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4. 双曲型偏微分方程式の数値解法入門
双曲型の偏微分方程式(partial differential equation, PDE)の最も簡単
なの例として1変数の線形PDE
を考える;
この方程式の意味は大雑把に言って、Δx の
セル内に流入流出する f の量がフラックス
その結果セル内で f が時間的に変化する割合が
この方程式は f (t-x/c) を解に持つ。
Δx
後の議論のために、放物型の偏微分方程式簡単な例として1変数の拡散
方程式
も思い出しておこう。 αは定数である。
• 有限差分法 ( Finite difference method,PDEの数値解法の一つ)
t
x
線形波動方程式
の陽解法の幾つかの例
(1) FTCS (Forward in Time and Central difference Scheme,陽的オイラー法).
に代入して、
t
x
t
影響領域 Domain of dependence
x
陽的 Euler 法では、
の値を計算するのに、点線のピラミッドの形の下の
部分が使われている。この部分を影響領域(Domain of dependence)と呼ぶ。
この数値スキームの影響領域は物理的な
影響領域を含んでいる必要がある。
また,数値スキームの影響領域は差分法が異なると違ったものになる。
線形波動方程式
の陽解法の幾つかの例
(1) FTCS (Forward in Time and Central difference Scheme,陽的オイラー法).
(2) Lax (- Friedrich) scheme (ラックス-フリードリッヒ).
(3) Leap-Flog scheme (リープフロッグ 蛙飛び)
(4) Lax-Wendroff scheme (ラックス-ウェンドロフ)
(5) 1st order upwind scheme,1次の風上差分
線形波動方程式
の陽解法の例 - 別の見方
• Lax, Lax-Wendroff, 1次風上の各スキームは、FTCS scheme +.拡散項
の形で解釈することが出来る。
cf) 拡散方程式
の差分スキーム(陽的オイラー法)
ここで、タイムステップ t と格子点間隔 h を適当に調整して、
となるように取ってみる。すると差分スキームは
となる。これは、
の値を計算するのに
前の時間ステップでの左右の格子点での
値を平均していることになっている。
→ 平均すると関数の値がだんだん鈍っていって
拡散していくように見える。
線形波動方程式
の陽解法の幾つかの例 (続き)
• Lax, Lax-Wendroff, 1次風上の各スキームは、FTCS scheme +.拡散項
の形で解釈することが出来る
(1) 陽的オイラー法 (FTCS : 時間前進差分、空間中心差分).
(2) Lax (- Friedrich) 法.
(3) Lax-Wendroff 法.
(4) 1次風上差分法 1st order upwind scheme
(拡散項が一番小さい)
(負の特性速度cの場合にもそのまま使える書き方。)
精度から要求されるステップサイズt とhに対する制限
実際には t は精度でよりも有限差分法の安定性でより強く制限される。
の差分法の記法のひとつとして、
PDEの数値解法の基本概念の要約
(ODEの場合と類似している)
• 局所打切り誤差(Local truncation error)
:
PDEの厳密解が有限差分方程式を満たしていない度合い。
ex.) One-step method.
• 大域差分誤差(Global discretization error)
Definitions: (適合性 Consistency)
Definitions: (収束性 Convergence)
Definitions: (ゼロ安定性 Zero-Stability, h ! 0 の時の安定性条件)
Definitions: (絶対安定性 - h が有限の値に固定された時の安定性条
件)
Remark: 安定性解析の目的は、摂動が増大しないことを保証する
t0(h) の値を決めることである。摂動が増大しないためには、
ゼロ安定の場合には,行列 C0(h) のサイズは n ! 1 の極限で
増大することもあることに注意せよ。
Theorem: (Lax’s equivalence theorem)
Convergence ) Zero (or Absolute) - stability.
Zero (or Absolute) - stability and Consistency ) Convergence.
有限体積差分法
保存法則(保存形をした PDE)の有限差分近似を導くのに適した考え方。
j–1/2
j–1
j+1/2
j
j+1
格子点間の中点を境界面にした仮想的な単位体積を考える。
境界面、 j–1/2, j+1/2 ,
で流束(flux)を定義する。そして、PDEを時間方向
に陽的オイラー法で差分化する
ただし、境界面 j-1/2, j+1/2… には格子点がない(データがない)!
 格子点での値
を使って流束
を計算する。
陽的Euler, Lax, Lax-Wendroff, 1st order upwind 法を
(1) 陽的 Euler :
を用いて書き直す。
(1) 陽的 Euler :
(2) Lax :
(3) Lax-Wendroff :
(4) 1st order upwind :
ノイマンの安定性解析 von Neumann stability analysis.
• 等間隔格子点と周期的境界条件を空間方向に仮定した下で、線形PDE
のを解くための数値スキームの安定性を解析する方法。
有限差分方程式が次の様な解を持っている場合を考える。
この場合、摂動
も同じく
の様に書ける。
PDEの有限差分法の一段階公式(one-step formula)は、h とτに依存する
行列 C0 を用いて一般に
,従って摂動
も
同様に
を満たす。
この式に上のフーリエ級数展開を代入すると、
となる。
係数
を増幅因子と呼ぶ。初期値 t = 0 まで戻れば、この式は
とも書ける。
ノイマンの安定性解析 von Neumann stability analysis. 続き
増幅因子
は一般に複素数なので、振幅と位相にわけてやる。
増幅率
位相差
PDE
位相差は、
の解析解は f (t-x/c) なので、厳密な増幅率と
これより、
を表す。
と
が一般に各モードの増幅率と位相差
θが0に近いほうが、長波長、低周波モードに対応し、
πに近いほうが、短波長、高周波モードに対応する。
ノイマンのゼロ安定性( zero stability )条件:
ノイマンの絶対安定性( absolute stability )条件:
線形のPDEに線形の差分法を適用した場合には、各モードは独立にな
る。従って、
が1以下ならばモードは増大しない。
(参考)離散フーリエ解析の公式
差分スキームのノイマンの安定性解析では離散フーリエ変換を利用した。
このために必要な公式を下にまとめる。
格子点を
ととり、
のように周期境界条件を課す。独立な点は従って、
のN点になる。これに対応して、N個の独立な基底
を取ることが出来る。
これより、離散フーリエ変換を次の様に定義できる;
公式
より、逆変換は
実空間と波数空間での l2 ノルムの値の間には Perceval の公式が成り立つ;
課題4-1) Lax-Wendroff 法が2次精度の有限差分スキームになっているこ
とを示せ。
課題4-2) FTCS, Lax, Lax-Wendroff, 1st order upwind, の各有限差分法で、
線形PDE
を次の初期条件の場合に解け。
各数値スキームにより、シミュレーションの結果の様子が異なる。
この理由を考察せよ。また、初期条件を変えてシミュレーション
を実行してみよ。(課題の解説を参照せよ。)
課題4-3) FTCS, Lax, Lax-Wendroff, 1st order upwind, の差分法について
ノイマン解析を行い、シミュレーションの結果と比べてみよ。