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2008年度 冬学期 宇宙科学II
X線天文学を通して学ぶ基礎的な物理と数学
第一回ガイダンス(2008年10月6日)
宇宙航空研究開発機構
宇宙科学研究本部
海老沢 研
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今日話すこと
• 講義について
– 講義の紹介、内容、方法
– 評価、試験の方法
• 講師自己紹介
– 経歴とか、今やっている研究とか
• JAXA/宇宙科学研究本部の紹介
• 天文学の研究について
– 天文学者という職業、私の職場(宇宙科学研究本部)の紹介
• X線天文学について
– 歴史と発展
• 研究発表の例 (先週海外であった研究会から)
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講義の紹介
• 宇宙科学II、1年理科、2年理科対象
– 開講されている3つのコマのうちのひとつ
• このコマは、東大教養の教官「以外」の、異なる
分野の天文学研究者が持ち回りで担当
– 今までは天文台の家さん(光赤外天文学)、井上允
さん(電波天文学)、宇宙研の井上一さん(X線天文
学)
– 宇宙地球部会の蜂巣さん(宇宙科学I担当)から声を
掛けられた
• 私の講義は本年度が二年め
– 基本的に昨年度の内容を踏襲
– いくつか新しいことをやる予定
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講義の内容
• わかりやすい講義を目指します
– 私の教養時代の講義が非常に難解だったので
– 数学も物理も具体的な例があるとわかりやすい
– 宇宙科学の研究を例にとります
• 私が大学1,2年の頃、こういう講義があったら
よかったな、というもの
– 教養課程で学ぶ数学や物理が、何に使われるか
わからなかった
– 第一線の研究の現場の雰囲気を知りたかった
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講義の内容
• 講義題目:X線天文学を通して学ぶ基礎的な物理と数学
• 授業の目標:
大学の1、2年生で学ぶ基礎的な物理学や数学が、最前
線の宇宙科学、特にX線天文学の研究現場でどのように
使われているか、具体的な例を通して学習する。
本講義が学生諸君が受講している物理・数学の講義の
復習または予習になり、実際的な問題に触れることに
よって物理と数学の理解が深まることを期待している。
中性子星やブラックホールなど、X線天文学の主な観測
対象について学習するだけでなく、人工衛星、衛星運用、
データ処理など、X線天文学の観測研究を遂行するため
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に研究者が日々直面している課題についても紹介する。
講義の方法
• ホームページで講義予定を適宜更新
– http://plain.isas.jaxa.jp/~ebisawa/TEACHING/2008Uni
vTokyo.html
• 昨年度のページも参考にしてください
– http://plain.isas.jaxa.jp/~ebisawa/TEACHING/2007Uni
vTokyo.html
• 講義後に板書を整理したノートをアップロードします
– 昨年度の講義とあまり変わらなくても、新たに載せます
– 復習できるように
– 講義を休んでもわかるように
• 全講義が終わった後、まとめて全ノートをアップロー
ドします
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講義の方法
• 板書を使う
– 学生諸君には自分の手でノートを取っていただきたい
– 手を動かすことで理解が深まる
– グラフが描けてA4の出力を張り付けられる方眼で大判の
ノートが便利
– 私はフランスのClairefontaine社製を愛用
• 計算機を持ってくるように
– 理科系の学生はいつも計算機を持ち歩くのが望ましい
– 私はカシオのポケコン(FX-860P)を愛用
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評価、試験の方法
• 年度末に試験を行います
– 厳密に点数をつけます
– できるだけ不合格は出したくないですが…
• 難しくないけれども、講義を理解していないとで
きない問題
• 講義の中で不定期に、試験に出そうと考えて
いる内容を言うつもり
– 大事なポイントは覚えておいてほしいから
– 出席は取らないが、講義には出たほうが良い
• 昨年度の試験問題を参考にしてください
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その他連絡事項
• 冬休みに、宇宙科学研究本部の見学を予定
– 昨年度は講義期間中だったため駒場の学生は参加できなかっ
た
– 小田急線相模大野からバス、または横浜線淵野辺駅からバス
または徒歩
– 駒場キャンパスから1時間20分くらい
– 単位とは関係なく
– 講義を取っていない人も歓迎します
– ロビーだけなら、一般公開しています
– 一般の人は入れない、衛星の運用室、クリーンルームなどをお
見せすることができます
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講師自己紹介
• 1980年 京都大学理学部入学
• 1986年 東京大学大学院理学研究科、天文学専攻
入学
– 宇宙科学研究所でX線天文学を専攻
– 1987年度までは駒場、1988年度から相模原
