「多角的貿易体制とアジア 地域統合」 「WTOと地域統合の関連と方向性 -経済学の視点から」 大阪大学 阿部顕三 WTO体制とドーハ・ラウンド WTOと多角的貿易交渉 GATT(関税と貿易に関する一般協定、1948~) ケネディー・ラウンド(64~67) 東京ラウンド(73~79) ウルグアイ・ラウンド(86~94) WTO(世界貿易機関、1995~) ドーハ開発アジェンダ(ドーハ・ラウンド、2001~) 2004年7月 枠組み合意 2006年7月 交渉「凍結」 日本のFTA(自由貿易協定) 日本のFTA 日本・シンガポール(2002年11月発効) 日本・メキシコ(2005年4月発効) 日本・マレーシア(2005年12月署名) 日本・フィリピン(2006年9月署名) 日本・タイ(2005年9月大筋合意) (交渉中:インドネシア、ASEAN全体、韓国、他) FTAとEPA(経済連携協定) 日本のFTA = EPA (投資ルールの整備、制度・政策の調和、人的交流、他 を含む。) WTOとFTA WTO交渉からFTA交渉へ *WTO交渉の複雑化 メンバーの増大 194の国・地域(途上国の増加) 交渉分野の拡大 市場アクセス(農業、NAMA、サービス) その他(開発、アンチダンピング等のルール、知的財産権、他) *FTA交渉の容易さ 交渉相手の数、国別のルールの設定 WTOにおけるFTA GATT第24条 GATS(サービスの貿易に関する一般協定)第5条 WTOによる自由化のメリット 最恵国待遇(MFN)=WTOの無差別原則 すべての相手国に同率の関税を適用(例外:特恵関税) =>常に効率の高い国からの輸入 =>関税引き下げによって経済厚生は上昇 A国 t=100円 800円 t=100円 B国 J国 750円 FTAによる「貿易転換効果」 「貿易転換効果」 FTAによる差別的な関税 =>非効率な国からの輸入の増大の可能性 =>域内の輸入国の経済厚生は低下 FTA t=0円 A国 800円 J国 t=100円 B国 750円 FTAによる「ゆがみ(Distortion)」 ゆがみ(Distortion)の助長 FTAの交渉 =>国別・産品別に交渉の容易な産品の自由化が行われ、 一部の農産品を中心として保護政策が残る可能性 =>「ゆがみ(Distortion)」の助長 => 自由化にもかかわらず経済厚生が低下 *ゆがみ(Distortion)とは 競争的市場によって効率的な資源配分が達成されるが、その 際に問題となるのは相対価格である。たとえば、農産品に対する 関税を残したまま、工業品の関税を引き下げると、関税引き下げ 前よりも相対的に農産品をより強く保護することになり、本来市場 によって達成される効率的な資源配分がゆがめられる。 原産地規則の問題 原産地規則(Rules of Origin) FTAの締結 =>国別に異なる関税を適用 =>原産地規則の必要性 生産が複数国にまたがる場合 「関税番号変更基準」 「付加価値基準」 「加工工程基準」 =>東アジアにおける原産地規則の適用の困難さ 垂直的な生産工程の分業の発展 偽装などに対するモニタリング 結論 東アジアでのFTAをさらに推し進めていくのであれば、各FTA の間でできる限り共通のルールを適用し、例外品目を少なく することによって、FTAのデメリットを除去すべきである。 しかし、可能ならば、関税の引き下げ等の自由化はWTO交 渉によって実現した方が望ましい。ドーハ・ラウンドの交渉 「凍結」が解除されるよう努力すべきである。また、EPAでは WTO交渉で取り扱うことが難しい分野に重点をおいて交渉 すべきである。
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