第 55 回分子科学若手の会夏の学校 サーキュラー1 号

第 55 回分子科学若手の会夏の学校
サーキュラー1 号
拝啓
清和の候、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと存じます。今年度もまた、分子科学若
手の会夏の学校の季節が近付いて参りました。私共といたしましては、新たな顔ぶれにて夏
の学校の準備を進めております。
さて、本サーキュラーでは今年度の夏の学校の日程や内容をお知らせするとともに、皆様
のご参加を募りたいと思います。なお、本サーキュラーでは第 55 回夏の学校の概要のみを
お知らせし、詳細はサーキュラー2 号(4 月下旬配信予定)および HP(http://www.ymsa.jp/)
にて改めてお知らせいたします。
今年度も分子科学の最先端でご活躍されている先生方をお招きして、以下の 5 つの大変興
味深い分科会を設けました。
第一分科会 前田 理 先生(北海道大学)
反応経路とその自動探索
第二分科会 館山 佳尚 先生
固液界面・酸化還元・電気化学反応の第一原
(物質・材料研究機構)
理計算
第三分科会 伏谷 瑞穂 先生(名古屋大学) 高強度・短波長レーザー場における超高速原
子分子過程
第四分科会 廣理 英基 先生(京都大学)
超高速・高強度テラヘルツパルス分光技術の
最前線
溶液 NMR からわかる酵素の動的な構造情報
第五分科会 古川 亜矢子 先生
(サントリー生命科学財団)
どの分科会におきましても、皆様白熱した議論を戦わせることができるでしょう。毎年参
加されている研究室はもちろんのこと、しばらく遠ざかっていた研究室、また今回が初めて
という研究室の方もぜひぜひ奮ってご参加ください。
最後になりますが、今年度の夏の学校事務局は、田中 駿介(京都大学 松本研 D2)、
大槻 友志(京都大学 松本研 D1)
、高畑 遼(東京大学 佃研 D1)
、村松 悟(東京大学 佃
研 D1)、水野 雄太(東京大学 福島研 D1)、田中 佑一(九州大学 中野研 D2)、池田 龍
志(京都大学 谷村研 D1)が担当し、分科会担当者と協力して活動しております。今後とも
よろしくお願いいたします。
平成 27 年 4 月 8 日
敬具
夏の学校事務局代表 田中 駿介
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分子科学若手の会夏の学校とは
「分子科学若手の会」とは分子科学の研究に携わる全国の若手研究者たちからなる集ま
りです。若手の会では、毎年夏に会員を対象とした合宿形式の勉強会を開催しています。
1961 年に始まり、今年で第 55 回目を迎えるこの勉強会を「分子科学若手の会夏の学校」
と呼びます。
夏の学校では、全国の大学、研究機関から実験と理論の垣根を越えて、さまざまな若手
研究者が集まります。分子科学の分野で最先端の研究を行っている先生方を講師としてお
招きし、講義(分科会)を行っていただくことで、参加者はさまざまな知識・知恵を吸収
することができます。また、夏の学校は若手研究者同士の議論・交流を深める場にもなっ
ています。
分子科学について深く考え、議論を戦わせ、そしてこの分野の将来を熱く語り合う、そ
れが分子科学若手の会夏の学校なのです!
