持続的成功のための事業運営 ISO9004:2009の 品質マネジメントアプローチ Y.YONETO Nov.5, 2010 言語「Quality(品質)」が消えた 米国国家戦略プログラムである 「Baldrige National Quality Program」を、 「Baldrige Performance Excellence Program」に変更。 「Quality(品質)」はもはや企業活動の使命を反映しない。「 Performance Excellence(実行性の卓越さ)」を組織の全般的 なクオリティを反映する新しい言語として採用した。“biq Q”Qualityとも呼ばれた「Operational Excellence(業務運用の 卓越性)」をも意味する。 ただし、「マルコム・ボルドリッジ国家品質賞」は存続する。 (アメリカ国立標準技術研究所の発表(10月5日)より) クオリティの変遷と国際規格 +検査(製品品質)MILなど +品質保証(顧客の便益を重視) 1987年 BSIのBS5750を国際規 格ISO9001に格上げ 1994年 マイナーチェンジ +品質マネジメント(品質保証を含む顧客満足の向上および継続 的改善)2000年版 2008年 マイナーチェンジ +持続的な成功のための品質マネジメント(組織のマネジメント 全般での成熟度を向上し、事業運営の卓越性を追求) 2009年 ISO9004 ISO9001を超えて 持続可能な企業 運営を目指す ISO9004:2009 持続的な成功とは? 規格作成者の一人の発表によると。世界では: 700年以上存続した企業 4社 350年以上 200〜300社 100年以上 数千社 1年以内に消滅した企業 数えられない 日本では、創業100年を超える企業が2万2千社もある。 「時代を超えて長期に永続すること」を意味する。 持続的成功の秘訣とは? 全体論的(holistic)体系的なアプローチ: + + + + 長期的戦略をたてる 外部環境の変化を読み取る 自社の内部状況と、強みと弱みを可視化 どの利害関係者に何をするのかを見極める。均衡を図りな がら異なった利害関係者を満足させる + 新しく生まれくるニーズに適応させる戦略を創造し実施する + 学習する能力を高め変化に対応して敏捷さ(スピード、変革、 柔軟性)を身につける ISO9004:2009のガイドライン 「持続的成功を求めて」より ISO9004:2009の基本的アプローチ + ISO9001品質マネジメントシステムの改善を容易にする + 以下のような品質マネジメントシステムを組織が構築するためのガイド ラインを提供する ++ 組織が提供する製品を通じて、顧客価値を創造する ++ 全ての利害関係者の価値を創造する ++ 全ての利害関係者の観点からの均衡を図る +組織を長期的な成功に導くように経営者に対し指針を提供すること + 現有する品質マネジメントシステムに上乗せできるように両立性を持た せる マネジメントシステムの一般的な事例 組織のゴール 戦略の策定 戦略の実践 指針となる原理原則 ISO9004:2009のガイドライン 「持続的成功を求めて」より 品質マネジメント原則を踏襲しつつも それ以外も + 倫理的/社会的側面 + 組織のミッションとビジョン + 融通性/迅速性(変化する機会と脅威 に対応する能力) + ナレッジ・マネジメント + 他のマネジメントシステムとの連携 + 目標と行動を結果への結合 + 戦略と企業風土との同調 ISO 9004:2009が意図していないこと + ISO9001の実践ガイド + 認証取得を目的にした要求事項の列挙 + (企業風土を作り替える大掛かりな取り組みが必 要な)シックスシグマなどのエクセレントビジネス モデル + 全社的品質改善活動(TQM)の教科書 + 試されたことのないアプローチや手法の情報源 ISO9004:2009モデル 組織の持続的成功のための経営 重要なポイント(ただし、組織により異なる) + トップ経営者の品質マネジメントアプローチを採用し、マネジメ ント原則を厳守 + 組織は顧客だけでなくその他の利害関係者に依存しているこ との強い認識 + 均衡を図りながら利害関係者のニーズと期待を充足 + 組織内の人々の大切さの認識(将来必要となる人材を含む) + 供給者/パートナーの活用と関係強化 + 中長期のリスク分析と緩和策(ISO31000) + 変化を続ける企業環境のモニタリングと分析 + 利害関係者間の利害衝突を回避 + 倫理面での社会的責任の重視 + 透明性の確保 成功へ導くツールの活用 明確な目標とゴール 具体的な戦略と尺度 リスクと成果 アプローチ ツール箱 ISO9004:2009のガイドライン 