映像の伝達経路が電波 だけでなく、通信もでてきた

テレビの活路
地上波テレビコンテンツを開放せよ
早稲田大学 社会科学部 土門ゼミナール
2006年11月14日
目次

一章 放送と通信の現在の状況
 新しい放送メディアの登場
 動画共有サイトの発展

二章 著作権問題と放送の限界
 著作権問題によるコンテンツの死蔵化
 通信、技術に埋没していく放送メディア

三章 新たなビジネスモデルへ
 電波の地位を維持した二次利用の形態
 まとめ
第一章

放送と通信の現在の状況
 新しい放送メディアの登場
 動画共有サイトの発展
放送=電波と通信

電波のみの放送が、通信も利用できる放送
へ 電波の独占が終わる
ユーザー
電波
コンテンツ
電波
コンテンツ
ユーザー
通信
IP放送とは


インターネットなどに使われる、プロトコルを利用した、新たな放送
ダウンロードしながら再生するストリーミング形式が用いられる
利用形式
 STB(セットトップボックス)を用いて、テレビで視聴
→プロバイダなどが提供、IPマルチキャスト放送と呼ばれる
 インターネット網を通じて、パソコンで視聴
→1000万人以上の登録者数をGyaoなど
視聴形式
・ 有料=番組ごとに課金、月額制で見放題
・ 無料=広告、プロモーション
日本のブロードバンド回線の普及
・世界一安価で高速なブロードバンドインフラ
総務省 ブロードバンドサービス等の契約数
(平成18年6月末)
現時点での放送サービス一覧
視聴者数
画質
データ通信
収益モデル
価格
コンテンツ数
地上波
約5000万
(視聴世帯数)
2005年度
×(SD)
無し
受信料か広告
NHK受信料
約1300円
9ch(東京)
地上デジタル
1258万
(受像機出荷
合計)
2006年7月
○(HD)
可能
受信料か広告
NHK受信料
約1300円
9ch(東京)
×(QVGA)
可能
受信料?か広告
NHK受信料?
9ch(東京)
○(HD)
可能
利用料
5000円程度で60ch
62ch
有料無料含め10c
h
さらに増え
る予定
150万
ワンセグ
(対応携帯出
荷数)
2006年7月
ケーブル
1913万
(契約世帯数)
2005年度
BSデジタル
1013万
(受像機出荷
合計)
2006年8月
○(HD)
可能
受信料か広告
NHK受信料
地上波契約時+
945円
CS
約400万
(スカパー全契
約数)
2006年9月
△(HD不可)
可能
利用料
40chで3500円
1番組約500円が
多い
291ch
IPマルチキャスト
現時点で20万ぐら
い?
△(HD可能)
可能
利用料
全チャンネルで
3500円程度
41ch+VOD5000本
(BBTV)
ブロードバンド回線は2006年6月末で2400万回線!
各社、業界団体ホームページより作成
動画共有サイト
2005年初頭からサービスを開始
 ユーザーが自分の所有する動画を自由に
アップロードすることが可能なサイト
 提供者は動画共有サイトのアカウントを入手
することによってアップロード可能
 利用者はアップロードされた動画をアカウント
を入手せずに視聴することができる

動画共有サイト一覧
日本の動画共有サイト利用者が実際に利用しているサイト(2006年7月)
アメリカのWebビデオ視聴件数トップ10(2006年8月)
サイト
Fox Interactive
(MySpace.c
omを含む)
(gooリサーチ 第4回ブロードバンドコンテンツ利用実態調査 )
視聴件数(単位:百万)
シェア(%)
1,404
20.1
Yahoo!
823
11.8
YouTube
688
9.9
Viacom Digital
284
4.1
Time Warner
Network
238
3.4
Microsoft
186
2.7
Google
102
1.5
Ebaumsworld.com
53
0.8
Comcast
Corporation
45
0.7
Real.com
Network
44
0.6
合計
6,980
(資料:comScore Video Metrix 米国内のみ 2006年8月)
Youtubeの急激な発達
ビデオ閲覧数 1億件
 ユニークユーザ 6300万