– 1987年2月に打ち上げられた「ぎんが」衛星を使って修士
論文、博士論文を執筆研究
• 1991年 博士号取得
– “Spectral Variation of Black Hole Candidates
Observed with Ginga”
• 1991年~1992年 宇宙科学研究所でポスドク(日
本学術振興会特別研究員)
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講師自己紹介
• 1992年~2001年 メリーランド州、NASA/Goddard Space
Flight Center
– 日米共同の、あすか衛星、Astro-E衛星の仕事
– http://heasarc.gsfc.nasa.gov
• 2001年~2004年 ジュネーブ、INTEGRALサイエンスデータ
センター
– ヨーロッパのINTEGRAL衛星の仕事
– http://isdc.unige.ch
• 2005年7月まで、またNASA/GSFCへ
• 2005年8月から 宇宙科学研究本部
– 宇宙科学情報解析研究系で、主にX線天文学の研究
– 科学衛星運用・データ利用センターで科学衛星アーカイブスの開発
– http://plain.isas.jaxa.jp/~ebisawa
• 東京大学大学院天文学教室併任教官
– 大学院生募集中!
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世界中にいろいろな天文衛星データセンターがある
1962
X線天文学の誕生
私の歩んできた道
1987
Chandraデータセンター(アメリカ)
http://cxc.harvard.edu
Data Archives and Transmission System
(宇宙研) http://darts.isas.jaxa.jp
2005
1992
INTEGRALデータセンター(スイス) 2004
http://isdc.unige.ch
BeppoSAXデータセンター(イタリア)
http://bepposax.gsfc.nasa.gov/bepposax/
2001
HEASARC(アメリカ)
http://heasarc.gsfc.nasa.gov
XMM-Newtonデータセンター(スペイン)
http://xmm.vilspa.esa.es
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講師の専門
• 主にX線天文学
– 日本、アメリカ、ヨーロッパの人工衛星を使ったX線観測
– 地上からの近赤外線観測
• 興味を持っている問題
– 中質量ブラックホールは存在するだろうか?
• 10太陽質量以下、100万太陽質量以上のブラックホールの存在は疑いない
• 100から1000太陽質量のブラックホールは存在するだろうか?
– 天の川銀河のリッジ (尾根)からやってくるX線放射の起源は?
• 拡がった高温プラズマが星間空間を満たしているのだろうか?
• それとも、分解できないほどたくさんの暗い点源が存在するのだろうか?
– ブラックホールの周辺からの鉄輝線の起源は?
• ブラックホールのごく近傍から来て重力赤方偏移している?
• あるいはずっと遠方から発生している?
• 科学衛星アーカイブスの開発・運用
–
–
–
–
DARTS (Data Archives and Transmission System)
http://darts.isas.jaxa.jp
日本の科学衛星が取得したデータを世界中に無償で公開
世界中の研究者がそれを使って研究を行っている
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宇宙科学研究本部の紹介
• 宇宙科学の各分野(天文学、惑星科学、太陽科学、太
陽系地球科学)に渡って、人工衛星、気球、観測ロケッ
トを用いた研究
– 装置、衛星の開発、打ち上げから、それを使った研究まで
行っている
• 世界的には非常に小さな研究所、高いアクティビィ
ティーを誇る
– 正職員数、300人足らず
– 最近活躍している衛星は、はやぶさ(小惑星探査)、すざく(X
線天文)、あかり(赤外線天文)、ひので(太陽物理)など
• ご興味のある方は、いちど見学にいらしてください
– 普段はロビー(はやぶさの実物大模型など)のみ公開
– 毎年夏休みに盛大な一般公開
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宇宙科学研究本部の紹介
• http://www.isas.jaxa.jp/j/about/history/index.shtmlを参考に
• 東大生産技術研究所が母体
– 1955年ペンシルロケット実験、日本の宇宙開発の始まり
• 1964年 東大宇宙航空研究所
– 駒場キャンパス、現先端科学技術研究センター
• 1970年 日本で最初の人工衛星「おおすみ」打ち上げ成功
– 世界で4番目の衛星保有国
•
•
•
•
1981年 文部省 宇宙科学研究所
1988年 相模原に移転
2003年 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究本部
日本で唯一科学衛星の開発、打ち上げ、運用を行っている機関
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• 楽しい
天文学者という職業
– インフォーマルで気楽
• 服装はラフ、上下関係はいい加減
– 世界中、いろいろなところに行ける
• いろいろな国に友人ができる
– 美しい宇宙が研究の対象
• 自然の謎を解いたとき、何かを発見した時の喜び!
