平和研究Ⅰ 第2回 積極的平和と消極的平和

平和研究Ⅰ 第2回
積極的平和と消極的平和
2007年4月18日
広島平和研究所
水本和実
ガルトゥングの平和理論
• 平和とは何か?
かつての定義・・・「戦争」の不在
今日の定義・・・「暴力」の不在
「暴力」とは何か?
• 「直接的暴力」と「間接的暴力」
• 直接的暴力=戦争、大量虐殺(ジェノサ
イド)、紛争、内戦、テロ、身近な暴力
• 間接的暴力=貧困、病気、精神的抑
圧、基本的人権の欠如、差別、福祉の
欠如
=構造的暴力
個人的暴力と構造的暴力
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物理的暴力と心理的暴力
制裁的暴力と誘導的暴力
被害者の存在する暴力と存在しない暴力
行為主体の存在する暴力と存在しない暴力
意図的な暴力と意図的でない暴力
明示的(観察できる)暴力と非明示的暴力
直接的暴力と消極的平和
• 行為主体による人為的暴力=直接的暴力
戦争、内戦、テロ、ジェノサイドなどにより
死や肉体的・心理的苦痛がもたらされる
• 直接的暴力の不在=消極的平和
間接的暴力(構造的暴力)と
積極的平和
• 行為主体が存在しない間接的暴力
=構造的暴力
貧困、差別、教育・福祉の機会の欠如
環境悪化、基本的人権の欠如
• 構造的暴力の不在=積極的平和
「暴力」とは何か
• 本来、実現可能であったはずの好ましい状態
(生命の安全、福祉、人権、経済的自由、教
育の機会、職業選択、自己実現)
と
• 実際に実現されている現実(生命の危険、福
祉や人権の欠如、貧困、教育や職業の機会
の欠如、自己実現の著しい妨害)
との間のギャップを生み出している原因
暴力の3形態
• 直接的暴力
• 構造的暴力(間接的暴力)
• 文化的暴力
暴力の存在を肯定する価値を支える
文化
平和の3形態
• 直接的平和(消極的平和)
• 構造的平和(積極的平和)
• 文化的平和
平和とは何か?
• あらゆる種類の暴力の否定
• 紛争・対立の平和的転換
対話が重要
• 人間の基本的必要が満たされた社会
生存、福祉、アイデンティティーの確立
自由
平和文化とは何か?
• 積極的平和を創り出すための
問題意識や能力
具体的行動
などを培う風土や土壌
• 暴力を肯定する価値観や文化(ゲーム、映画
など)、考え方、ライフスタイルを否定
• 平和教育とは「平和文化」を養う手段
健康と平和
• 健康を損ない、最悪の場合、人間に死をもた
らす病原体や病気
と
• 平和を損ない、最悪の場合、人間(社会)に
死(破壊)をもたらす暴力
には、類似性がある。健康を守るための考
え方を、平和を守るために応用できる。
健康と病原体・病気
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7.
病原体(健康を破壊する元凶)
抵抗力(免疫、健康を維持する力)
病気の不在(積極的健康)(1<2)
病気(1>2)
治療
病気の不在(消極的健康)⇒3へ
病気の継続⇒4(場合により死亡)
平和と暴力
1.
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6.
7.
暴力原因(平和を破壊する元凶)
平和的抵抗力(平和を維持する力)
暴力の不在(積極的平和)(1<2)
暴力による破壊(1>2)
治療(平和構築・平和回復)
暴力の不在(消極的平和)⇒3へ
暴力の継続⇒4(場合により破滅)
ある平和(紛争解決)の手段
• トランセンド法(Transcend Method)
Transcend=超越
紛争当事者の対立点を明確にし、
対話を通じて「妥協点」ではなく、
新たな創造的な解決法を探る
• この方法をマスターすれば紛争ワーカー
になれる
トランセンド法の簡単な実例
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当事者 AとB
Aの目標・欲求・利害=X
Bの目標・欲求・利害=Y
XとYは通常は互いに矛盾する
(Xを実現すれば、Yは実現できない)
• 解決法=創造力を最大限発揮して、XもYも
できるだけ実現させる。「XとYを半分ずつ実
現」(妥協)や、「XもYも断念」はとらない。
参考文献
• ヨハン・ガルトゥング、藤田明史著
『ガルトゥング平和学入門』法律文化社
• 岡本三夫ほか著
『平和学の現在』法律文化社
• 臼井久和、星野昭吉編
『平和学』三嶺書房