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夏の学校のご案内
日程:
2015年8月17日(月) - 21日(金)
会場:
東京大学 本郷キャンパス 理学部化学本館・東館
〒113-8654 東京都文京区本郷7丁目3-1
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
宿:
朝陽館本家
〒113-0033 東京都文京区本郷1丁目28-5
http://www.jalan.net/yad337204/
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参加登録
参加登録は、夏の学校HPにて、Web上で、各個人で行なう方式をとります。参加登録期
間は4月20日(月) - 5月15日(月)です。詳しくはサーキュラー2号、およびHPにて、後日お知
らせいたします。
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参加費と交通費補助
夏の学校への参加費は、4泊5日(食事付き)で35,000円前後になる見込みです。実際の
金額は、参加者の人数が確定した後にお知らせいたします。
また、分子科学若手の会夏の学校では遠方からの参加者に対して、交通費の補助を行っ
ています。詳細はサーキュラー2号にてお知らせいたします。
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分科会紹介
第一分科会
講師: 前田 理 先生(北海道大学大学院理学研究院化学部門 准教授)
題目: 反応経路とその自動探索
化学反応の反応機構は、量子化学計算によって反応経路を求めることによって理解でき
ます。
「反応経路」の定義については古くから議論がありますが、本講義では最も一般的で
ある固有反応座標を基本として議論します。固有反応座標を用いるメリットはいくつかあ
りますが、二つ挙げると、一つ目は、対応する遷移状態(ポテンシャルエネルギー曲面上
の一次鞍点)が決まれば、容易に求めることができること、二つ目は、固有反応座標に沿っ
た原子の動きは比較的シンプルで、容易に理解できることです。二つ目のメリットは、反
応に沿った分子軌道や電荷などの変化を議論する上でも重要です。そのため、固有反応座
標は反応の定性的な理解や予測において広く利用されています。
固有反応座標を求めるには、対応する遷移状態が必要です。しかし、その決定には良い
初期構造が必要であり、直観や経験を駆使した探索が行われています。これに対し、初期
構造を必要としない遷移状態決定法が開発されています。講義では、これらについて勉強
します。
光反応など、電子励起状態が関与する反応では、電子基底状態のみでなく、電子励起状
態および状態間のポテンシャル交差空間についても調べる必要があります。そこで、交差
空間内エネルギー極小点の決定法や探索法、さらに、得られた構造とエネルギーに基づく
光反応の機構解析についても勉強します。
固有反応座標にはいくつか弱点があります。すなわち、原子核が持っている運動量によっ
て反応のトラジェクトリが固有反応座標から大きく外れてしまうケースが報告されていま
す。代表例として、動的経路分岐、ローミング、ラウンドアバウトなどが挙げられます。
動的効果については古くから研究があり、最近では分子動力学計算との比較から様々な例
が報告されています。講義では、ポテンシャルエネルギー曲面がどのような特徴を持って
いるときにこれらが起こるのか、例を元に勉強します。
複雑な多段階反応を議論する場合、関係する全ての素過程についての固有反応座標を求
めます。このとき、固有反応座標は複雑なネットワークを形成します。そのような複雑反
応経路ネットワークに対する速度論とグラフ理論のアプローチについても勉強します。
以上の講義を通して、反応経路の計算によって複雑な化学反応の機構を解析・予測する
技術について理解を深めていただきます。また、本講義がこれらの技術をさらに発展させ
る開発研究のきっかけにもなれば、と考えています。
参考として以下の文献を挙げておきます。
1. S. Maeda, et al., “Intrinsic Reaction Coordinate: Calculation, Bifurcation, and
Automated Search.” International Journal of Quantum Chemistry, vol. 115, pp. 258-269,
(2015).
2. F. Jensen, “Optimization Techniques.” in Introduction to Computational Chemistry,
2nd ed., Wiley, Chichester, pp. 380-420, (2007).
