前回のまとめ ・国民の約7割が第一次産業に従事 → 農業を通じた国の発展を考える必要性 ・植民地支配、独立を経たアフリカ農村の歴史 ・アフリカ稲×アジア稲の交配 by 西アフリカイネ開発協会(WARDA) → New Rice for Africa (ネリカ米) の誕生 =農村の貧困を削減する可能性 ・JICAネリカ米振興計画について、その問題点 JICAについて 【VISION】 すべての人々が恩恵を受ける、ダイナミックな開発 【MISSION】グローバル化に伴う課題への対応、公正な成長と貧困削減、 ガバナンスの改善、人間の安全保障の実現 【活動の指針】 1)統合効果の発揮(「援助の迅速な実施(Speed-up)」「援助効果の拡大(Scale-up)」「援助の 普及・展開(Spread-out)」) 2)現場主義を通じて複雑・困難な課題に機動的に対応 3)専門性の涵養と発揮 4)効率的かつ透明性の高い業務運営 【理事長】 田中明彦 【資本金】 7兆7,820億円 【創立年月日】平成15年10月1日 【常勤職員数】 1,842名(2013年3月末時点) 【組織の特徴】 地域別(ex.アフリカ部)・分野別(ex.農村開発部) 両方が存在 農業開発・農村開発の基本指針 ①安定した食糧の生産と供給(食糧安全保障)への支援 ②貧困問題への対応(農村開発) →アフリカ:稲作振興・半乾燥地域における天水農業 の改善・適切な水管理・持続的な営農システムの確立 が重点分野 →被援助国、国際機関(FAO,UNDPとの連携が)が課題 ※食糧の安全保障とは? ・・・予想できない要因によって食料の供給が影響を受けるような場合のために、食料 供給を確保するための対策や、その機動的な発動のあり方を検討し、いざというと きのために日ごろから準備をしておくこと。(日本・農林水産省の定義) ・・・全ての人が、常に活動的・健康的生活を営むために必要となる、必要十分で安全 で栄養価に富む食料を得ること。(国際連合食糧農業機関(FAO)の定義) 対ウガンダ援助方針 ウガンダ:地理的に重要な立地→地域統合の可能性・内陸の陸路・空路の拠点 →食料不足に悩む周辺諸国の食料供給地になりうる しかし・・・国全体の貧困削減が課題! 【大目標】成長を通じた貧困削減と地域格差是正の支援 【中目標)経済成長を実現するための環境整備・農村部の所得向上・生活環境整備 (保健・給水)・北部地域における平和構築 農村部の所得向上について・・・ ウガンダは肥沃な土壌と豊富な降水量に恵まれた農業に適した環境であり、労働力 人口の約8 割が農業に従事している。しかしながら、農業技術が未熟な上に、流通シ ステムが構築されていないため、農業生産性が低く農民層の所得向上に結びついてい ない。自給作物であり、かつ換金作物であるネリカ米を中心としたコメの増産や、一 村一品運動の活性化などを通じて農業生産性及び収益性を改善し、低所得の農民層の 所得向上を目指す。(引用) 研究開発の課題 持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)でネリカ米の開発が取り上げられる @ヨハネスブルグ、2008年 背景:2002年サブサハラ・アフリカにおける大規模な干ばつ・飢饉 (+1960年代のアフリカにおける農業革命において稲作の成長が遅れ気味) →食糧安全保障問題の顕在化 【品種育成段階の課題】 【普及段階の課題】 ・水田用品種の開発 ・種子増殖(種子選抜)及びそれを行う人材育成 ・土壌劣化への対応(マメ科作物との連作) ・肥料購入のためのクレジット制度導入 ・耐乾性・抵抗性の改善 ・種子生産の商業化(民間セクターへの移行) ・新技術吸収から普及へのタイムラグを縮小 ・普及員による農民への指導 市場アクセス・流通の課題 ・情報の流通が不十分(流通における中間業者(ex 精米業者)の搾取の危険) ・農道の整備・輸送手段の確保 ・精米以後の品質は生産設備の能力にかかっている→大量の収量=収穫の集約が必要 ・小規模の生産者が国内市場に参入できるような振興策や支援制度の整備 ・季節による価格変動の影響を受けないような流通システムが必要 cf.