参考文献・資料 鹿児島県 (2000)「第4節 ひおうぎ養殖」 『鹿児島県水産技術のあゆみ』p.62 北海道水産林務部総務課 (2009)「特集 1 ; 北海道の漁業∼ホタテガイ」 『もっとおしえて 北海道の水産 09《食と漁業について考える》 ;vol.3』pp.4-5 青森県漁業協同組合連合会「あおもりのほたて」http://www.amgyoren.or.jp/hotate/detail.html(2014/9/16 アクセス) 網走市公式ウェブサイト「網走のおさかな図鑑 ; ホタテ」https://www.city.abashiri.hokkaido.jp/380suisangyo/020suisanngakusyuu/030j oukyuu/040zukann/010hotate.html(2014/09/26 アクセス) 網走市公式ウェブサイト「ホタテの種苗生産」http://www.city.abashiri.hokkaido.jp/380suisangyo/020suisanngakusyuu/020tyuukyuu/04 0sodateru/020hotate_syubyou/index.html(2014/10/23 アクセス) 北るもい漁協天売支所「海の生物図鑑 ; エゾキンチャクガイ」http://www.teuri.net/under_sea/kintyakugai.html(2014/10/2 アクセス) 島根県公式ウェブサイト「イタヤ貝」 http://www.pref.shimane.lg.jp/suigi/shimane_suisangyou/itaya.html(2014/9/16 アクセス) 島根県公式ウェブサイト「養殖される貝」 http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/shinkou/umi_sakana/sakana/3/3-12.html(2014/9/16 アクセス) (地独)青森県産業技術センター増養殖研究所「ホタテ豆知識」http://www.aomori-itc.or.jp/(2014/9/16 アクセス) 日本国土開発株式会社「貝殻有効利用」http://www.n-kokudo.co.jp/tec_civil/shell_02.html(2014/10/23 アクセス) 日本の郷文化「郷自慢 南三陸町の名産物」http://jpsatobunka.net/meisan/miyagi/miyagi-06.html(2014/10/3 アクセス) 平内町漁業協同組合「ホタテ情報」http://www.jf-net.ne.jp/amhiranaigyokyo/index.html(2014/9/16 アクセス) ぼうずコンニャクの市場魚介類図鑑「アカザラガイ」 http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/itaya/akazaragai.html(2014/10/15 アクセス) ぼうずコンニャクの市場魚介類図鑑「アズマニシキ」 http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/itaya/azumanisiki.html(2014/10/15 アクセス) 宮城県公式ウェブサイト「伝統的漁具漁法ホタテガイ」http://www.pref.miyagi.jp/soshiki/mtsc/dentohotate.html(2014/9/16 アクセス) 写真提供 南三陸町ネイチャーセンター準備室 【制作・編集】 特定非営利活動法人 海の自然史研究所 南三陸オフィス 〒986-0733 宮城県本吉郡南三陸町志津川字 旭ヶ浦 8 仮設魚市場内プレハブ 2F ホタテ 10 平成 26 年度宮城県市町村振興総合補助事業 3~4月 沖縄オフィス 〒904-0113 沖縄県中頭郡北谷町宮城 2-95 TEL:080-2783-9480 FAX:050-3730-7222 E-mail:[email protected] URL:http://www.marinelearning.org 【発行】 南三陸味わい開発室 南三陸町 〒986-0792 宮城県本吉郡南三陸町志津川字 沼田 56-2 TEL:0226-46-2600(代表) FAX:0226-46-5348 ホタテの仲間 ホ タ テ ガ イ は 軟 体 動 物 門・二 枚 貝 綱・糸 鰓 目・イ タ ヤ ガ イ 科に属します。北日本沿岸から サ ハ リ ン・千 島 列 島・朝 鮮 半 島北部に分布していて、水深 ∼ m の 砂 の 海 底に右 殻 を 下 に し て 生 息 し て い ま す。ま た、 波 の 穏 や か な 能 取 湖 や サロマ 湖 で は 水 深 2 m く ら いの 所 に 生息することもあります。 勢いよ く 吐 き だ す こ とによ り、 そ の 反 作 用 で 跳 ぶ よ うに動 く ので、帆を立てて走ることはあ り ま せ ん。そ の 後、嘉 永 5 年 ︵1 8 5 2 年︶∼ 安 政 元 年 ︵1 8 5 4 年︶にペリー提 督 指 揮 の ア メ リ カ 艦 隊によ る 黒 船 来 航 の 際に新 種 と し て 報 告 書 に記載され、世界的に知られる ことになっていきます。 