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担当: 市川 滉貴(東京大学 高塚研 M2)
第一分科会では、反応経路の自動探索の第一人者でおられる北海道大学の前田先生をお
招きして、化学反応機構の反応経路による解析、およびその予測までを講義して頂きます。
本分科会では、反応経路計算に関して、基礎である固有反応座標計算から、遷移状態探索、
交差空間の解析、反応での動的効果、化学反応ネットワーク解析、自動探索法等、最先端
の研究までを学習します。そして、複雑な化学反応を反応経路計算でどのように解析すれ
ばいいか、理論的に予測するにはどうしたらいいのか、を学ぶことを目的とします。
本分科会を通じて、反応経路計算を学ぶことで、化学反応機構自体に対する理解を深め
ることができます。また、反応経路の予測という点で、新規物質の設計のためにはどのよ
うな理論が必要かを学べるまたとない機会になっております。
実験、理論を問わず、幅広い分野の方の参加を歓迎致します。皆様の参加をお待ちして
おります。
第二分科会
講師: 館山 佳尚 先生(物質・材料研究機構 MANA グループリーダー)
題目: 固液界面・酸化還元・電気化学反応の第一原理計算
エネルギー変換に関する微視的機構の解明や新しい電池・触媒の設計・開発は物理・化
学・材料科学をまたぐ最重要課題の一つです。このエネルギー変換の根元は酸化還元過程
に帰着させることができます(光励起も重要ですが、電子移動がなければエネルギーを取
り出せません)
。また反応場として界面が重要な役割を果たします。これらについて、すで
に電気化学、物理化学のテキストは多数存在しますが、実際に電子状態を量子的に考慮し
た原子スケールシミュレーションでどう取り扱うべきか?という課題を取り上げたものは
ほとんどありません。
本分科会では、この課題に焦点をあて、エネルギー・環境関連の研究・開発に興味のあ
る若手、特に理論計算シミュレーションを念頭におく諸君に、理解しておいてもらいたい
事柄をまとめて講義することにしました。すでに分子科学分野で酸化還元を扱った論文は
多数あると言う人がいるかもしれませんが、その多くに様々な近似が入っていることはあ
まり認知されていないと思われます。ここでは、溶液、固体、表面・界面といった凝縮系
の量子力学と統計力学をベースに基礎的土台を構築しつつ、実践的な内容(近似)にも触
れる以下のような構成で講義を進めたいと思います。より理解を進めるために(文献調査
宿題と)議論の時間も柔軟に取り入れていけたらと考えています。ただ盛り沢山なので今
後調整を入れるかもしれません(^^;)。
1:DFTフレームワーク
・自己相互作用エラー、grand canonical法、Car-Parrinello法
2:自由エネルギー計算
・MD、Blue-moon ensemble、熱力学積分法・摂動法
3:酸化還元・電子移動反応計算
・Marcus理論、酸化還元電位、エネルギーギャップ
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4:界面反応計算
・電気二重層、空間電荷層、バイアス、拡散
5:電池・触媒の応用計算
・Li-ion二次電池、色素増感太陽電池、光触媒、京コンピュータ
担当: 久保 綾子(東京大学 山下・牛山研 D1)
第二分科会では、物質・材料研究機構の館山佳尚先生をお招きして、固液界面における
酸化還元反応・電気化学反応の第一原理計算について講義していただきます。館山先生は
光触媒や二次電池等の計算科学研究の第一線でご活躍されており、最近では京コンピュー
タを用いた、Li-ion 二次電池における電極界面の被膜(SEI 膜)の形成過程の解明などで
注目されています。
固液界面における反応の解明は、エネルギー変換材料・貯蔵材料の設計において重要な
役割を果たすものであり、今後も様々な系に対する研究が期待されます。本分科会では、
電子状態の記述に用いる量子力学的な手法から、界面のシミュレーションに用いる統計力
学的な手法にいたるまで、幅広く学んでいく予定です。
基礎理論にご興味のある方から、応用計算にご興味のある方まで、多くの方にお楽しみ
いただけると思います!みなさまのご参加をお待ちしております。
第三分科会
講師: 伏谷 瑞穂 先生(名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻 助教)
題目: 高強度・短波長レーザー場における超高速原子分子過程
光に対して物質がどのように応答するのかを理解することは分子科学の様々な分野にお
