ゲージ理論とヒッグス機構 ~ゲージ粒子の質量獲得~ 有田研究室 山﨑秀樹 目的 • 自然界に存在する4つの力のうち重力以 外の力が記述されるゲージ場の理論上で は、実際に質量を持つZ,Wボソンは質量 を持てないとされる。 • これをヒッグス機構を用いるとZ,Wボソン が質量を持てることを説明する。 場(field)とは? • 場とは物理量も持つものの存在が別の場所にある 他のものに影響を受けている空間のこと • (クライン・ゴルドンの式) 波動関数を場と呼び、 と表す。 シュレディンガー方程式 アインシュタインの関係式 クライン・ゴルドンの場の方程式 実場のラグラジアン 複素場のラグラジアン また、ラグラジアンで場の二階微分の項を運動項、 を質量項と呼ぶ。 大局的対称性と局所的対称性 位相変換のパラメーターΛが時空点によらない場合 が不変である(大局的対称性)。 位相変換のパラメーターΛ(x)が時空点による場合 が不変(局所的対称性)ではない。 と、非斉次な変換(余分な項が増える)になり、ラグラジアンは不変になる これでは観測される物理量が不変でないことを意味する。これでは 困るので、 ラグラジアンが不変になるように補正してみる。 ゲージ変換 変換を施してもラグラジアンLが不変になるような微分演算子Dを定義する とおくと、 となり、ラグラジアンは不変となった(ゲージ対称性)。 このような変換をゲージ変換と呼ぶ。また場Aはゲージ場と呼び、 その場の媒介粒子をゲージ粒子を呼ぶ。 ゲージ理論と電磁気学 電磁場のベクトルポテンシャル Bは磁場 ゲージ場とすると、 の式にあてはめる。 ベクトルポテンシャルはゲージ場であるとすると、マクス ウェル方程式が導かれ、電磁気学はゲージ理論で記述 できることができる。 ゲージ対称性の破れ ゲージの強さを考え、ゲージ対称性に対応させるため共変微分でゲージ場の強 さを加味したラグラジアンを表す。 ゲージ場の質量項を加えたいが・・・・・ は明らかにゲージ対称性 ではない。これではゲージ対称性があからさまに破れてしまう。 これは質量( )を持っているはずのZ、Wボソンがゲージ理論では 質量を持てないことを意味している。そこでここからZ,Wボソンが質量をもつ機構を説明する。 自発的対称性の破れ ポテンシャル 真空の相転移が起こり、温度が下がるにつれ、ポテンシャルの形が変わる。 図1 場のポテンシャル ポテンシャルの安定点では真空期待値 を取る。 ヒッグス機構(1) 局所的対称性の下での、ゲージ場の強さと含めたラグラジアンは 複素場の自由度を二つの実場 で置き換える。 また、安定点の周りの取り方は自由である。次に とゲージ変換し、ラグラジアンを書き直すと・・・・・次のページへ→ ヒッグス機構(2) ラグラジアンは次のように書き直される の運動項および質量項 ゲージ粒子が質量を持つようになった!! このようにラグラジアンにわざわざゲージ場の質量項を入れなくても、ゲー ジ粒子が質量を獲得している。これをヒッグス機構と呼び、 をヒッグ ス場と呼ぶ。 結論 • あからさまにラグラジアンにゲージ場の質 量項を加えなくても、ゲージ粒子が質量を 持つことが出来た。 今後の展開について • 標準理論ではゲージ粒子だけではなく、 質量粒子も質量が持てないとされる。これ はカイラル対称性という別の対称性から 来るもので、今後はこのカイラル対称性に 焦点を当てていく。
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