• 厳しい
– 激しい競争社会
• 研究の競争、ポストの競争、観測時間、研究費の取得
– 自然は簡単には真の姿を見せてくれない
• 研究というのは人生を賭けた自然との真剣勝負
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天文学者の仕事
• 研究開発
– 検出装置の開発
– 天文台、人工衛星の開発
• 観測研究
– 宇宙の観測、データの取得、データ解析
• 理論的研究
– モデルを計算、観測と比較、観測の予測
• 研究成果の発表
– 国際的な研究会等で発表、議論、学術論文の出版
– 宇宙の姿を少しずつ明らかにしていく
– 人類の自然に対する理解を深める
• 教育、啓蒙、広報、他の研究者のサポート
– 大学、大学院での授業、学生の指導 、一般講演など
– 天文台や人工衛星の運用
– ソフトウェアの開発、公開、データアーカイブスの開発
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検出装置、人工衛星の開発
宇宙研にて振動試験
宇宙研のクリーンルーム
•
あすか衛星(Astro-D)
•
すざく衛星
– 宇宙科学研究所、NASAの共同ミッション
– 宇宙科学研究所、NASAの共同ミッション
– 1993年宇宙研が打ち上げ、2000年大気圏再 – NASAで1980年代前半から開発してきた
X線検出器を搭載
突入
– データは今でも世界中の天文学者に使われ – 2005年7月10日に打ち上げ
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ている
人工衛星を使った観測
• NASAやESAに観測提案を提出
– 厳しい審査の結果、採択されると
観測できる
– 必要な研究費も支給される
• 高性能の衛星ほど競争率が高い
ESA XMM衛星
NASA チャンドラ衛星
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地上望遠鏡を使った観測
New Technology Telescope 口径3.6m
2002年7月、チリ、ヨーロッパ南天文台
天の川に見つけたX線天体の赤外線観測
ヨーロッパの天文学者が観測提案を提出
審査を経て、採択されると観測できる
旅費、滞在費はサポートされる
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すばる望遠鏡で観測
• 2007年、2008
年、銀河面の
暗いX線天体を
赤外線分光観
測
高エネルギーX線天体の
赤外線スペクトル
低温の星から予想される
一酸化炭素の吸収線!
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宇宙の研究と社会
• 税金を使って天文学研究や宇宙開発をする意義は?
– NASA
• Q:なぜ宇宙開発に膨大なお金を使うのか?もっと切実な社会問題を
解決するために使うべきではないのか?