いて基本的な役割を果たします。1960年のレーザー誕生以降,主に可視・近赤外波長領域
において光と物質の相互作用,特に光に対する物質の非線形光学過程に関する理解が大き
く進展しました。一方,近年の自由電子レーザーの技術進歩により,極紫外・X線域におけ
る高強度超短パルスが得られるようになり,これらを用いた研究が活発に行われています。
従来の可視・近赤外域の強レーザー場中では光に応答するのは主に最外殻の電子ですが,
一光子の光子エネルギーがイオン化エネルギーを超えるような極紫外・X線域では内殻電子
など複数の電子が光応答に関与することが可能となります。そのため,極紫外・X線域にお
いては,これまで一電子近似描像で理解されてきた非線形応答過程とは様相が大きく異な
りうることがわかってきました。
本分科会では極紫外・X 線域における物質の非線形現象を理解するため,最も基礎的な系
である原子分子を標的とした研究に焦点を当てて講義を行います。分科会の前半では,ま
ず,これまで多くの研究が行われてきた近赤外域の強レーザー場中における非線形現象に
ついて概観します。その上で,極紫外・X 線自由電子レーザーの原理,研究で用いられる測
定装置や解析方法などについて解説した後,実際に原子分子へ応用した研究成果について
参考文献も交えながら紹介していきます。後半では,受講者の方に極紫外・X 線自由電子レー
ザーの高強度・超短パルス性を利用した最近の研究(気相実験に限らず)についての論文
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紹介などを行っていただき,当該分野の現状および今後の展開について議論を深めていき
たいと考えています。
担当: 園田 浩太郎(東京大学 長谷川研 D1)
レーザー技術の発展とともに,光と物質の相互作用により誘起される様々な現象が研究さ
れてきました。極紫外・X 線域に於ける高強度短パルス光の発生は,近年のレーザー技術の
進歩により可能になったことの一つであり,このような新しい光源と物質の相互作用がも
たらす新奇現象に興味がもたれています。本分科会では,そのような新奇現象の中でも,
特に極紫外・X 線域の高強度短パルス光による原子の非線形過程について研究を行っている
名古屋大学の伏谷瑞穂先生を講師としてお招き致します。
伏谷先生には,基礎原理はもちろんのこと,実験的な側面(測定装置・解析方法等)につい
ても講義をして頂く予定です。従って,実験研究に携わっている方々には、新しい手法を
学び自身の研究に活かす機会となり,理論家の方々にとっては,「実験」というものを理
解して,実験家との共同研究を円滑に行うための一助になるのではないかと思います。光
と物質の相互作用に興味を持っている方は多いと思います。そのような方々の参加をお待
ちしております。
第四分科会
講師: 廣理 英基 先生(京都大学 物質-細胞統合システム拠点 准教授)
題目: 超高速・高強度テラヘルツパルス分光技術の最前線
テラヘルツ(THz)領域とはおよそ 100GHz から 10THz の周波数領域を指し、光エネル
ギーに換算すると数 0.1meV から数十 meV に対応する。この周波数帯域には分子の回転ス
ペクトル、巨大分子の振動モード、スピンの歳差運動、超伝導ギャップ、半導体中の不純
物に束縛された電子や励起子(電子と正孔の束縛状態)の束縛エネルギーなど数々の励起
モードが存在し、物性の観点から大変魅力的な周波数帯域である。近年、モード同期チタ
ンサファイアレーザーをベースとした超短光パルス技術は広帯域 THz パルスの発生・検出
を可能にする THz 時間領域分光法(Time-Domain Spectroscopy: TDS)をもたらし、クラ
マース・クローニッヒ変換という近似的な操作を使わずに直接的に物性を特徴付ける複素
誘電率を評価できるようになってきた。さらに、ここ数年の間には、1MV/cm を超える高
強度な電場振幅を持つ THz パルスの発生が可能になり、
従来の THz 線形分光に加えて THz
非線形分光研究へと応用され、新たな超高速物性制御技術としても注目を集めている。本
分科会では、下記の3つの内容にスポットをあてて講義を行い、最先端のレーザー技術、
非線形光学現象、超高速 THz 分光技術の系統的な理解と物性物理学との関わりについて理
解することを目的とする。
(1)光と物質の相互作用に関して固体中におけるマクスウェル方程式に立脚した古典
論から議論を始め、物質と光を量子論的に扱い光の吸収や放出、散乱現象を説明する。こ
れによりレーザー発振現象についての理解を深める。
