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スポーツの最適化
• 優勝決定可能性問題
• スポーツスケジュール問題
優勝決定可能性問題
・毎年、プロスポーツのシーズン終了間際になると、「○○
チームは5位確定」とか、「××チームは自力優勝の可能性
が消えた」とか言われます
・マジックとか、○位確定とか、自力優勝とか、降格ラインと
か、いろいろな言葉があります。
順位に関する用語
自力優勝:自分が残り試合全部勝てば、他のチームがどれ
だけがんばっても優勝できる ⇔ 自力優勝できる
マジック:自分以外の任意のチームに対して、そのチームが
残り試合全部勝っても、自分が t 試合勝てば優勝できる
⇔ マジックが t
確定:今後、残りの全ての試合の勝敗がどのようになっても
自分の順位が1通りに決まること
なんでいろいろ調べるの?
・今のチームの有利不利を正確に知りたい。いろいろな角度
から知りたい
(完全に分かるとつまらないんだけど)
・主観的な直感による評価では水掛け論になるので、数理的
な指標が欲しい
優勝(びり)の可能性
・「○○位確定」「自力優勝が消えた」は良く言われるけど、ほ
んとに優勝(あるいはびり)の可能性がなくなったかどうかを
知りたい
・組合せの問題なので、数理的に解が存在する
・組合せ最適化問題として定式化してみる
問題
・リーグ戦の途中の段階(いくつかの試合は結果がでた)で、
あるチーム x が優勝(あるいはビリ)する可能性は残されて
いるか (残りの試合結果の組合せを加えて、チーム x がトッ
プになるものはあるか)
・ x が残りの試合を全部勝つ(全部で最高の結果を出した場
合)のみを考えれば良い
・ 順位の評価はいろいろあるが、まずは勝った数としよう
問題を整理
・整理すると
入力:
- チーム x が関わらない、未消化の試合の組合せ
- チーム x の最大の勝ち数 z
出力:
- x 以外のチームの勝ち数がすべて z 以下になるような、
未消化試合の星取りはあるか
最小費用流問題で解く
・各試合(カード)は、どちらかのチームが勝つ
⇒ 各試合を、各チームに分配すると見なせる
・各カードをチームに運ぶ、輸送問題として定式化する
制約を考えると:
・各カードから荷物が1つ出る。行き先はそのカードの対戦
チームどちらか
・各チームが受け取る荷物は z を超えてはいけない
ネットワーク
1
1
1
1
1
1
1
1
残り
カード
Aチーム
z - (現在の
勝ち数)以下
Bチーム
z - (現在の
勝ち数)以下
Cチーム
Dチーム
・・・・・
輸送問題の実行可能解があるかどうか判定する問題
(輸送問題なので、解は整数)  線形計画で解ける
ビリ可能性判定問題
・あるチームが、ビリになる可能性は残っているか?
・ 優勝可能性問題を逆さまにして解けばよい
(全ての負けと勝ちを反転させる)
ビリから2番目の可能性判定問題
・あるチーム x が、ビリ、あるいはビリから2番目になる可能性は
残っているか?
(リーグの降格可能性を調べる)
- まず、 x がビリになれるか調べる
- (なれないとして)、次に他の各チーム y について、 y がビリで、
x がビリから2番目になる可能性があるかどうか調べる
・ y はx に残り全て勝つとしてよい (x はビリにはなれないから)
・ x, y 以外のチームはx, y に全て勝つとしてよい
⇒ x, y 以外のチームの勝ち数が全て x より大きくできるか
⇒ 同じ方法で解ける
順位が他の基準の場合
・同様にして解ける場合
-勝ち点制度で、勝ちが2、引き分けが1、負けが0のとき
-勝ち負け以外の場合の勝ち点が、普通の勝ちより点数
が悪くなるものしかないとき
(Vゴール勝ちなど:その場合だけ考えればよい、
あるいは、両チームの勝ち点の合計が常に一定かつ全て
の場合がありうる)
順位が他の基準の場合
・同様にして解けない場合
- 勝率で評価し、引き分けがある場合(輸送問題にならない)
- 一試合での両チームの勝ち点の合計が一定でない場合
- 一試合での両チームの勝ち点の配分に存在しないパター
ンがある場合
(5-0、0-5、4-1、1-4 はあるが 2-3、3-2がない、など)
うまく解けない場合
・ 勝率で評価する場合 ⇒ 輸送問題にならなくなる
・ チーム y の勝率 = y の勝数 / (y の勝数+負数)
・ チーム y の勝率が z 以下
⇒ (y の勝数+負数) z ≧ y の勝数
・ 引き分けがあるので、(y の勝数+負数)が定数でない
制約は線形だが、小数解が出るかも
⇒ 整数計画で解くしかない
うまく解けない場合 (2)
・ 1試合の両チームの勝ち点のパターンがいくつかある場合
(k通りあるとする)
なんとか整数計画にしてみよう
・ 試合 i の勝ち点パターンが j のときの
チーム y の勝ち点をsijy とする
・ 試合 i の勝ち点パターンが j のとき1、そうでないとき0とな
る01変数を pij とする
うまく解けない場合2
・ チーム y の勝ち点が z 以下 ⇒ Σ sijypij ≦ z
・ 試合 i の勝ち点パターンはどれかひとつだけ1になる
⇒ Σ pij = 1 for each i
まとめると、以下の条件を満たす実行可能解があるかどうか
を判定する問題になる
Σ sijypij ≦ z
Σ pij = 1
pij ∈ {0,1}
実際使えるの?
