私の国際経験から ~職業生活へのいくつかのヒント 総務省情報通信国際戦略局 参事官 山田真貴子 自己紹介 早稲田大学法学部 → 旧郵政省 → 総務省 初仕事は通信分野の日米摩擦 英語との出会い 海外生活は通算3年だけ LSE(London School of Economics)大学院留学 Brussels(ベルギー)での2年間の国際組織での勤務 最近の仕事 情報通信分野の利用者政策、世田谷区副区長、 総務省官房会計課長 プライベート 2 本日のお題 1 国際分野の仕事の現実~3つの経験から 2 楽しい国際交渉のために必要なもの(私見) 3 まとめとして 3 1 国際分野の仕事の現実~3つの経験から その1:日米通信摩擦<バイの経済交渉> 【背景と経緯】 1984年~85年を中心に(それ以前もそれ以降も断続 的に継続) NTT民営化法、電気通信事業法(電気通信事業への 民間参入)施行直前 優先4分野:通信機器、木材製品、エレクトロニクス、医 療機器・医薬品 確保すべき利益:日本市場における米国企業のマー ケットアクセスの確保 ←顕著な通信機器分野における日米貿易不均衡 4 (日米通信摩擦:続き) 日本国内のルールメイキングへのコミット(内外無差別、 簡素、透明、市場開放、消費者の利益) 課長級→次官級→閣僚級(大統領補佐官の来日) とレ ベルを上げて交渉の妥結を図る 【ポイント】 プレーヤーの利害への理解 産業界、政府部内(国務省、USTR、大統領府 etc)、 米国議会(法案、決議 等) 徹底した調査、徹底した議論(数え切れない回数の事務 レベル協議を重ねる) 交渉も人間関係が基本、理解し合わなければ妥結不可 マスコミの動き(特に外国メディア) 5 1 国際分野の仕事の現実~3つの経験から その2:インターネットガバナンス<マルチ> 【背景と経緯】 インターネットの管理(IPアドレス、ドメインネーム、ルー トサーバ)をICANN(米国加州の公益法人)が行う → 電話、電波の使用と異なり政府の影響力が限定的 → インターネットの爆発的普及でインターネットの影 響力が飛躍的に増大 → 各国政府の政策との調整が課題に 世界情報社会サミット(WSIS) ITUが主導して開催(2003年~2005年) 2003年 ジュネーブフェーズ(第一次)の議論 6 (インターネットガバナンス~続き) 「宣言」の取りまとめ→文言をめぐる交渉 インターネットガバナンスが争点化、WGで集中的な議論(先 進国 vs 新興国・途上国) 日本からも修文案の提示、取りまとめに貢献 【ポイント】 多数派工作:会議場の「外」が大切 説得力のある主張:論理的、明確な根拠に基づく、経緯 を踏まえる、否定し難いルールに則る 会議運営の手順の正当性も論破の手段になる 「この段階でこの提案をするのは手順違反ではないか?」 反対の主張の背景・利害への正確な理解とリスペクト(相手 も国益と組織を背負っている) 7 1 国際分野の仕事の現実~3つの経験から その3:ダボス会議 <政財官のリーダーのネットワーキング> 毎年1月にスイスのダボスで開催 ダボス:スイスのスキーリゾート 世界の政財官のトップリーダーが集まる オープンなシンポジウム、演説、セミナー →世界へのメッセージの発出(その1年をうらなう) クローズドな政財官のトップによるミーティング、会食等 →戦略の共有化とトップセールス 【ポイント】 知性、教養に裏付けられた人間性の勝負 「英語力」 8 2 楽しい国際交渉のために必要な要素(私見) 尊重し、尊重される関係性の構築 国際交渉のための必須の要素 ① 明るいユーモア=余裕 ② 客観的に物を見る力(他人の立場に立って物事を見る 力) ③ 明確な根拠に基づく主張 ・経緯、周辺状況の調査 ・統計(数字は強い、数字は使いよう) ・利害関係者からの随時の取材で根拠を補強 ④ 公平であること ・様々な主張への評価は公平に、相手の主張を正し いと認める勇気 9 2 楽しい国際交渉のために必要なもの(私見) (続き) ⑤ 相手をたたきのめさない 交渉全体で合格点なら良い、全勝しなくて良い ⑥ 自分のアイデンティティ(自国の文化等)に関する豊富 な知識・理解とプライド ⑦ 宗教を含め相手国の文化・歴史に対する一定の理解 ⑧ 英語力(語学力) 新参であればあるほど、語学力が十分でない程、早い 段階で発言すべき 沈黙は禁 10 3 まとめとして 「根回し」 ~論理的な説得 物事はインナーで決まる 会議の場で議論される時には(多くの場合)決まって いる 『決める人』の一員にならなければ面白くない ~「彼女が(彼が)言っているなら」 相手のためにも汗をかく 結局は人脈 貴方の力で(例えわずかであっても)社会を、世界を変 えよう 11
© Copyright 2025 ExpyDoc