「Go」&「レボリューションNo.3」 金城一紀 著 稲田・佐伯・財津 中山・西山・樋本・宗像 あらすじ 「Go」 在日朝鮮人の主人公は、父親が韓国籍を取 得したことをきっかけに、自身も韓国籍を取 得する 民族学校から日本の高校に進学した主人公 は、友人、加藤の誕生パーティーで桜井と出 会い、つきあい始める あらすじ 「Go」 自身のことを桜井に告げられなかった主人公 は、親友、正日の死によって、桜井に自身の ことを告げるが、それで二人は疎遠になって しまう しかし、その年のクリスマスイヴに二人は再 会し、桜井の「杉原が何人だってかまわない」 という言葉で仲直りする 登場人物紹介 「Go」 杉原 • 愛称クルパー。朝鮮学校を卒業し、日本の高 校へ入学。国籍や名前に囚われない自分自 身という存在そのものを強く持っている 桜井 • 有名進学校に通う高校3年生。バスケの試合 中に起きた乱闘騒ぎで杉原を見て恋に落ちる 登場人物紹介 「Go」 秀吉(杉原の父) • 朝鮮籍を持つ在日朝鮮人で元ライト級プロボクサー。 総連でバリバリ活動をしていた共産主義だったがハ ワイの魅力に負けて韓国籍へ 道子(杉原の母) • 朝鮮籍。日本生まれの日本育ち。杉原家の儒教精 神をぶち壊した人物。杉原の性格はこの人からの 遺伝か・・・ 登場人物紹介 「Go」 加藤 • 映画内では軟派なクスリ野郎だったが、小説内では 不器用ながらも、真っ直ぐな心をもっており、力強い 生き方をする杉原を尊敬している 正一 • 韓国人の父と日本人の母を両親に持つハーフで朝 鮮学校に通う高校3年生。朝鮮学校開校以来の秀 才と呼ばれている。杉原に一目置かれる存在であり、 互いを認め合っている 登場人物紹介 「Go」 タワケ先輩 • 中学校時代、杉原の二つ上の先輩で在日朝鮮人。 在日であることから受ける差別やあらゆる障害から 逃れ、生きていこうとする人物 元秀 • 杉原の朝鮮学校時代の親友であり、悪友。言葉より も先に手が出てしまうような性格だが、仲間意識が 人一倍強く、身内の危機には全力で守ろうとする 登場人物紹介 「Go」 巡査 • 杉原に職務質問しようとしたがあえなくKO。し かしその後、杉原と意気投合し、互いの傷を 舐めあう あらすじ 「レヴォリューションNo.3」 ~レヴォリューションNo.3~ オチコボレ男子高に通う主人公は、米倉先生の言葉、「君た ち、世界を変えてみたくはないか?」の影響で、友人らと「ザ・ ゾンビーズ」を結成、近所の名門女子高の学園祭への侵入 を試みてきた 3年目の今年は、ガードマンとの直接対決の戦法を取り、侵 入に成功する しかし、以前から体調を崩して入院していたリーダーのヒロシ が死んでしまう あらすじ 「レヴォリューションNo.3」 ~ラン、ボーイズ、ラン~ 卒業間近の「ザ・ゾンビーズ」は、ヒロシの墓参りのために沖 縄行きを決めるが、みんなの旅費を預かった山下が、カツア ゲされてしまう バイトをして再び旅費を稼ぎつつ、犯人を見つけたメンバー は、犯人らが開いたダンス・パーティーを襲撃 見事、取られた金を取り返し、無事にヒロシの墓参りをおこ なった あらすじ 「レヴォリューションNo.3」 ~異教徒たちの踊り~ 3年の夏休み、主人公はストーカーに悩まされる吉 村の警護をすることになるが、犯人に襲われ、主人 公は犯人探しに乗り出す 「ザ・ゾンビーズ」のメンバーの力を借りた主人公は、 犯人が、吉村が就職試験を受けた会社の面接官、 柴田であることをつきとめ、おとり捜査により、柴田 を捕まえる 登場人物紹介 「レボリューションNo.3」 南方 • 主人公で「ザ・ゾンビーズ」の進行役。仲間からの信 頼が厚く、メンバーの中心的存在。あらゆる作戦の 立案者で、自らすすんで危険なことに飛び込むこと もある 舜臣 • 在日朝鮮人で力がありケンカが強い。「老子」や「暴 力批判論」など本をよく読み、暴力以外の解決法を 模索している。ヒロシの後のメンバーのまとめ役 登場人物紹介 「レボリューションNo.3」 アギー • 日本人とフィリピン人と中国人とスペイン人との クォーターでとても美しく、仕事で多くの金とコネを得 る。豊富な雑学を利用し相談所を開き、「ザ・ゾン ビーズ」の作戦を裏から支援する ヒロシ • 沖縄生まれで黒人とのハーフで「ザ・ゾンビーズ」の 実質的リーダー。メンバーのためには自分をも犠牲 にする心を持っている 登場人物紹介 「レボリューションNo.3」 萱野 • 父親が人を殺め刑務所に服役されて、家計を助け るため一年のほとんどを製本所のバイトをしている。 