灌漑水稲作のアジア 農業開発から農村開発へ ・グローバル化する経済下において農業生産のみによって格差を縮小するには限界 ・ファーミング・システム(発展の手段ではなく人の生活の中心として農業を捉える) ・新技術が従来の農業形態(、社会、文化)に与える影響の考慮 →社会的弱者に対する新たな労働負担の可能性・農村社会の秩序を乱す危険 ex.台湾や中国によるガンビア川での灌漑稲作協力 伝統的に女性によって営まれてきた稲作 →換金作物化により土地の所有・利用に決定権を持つ男性のものに 国際社会に求められる取り組み 【アフリカのイニシアティブによる地域間協力】 ・アフリカの稲推進計画(ARI)→情報交換・技術協力による投資の節減 →さらなる地域統合の可能性 【国際的な支援体制】 ・WARDA:研究機関―ARI:普及―FAO:プログラム支援の強化 ・日本:稲作協力の経験を活かす ・農村開発のための実証事業を伴う開発調査の蓄積 今後の研究方針 ・コメ振興プロジェクト詳細の調査 ・アジアとの比較 アジアにおける緑の革命:問題点を洗い出し、ネリカ米普及に共通するものがないか調べる →アジアの緑の革命の経験をネリカ米振興プロジェクトに活かせないか考察 ・ネリカ米の導入がウガンダ国内市場、農村、経済構造に与える影響を考える →新品種によって発生した余剰労働力を都市がうまく吸収し、工業化につながれば一国の経済 発展が期待できる →都市の賃金上昇は農村への送金、農村所得の上昇も促す ・ネリカ米の技術を東アフリカ共同体へ移転する可能性(さらなる地域統合の模索) 国立作物資源研究所訪問に向けて (コメ振興プロジェクト報告書を読んだ上での疑問点の洗い出し) ・ウガンダ政府の法律や方針によってプロジェクト策定段階での自由度に制限が生まれるよう に感じられた。専門的な見地からプロジェクトの実施効果を高めるため、JICAからウガンダ 政府に政策提言を行ったり、それがウガンダ政府の方針に影響を与えたりすることは今ま でにあったか?また、援助の潮流が被援助国のオーナーシップ重視になったことでウガン ダ政府や現地スタッフとの関係性に何か変化はあったか? ・プロジェクトが始まる以前に中華人民共和国との協力で1,000ha 規模の大型灌漑水田が開 発されたそうだが、プロジェクトを通して中国の存在や影響を感じることはあったか? ・農家の脆弱性の一因として精米業者が流通を握っているという指摘があったが、精米業者が 農家の利益を搾取した事例はあるか?また、農家と流通業者の間にJICAが介入して権限 や利益を調整できる可能性はあるか? ・アジアにおける多収量品種の導入は、作物の生産量を劇的に増加させた一方で、種子の導 入は農家の経済力によるところが大きかったために、農村の格差を拡大させたというマイ ナス面も指摘された。ネリカ米の導入は低収入の農家にも可能か?貧しい農村にも普及す るような対策・取り組みは行われているか? 参考文献・サイト ・JICA『開発課題に対する効果的アプローチ』2004年 ・農林統計協会『緑の革命の稲・水・農民』1995年 ・JICA HP コメはアフリカを救えるか? http://www.jica.go.jp/topics/news/2012/20130315_01.html ・JICA HP 池上彰と考える!ビジネスパーソンの「国際貢献」入門 http://www.jica.go.jp/aboutoda/ikegami/04/p4.html ・JICA HP 農業開発・農村開発に関する取り組み http://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/approach.html ・ウガンダ共和国コメ振興プロジェクト詳細計画策定調査報告書 ・国際協力研究 Vol.18 No.2(通巻36号)2003.2 ネリカ米の研究開発・普及の展望と課題 ・JICA コメ増産プロジェクト ・アフリカの飢餓を救うネリカ米 国連開発計画(UNDP) ・JICA’s World 2008 November(スライド内の資料)
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