米国ユタ州LDS病院胸部心臓外科フェローの経験

米国ユタ州LDS病院胸部心臓
外科フェローの経験
京都大学医学部心臓血管外科
島本健
私の経歴
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1970年生まれ、39歳
1995年 京都大学医学部卒業
1995-6年
京大病院 心臓血管外科
1996年-2001年 松江赤十字病院
2001-3年 米国ユタ州ソルトレークシティ LDS
病院 胸部心臓外科フェロー
• 2003-5年 三菱京都病院 心臓血管外科
• 2005年- 京都大学心臓血管外科 大学院
• 2009年- 倉敷中央病院 心臓血管外科
本日の話の骨子
• 準備
– 学生時代
– 医師となってから
• フェローとして働く(2年)
• 帰国後
学生自体に考えていたこと
• 留学したい!なんとなく格好がいい?
• 英語は苦手ではないけど、帰国子女でも
ない
• 留学先は英語圏、北米と決めていた
– 日本より豊かで進んだ医療を学びたい
– 日本でできないことを
– おそらくアメリカ?
学生時代から始めた留学準備
• USMLE受験対策
– 5年生のころから週2くらいでpretestの勉強会
• 日米医療主催のセミナーに出席
– 成功体験を聞いてmotivationをあげる
• なんといっても英語の勉強
英語
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字幕なしで外国映画を理解したい!
でもできない。。。
受験が終わった。。
だったら真剣にはなせる英語を勉強したい
話せなかったら、患者さんとだって英語で会話も
できないし、同僚とだって無理。向こうの医学生
は賢いし。。
• 日本語の話せない外国人留学生に真剣に自分
の得意な手術のことを教えてあげたいって思って
も無理でしょう。。。。だから必死で勉強!
具体的な勉強法
• やさしいビジネス英語のビニエットを毎日
暗誦。朝の教室でそれを復唱。
• アルクのヒアリングマラソン受講
• サイマルアカデミー(いまはもうないと思い
ます)の通訳者養成講座の受講
• TOEICやTOEFL
USMLE
• Step1を5回生のときに、Step2を6回生の国
家試験直前に受験。
– 合格、でも点数は合格最低点ぎりぎりくらい
• 外国人でsurgical residencyに入ろうとおも
うとほとんど満点くらいじゃないと無理とい
われていました。。。
なぜresidencyではなくてclinical
fellow?
• 正直、surgical residentから正式な
cardiothoracic surgeryのプログラムにはいっ
てアメリカの専門医になりたかったです。
• でもgreen cardもないし、USMLEの点数も低
いし、で現実的ではありませんでした。
医師になってから
• 母校の心臓血管外科に入局
• 心臓血管外科=症例数が命!
• どのくらい執刀させてもらえるのか、チャン
スがあるのか。。。
• 多くの経験を積むにはやはり留学か。。。
松江赤十字病院
• 医局の関連病院です。
• 年間の開心術が120例、平均よりは多いけど、すごく
多いわけではない。
• 予想とちがって。。。
• 日本での医局内での教育
– マンツーマン。でも上司も面子がかかっています。
• 病院での輸血事故、そして一年留学を延期
• 執刀症例数の激増
LDS病院
• ユタ州ソルトレークシティ
• モルモン教の中心地。
白人が多い。治安はよ
い。
• 年間1600例の開心術
• 移植および補助人工心
臓プログラムも活発
• 何よりレジデントやフェ
ローに執刀の機会が多
い。
日常スケジュール
• 朝6時からICU回診。退室指示などを書く
• 7時半から一例目が執刀開始。
• 一例目が終わったら、一緒にICUにあがって簡
単な指示を出す。
• 昼過ぎから2例目
• 運が悪いと(良いと?)3例目もあり。(でもアメリ
カ人レジデントは嫌がるので、上司は気を遣って
よく執刀させてくれた)
• 手術終了後病棟回診(でも大体昼間のうちにPA
が面倒を見てくれていた)
On call
• 3日に1回、誰かが体調を崩すと2日に1回
• 当直すると翌日は自分の好きな手術を選
べた(執刀させてくれそうなところ、あるい
は興味深い手術)
• 移植や補助人工心臓の手術もたいてい夜
中。
帰国のきっかけ
• LDS病院のプログラムは最長2年。
• 私の前任者のイラン人フェローが、いろん
な抜け道やルール違反をして病院に居
座っていたので、外国人がそれ以上長く病
院に居れる雰囲気はなかった。
• 独身で、外国人、疎外感。
• 教授から「もう帰って来い」と連絡。
• 両親も。。。
留学してよかったこと
• 圧倒的な症例数、執刀数
– 2年で420例の執刀症例
• アメリカの一流心臓血管外科医を至近距離で観
察できる
– 1億円プレーヤーばかり、でも生活は質素。だって使う
暇がないくらい忙しい。
• 英語でのコミュニケーション能力
• でも自分はやっぱり日本人の患者さんを診た
い!
Dr.Roger Millar
• 年250例を自分でほぼskin to skinで執刀す
る。
• 「どれだけうまくなっても、夜中に手術中に
へまをしでかして患者が死にそうになって
いる夢で3回くらい目がさめる」
• There is always a room for the top.
留学前にもっとしておいたら
よかったと(あとから)思ったこと
• 研究、論文実績
– 外国人だから、同じように英語をしゃべれないのは当
たり前。だったら何で自分の頭脳を証明するのか。一
流雑誌に掲載された論文。分厚いCV。大事です。
• (いまさらながら)英語
– 準備に十分すぎる準備というものはありません。
• 話題の引き出し
– 医学だけではない。政治経済、スポーツ、オペラ、ワイ
ン、昔の映画などなど。
• 家族
成功の秘訣って
• プロとして一芸を極めたいという情熱。
• 一緒に仕事をしていて、楽しいだろうなあ、
と受け入れ先の病院が感じてくれるような
豊かな話題、ウイット、人間性。
• 情熱と人間性を伝えるcommunication能力
⇒日本でもアメリカでも同じ!
フェローの体験が今に生きてい
ること
• アメリカのレベルは決してすべての部分で
高くない、とわかること。日本も負けていな
いこと。
• 負けないぞ、というmotivation
• 執刀経験
• 自分より若いDrに執刀させるノウハウや
工夫
• 教育
ご静聴ありがとうございました