「ザ・ゾンビーズ」の成立者の一人 山下 • 素直で心優しいが、クラス全員がカンニングしてい るのに一人だけ捕まるという「史上最弱のヒキを持 つ」ことで有名 登場人物紹介 「レボリューションNo.3」 ドクター・モロー 生物の先生で遺伝に関する授業をよくする。 「ザ・ゾンビーズ」を作るきっかけとなった人物 である ランボーさん • アメリカ生まれの日系二世で元特殊部隊出 身。今は土方界の元締め的存在 • 登場人物紹介 「レボリューションNo.3」 リトル軍曹 • 沖縄駐在の米国軍人。昔ヒロシの家の隣で よくバスケットをしていた縁でヒロシと親しくな る 「レボリューションNo.3」 登場人物の名前に関する考察 01 舜臣 • 李氏朝鮮中期の水軍の将軍として活躍した 李舜臣が元ネタと思われる アギー • フィリピン独立運動の指導者として活躍した エミリオ・アギナルドが元ネタと思われる 「レボリューションNo.3」 登場人物の名前に関する考察 01 敵を相手に、勇敢に戦った歴史上の 人物の名を用いることによって、登場 人物の勇猛果敢なイメージを出そうと していると思われる と同時に、話を面白くしようとする、 著者の遊び心も感じられる 著者略歴 • • • • • • 金城 一紀 1968年10月29日生まれで、韓国籍 中学まで民族学校に通う 高校から日本の学校へ 2浪を経て、慶應義塾大学へ 1998年、「レヴォリューションNo.3」で小説現代新 人賞受賞 2000年、「Go」で第123回直木賞を受賞 著者略歴 • • • • • 作品 SPEED レヴォリューションNo.3(コミックも有) Go 対話篇<「恋愛小説」・「永遠の円環」・「花」 の三篇> フライ、ダディ、フライ 時代背景 在日コリアンに対する差別について、まだ克服でき てない日本社会 祖国である韓国・北朝鮮は、分裂と対立から、最近 ようやく対話の方向へ 在日コリアンはすでに日本に定着し、四世の時代 に テーマ 「Go」「レヴォ」共通のもの 01 「鍛えとけよ。俺たちは速く走れなきゃダメな んだ」 ~Go P66 l.17~ 「おまえたちはいつも敵に囲まれて生きてる んだぞ」 ~Go P163 l.12~ テーマ 「Go」「レヴォ」共通のもの 01 「さっき叩きのめしたやつらは近い将来、社 会の真ん中に入っていって、違う形で僕たち を叩きのめして勝利を収めようとするだろう。 そして、僕たちは何度も敗北をなめることに なるだろう。でも、それが嫌なら、こうして走 り続ければいい」 ~レヴォ P130 l.2-4~ テーマ 「Go」「レヴォ」共通のもの 01 「立て続けに二軒の交換所を奪われた」 ~Go P28 l.8~ 社会的弱者の立場が、そして、そのような状 況下でいかに生きていくかが描かれている テーマ 「Go」「レヴォ」共通のもの 02 「広い世界を見ろよ・・・・・・。あとは自分で決 めろ」 ~Go P14 l.8~ 「君たち、世界をかえてみたくはないか?」 ~レヴォ P21 l.5~ テーマ 「Go」「レヴォ」共通のもの 02 「強くなって、世界を転戦してまわるんだ。日本は狭 いよ」 ~レヴォ P65 l.13~ 制限された可能性の閉ざされた世界ではなく、自分 の可能性を活かせる世界を目指すことが訴えられ ている テーマ 「Go」独特のもの 01 在日コリアンがいっぱい 「在日コリアンの暮らし」・「帰国事業」・「民族 学校」・「在日コリアンに対する差別」などが 出てくる 自分自身の所属についての葛藤のようなも のも描かれている テーマ 「Go」独特のもの 02 「オヤジは僕がぶちのめすまで、どんなことがあっ ても、誰に対しても、膝を屈してはいけないのだ」 ~Go P210 l.2-3~ 「孤立無援で戦い続けている、このクソオヤジにね ぎらいの言葉をかけてやる人間は、この国にはほ とんど存在しない」 ~Go P217 l.10-12~ テーマ 「Go」独特のもの 02 乗り越えられない壁としての父親 しかし、その父親の心情も理解できるように なる 人間の成長の過程が描かれている テーマ 「レヴォ」独特のもの 01 在日の人々がいっぱい 「舜臣」・「アギー」・「リトル軍曹」・「ランボー 吉田」 世界との共生が描かれている テーマ 「レヴォ」独特のもの 02 「そこで、ヒロシや舜臣やアギーや萱野に出 会った。