• A:アメリカ連邦税のうち、1%だけがNASAに使われている。これだけ
で社会をいきなり良くする事はできないが、最先端の研究を行うこと
が、アメリカの将来への貴重な投資になる。
• 国を強くする。他国から尊敬される国になる。
– ESA(European Space Agency;ヨーロッパ宇宙機構)
• 非軍事目的に限った宇宙開発をたくさんの国が協力して行うことに
よって、一国が突出した宇宙の軍事利用に歯止めをかける
• たくさんの国々が協力して宇宙開発を行うことによって、
国どうしの信頼を高める(相互信頼醸成)
• 手の内を見せあうことによって、戦争を起こすことが難しくなる仕組み
をつくる
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天文学と社会
• 国際協力において天文学は大きなメリットがある
– 人類にとって普遍的な価値
• 宇宙は誰にとっても同じ
• 宗教、倫理的な問題がない(例えばクローン生物の研究は
むずかしい)
– 金儲けにならない
• 医学、生物学、化学、応用物理学などは産業に結びつく
• 天文データアーカイブスはすべて無料で公開
• お金になるデータベースはそうもいかない‥‥
– 軍事と直接は結びつかない
• たとえば原子核物理学は核兵器に応用できる
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天文衛星データアーカイブス
• 世界中だれでも、無料でいろいろな天文衛星データとソ
フトウェアをダウンロードできる
– インターネットにアクセスさえできれば、全く差別のない世界
• それを使って世界中の科学者が研究、学術成果を発表
する
• 人類共通の知的資産として永久に運用される
• JAXAの科学衛星データベースDARTS
– http://darts.isas.jaxa.jp
– ひので、あかり、すざくなど、JAXAの打ち上げた科学衛星の
データを世界中に公開
– 世界中の天文学者が使っている
– 基礎科学における日本の重大な貢献
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日米共同あすか衛星のデータを使った論文
•
•
1993年から2007年までに英文で出
版された査読付き論文1463本につい
て調査 (日本物理学会誌2008年9月
号より)
寿命は2736日、約二日の観測あたり
一本の論文
日本の論文1/3, アメリカの論文1/3
日米共同の論文1/6
日本、アメリカ以外の論文1/6
世界31ヶ国の研究者があすか衛星をつかった論文を出版している
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これからの天文学と社会
• 国際協力の重要性
– 国際的なプロジェクトを計画、国際プロジェクトに参加
– プロジェクトや研究のために日本に外国人を招く
– 日本が先導して、人類の自然に対する理解を深める
• 世界の平和と安定に貢献
– 宇宙の平和利用に限った国際協力を行う(アメリカ、
ヨーロッパ、アジアの国々と)
– 政治的に不安定な東アジア地域の緊張緩和、信頼
醸成
– 日本の国益、安全保障にも役に立つ
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X線天文学について
• 「高エネルギー」天文学
– 宇宙からやってくる高いエネルギーを持った光(X線、ガンマ線)を観測し
て行う天文学研究
• X線天文学
– ~0.1 keV ~ 100 keVのX線を使う
• ガンマ線天文学
– ~100 keV ~ MeV ~GeV~TeVのガンマ線を使う
– X線もガンマ線も大気で吸収されてしまう
• スペースで観測する必要がある
– TeV領域の超高エネルギーガンマ線は大気のチェレンコフ光を地上で観測
• 宇宙開発と共にX線、ガンマ線天文学が発展
– X線天文学は40年以上の歴史があり、成熟している
• X線のほうがガンマ線より測定が容易
– ガンマ線の透過力が高すぎる!
– 重いガンマ線観測装置をスペースに持っていくのは大変
• X線の測定装置は洗練されている(たとえばCCDカメラ)
– より詳細な天文観測ができる
• X線分光により、重元素の原子の電離状態がわかる
– 炭素、窒素、酸素、鉄等のスペクトル線の観測
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1962年 X線天文学の誕生
• レントゲンが1895年、X線を発見
• 宇宙からのX線は大気圏外に出ないと観測できない
• 1962年以前は、X線を出す天体の存在は知られてい
なかった
• 1962年6月18日…
– ジャコーニらが放射線検出装置を搭載したロケットを打ち上
げ
– 月による太陽からのX線反射の観測が目的
• 月のX線は暗すぎて観測できなかった Highlights of the ROSAT mission
• 1990年になって高感度のROSAT衛星で初めて観測できた
– 全天で一番明るいX線源Sco X-1を偶然発見
– X線天文学の誕生!
