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自由企業経済における公共政策:
参考資料
2002年度企業論講義
川端 望
政治経済学としての公共政策論
 理論経済学的発想--「政府は経済に介入
すべきかどうか?」
 政府と経済はもともと別のものとされている
 政治経済学的発想--「個人と社会の関係は
どうなっているのか?」
 個人-社会(政府、市場、市民社会……)
 著者たちは経済学としては理論経済学をベースに
しながら、社会観は政治経済学に近い
アメリカにおける反トラストの伝統
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シャーマン反トラスト法(1890年)
クレイトン法(1914年)
連邦取引委員会法(1914年)
セラー・キーフォーバー法(クレイトン法改正)
(1950年)
反トラスト法の目的をめぐって
 競争を通じた効率性の増進(理論経済学的理
解)
 あらゆる論者はこの目的を認める。
 この目的しか認めない理論経済学者もいる
 経済権力の分散
 著者たちの見解
反トラスト政策批判(1)左派
 独占と組織化は不可避であるか、進歩的であ
ると評価する考え
 ニューディール
 政府の介入による需要と雇用創出。企業間・および
企業・政府間の協調と計画化による経済活性化。
 社会主義者
 独占資本の搾取と収奪に反対するが、生産の社会化
につながる独占傾向を阻止することは不可能と見る。
反トラスト政策批判(1)左派
 狭義の産業政策論
 成長産業・衰退産業を政府がピックアップして成
長や資源の移動を促す
 政府、経営者、労働者の協調体制
左派の協調主義に対する著者の反批判
 自由放任策のもとでは市場は自動的に最適
な結果をもたらさないという点では一致。
 組織されたグループ間の癒着による弊害
 巨大企業の非効率性
反トラスト政策批判(2)右派
 経済的ダーウィニストによる自由放任政策の
主張
 効率が高く、環境に適応したものが生き残るのだ
から、それが独占であろうと規制すべきではない
(勝者を罰するな)
 独占は継続性がない
 市場の失敗よりも政府の失敗の方がしばしば非
効率を招く
右派の自由放任策に対する著者の批判
 市場競争を促進すべきという点では一致
 巨大企業や独占体が、優れた成果ゆえに生き残って
いるという証拠はない
 社会的効率(競争機会の確保や省エネ)もまた重要
である
 寡占企業がふるう権力乱用
 政府の失敗は経済グループのロビーイングの結果で
ある(強者に勝手にルールを変えさせるな)
著者たちの結論
 決定論批判
 独占や巨大企業、巨大企業グループの形成は、
「グローバル競争ゆえに」「生き残りのために」「や
むを得ず」「どうしても必要」なものだという証拠は
ない。選択の問題だ。
著者たちの公共政策論の特徴
 政府の産業への関与の範囲
 競争政策・反独占政策(著者たちが主張)
 中小企業政策(著者たちはおそらく肯定)
 産業政策(著者たちはアメリカについては否定的)
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成長産業支援(既存大企業、ベンチャー)
幼稚産業の保護育成
衰退産業のソフトランディング
途上国での直接投資誘致
途上国での裾野産業育成
問題提起1:収穫逓増への評価と政策
 いったん優位を築くと、それが自己再強化され
るケース
 ネットワーク外部性
 産業集積の形成(ただし、ある程度発達すると集
積の不利益もはたらく)
 技術的規模の経済、固定費低減、学習効果でも
起こりうるが、異なる点もある
 初期条件のわずかな違いが大きな差を生む
 政策的含意の相違(次スライド)
問題提起1:収穫逓増への評価と政策
 その評価と政策
 独占成立後の独占的企業行動は反トラスト政策
の対象にできる(著者たちの視点)
 自己再強化の過程をどう評価すべきか
 現実には、自国企業が先行して優位を築けるように
政府は企業を支援する傾向があり、これを否定する
ことは現実的でない。
 技術的規模の経済や固定費低減との違い:支援策は
必ずしも巨額の資本投下ではなく、規格制定、知的所
有権防衛、企業誘致等々
問題提起2:公共政策を競争政策に限るこ
とは困難ではないか?
 長期的な成長性や外部効果の高い技術を持
つ産業での動態的比較優位追求
 Too Big To Failに対処した企業再生
 市場経済が未発達の途上国における産業育
成