僕はもう授業中には寝ていない」 ~レヴォ P45 l.12-13~ 「愛してるぞ」 ~レヴォ P239 l.13~ テーマ 「レヴォ」独特のもの 02 「レヴォ」の舞台は高校生活 「ザ・ゾンビーズ」を中心に描かれている 「友情」が大きく扱われているといえる 「レヴォ」、”No.3”の意味 “No.3” = “3流”、すなわち、 マイノリティー しかし、マイノリティーとマジョリティーが 結ばれることによって、新たな世界が 作られるということが、描かれている 表現方法 01 「Go」、「レヴォ」ともに、一人称叙述 主人公の視点から話が述べられており、 読者はより感情移入しやすくなる 表現方法 02 「彼女の髪は『勝手にしやがれ』のジーン・セ バーグのように短かった」 ~Go P35 l.16~ 「洗濯機の蛇腹の排水ホースみたいなソック スもはいてなかった」 ~レヴォ P84 l.13-14~ 表現方法 02 人物のたとえとして、映画の登場人物が引 き合いに出される もののたとえも具体的 本を読んで、イメージを浮かべやすい 表現方法 03 「桜井がモーツァルトの二十五番のシンフォ ニーをCDプレイヤーにセットしたあと」 ~Go P120 l.17~ 「演奏がバド・パウエルから、セロニアス・モ ンクのソロ・ピアノに変わった」 ~レヴォ P195 l.9-10~ 表現方法 03 2作品とも、本文中に、小説、音楽、映画の タイトルなどが、よく出てくる より簡単に、物語を理解することができるよ うになる 感想(稲田) 金城一紀の「GO」と「ザ・ゾンビーズ」では、現代 の在日朝鮮と日本人の間での国境線が無くなっ てきていると思う 自分は在日や日本人という国籍は関係ないと 思っている なぜなら、我々は同じ人間同士である。そして、 アジア人でもあるからだ。と、この二つの小説を 読んで思った 感想(佐伯) 「Go」を読んだ後に著者の経歴を見たが、 重なり合っていて著者の自伝的な作品で あるように感じた また、「Go」のテーマを”血”とするならば、 「レヴォリューションNo.3」は”生死”がテー マだといえる 感想(佐伯) “金城 一紀”という一人の人間が生きる世 界観、アイデンティティーが生き生きと現れ ている、これが私たち読者が”金城 一紀” の作品に引き込まれる理由でもあり、彼自 身の魅力でもあるように、私は思った 感想(財津) 両作品の、スケールの大きさ、内容の深さ に驚いた 主要な登場人物が、社会的な立場は弱く ても、それぞれがかっこいいと思う生き方 をしようとしていたのが印象的だった 感想(中山) どちらの作品も「在日問題」というデリケー トな問題を扱っていながら、非常にポップ で、主人公の明るい姿勢もあり、とても読 みやすかった 作者の限りなく優しい目線、また、立派な 言葉や大げさな語りがない分、素朴な姿勢 がとても印象的だった 感想(中山) 「自分という存在」=「在日」。それ自体が 含む差別が重くのしかかってくるが、それ を引きずってでもとにかく進もうとする、どう しようもなく不器用な姿が単純にかっこい い物語だった 感想(西山) 「GO」「レボリューションNo3」に共通する テーマとして弱者と強者の存在があったと 思う これらの小説の中で「GO」は日本人と在日、 レボリューションNo3では学歴社会、つまり 偏差値の高低でそれは描かれていた 感想(西山) その中で作者はその差別偏見に対し、そ れに甘んずるのではなく、自分の信念を強 く持ち、なにか行動を起こすことの重要性 を述べているように感じた 感想(樋本) 「Go」では在日の苦悩や感情の中で社会と どう向き合い生きていくかが表されて、「レ ボリューション」では社会的地位が上の者 たちとどう生きて行くかが書かれている 感想(樋本) 二つにおいて言えることは強者中心の世 の中で立ち向かって行くことである 私たちはどんな問題に突き当たっても、立 ち止まらないで、どう突き破るか行動し続 けるかが大事だと感じた 感想(宗像) 作者はこの2作品を通して、「在日」の人々 に対し、「国籍」の枠にとらわれず一人の 人間として見てほしいと訴えているのでは ないかと感じた 番外編 朝鮮人の魂 • 小説では、値段については触れられず • 狭い民族意識のことか 番外編 行定 勲 • 「Go」の次の作品は、「ロックンロールミシ ン」(2002) • 最近ので有名なのは、「世界の中心で、愛 をさけぶ」(2004)
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