(2006年7月米comScore Media Metrix )

ビデオ投稿数 1日6万件
(2006年6月 FPN)

日本のユーザ 約700万
ネットレイティングス 2006年9月の月間インターネット
利用動向調査結果
成長の原因
現状では映像に広告さえ無く、完全無料
 テキストと同様のリンク形式でクリックするだ
けで、再生可能。ブログなどに埋め込める
 いつでも利用可能で、時間を節約できる
 今まで見れなかった死蔵コンテンツを見るこ
とができる
 メタデータによるコンテンツの整理
 著作物の大量アップロード

動画の分
類
レーティ
ング
TVコンテンツの大量アップロード
Youtubeが人気になった背景にはTV番組な
ど違法コンテンツの大量アップロードがある
 jasrac等が10月に削除依頼を出した動画数
はTV番組が1万4706個・映画・ビデオが
9328個・音楽・プロモーション・ビデオが5515
個に及ぶ
 許諾を得ずに勝手にアップロードすることは
送信可能化権に抵触し、アップロードした時
点で著作権違法になる。

第二章

著作権問題と放送の限界
 著作権問題によるコンテンツの死蔵化
 通信、技術に埋没していく放送メディア
放送と通信の扱いの違い
どうしてコンテンツが通信に流れづらいのか?
→放送と通信の法律上の扱いの違い
・通信:電気通信役務利用放送法
・放送:放送法、有線テレビジョン法
同じ映像を流すにしても放送と通信では適用さ
れる法律が違うので権利処理が違ってくる
著作権の壁
テレビコンテンツに対する需要はYoutubeの
人気を見る限り明らかである
 NHKのドキュメンタリー番組(1981年放送、
2004年再放送)ではわずか50分の番組で外
部映像・写真34件、出演者など27件、音楽
の著作権関連で26件の許諾が必要
→コスト面から現行の法律のままでの利用は
難しい

TV局のVODサービス
第2日本テレビ 43番組 43万会員
フジテレビ On Demand 24番組
TBS BooBo BOX 約30番組
テレ朝bb 13番組
 現状の有料VODではほとんどコンテンツが流
されておらず、しかもVOD向けに作られたも
のが多く、過去のテレビ番組はほとんど見る
ことができない

解決策

著作権に登録制を導入
→著作権上の権利者全員の許諾がなくても配信可能
→著作隣接権者が不明の場合でも配信可能

権利許諾を簡単にできるような制度を確定
→JASRACなどの権利者団体が通信向けの料率を策定
経団連が2005年に策定した、通信向けの料率のガイドライン
日経コミュニケーション 2005.11.1より
アメリカ式の事後承諾型
CBSとYoutubeとの提携
違法コンテンツ識別アーキテクチャの導入
→無許可アップロードの番組も事後承諾で削
除されないケースもある
 プロモーションや広告収入の確保
 著作権の事前承諾から事後承諾への転換

なぜ通信に向わなければならないか



現時点で視聴時間自体は横ばいであるが、インター
ネットはテレビにとって脅威である
40%のユーザーがインターネットにより利用が減っ
たメディアに地上波放送をあげている
情報源として、テレビと遜色ない立場をインターネッ
トは確保している
インプレスR&D インターネット白書2006より
音楽と同じ道をたどる
対策を行っても、違法利用は絶えない
 音楽産業におけるNapsterと後続P2Pソフト
の例
 1999年にP2Pソフトの先鞭をつけたNapster
は一年あまりでサービス停止
 しかしユーザーが、他のソフトに乗り換える事
で音楽の違法利用は今も後を絶たない

HDDレコーダーの発展
EPGと呼ばれる電子番組表を用いる
→メタデータの高度化
 地上波の全番組を一週間以上録画できる
→ユーザの手でいつでも視聴することを実現
する
 CMスキップ機能、編集機能を搭載する
→CMの効果が低下することになる

新しいモデルの必要性
後手で待っていても、インターネットによる電
波の地位の低下は免れない
 違法利用部分をうまく、市場化する必要があ
る
 HDDレコーダーですべて録画されるよりは、
TV局主導でやったほうがよい


