レイケア テスト 自己採点でスキルチェック(病態・検査値等に関して) Q. 以下の処方せんを見て、1~4の問いに答えてください。 処 方 せ ん (この処方せんは、どの保険薬局でも有効です。) 公 費負 担者 番号 保 公費負担医療 被保険者証・被保険 者 の記 号・ 番号 受 給 者 番 号 氏 名 患 者 ヤッキョク タロウ 薬局 太郎 殿 70 歳 明大 昭 平 生年月日 20 年 3 月 7 日 男 ・ 女 被扶養者 区 分 被保険者 交付年月日 平成 26 年 3 月 10 日 険 者 番 号 保険医療機関の 所 在 地 及 び 名 称 電 話 番 保険医氏名 都道府県番 号 処方せんの 使 用 期 間 号 0 6 1 2 789 ・1001 3 4 5 6 東京都文京区湯島9-9-9 医療法人 トリム会 文京第一病院 03-5812-XXXX 本 郷印 本郷 一郎 # 点数表番号 1 医療機関コード 0514XXX 平 成 年 日 月 特に記載のある場合を除き、交付の日を含めて 4日以内に保険薬局に提出すること。 変更不可 1 2 処 方 ガスターD錠20mg 1回1錠(1日2錠) 1日2回 朝食後・夕食後 14日分 グラクティブ錠50mg 1回1錠(1日1錠) 1日1回 朝食後 14日分 【以下余白】 【検査データ】 ・血清 Cr: 1.4(mg/dℓ) ・体重:50kg 「両方とも初めて飲む薬です」 保険医署名 「変更不可」欄に「レ」又は「×」を記載した 場合は、署名又は記名・押印すること 備 考 1 調 剤 済 年 月 日 平 3 4 年 月 日 公費負担者番号 及 2 成 患者さんの血清クレアチニンからクレアチニンクリアランスを求めてくださ い。 保険薬局の所在地 称 公 費 負 担 医 療 保 険 薬 剤 師 氏 名 び 名 の 受 給 者 番 号 処方されている各薬剤の用量は、患者の腎機能に照らし合わせて妥当か どうか検討してください。 グラクティブ以外の DPP-4阻害薬について、その排泄経路などから、腎機 能障害合併例での投与量の調節が必要かどうか検討してください。 ガスター以外の H2 ブロッカーについて、その排泄経路などから、腎機能障 害合併例での投与量の調節が必要かどうか検討してください。 レイケア テスト 自己採点でスキルチェック(病態・検査値等に関して) A. 1 血清クレアチニン(Cr)値と性別、年齢、体重が分かる場合には Cockcroft-Gault の式を 使ってクレアチニンクリアランス(Ccr)を求めることができる1)。 ◆Cockcroft-Gault の式 男性 Ccr(mℓ/min)=((140-年齢)×体重(kg))÷(72×Cr(mg/dℓ)) 女性 Ccr(mℓ/min)=男性 CCr×0.85 したがって、当患者の場合、クレアチニンクリアランスは、 Ccr=((140-70)×50)÷(72×1.4)=34.7(mℓ/min) となる。 2 ガスターの腎機能低下患者への投与法は以下のようになっている2)。 Ccr(mℓ/min) Ccr ≧ 60 60 > Ccr > 30 30 ≧ Ccr 透析患者 投与法 1回 20mg 1回20mg 1回 10mg 1回20mg 1回 10mg 1回20mg 1回 10mg 1日2回 1日1回 1日2回 2~3日に1回 1日1回 透析後1回 1日1回 したがって、当患者のCcrから「1回20mg 1日1回、または1回10mg 1日2回」が適切と なり、本処方の用量「1回20mg 1日2回」は薬の量が多い可能性が考えられるので、用量を 医師に確認する必要がある。 また、グラクティブの腎機能障害患者での用量調節の目安は以下のようになっている3)。 