メリット:
・ 降格なし、の情報を早く算定できる
・ 優勝に関してあらたな尺度ができる
デメリット:
・ 優勝の望みのないチームは、雰囲気が盛り下がる?
・ 計算がめんどくさい
(データをそろえて、プログラムに入力しなければならない)
← マジックや自力優勝は、手計算でできる
優勝判定問題
・ 優勝、ビリなど、上位・下位の順位になる可能性があるかど
うかを判定する問題を、線形計画(輸送問題)で解ける
・ 線形計画なので、試合数が多くても計算できる
・ 引分ありの勝率、均一でない勝ち点制度などでは線形計
画では計算できない
・ 実際の計算は、他の指標に比べて面倒
試合のスケジュール問題
・ スポーツの試合スケジュールを決めるのは意外と大変
← いろいろな条件があるから
・ 決める事柄(変数)
- 各日の試合の組合せ(カード)
- どちらのホームで試合をするか
・ 制約
- 全ての試合を行う
- チームは同時に異なる試合はできない(割当問題)
- ホームとアウェーは同数であること
- アウェーの試合は連続しないこと
- 試合日に球場が使えること
数理計画としてとらえる
・ 制約を満たす(なるべく良い)解(変数の組合せ)を見つける
⇒ 最適化問題
・ しかし、普通に定式化すると変数の数が多すぎて、ソルバー
では解けない。
・ さてどうしましょう
・ オリジナルな解法を作った
ホームアウェーのパターン
・ 決めるのは、ホーム・アウェーと組合せ
- 組合せは候補数が多い
- ホーム・アウェーのほうが制約が厳しい
・ まず、可能なホーム/アウェーのパターンを列挙して、
各々に対して解が存在するかどうか調べる
ホームアウェーのパターン数
・ 各チームが各試合日でホーム・アウェーどちらを行うか決める
・ 制約、及びよく考えられる条件は
- ホーム・アウェーの3連続は禁止
- シーズン開始直後/終了直前のホーム・アウェーの2連続も
- 同時刻に試合を行うチーム数は偶数、かつ半分がホーム
- 前半戦と後半戦は同じスケジュールで、ホームとアウェーだ
け入れ替える
ホームアウェーのパターン数 (2)
- ホーム・アウェーの3連続は禁止
- シーズン開始直後/終了直前のホーム・アウェーの2連続も
- 同時刻に試合を行うチーム数は偶数、かつ半分がホーム
- 前半戦と後半戦は同じスケジュールで、ホームとアウェーだ
け入れ替える
・ 例えば、2連続するホーム・アウェーの数を最小にする
(どうしてもどこかには2連続が発生)
ここまで絞り込むと、通常、解はとても少ない
(16チームなら1通り?) ⇒ 列挙する
ホームアウェーのパターン例
・ 例えば6チームの場合
1
a
a
a
h
h
h
2
h
h
h
a
a
a
3
h
a
a
a
h
h
4
a
a
a
h
h
h
5
h
h
h
a
a
a
こういうものを列挙して、これに割り当てられる
カードを調べる
組合せを割り当てる
・ 各カードをある日に割り当てる
・ 条件は、
1. 同一チームが2つのカードに割り当てないこと
2. 各カードにホームのチームとアウェーのチームをちょうど1つ
ずつ割り当てること
2.の条件から、カードを割り当てられる日が自動的に決まる
あとは1.の条件を制約にして割り当て問題を解く
(整数条件が必要)
実際には
・ 好カードはなるべく後にする、という条件が必要
・ 視聴率があがるような組合せ(人間系?)
・ もっと政治的な思惑が多いかも
・ 夏の高校野球で阪神が甲子園球場を使えなくなるような、
そのチーム以外の要因も入る
まとめ
・ スポーツスケジューリングの紹介
・ ホーム・アウェーのパターン列挙
・ カードの割り当て