナ放電によるベンゼン分解に関する研究
電気システム工学講座
気体エレクトロニクス研究室
吉澤 宣幸
電気電子工学科 4年 1024187
目次 1.
2.
3.
4.
背景と目的
装置構成および条件
実験結果
結論
背景
工場・自動車の排気ガス
有害物質による環境汚染
ベンゼン
発ガン性・催奇形性
免疫障害・白血病
NOX,SOX,ベンゼン , etc.
分解・除去などの対策が必要
放電によるベンゼン分解
装置の小型化・省エネルギー
分解の高速化・資源の回収
ベンゼンの放電分解過程に関する報告(McCorkle[1], Satoh[2])
ベンゼンは低気圧直流グロー放電によって分解される
課題
実用性を考えると大気圧下での分解が必要である
大気圧下ではグロー放電を容易に発生できない
[1] Dennis L McCorkle et al., J. Phys. D: Appl. Phys. Vol. 32, pp.46-54 (1999)
[2] K.Satoh et al., Proceedings of XXVth ICPIG, vol.4, pp.103-4 (2001)
目的
大気圧下の代表的な放電
コロナ放電
誘電体バリア放電
パックドベット放電
沿面放電
パルスコロナ放電
放電回路・電極構成
が簡単
針対平板でのコロナ放電に着目
大気圧下での、直流コロナ放電による
ベンゼンの分解特性を明らかにする
放電電流と放電形状の調査
ベンゼンの分解率(ガス検知管)
実験装置
放電チェンバー (ステンレス製)  平板電極(ステンレス製)
マクセレック(株)製 LS40-10R1
直径:f80mm
厚さ:10mm
グランド側
内径:f197mm
高さ:300mm
Vmax±40kV, Imax±10mA
DC Power
Supply
針電極 (ステンレス製)
GASTEC
直径:f4mm
高圧側
GASTEC社製 NO.121
Capsule
Dial Gauge
測定範囲
Photonic
Multi-Channel
Analyzer
EDWARDS CG16K
フルスケールレンジ
精度
:1040mbar
:±2%
Baratron
Manometer
:1.33×104Pa
:1×10-5F.S.
:0.25%
N2
エア・ウォーター(株)製
純度:99.5%
純度:99.999%
波長測定範囲
波長分解能
波長精度
時間間隔
:200~950nm
:<2nm
:±0.75nm
:>1sec
ANELVA製 M-430HG-J
Diffusion
Pump
Rotary
Pump
O2
浜松ホトニクス(株)製 PMA-11
Ionization
Gauge
日本MKS(株)製 622A12TCE
フルスケールレンジ
分解能
精度
: 2.5~312ppm
C6H6
関東化学(株)製
純度:99%
測定圧力範囲
感度
精度
:1.3Pa~10-6Pa
:0.045Pa-1
:0.25%
島津製作所製 GC-14A
Gas
Chromatograph
C6H6+Air
C6H6 +N2+O2
カラム
COL温度
INJ温度
DET温度
:キャピラリカラム
:100℃
:150℃
:250℃
実験条件
電極 :針対平板電極(平板電極を接地)
ガス圧 :全圧
1013[hPa]
酸素分圧
200[hPa]
窒素分圧
813[hPa]
ベンゼン分圧 0.01~0.3[hPa]
大気を再現
針電極極性
電極間隔[cm]
放電電圧[kV]
ベンゼン濃度[ppm]
正極性
3
22.0
(放電電流 約100mA)
0、10、30、60、
120、300
19.4
300
負極性
2
(放電電流 約100mA)
放電形態は極性によって異なる
負極性 グローコロナ (安定した放電・電気集塵機で使用)
正極性
ストリーマコロナ
グローコロナ 電圧上昇
放電電流の時間変化と放電終了後の分解率
200
矢印の位置で火花放電に転移
正極性
95%
 放電電流は最初、時間と
ともに減少した後、上昇に
転じ、急激に上昇して後
終的に火花放電に至る
 ベンゼンの分解率は85%
以上となった
 ベンゼン濃度の増加に
伴って、火花放電に至る
までの時間が長くなって
いる
150
I [mA]
90%
100
0%
85%
0ppm
0ppm
10ppm
10ppm
30ppm
30ppm
60ppm
60ppm
120ppm
120ppm
Negative
94%
50
数値は分解率
負極性
0
0
20
40
60
80
time [min]
正極性では火花放電が発生するまで測定した
 ストリーマコロナ放電中でベンゼンが分解されている
 放電終了後時間が経過してもベンゼンが再合成されること
は無い
放電は安定しており電流は
ほとんど変化しない
ベンゼンは分解されなかった
放電形状の時間変化[60ppm]
電流の時間変化[60ppm]
30min 35min
20min
(d)
火花放電に至る
(a) 0min
(c)
(b)
(a)
0[min]
(d)
(c)
(b)
20[min]
30[min]
35[min]
放電領域の拡大
ストリーマを発生させる、
針電極の本数を増やす
ストリーマコロナの発生領域を拡大して、
分解速度の向上を目指す
けんざん型電極を用いての放電領域の拡大
針電極
60°
ステンレス製
直径:f4mm
土台
18mm
真鍮製
直径:f50mm
厚さ:3mm
針7本での実験結果
ベンゼン分圧
放電電圧
0,30,60,120,300[ppm]
24[kV]
放電電流の時間変化
500
0ppm
60ppm
30ppm
120ppm
60ppm
300ppm
120ppm
300ppm
I [mA]
400
68%
300
 針7本電極では、
ベンゼン濃度が
高い場合には
火花放電になら
ない
86%
86%
96%
200
100
矢印の位置で火花放電に転移
0
0
5
10
15
20
time[min]
25
30
35
放電形状の変化
60[ppm]
5[min]
30[ppm]
2[min]
火花放電に達する
30[min]
0[min]
時間の経過と伴に
発光が弱くなる
ストリーマが無くなり針先
にのみ発光がある
分解率の時間変化
ベンゼン分圧
放電電圧
60[ppm]
24[kV]
分解率の時間変化
500
100
96%
I [mA]
80
Decomposition rate
Electric current
300
60
200
40
100
20
0
Decomposition rate [%]
400
 放電開始後、短時
間でベンゼンの大
部分は分解される
 分解率の時間変化
は放電電流の時間
変化と相関がみら
れる
0
0
5
10
15
20
25
30
35
time[min]
放電形状の変化
60[ppm]
5[min]
30[ppm]
2[min]
火花放電に達する
30[min]
0[min]
時間の経過と伴に
発光が弱くなる
ストリーマが無くなり針先
にのみ発光がある
まとめ
針対平板間にコロナ放電を発生させベンゼンの分解を試みた
針1本対平板電極の場合
 正極性のストリーマコロナによりベンゼンは分解される
 負極性のグローコロナでは分解されない
 放電は最終的に火花放電となり、この時分解率は85%以上
となった
 火花放電に達するまでの時間は濃度の上昇と伴に長くなる
複数針対平板電極の場合
 ストリーマコロナの領域が広がるとベンゼンは早く分解される
 針7本で高濃度の場合、放電は安定する