コンテンツを積極的に公開して、収益を得る
べきである
第三章

新たなビジネスモデルへ
 電波の地位を維持した二次利用の形態
 まとめ
新たなビジネスモデル
著作権処理が円滑にできるようになったと仮
定
 一次利用=電波、二次利用=通信
 通信にすべて飲み込まれることがなく、
放送→通信の流れを確立する

多様な二次利用モデル
地上波は無料という先入観、インターネットコ
ンテンツ=無料という考え
 今までのノウハウを生かしやすい収入源

インターネットを通じた各動画コンテンツ配信サービスの利用状況(2006年1月)
広告利用

有料VODとの併用
で多様な料金体系
(gooリサーチ 第1回ブロードバンドコンテンツ利用実態調査 )
原則としてすべての番組を放送する
二次利用におけるアップロードコストの低さ
→少ないユーザーでも採算が成り立つ
 インターネットにおけるCMとユーザーのより
正確なマッチングの可能性
→コアなCMで訴求力を高めることができる
 積極的に番組を公開することによって、違法
な利用を減らすことができる
 HDDレコーダーにすべて録画される可能性

韓国のモデル
テレビとインターネットでほぼ同時に配信され
る
 無料、有料(画質、ダウンロード、ストリーミン
グ、見放題など) 1番組50円~
 ユーザには番組を一定の枠内で自由な編集、
共有させることによって、プロモーションとして
使っている

ユーザ側の利益
死蔵コンテンツが視聴可能になる
 タイムテーブルに縛られないで視聴できる
 手軽に見れる
 効果的なCM利用
 メタデータによるサービスの高度化

放送局の利益
死蔵コンテンツから収入を得ることが出来る
 プロモーション的効果
→有料VOD、DVD、リアルタイム放送
 効果的なCM利用
 番組がどこで打ち切られたかわかる
→視聴率からの脱却、番組の質の向上

電波の優位点
通信では技術的に難しい、大量同時送信
 テレビの高画質、大画面
 家庭におけるテレビの占める位置


PCを利用したVODであっ
てもテレビを利用する傾向
gooリサーチ 動画ダウンロードに関する調査 2006年9月
通信の優位点

流通コストの低さにより、ほとんど需要がない
動画を大量に公開することができる
→ロングテールな展開

視聴者の属性を識別することによって、効果
的な広告を打ち出すことができる
→Gyaoの広告モデル

時間に捕らわれない視聴
→HDDレコーダが必要なくなる
近未来の映像メディア
短期的に見れば、電波、通信の間には大きな隔たりがある
通信
PLC(電力線通信)
家庭内LAN
しかし、長期的に
見れば、電波、通
信を区別する必要
がなくなる
インターネットテレビ
電波
映画産業のような二次利用形態
一次利用
二次利用以降
映画
2109億
映画
5884億
地上波テレビ
25662億
地上波テレビ
2617億
2004年度実績 メディア・ソフトの製作および流通の実態
<<調査報告書>>より作成
地上波放送は二次利用
の市場があまりにも小さ
い
 映画が一次利用より二
次利用のほうが収益が
大きいように、テレビでも
二次利用の利益を製作
に還元できる

コンテンツ流通の過去
映画の二次利用に関する問題
→著作権違反でソニーが
訴えられた事例
利用世帯数による
音楽ダウンロード・サイトのトップ10
 音楽配信とP2Pの問題
(2005年3月)
1. WinMX(210万世帯)
Music Store(170万世帯)
→合法的な利用である 2. iTunes
3. LimeWire(170万世帯)
4. Kazaa
iTMSがほとんどのP
5. BearShare
6. Ares Galaxy
2Pをしのいでいる
7. Napster

8. Morpheus
9. Real Player Store
10. iMesh
出典:NPD Group社
まとめ
過去の事例から権利を守るだけでは、市場
が萎縮してしまう
 著作権処理の早期の解決をして、二次利用
をすすめるべき
 通信での二次利用が進んだとしても、電波が
なくなることはない
 死蔵コンテンツの利益を製作に還元すること
で、放送局、視聴者ともに利益を得ることがで
きる