(2)非線形光学に関する基礎的な議論を行い、超短パルスレーザーの発振原理、光高
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調波発生、光混合、光パラメトリック効果など代表的な現象と主な応用例について説明し、
THz 光発生および THz 時間領域分光法について説明する。
(3)固体物理学の基礎となるブロッホの定理やバンド理論について説明を行う。特に、
講演者の高強度 THz 研究との関わりの深い半導体における非線形伝導現象、磁性体におけ
るスピン運動などについて議論する。
担当: 佐藤 駿丞(筑波大学 矢花研 D2)
第四分科会では、京都大学の廣理英基先生を講師としてお招きし、固体中の光学現象の
基礎から、
「超高速・高強度テラヘルツ(THz)パルス分光」をキーワードとした最先端の研
究内容までを講義していただきます。廣理先生は、テラヘルツ光を用いた実験分野の最前
線で活躍しておられる研究者です。
光と物質の相互作用は、長い間、精力的に研究が進められてきた伝統ある研究分野の一
つです。その中でも、近年のレーザー技術の発展により利用可能となったテラヘルツ光を
用いた研究は、観測技術としてのみならず、新たな超高速物性制御技術としても注目を集
めています。本分科会では、初学者を対象として、光と物質の相互作用の基礎から THz 光
を用いた研究の最前線までを講義していただく予定ですので、興味のある方はぜひ奮って
ご参加ください。
第五分科会
講師: 古川 亜矢子 先生(公益財団法人サントリー生命科学財団 嘱託研究員)
題目: 溶液 NMR からわかる酵素の動的な構造情報
生体反応であるタンパク質の合成と分解・タンパク質の翻訳後修飾・DNA 修飾などはす
べて酵素反応です。そしてこれらの酵素反応は、水素結合・共有結合・疎水結合などの形
成や開裂の化学反応です。酵素反応を化学反応として分子論的に理解することは、生体機
能を明らかにし、更にはそれにつながる疾病治療などの応用を考える上でも重要です。多
くの酵素反応は、構造変化や分子間相互作用変化を含めて、動的なものであると言われて
います。つまり、反応物と生成物の静的な構造だけをみていては分子レベルでの反応機構
を知ることができません。そこで、反応途中の分子の動きを直接調べることが重要になっ
てきます。近年、種々の物理化学的手法が開発されてきており、生体分子の動的な構造変
化を捉えられるようになってきました。
本分科会では、種々の物理化学的手法の中でも溶液 NMR 法を用いた動的構造解析につい
て解説します。溶液 NMR は、10-12~103 秒のオーダーという幅広い時間スケールにおける生
体分子の動的構造を得ることができます。各々のタイムスケールにおける解析手法と原理、
そしてどのような情報を得られるのかを詳しく紹介していきます。また、酵素反応を理解
する上で重要な基礎的な酵素反応速度論も解説したいと思います。その後、これらの手法
を用いた研究の論文を通して、生体内の酵素反応機構への応用例に触れてもらいたいと思
います。
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担当: 水野 雄太(東京大学 福島研 D1)
皆さんご存知のように、生体は分子から成り立っています。生体機構の分子論的解明は、
創薬や医療の発展につながるのはもちろんの事、分子科学的にも興味深い課題です。
分子科学夏の学校には、理論から実験まで、2 原子分子から生体分子まで、幅広い研究手
法・研究対象をもった方が来られます。そのなかで生体分子の世界に興味をひかれている
方も多くいるのではないでしょうか。しかし、2 原子分子をモデル系として理論的に研究を
行っている私がよい例ですが、あの複雑な生体分子をどう物理化学的に研究していけばよ
いのかと考えた途端途方にくれてしまう方もいらっしゃると思います。
そこで第 5 分科会では、サントリー生命科学財団の古川亜矢子先生をお招きし、NMR を
用いた酵素反応の物理化学的な解明法やその実際についてご講義していただきます。古川
先生はこれまでリアルタイム NMR 法などを用いてさまざまな酵素タンパク質の動的な構
造を解析してこられました。そのような第一線で生体分子を物理化学的に研究しておられ
る古川先生の講義や参加者同士のディスカッションを通して、生体分子の世界に切り込む
糸口をつかんでみませんか?皆様のご参加を心待ちにしております。
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