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Rossi Prize(アメリカ天文学会)
Rossi XTE (RXTE)衛星
29
より詳しく知りたい人はこちらへ↓
http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/2002/phyadv02.pdf
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初期のX線天文学
• 宇宙開発の進歩
–
–
–
–
1957年、最初の人工衛星スプートニク(ソ連)打ち上げ
1958年、アメリカのエクスプローラ1号
各国から人工衛星が次々と打ち上げられる(おおすみ,1970年)
スペースからの宇宙観測の黎明期
• 人工衛星以前はロケットと気球によるX線観測の時代
– 宇宙からのX線を検出する「実験物理学」
• すだれコリメーター(modulation collimator)の発明(小田稔)
– X線鏡による結像は(当時は)不可能
– 二つの「すだれ」を平行して配置して動かす
• X線天体が見え隠れする様子から正確な位置がわかる
• 可視光による同定が可能になった
• X線星の正体が徐々に明らかになっていった
– 白色矮星、中性子星、ブラックホールに物が落ちるときの重力エネル
ギーがX線に変換される
– Sco X-1は中性子星
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– Cyg X-1はブラックホール
1970年Uhuru衛星(アメリカ)打ち上げ
•
•
•
•
•
世界最初のX線天文衛星
ケニア沖から打ち上げ、スワヒリ語で「希望」
すだれコリメーターを搭載して全天観測
339個のX線天体を発見
本格的なX線天文学の幕開け
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1970年Uhuru衛星(アメリカ)打ち上げ
Uhuruカタログ、第4版(最終版) ソース名は4U****+/-****
•ほとんどが銀河系(天の川)内の中性子星かブラックホール
•そのほかに銀河、活動的銀河中心核、銀河団からX線を発見33
1970年代
• 多くのX線天文衛星が欧米諸国から打ち上げられた
– Copernicus, Ariel-5, ANS, SAS-3,OSO-7,OSO-8,
Cos-b,HEAO1
– Uhuruが発見した天体をさらに詳細に研究
– HEAO1は2keVより高いエネルギー帯で全天サベイ
• これ以降、>2keVの全天サベイ衛星は存在しない
• 日本初の天文衛星CORSA-Aの失敗(1977年)
• 「はくちょう」(CORSA-B;1979年)
– 日本で最初の天文衛星
– すだれコリメーターによるX線バースターの観測
– 明るいX線源しか観測できなかった
• エネルギーバンドは二バンドだけ
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宇宙研ウェブページによる
各科学衛星の紹介
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宇宙研ウェブページによる
各科学衛星の紹介
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1970年代~80年代
• Einstein Observatory(アメリカ、1979年)
– X線鏡を積んだ初めての結像衛星 (<4 keVのみ)
– 飛躍的に感度が向上
– X線「天文学」として確立した学問へ
• 「普通の天体」をX線で観測できるようになった
– 主系列星、銀河、超新星残骸など
– きれいなX線像が撮れるようになった
Einstein衛星による
超新星残骸白鳥座ループ
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Astro-Aは太陽X線衛星
「ひのとり」
1980年代
二機目の日本のX線天文衛星
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6.4 keV鉄輝線
「てんま」衛星:エネルギー分
解能にすぐれた観測
鉄輝線(6.4~6.9 keV)を多くの
天体から発見
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1980年代
• EXOSAT(ESA,1983年)
– 観測時間を広く開放(ヨーロッパに限る)
• 公募制の採用
– 「ゲストオブザーバー 」の誕生
• 衛星や検出器の開発に参加せず、データ解析を行って
論文を書くX線天文学者が増えてきた
• X線天文学の裾野を広げた
– データアーカイブスの先駆け
• 今でもデータ解析可能
– 汎用ソフトウェアの整備
• 改良を重ねて今でも使われているソフトウェアがある
(xspecなど)
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1980年代後半
• アメリカ、ヨーロッパのX線天文学は冬の時代
– 1986年、スペースシャトルの事故によりNASAの計画は凍結
– ヨーロッパは、X-ray Multi-mirror Mission (XMM)の準備
• Mir-Kvant(ソ連、1987年)
– ソ連以外の研究者が使うことはほとんど不可能
• 「ぎんが」(1987年)
– 大面積の比例計数管、高い感度、早い時間分解能
• イギリス(レスター大学)との共同開発
– 精度の高い機器較正
– 日本の衛星では初めてプロポーザル制を採用
– アメリカ、ヨーロッパに観測時間を開放
• 宇宙研に、アメリカ、ヨーロッパの研究者が滞在
• 日本、アメリカ、ヨーロッパから450本以上の投稿論文が出版
