4、アジア地域の成長要因

第2章
アジア地域の成長要因
ー従来の経済政策とアジアの経済政策ー
輸入代替工業化戦略
第1回UNCTAD開催
(The United Nations Conference on Trade and Development
国連貿易開発会議:1964)
「プレビッシュ(UNCTAD事務局長)報告」
『開発のための新しい貿易政策を求めて』
輸入代替工業化政策の提唱
それ以前(WWⅡ以後)の経済政策
先進国
工業製品の生産・輸出
価 外貨不足に
格
不 よる貿易収
安 支の悪化
定
輸
入
超
過
途上国
1次産品(モノカルチャー製品)の生産・輸出
輸入代替工業化普及の背景
①輸入代替工業化を採用したのは、開
発途上国(旧植民地諸国)
→既存の世界システムは先進国によっ
て構築されたもの
→無防備な開放は経済的従属を意味
②既存の世界システムは先進国有利に
展開
→開発途上国は自由貿易体制下でも保
護される権利がある
③輸入代替工業化戦略=「経済的民族
自決」
→多くの途上国にとって歓迎された
④第三世界の中でも中国、インド、エ
ジプト等影響力の強い国が率先して
採用
輸入代替工業化
(Import-Substitution Industrialization)の特徴
輸入制限政策(輸入数量制限、高関税、外国
為替管理etc)を用いて輸入品を統制し、
その結果生まれた(保護された)国内市場を
自国企業によって生産を開始させながら、
輸入品を国内生産によって代替していく政策
cf.
・幼稚産業保護論
・保護政策
世界
市場
【輸入代替工業化の循環構造】
国内市場保護
世
界
市
場
へ
輸
出
工業製品に
対する輸入代替
国内市場で販売
最
終
消
費
財
生
産
輸入代替工業化の問題点
非効率性の拡大
保護政策の下での資本家の関心は、効率
向上より保護の継続、そのための政治活動
→政経癒着
①生産技術・企業経営上の無駄の制度化
→経済全体としての転換能力の喪失
②輸出競争力低下による国際収支の悪化
国内市場の狭隘に逢着
重化学工業部門には、規模の経済が
重要であるが、国内市場が狭いため
コスト面にマイナスに作用
→独占価格の設定
国
際
競
争
力
の
低
下
=
貿
易
収
支
の
悪
化
世界
市場
【輸入代替工業化の問題点
国内市場保護
世
界
市
場
へ
輸
出
工業製品に
対する輸入代替
市場の飽和
国内市場で販売
重化学工業化
最
終
消
費
財
生
産
輸入代替工業化の成功条件
①一次産品輸出の継続的増加
②内需の間断なき拡大
→工業製品の国内市場での持続的成長
輸入代替工業化の結果
①輸入代替工業化政策採用国の長期にわ
たる経済停滞
②70~80年代初頭にかけて輸出志向工業
化政策へ転換する国が増大
NICs(NIEs)の
登場がそれに拍車をかけた
輸出志向型工業化戦略
【特徴】
「工業製品の輸出を促進(=世界市場
に積極的に参入)することによって工
業化を達成しようとする戦略」
輸出志向工業化の構造
輸出
世界市場
輸出促進政策
外資導入政策
市場自由化
外資
輸出促進政策
輸
出
産
業
・直接補助金の交付
・事業所得税・法人税等
国内税の軽減・免除
・特恵的利子率の摘要
・適正為替レート維持
etc
市場自由化
・輸入規制障壁の撤廃
・輸出加工区の設置
外資導入
・外国投資の自由化
・投資優遇措置の供与
・輸出加工区・保税工業団地の整備
①「比較優位」に基づいた国際競争
力の強化が目的
②国内市場に開放することで外資を
積極的に導入
③国内外市場の格差拡大
輸出志向型工業化が成功した理由
①アブソーバー機能を果たしたアメリ
カ(市場)の存在
②一般特恵関税制度(Generalized
system of Preferences:GSP) の設
定
開発途上国の商品が輸出し易い国際環
境の条件が整っていた
成長のトライアングル構造
アジア
完成品
中間財
日本
アメリカ
③多国籍企業による直接投資効果
→途上国の貯蓄不足・低技術力をカバー
国際競争力の強い商品が途上国
でも生産されるようになった
NICsの登場がそれを実証
輸出志向型工業化政策の問題点
①工業化が特定の輸出製品に偏る
②輸出産業と国内産業とのリンケー
ジ(波及効果etc)が希薄
③新たな分業体制(垂直)の確立
輸入代替か輸出志向か
①輸入代替から輸出志向への政策転換の
インセンティブ
第1段階
第2段階
輸出志向(NIEs)
輸入代替
輸入代替
(中南米・ASEAN)
NIEs・ASEAN・中国の
「雁行型発展」の一要因
②輸入代替と輸出志向の混合型が中心
↓
バランスのとれた経済政策