知識管理事例 以下の事例は、 「特集:『ナレッジマネジメントとその支援技術』」 人工知能学会誌 Vol.16 No.1 2001/1 からの引用である。 国際食品商社C社(その1) (IBM社のコンサルティング事例) コンサルティングの概要 会社の概要 • 米国の国際食品商社。 • 42事業部門を抱える。 • 取り扱い品目は、トウモ ロコシ、穀物、塩、肥料、 食肉など多岐に渡って いる。 • 原材料だけでなく、全世 界に存在する800以上の 加工工場で、食料油や 加工品を製造。 • トレーダ・グループを対象。 • 需要と供給を対比させながら、輸送方法や天 候、競合価格などを考慮に入れて、実際の顧 客との取引を行う仕事に従事。 • 売買判断のための情報把握が最も重要。 • 平均的トレーダは、1日に250通もの電子メー ルを受け取っているが、全ての情報が価値あ るとは限らない。価値ある情報を発見するの に4時間もの時間をかけて電子メールを読む。 • 大豆粉製品が主力製品であり、この部門の 生産性を上げることがビジネスの成功に結び つく。 国際食品商社C社(その2) • 必要な情報は、グローバルな粉市場状況、先物市場ニュース、毎日 の市場状況、輸送状況、顧客が抱えている課題、事務管理情報、他 の商品プレミアム市場状況、航空運賃情報、世界の天候、処理の確 認、仕事上の課題、加工工場の状況、経済分析、外部からのニュー スなど。 • 各人が自分流のやり方で電子メールや電話を使って仕事を行って おり、体系立てて把握する有効な手段を持っていなかった。 • 隔週の会議で問題や戦略を話し合っていたが、情報技術による情 報共有は行われていなかった。 • 自分が何かを知るとそれを関係者に送付、重要な場合は全員に メールを送るという「プッシュ」の考え方で行動していた。 国際食品商社C社(その3) (IBM社のコンサルティング内容) • 自分が欲しい情報(プル情報)と他者に提供したい情報(プッシュ情 報)に分類。 • 情報内容の分類 ①全員に知らすべき情報 ②個人的なニーズに基づく情報 ③体系だった情報として提供されるべき情報 ④それぞれの情報はどこに存在するのが最も使いやすいか • プル情報の仕組みの構築(各人が情報の種類によって役割分担) • 電子メール自動配信の仕組みの構築。 国際食品商社C社(その4) (IBM社のコンサルティング内容) • プル情報の仕組みの構築(各人が情報の種類によって役割分担) 情報発信者 情報仲介 情報受領 国際食品商社C社(その4) (IBM社のコンサルティング内容) • 電子メール自動配信の仕組みの構築。 1 1 3 3 情報受信者 2 分類 情報発信者 1 2 3 配信 4 情報仲介調整者 3 4 5 6 5 6 共有DB カテゴリ 4 5 6 国際食品商社C社(その5) (情報・知識共有の最適化による効果) ①役割分担による情報の流れの整理 情報発信者 情報仲介調整者 情報受信者 市場・物流情報 価格情報 変革の促進 ②情報・知識の効果的共有 メールからの重要情報の動的取り込み (テキストマイニング) 重要情報をイントラネット上に データベース化 ネットワーク上で ・インセンティブ ・知識データベース ・テキストマイニング ③創造的業務が可能に メール処理時間が1/3に減少 創造的業務増加 (検討討議、リスク管理向上) 顧客とのコミュニケーション増加 利益率増加(数億ドル) フェイスツーフェイスで 世界銀行のナレッジマネージメント戦略(その1) ①全社ナレッジマネージメントシステム(KMS)の継続的開発と展開 ②ヘルプデスク(知識を持つ個人や情報資源を明確にすることを支援する専 属要員)の設置 ③専門家の索引(個人が必要な知識を判別したり、知識の所在や専門家が 誰であるかを示す) ④開発案件の統計情報(主要部門毎の類似開発案件についての統計情報 の識別、活用。情報創造に必要な前提データの提供等) ⑤プロジェクト情報(世界銀行のプロジェクトに関する情報) ⑥対話空間(世界銀行のネットワーク間の話題に関するディスカッションの支 援) ⑦ベストプラクティスの共有(地域間でベストプラクティスを補足するためのプ ロセスの確保) ⑧外部とのアクセス手段の提供 世界銀行のナレッジマネージメント戦略(その2) 世界銀行におけるナレッジサイクル 成文化・蓄積 個人 収集・生成 リーダー コンピ シップ 情報技術 タンス アクセス、伝達 企業文化 活用 外部からの知識 知識獲得 知識継承 知識更新 組織 データ 情報 データ 情報 破棄 Eureka(パロアルト研究所) • 複写機やプリンタの保守サービス技術者の「マニュアルに載ってい ないコツのメモ(技術者たちは、カンニングペーパと呼ぶ)」を共有し、 活用するシステムに高める。 • 関連する部門、グループ、担当者、マネージャに詳細なインタビュー と現場観察を行って、仕組みを作る。 • 世界中のサービス技術者に名前が知られる名誉がインセンティブに なる。 • プログラム化されたタスクをこなす「スキルワーカ」ではなく、期待成 果によって仕事を行う労働者「ナレッジワーカ」が大きな役割を持つ。 すなわち自分たちの仕事は「コピー機を直す」ことではなく、「新たな マシントラブルの解決策を考え出す」ことを目的として仕事を行う技 術者が成功を収める。 DocuShare(The Wilson Center) • ゼロックスの複写技術の研究所(The Wilson Center)の Communities of Practiceに集まる機械工学、化学、物理学の研究 者たちが、組織を越えて容易に情報・知識を共有するために自然発 生的に作ったツールが商品化されたもの。 • Webブラウザで簡単に情報の格納・検索ができるHttpプロトコルを 用いたシンプルなドキュメントサーバ。 • アクセス制御の設定は、各エンドユーザに権限委譲される。 ICM/Asset Web(IBM) 知的資本管理(Intellectual Capital Management) • 知的資本とは、①方法論(手法)、②フレームワーク、③プロジェクト進捗 状況、④アイディア、⑤経験などを構造化・仕様化したものをいう。 • これらの知的資本の管理と共有を行うインフラストラクチャとして開発。 金銭的 個人目標設定とのリンク インセンティブ 評価指標 リーダシップ リーダシップ 役割の明確化 役割の明確化 プロセス KM実行プロセス 組織 テクノロジ ビジョン/戦略/共通の価値観 KMアプリケーション KM支援プロセス 全役員、社員への周知徹底 コンピテンシー・ネットワーク, バーチャル・ルーム ジャストシステム(その1) 企画部門 顧客対応メモ 気づきメモ Know Who システム (CBSDK) アイディア アイディアメモ 企画書 (完成) 消費者 作成中 の 企画書 製品企画書 Search 類似検索 企画 企画 調査レポート (部品も含む) 各種調査 マーケッティング 企業情報 アンケート Internet上の 情報・データ 記事データ 情報購入 マーケット ニュース 自動要約オプション (CB Summarizer) ジャストシステム(その2) 問い合わせDB オペレータ 顧客 苦情・問合せ メール 広報 営業 広報 顧客 分類コード 付加 要望 製品開発 不具合 品質管理 故障 メンテナンス Classifier 結果一覧 企画 関連会社 関連会社 富士通(その1) マネジメント情報 情報ギャップ 組織構成 プロジェクト情報 情報ギャップ Solution Net(富士通) Knowledge Base 顧客 商品・サービス 体系化された知識 (パッケージ化された知識) 営業/販売 ネットワーク 企画/設計/開発 事務/業務 形式化・汎用化 知 識 の 提 供 整理された知識 ベストプラクティス 形式化・汎用化 日報、 議事録、 実作業で生れる知識 マネージャ 知識の獲得 設計書、提案書、 メールなど 富士通の統合化モデル 基本モデルⅢ マイニング型 基本モデルⅣ 作業支援 データ 処理 既存情報システム SCM 検索型 EC 基本モデルⅡ SFA コミュニケーション型 CRM K M 基 本 モ デ ル 基本モデルⅠ 知識情報共有システム(KIDS):東芝(その1) 対話インターフェース 知識情報 応答 質問 対話IF 登録IF 自然言語/GUI 対話管理 意図理解/応答生成 HIウェア 音声認識、文字認識、 音声合成、タグ付け 構造化 情報 インデキシング 検索 マルチデータベース 知識ベース 人事DB 組織 文書 知識データベース ノウハウベース 知識情報構造化 知識情報共有システム(KIDS):東芝(その2) 入力: 「国際学会などで英語で発表する場合、口頭発表原稿を準備してネイティブに読んでも らって録音するとよい」 文脈推定知識 形態素解析 文脈推定 + 構造化 構造情報 形態素パターン (動詞)+場合 (助詞)+よい 意味要素 状況 コツ 重み 1 1 語彙知識 上位/下位 同義語 重要語/不要語 文脈要素 状況 : 国際学会などで英語で発表する場合、 キーワード: 国際学会(イベント) 英語(言語) 発表(行為) コツ : 口頭発表原稿を準備してネイティブに読んでもらって録音するとよい キーワード: 口頭発表原稿(文書) ネイティブ(人) 録音(行為) 知識情報共有システム(KIDS):東芝(その3) 知識ベースとノウハウベースの比較 知識ベース ノウハウベース 体系化/構造化 非体系化 コンピュータが問題解決に利用 人間が理解可能 専門化が業務分析して構築 組織メンバーから獲得
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