卒業研究発表 B4 藤岡 峻 CeCoIn₅の薄膜作成 CeCoIn₅の性質 • 重い電子系超伝導体で、 Tc=2.3Kは発見された重い電 子系の中では最も高い. • 銅酸化物超伝導体と同様、異 方的なd波超伝導体であり、波 動関数の軌道部分の符号が 方向によってことなり、波動関 数が0となるノードが存在する。 Π接合 • 超伝導体間に零磁場で 位相差πがある接合の こと。対して位相差がな い接合を0接合と呼 ぶ。 • s波超伝導体とd波超 伝導体の接合には、方 向によりπ接合ができ る。 SQUID • ジョセフソン接合を2個含む 超伝導ループを指す。 • 外磁場φが与えられると、0 接合が二つなら、 φ+φ₀(θ₁-θ₂)/2π=n φ₀ ( φ₀は磁束量子) 外部から流せる電流は、 I = 2I₀|cos(πφ/ φ₀)| (I₀はジョセフソン臨界電流 密度) • 0接合とπ接合になる と、 φ+φ₀(θ₁-θ₂+π) /2π=n φ₀ I = 2I₀|cos(πφ/ φ₀+ π/2)| となり、外部から流せる 電流の外部磁場依存が φ₀/2ずれる。 • S波超伝導体どうしのコーナー接 合なら、接合はいずれも0接合な ので、零磁場において二つの接 合の位相差はなく、超伝導電流 は流れない。 • d波超伝導体とs波超伝導体の コーナー接合なら、接合は0接合 とπ接合になるので、零磁場にお いて超伝導電流が流れる。 薄膜によるπ接合 • d波超伝導体の薄膜にノーマルな金属とs波 超伝導体を重ねて、コーナー接合を作ること ができる。下図はランプエッヂ接合と言う。 薄膜作成 • るつぼに入れたCe,Co,In を700度~1400度で加熱 し、基盤(MgO,Al₂O₃)に蒸 着する。 • 加熱の際、Ceは融点近く で体積が急変するので、 加熱速度に注意する(1度 1分くらい)。 • Ce,Co,Inそれぞれの蒸着 温度は、膜厚計で時間を かけてレートを調節する。 解析 • X線による構造解析 • セムによる元素比分 析 • 4端子法による抵抗 の温度依存測定 薄膜の蒸着レート(基盤Al₂O₃) 日 サンプル 圧力[Pa] 基盤温度 [℃] 1/7 M004 2.9E-5 1/8 M005 1/10 Ce Co In 125.4 0.2 1 1/20 0.65 2 7.03 1.0E-5 130.9 1/15 1 1/45 0.94 0.75 5.19 M007 1.6E-5 300 0.1 1 0.1 2.09 0.9 5.54 1/11 M008 8.0E-6 300 1/15 1 1/45 0.96 0.75 6.32 1/18 M010 9.8E-6 300 0.1 1 1/30 0.29 1.1 8.86 1/20 M012 7.3E-6 300 0.1 1 1/10 2.79 0.5 4.67 1/21 M013 7.8E-6 300 0.1 1 1/20 1.8 0.6 6.5 1/28 M019 3.7E-6 300 0.1 1 1/27 1.22 0.6 5.39 薄膜の蒸着レート(基盤MgO) 日 サンプル 圧力[Pa] 基盤温度 [℃] Ce Co In 1/9 M006 1.6E-5 200 1/15 1 1/20 1.54 1.00 8.06 1/17 M009 8.6E-6 300 1/15 1 1/45 1.06 0.75 12 • • • Ce,Co,Inの上段は蒸着レート[Å/s]、下段は相対元素比(Ceが1)。 M019は面精度のよい(±0.1annel済)Al ₂O₃基盤を使用。 膜厚は1000Å。 • 以下、M019の拡大図を示す(5000倍、10000倍、18000 倍)。 薄膜拡大図(M014) M019のX線データ 5 10 4 Intensity 10 3 10 2 10 1 10 0 10 10 20 30 40 50 2 / 60 70 80 90 100 • 25°、52°、83°の10000以上の大きな ピークは基盤のもの。 • C軸のピークが、11.7°(001)、23.6°(002)、 35.7°(003)、48.2°(004)、61.5°(005)、 75.7°(006)、91.4°(007)付近にある。 • a軸のピークが19.2°(100)、39.0°(200)、 他に36.4°(112)のピークがある。 M019の抵抗測定 7 6 R[Ω] 5 4 3 2 1 50 100 150 T[K] 200 250 • 赤線は温度を下げる際、青線は上げる際のデータ 300 M019の抵抗測定(30K~120K) 6.10 R[Ω] 6.05 6.00 5.95 5.90 40 60 80 T[K] 100 M019の抵抗測定(3K以下) 3.0 R[Ω] 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 T[K] 2.4 2.6 2.8 • 100Kを下回ったあたりから、近藤効果のため に、温度が下がるにつれて抵抗がやや上 がっている。 • 超伝導転移温度付近の2.2Kくらいから急激 に抵抗が下がるが、1.4Kで0.5Ω程残ってい る。測定終了時に端子間の接触はなかった ので、超伝導の部分が途切れ途切れになっ ているなどの原因が考えられる。
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