「持続的成功を求めて」より ISO9004の自己評価 +品質マネジメント・システムの全体、もしくは一部に適用 +短時間で完成させられる +二つのタイプ 経営者自身 管理職などのチーム、個人 +マネジメント成熟度と改善余地の優先順位の可視化 +世界クラスの業績に向けて成熟させる 自己評価の分担分野 トップ経営者 管理職 +ビジネス環境 +計画作成と業務プロセスの +利害関係のニーズと期待 管理 +ビジネス自身、主要業績指 標、改善、変革および学習 +戦略と方針の策定 +計画作成と業務プロセスと 組織構成への展開 +資源の管理、従業員の能力 開発と動機づけ +パートナーシップ、作業環境、 知識、情報、技術 自己評価 自己評価のレベル 1 2 3 4 5 初期段階 やや能動的 中間的 積極的 成功 製品を主体 的に観る QMSは構築・ 実践している “出たとこ勝 負” 是正処置と 予防処置も 機能している プロセス・マ ネジメントを 実施(次工 程はお客 様) すべての利 害関係者に 焦点を当て て対応 顧客と利害 関係者の一 部に対応し た戦略に基 づいて運用 学習と知識 の共有に基 づいて継続 的改善を実 施 結果は予測 できない 改善活動は 顧客から強 制されて実施 すでに長期 間良好な業 績を残し、 今後も長期 的に繁栄を 良好な業績 遂げるだけ 結果は予測 結果が続い の力を有し 可能である ている ている マネジメント成熟度の可視化 持続的成功のための事業運営 改善、改革および 学習 戦略と方針 モニタリング、 測定及び分析 資源の管理 プロセス管理 戦略と方針 + トップ経営者のミッション(組織の存在理由)とビジョン(望まれる 姿)および(企業)価値の策定 + ミッションとビジョンを実現するために、戦略と方針を設定 + 企業環境をモニタリングし戦略と方針の適切性をレビュー + 効果的な戦略と方針を策定するためのプロセスを構築 + 戦略と方針の形成には顧客分析、法規制、製品、強みと弱み、 (新規事業などの)機会、(新規参入者などによる)脅威に配慮 + 戦略と方針を測定可能な目標に転換し全てのレベルに展開 + 目標達成に必要となる権限を移譲し達成のタイムラインを設定 + 戦略と方針のコミュニケーションを意味があり適時で継続的に 実施 戦略と方針(バランススコアカード) 中期的な戦略と方針を策定すること (バランススコアカードの事例) 戦略と方針の目標 戦略と方針の 具体的な目標を 定めること 資源のマネジメント 6.1 一般 6.2 財務的資源 6.3 組織内の人々 6.4 パートナーおよび供給者 6.5 インフラストラクチャー 6.6 作業環境 6.7 知識、情報および技術 6.8 天然資源 広範囲で詳細な内容だが、人的資源、供給者、知 識・情報・技術が重要。 組織内の人々 + ヒトが最も重要な資源との認識 + トップ経営者はリーダーシップを発揮して組織の目標を達成 することができるようにビジョンを共有し、内部環境を整備 + 個人の成長、学習、知識移転およびチームワークを促進 + 計画的で透明で倫理的で社会責任を果たすアプローチに 基づく「人々のマネジメント」を提唱 + 人々の能力向上のための「従業員能力開発プラン」と関連 プロセスの作成 + 顧客/利害関係者への価値創造活動の重要性を認識する よう人々の参画と動機付けを強調 パートナーおよび供給者 + パートナーとは、製品の供給者、サービス提供者、技術/財 務研究機関、政府/非政府機関など + パートナーシップとは、組織の活動で生じる利益や損失を 共有できる間柄 + パートナーへの情報提供を最大化し、情報、知識、経験、 技術、プロセス、教育の面で支援し、パートナーの業績を向 上させる + パートナー/供給者の選択では、価値創造での組織への 貢献能力、継続的に能力を向上する潜在力、自身の能力向 上強化、関係を維持する上でのリスク評価を考慮 + 短期/長期の目標に配慮して、継続的な関係の見直しと強 化 国境を超えたサプライチェーンの急速な進展を考慮すると、 新しいマネジメントアプローチの規格化が求められている プロセスの管理 + アウトソーシングを含めて全てのプロセスを能動的に管 理し目標を達成する(工程管理) + 全てのプロセスネットワークを一つのシステムとして管理 (プロセスマップを用いた「マネジメントへの システムアプローチ」と呼ばれる) + 製品の提供に必要なプロセスを組織の戦略に沿って定 め、マネジメント活動、経営資源の提供、製品の実現、モニ タリング、測定及びレビュー活動に対処。 (ISO9001の活用) + プロセスマネジャー(プロセスオーナーとも呼ばれる)の責任、 権限及び役割の明確化 + 個別のプロセスに関わる人々の業務達成能力(力量)の 確保 世界規模で一般的に普及している 部門の壁を作らない 部門横断的に業務を行うことが効果的で効率のよい結果を生む (TC176委員会のプロセスアプローチに関するガイドラインより) 知識、情報および技術 + 知識、情報および技術を不可欠な経営資源と位置づけ(ナレッ ジ・マネジメントなどの)管理プロセスを設定/維持 + トップ経営者は現有の知識をいかにして明確化し保護するかの 評価を実施 + トップ経営者は現在と将来必要となる知識を内部/外部からいか にして入手するかを考慮する責任 + 信頼でき役立つデータを収集し、意思決定に利用できるデータに 変換するためのプロセスを設定。蓄積、セキュリティ、保護 (ISO27000)などを含む。 + 組織の業績を強化するための技術的選択肢を考慮。製品の実現、 マーケティング、顧客との交流、供給者との関係、アウトソースされ たプロセスなど。 モニタリング、測定、分析およびレビュー + トップ経営者は組織環境のモニタリングプロセスを確立・維持し、利害関 係者のニーズと期待、新規市場や技術など広範囲の情報を収集 + ミッション、ビジョン、方針、戦略と目標の達成度/進捗度を評価するため の測定/分析に必要なプロセスの策定 + 重要業績評価指標(KPI)の設定とモニタリング手法(バランススコアカー ドなど)の活用 + KPIsは戦略と方針と整合。ただし、業種、規模、製品、プロセスや活動に 適切なこと + 内部監査はQMSやEMSなどの効果を評価するだけではなく、組織の成 果をも評価するツール。組織全体での改善を必要とする問題点を明確化 + 自己評価による成熟度測定により組織の強みと弱みを可視化。改善も しくは変革の優先順位の決定。(ISO10014:2006 財務的経済的ベネフィット のための指針) + ベンチマーキングは、組織内外でのベストプラクティスを探し出し改善、 変革 、学習の機会の明確化 + 組織環境を分析しリスクと機会を明確に + 得られた情報をレビューし意思決定に活用 ベンチマーキング 米国航空会社 の事例 「顧客第二主義」 「従業員の満足第一主義」 のポリシーが有名。 従業員の高いモチベーション があってこそ「顧客満足」は から生まれる。 ユニークな 低価格航空会社だが 業績は良好 改善、変革および学習 + 改善は現存の機能に基く継続的な行為(継続的改善)。 変革は現存の基盤を建設的に否定した新しい枠組み + 企業環境の潜在的な変化を予測し、必要とあらばリスク緩 和を図る予防処置の準備も + 「組織としての学習」は組織内外の出来事/情報を収集・ 分析 + 「個々人の能力を組織の能力と統合しながら学習」する文 化を定着させ改善の機会を発見(ナレッジ・マネジメントの概 念) 継続的改善と変革 日常業務に組み込ま れた小さな改善 現状打破のための プロジェクト 一言で表現すれば ISO9004:2009 アプローチとツール を活用 ISO9001 のレベル 統合化された システム 成功へのロードマップ 出発点 顧客 株主、サプライヤー など利害関係者 従業員 供給者 地域社会 戦略的方 向 と展望を策 定 コミュニケー ション、教育 、顧客との関 係 コスト、無駄 の除去、製 品とプロセ ス、顧客関 係、供給者 との関係の 改善 学習と変革 の力を高め 顧客関係、 供給者との 関係、人び との能力、 地域社会と の関係の改 善 変革と改善 によって顧 客関係、供 給者との関 係、人びと の多様性、 利害関係者 、地域社会 との関係を 最高に改善 グローバルに展開できるシステムの共通化 ISO9001とISO14001と の統合は当然のこと、 さらに、 情報セキュリティ ( ISO27000) リスク分析(ISO31000) 労働安全衛生 (OHSAS18001) 社会的責任 (ISO26000) 自己評価ISO10014 ミッションとビジョン 戦略的目標 事 業 部 事 業 部 事 業 部 品質マネジメント 環境マネジメント 安全衛生マネジメント コア規格案 ISO Management System 2009 Sept-Oct おわりに THE PEOPLE WORK IN A SYSTEM. THE JOB OF THE MANAGER IS TO WORK ON THE SYSTEM TO IMPROVE IT, WITH THEIR HELP Myron Tribue 一般社員はシステムの中で仕事をする。マネジャーの 仕事とは、社員の助けを得ながら、今のシステムを改 善するためにシステムに関しての仕事をすることであ る。
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