41
42
1990年代
• ROSAT(ドイツ、アメリカ、1990年)
– Einstein衛星よりも高感度の結像衛星(<2 keV)
– 全天サベイを行った最後のX線天文衛星
• 標準的な全天X線源カタログを作成 (RXJ**+/-**)
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1990年代
• CGRO(アメリカ、1991年)
– 最初の本格的なガンマ線天文台
– 4つの検出器を搭載、50 keVから~GeVまで広い
範囲のガンマ線を観測
– ガンマ線天文学の確立
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1990年代
• あすか(1993年)
–
–
–
–
Advanced Satellite for Cosmology and Astrophysics (ASCA)
最初の日米共同X線ミッション
日本の衛星にアメリカ製のミラーとCCDを搭載
初めての>2keVでのX線結像
• 透過力の強い高エネルギーX線による結像は技術的に困難
– 初めてのX線CCD(過去最高のエネルギー分解能)
– データアーカイブス、ユーザーサポートはアメリカが担当
– データの占有権をはっきりと規定(日本の衛星では初めて)
• 観測者の占有権が切れた後、データをアーカイブスにいれて世界中に無
償で公開
– 1460本以上の査読つき論文が出版されている
45
46
1990年代後半
• RXTE(1995年、アメリカ)
– 「ぎんが」以上に大面積の比例計数管
– 機動力に富む観測、オープンなポリシー
– 全天モニターデータはただちに公開
– 突発現象の観測データもただちに公開
• BeppoSAX(1996年、イタリア、オランダ)
– 複数の検出器で広いエネルギー範囲(0.1300keV)をカバー
– ガンマ線バーストのX線残光を発見
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2000年代
• 巨大「X線天文台」の時代
– Chandra(アメリカ、1999年)
• 史上最高(今後10年以上?)の位置分解能(~0.5秒角)と
感度
– XMM-Newton(ESA,1999年)
• Chandraをはるかにしのぐ有効面積
– Astro-E1(日本、アメリカ、2000年、打ち上げ失敗)
• アメリカでは、1980年代前半からX線マイクロカロリメー
ターを開発
• 65 mKまで冷やしたチップにX線光子一つが入力、その
温度上昇を測定、光子のエネルギーを精密に決定
• マイクロカロリメーターを最初に搭載したX線天文衛星
• 史上最高のエネルギー分解能を実現するはずだった 48
Astro-E2(すざく)
• Astro-E1とほぼ同じデザイン
• いくつかの改良
• XRS (X-ray Spectrometer)
– マイクロカロリメーター, エネルギー分解能(半値幅)~6 eV
• XIS (X-ray Imaging Spectrometer)
– 4つのCCDカメラ, 3 つの前面入射型チップ (FI), 1 つの後面
入射型チップ(BI)
– BIチップは、 Chandra、XMMにまさる感度とエネルギー分
解能
• HXD (Hard X-ray Detector)
– ~700 keVまでの高エネルギーX線の観測
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X線望遠鏡
XRSマイクロカロリメーターチップ
XRSネオンタンク
50
XIS CCD カメラ
HXD
51
5台のミラー
1台がXRS(カロリメーター)
4台がXIS(CCD)
XRS Neon tank
4台のXIS(CCDカメラ)
Hard X-ray Detector (HXD)
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光学ベンチ
HXD
XRSネオンタンク
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「すざく」の打ち上げ成功!
• 2005年7月10日 打ち上げのムービー
内之浦宇宙空間観測所
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「すざく」の状況
• 2005年8月8日、すべてのヘリウムが蒸発してしまっ
た
• XRSは天体観測不可能に…
– 原因は 蒸発したヘリウムの排気に関する設計不具合
– 衛星上で絶対温度零度近くまで冷やすことの技術的困難
– 未だ人類はマイクロカロリメーターによる宇宙の姿を見てい
ない…
• HXDとXISは完璧に動作している
– 広範囲のエネルギースペクトル
– 20 keV以上で最高感度
– 低エネルギー側で優れたエネルギー分解能
• 多くの優れた科学的成果を挙げつつある
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日本の次期X線衛星、Astro-H衛星
• Astro-Gは電波天文衛星(2012年度予定)
• 2013年度打ち上げ目標
– X線マイクロカロリメーターの実現
• (まだ)世界で最初のマイクロカロリメーターかもしれな
い
– ~70 keVまでカバーする高エネルギー反射鏡
• これも世界で初めて?
– ~1 MeVまでの最高感度によるガンマ線観測
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• 2008年10月、正式なプロジェクトとして認可
• 現在の大学1,2年生には理想的なタイミング
– Astro-Hの最新のデータで博士論文がかける!
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