腎機能障害 Ccr(mℓ/min) Cr(mg/dℓ) 通常投与量 最大投与量 中等度 30≦Ccr<50 男性1.5<Cr≦2.5 女性1.3<Cr≦2.0 25mg 1日1回 50mg 1日1回 重度、末期腎不全 Ccr<30 男性Cr>2.5 女性Cr>2.0 12 . 5mg 1日1回 25mg 1日1回 よって、当該患者のCcr※からは「通常投与量 1日1回 25mg」が適切となる(※:Crは用量調 節に該当しないが、CrまたはCcrの一方が該当するため調整検討の必要あり)。本処方の用量「1回 50mg」は、最大投与量は超えないが通常投与量を超えており、今回初めての処方という点 からも、薬の量が多い可能性もあるので、念のため用量を医師に確認する必要がある。 なお、Ccrから至適投与量を求める方法としてGiusti-Hayton法がある1)。 レイケア テスト 自己採点でスキルチェック(病態・検査値等に関して) 当方法は、腎排泄型薬物の投与量は、常用量から腎機能低下によって蓄積されるであろ う薬物量を引いて腎機能低下者の投与量を求めようという理論である。 ◆Giusti-Hayton法 Dose(r)= Dose-Dose ×fu((Ccr-Ccr(r))/Ccr) Dose(r):腎機能低下者の投与量 Dose:腎機能正常者の投与量 fu:尿中未変化体排泄率 Ccr:腎機能正常者のクレアチニンクリアランス(100(mℓ/min)を用いる) Ccr(r):腎機能低下者のクレアチニンクリアランス この式に当てはめた場合、当該患者の適切なガスター(尿中未変化排泄率21~49%)とグ ラクティブ(同79~88%)の1日投与量は、27.2~34.5mg※と21.3~24.2mgとなる。数式による 推測量であるため絶対的なものではないが、ひとつの目安となると考える。 ※ガスターの尿中未変化排泄率は、静脈内投与で57.8~96.4%であるので、実際はもっと少ない量が適 切である可能性も考えられる。 3 胆汁排泄型のトラゼンタや肝と腎の 2 ルートでの排泄であるテネリアは、腎機能障害患 者にも投与量を調節することなく使用できる。 その他の DPP-4 阻害薬は、主な排泄経路が腎であるため、腎機能障害患者では用量 の調節が必要となる。 ◆DPP-4 阻害薬の代謝・排泄経路及び腎機能障害時の調節(各添付文書、IF より) 薬品名 グラクティブ ジャヌビア ネシーナ スイニー オングリザ エクア トラゼンタ テネリア 4 代謝 主な排泄経路 通常投与量 腎機能障害時の調節 中等度 重度以上 受けにくい 腎排泄型 50mg×1 25mg×1 12.5mg×1 受けにくい 受けにくい CYP3A4/5 加水分解 CYP3A4 CYP3A4、FMO 腎排泄型 腎排泄型 腎排泄型 腎排泄型 胆汁排泄型 肝代謝・腎排泄型 25mg×1 100mg×2 5mg×1 50mg×2 5mg×1 20mg×1 12.5mg×1 --2.5mg×1 50mg×1 ----- 6.25mg×1 100mg×1 2.5mg×1 50mg×1 ----- プロテカジン以外の H2 ブロッカーは腎排泄型の薬剤であり、腎機能障害患者では投与 量の減量または投与間隔の延長が必要になる(ガスター、ザンタック、タガメットにはCcr に応じた投与量が明記されている)。 なお、プロトンポンプ阻害薬(PPI)はすべて肝代謝型の薬剤であるため、腎機能障害患 者での用量の調節が不要である。 【参考文献】 1)菅野彊:薬剤師のための『薬物動態学 10 の鉄則』(アドバンス・クリエイト) 2)ガスターD 錠添付文書 3)グラクティブ錠添付文書 「資料提供:ファーマライズホールディングス株式会社」
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