深部静脈血栓(肺塞栓)症の予防と対策 ー自治医科大学附属病院の現状ー 自治医科大学 麻酔科学・集中治療医学講座 瀬尾 憲正 肺血栓塞栓症 一般のヒトの多くは知らない Yes! No! 肺血栓塞栓症 2001年4月23日(日) NHKおはよう日本 視聴率10%:推定約1000万人 静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症/肺血栓塞栓症) 全身症状 ・突然の呼吸困難 ・ショック ・意識消失 ・胸部痛 局所症状 ・ほとんどが無症状 ・皮膚チアノーゼ ・腫脹 ・疼痛 肺血栓塞栓症 予防が第一 深部静脈血栓症 肺血栓塞栓症 肺血栓塞栓症は新しい病気である Yes! No! 学会発表(約20年前) 深 部 静 脈 血 栓 止血剤(アドナ、トランスアミン) 絶対安静! 永久フィルター 肺血栓塞栓症 全国的には対策が十分おこなわれている Yes! No! 周術期肺血栓塞栓症:発生頻度 6 一 万 件 あ た り の 発 生 件 数 5 4.41 4.76 440/925260 4 369/ 837540 3 2.07 2 (川島らの推定値) 1 (件) 0 2002 2003 (年) 日本麻酔科学会周術期肺血栓塞栓症調査より 術中重症肺塞栓症発生頻度 手術部位別周術期PTE発症頻度 症例 140 120 100 80 60 40 20 0 総数 発症率(%) 6.0 5.5 周術期発生頻度 6.7 5.2 7.4 7.9 6.6 平均(2002-03) 4.41-4.76 4.7 0.6 1.9 0.0 日本麻酔科学会周術期肺血栓塞栓症調査より 周術期肺塞栓症;発症例の実施予防法 実施率(%) 予防ガイドライン発表前 50 40 30 20 10 0 2002 2003 日本麻酔科学会周術期肺血栓塞栓症調査より 肺血栓塞栓症 日本での予防ガイドラインはない Yes! No! 肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症) 予防ガイドライン ダイジェスト版 出版社:メディカルフロントインターナショナル 2004年2月20日発売 定価(本体450円+税) ・日本で初めての予防ガイドライン ・主要学会が参加した横断的なガイドライン + ・2004年4月診療報酬:画期的な予防管理料 「肺血栓塞栓症予防管理料」が新設 新しい時代の始まり 肺塞栓症元年 診療報酬の改訂:「重症化予防等に係る技術評価」 「肺血栓塞栓症予防管理料」 リスクの高い患者 予防のためのガイドライン遵守 弾性ストッキングまたは間欠的空気圧迫装置 18億円の医療費削減と3400名の救命 90億円を費やす大プロジェクト 1入院につき1回算定 305点 対象患者数300万人/年間 保険支払い費用≒90億円 一般外科・婦人科 リスク分類 低リスク 中リスク 高リスク 最高リスク 一般外科・泌尿器科手術 婦人科手術 60歳以下の非大手術 40歳以下の大手術 30分以内の小手術 非大手術:60歳以上あるいは危険因子あり 大手術:40歳以上あるいは危険因子あり 良性疾患手術(開腹、経膣、腹腔鏡) 悪性疾患で良性疾患に準じる手術 ホルモン療法中の患者 大手術:40歳以上の癌の大手術 骨盤内悪性腫瘍根治術 血栓症素因/既往の良性疾患 大手術:静脈血栓塞栓症の既往あるいは血栓性素因 予防ガイドラインにおけるリスク分類と推奨予防法 リスクレベル 推奨予防法 低リスク ・早期離床と積極的運動 中等度リスク ・ 弾性ストッキング または 間欠的空気圧迫装置 高リスク ・間欠的空気圧迫装置または 低用量未分画ヘパリン 最高リスク ・間欠的空気圧迫装置+ 低用量未分画ヘパリン ・弾性ストッキング+ 低用量未分画ヘパリン ・用量調節未分画ヘパリン ・用量調節ワルファリン 低用量未分画ヘパリン:5000単位皮下注.12時間または8時間毎 用量調節未分画ヘパリン:初回3500単位皮下注.4時間後のAPTTを正常下限に 維持するように8時間毎に±500単位を増減 用量調節ワルファリン:PT-INR1.5-2.5になるように内服を調整 周術期肺血栓塞栓症:発生頻度 6 一 万 件 あ た り の 発 生 件 数 5 4.41 4.76 440/925260 4 369/ 837540 3 3.61 409/1131154 2.07 2 予防ガイドライン発表04/04 (川島らの推定値) 1 (件) 0 2002 2003 2004 (年) 日本麻酔科学会周術期肺血栓塞栓症調査より 肺血栓塞栓症 自治医大附属病院は十分な対策を行っている Yes! No! 自治医大附属病院での予防法の実施状況(‘05 09) 術前 エコー 術中 ストッキング 間欠的圧迫 術後 ヘパリン ストッキング 間欠的圧迫法 ヘパリン 婦人科 (+) (+) (+) (-) (+) (-) (+) 産科 (+) (+) (-) (-) (+) (-) (+) 消外科 (-) (+) (+) (-) (+) (-) (+) 呼外科 (-) (+) (+) (-) (+) (-) (+) 整外科 (-) (+) (+) (-) (+) (+) (-) 脳外科 (-) (+) (+) (-) (+) (-) (-) 心外科 (-) (-) (-) (-) (+) (-) (-) 耳鼻科 (-) (+) (+) (-) (+) (-) (-) 術前リスク分類 低 中 高 最高 2005, 06 リスク別の術中実施予防法 低リスク群 中リスク群 運動のみ ES IPC 高リスク群 ES+IPC 最高リスク群 UH その他 2005, 06 肺血栓塞栓症 自治医大附属病院での発症後の対応は十分である Yes! No! ヘパリン5,000単位静注 循環器内科の指示のもと (自治医科大学附属病院2005/07) 肺血栓塞栓症治療マニュアル (自治医科大学附属病院2005/07) 肺血栓塞栓症 肺血栓塞栓症は病院全体の問題である Yes! No! 肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症のオッズ比? (通常の生活と比べて何倍危険か?) Heit JA, Silverstein MD, Mohr DN, et al. Arch Intern Med 2000; 160: 809-815. 入院すると? 約8倍 癌になると? 4~6.5倍 手足が麻痺すると? 約3倍 大けがすると? 約13倍 突然,発症する! CVラインが入ると? 約5.5倍 発症すると重篤である 予防>>>診断,治療 入院して手術すると? 約22倍 飛行機旅行の距離と肺血栓塞栓症の発生率 (エコノミークラス症候群:ロングフライト症候群) 周術期肺血栓塞栓症は エコノミークラス症候群の100倍の発生率 N Engl J Med 345: 779-83, 2001 共通認識 医師 薬剤師 患者/家族 看護師 患者が主体の医療 技師 患者・家族への説明 ・リスク分類:低,中,高,最高 ・予防法の基本: 自主的運動療法(早期離床,ベッド上運動) ・自主的運動療法が不十分な場合: 補助的理学療法 弾性ストッキング,間欠的空気圧迫装置) 薬物療法 ヘパリン,ワルファリン,抗血小板薬 ・初期症状(動悸、呼吸困難、胸痛など)の遠慮ない訴え 医療安全対策として取り組む 肺血栓塞栓症の予防 医療安全対策 リービッヒの最小律 院内感染防止 患者と共に闘う 褥創防止 ・医療事故・医原病! 「見てもらう」、「聞いてもらう」、「言ってもらう」 賠償と補償
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