現 在 で は 刺 身 や 加 工 食 品 な どとして身近な存在ですが、私 た ち が 暮 ら し ている 南 三 陸 町 でも重要な養殖種として生産 さ れていま す。 と な る 植 物 プ ラ ンク ト ンや ミ ネ ラ ル が 豊 富 で、リアス式海岸であるため波 が穏やかな志津川湾を有して いることから、養殖業が盛んに なっていま す。主 な 生 産 地 で あ る北海道や青森県と比較する と、その生産量はごくわずかで すが、宮城県北中部海域の主要 な 養 殖 産 業 と し て 位 置 づい て います。 もくじ はじめに・・・・・1 ホタテの仲間・・・2 ホタテの生態・・・3 ホタテと水産業・・4 ホタテと食卓・・・5 ホタテガイの 分布域 1 学名: 英名:Swift's scallop 別名ババガイ・ハハガイ・ババノテなど とも呼ばれている二枚貝です。貝殻にあ る明瞭な放射状の五本の盛り上がりが「 母の手」に見えることに由来します。 太平洋の東北以北および日本海北部に分 布し、細長い扇形で付着生物が表面を覆 われ、きれいにとると、赤茶と白の貝だ と分かります。 バター焼き、刺身などで食されますが市 場に出ることは稀です。 ホタテと環境・・・6 アカザラガイ はじめに 日本で馴染みのある貝の一つ といえ ば ホ タ テ ガ イ で は ない で しょう か。ホ タテ ガ イ は 漢 字 で﹁帆立貝﹂ ﹁車渠﹂ ﹁海扇﹂と書 きます。その名称の由来が記載 された古い記述は、徳川第6代 将 軍 家 継 の 時 代、正 徳 5 年 ︵1716年︶に出版された﹃寺 島良安編和漢三才図絵﹄にみら れます。 その中では、 ﹁その殻、上の一 片 は く し て 蓋 の ご と く、蚶 ︵あかがい︶、蛤 ︵はまぐり︶ の輩 と同じからず、大なるもの径1 ∼2尺︵ ∼ ㎝︶ 、数百群行 し、口を開いて一の殻は船のご と く一の 殻 は 帆 の ご と くにし、 風 にのって 走 る。故 に帆 立 蛤 と 名づく。﹂とされています。 この ことから、昔の人はホタテガイ が一片を帆のように立てて海中 を 走 る も の と 考 え ていた の で しょう。 実はこれは誤りで、ホタテガ イは貝の中に入っている海水を 60 イ タヤ ガ イ 科には ホ タテ ガ イ の他にイタヤガイ・アズマニシ キ・アカザラガイ・エゾキンチャ クガイなど、世界で 種程が属 し て い て、ホ タ テ と 聞 く と イ メ ー ジす る 円 形 で 平 た い 殻 を 持 つ 仲 間 で す。ヨ ー ロッ パ の ヨーロッパホタテガイ・北米の アラスカホタテガイなど、世界 各国で食用とされています。 普段下にして い る 方 ( 裏側 ) が右側 で 、右殻の方がやや膨ら ん で いる。 エゾキンチャク 学名: 英名:Japanese baking scallop 日本全土に生息しており、島根県 など一部の地域で生産されていま す。島根県沖合を対馬暖流が通っ ていることから天然のものも生息 していますが、資源量が少ないた め店頭に並んでいるものはほとん どが養殖されたものです。 ホタテガイが寒流性の貝であるの に対し、イタヤガイは暖流性の貝 であるのが特徴です。 学名: 英名:Farrer's scallop 東北∼九州・朝鮮半島・沿海州に生息し ています。 貝殻は赤やオレンジなど色変わりした美 しいものが混在し、並べるととても綺麗 です。砂地にいるホタテガイとは違い、 岩や他の貝などに足糸をからめて付着生 活を送ります。養殖のホタテガイやカキ などに付着するやっかいな存在です。 市場で流通するのは稀で、産地でほぼ消 費されています。 右と左で 色が違う 表=左 ( 褐色 ) 学名: 英名:Japanese scallop しばしば「貝」を省略して「ホタテ」と呼 ばれますが標準和名は「ホタテガイ」です。 生息地域は、本州東北地方から北海道の水深 10∼70mの、潮流の比較的速い砂礫底の開放 海域です。天然貝の生息場所は水深20∼30mの海 域で、アサリやハマグリ等の生息場よりも粒の大きい 砂泥域や砂れき場で分散して生活します。 生息水温が5∼22℃と冷水性の貝で、夏季に水温が20 ℃を超える日が長く続くとへい死してしまいます。こ のため、主な産地は北海道や青森県となっています。 イタヤガイ アズマニシキ が決まっている! 左右 ホタテの殻は 10 30 こ こ では日 本 で見 ら れる ホ タ テガ イの仲 間 と 特 徴 を 紹 介 し ていきます。 300 学名: 英名:Akazara scallop アズマニシキの北方型亜種で、北海道南 部から東北に生息しています。貝殻が茶 褐色や赤色なのが特徴です。 気仙沼市などでは養殖が行われています が、市場に流通することは稀で、主に宮 城県・岩手県などの産地で消費されてい ます。 2 裏=右 ( 白色 ) ホタテガイ 70 200,000 150,000 100,000 養殖 天然 50,000 S31 S35 S40 S45 S50 S55 S60 H1 H5 H10 H15 H20 H24 ホタテガイ養殖は大きくわけて天然採苗、中間育成、垂下養殖という3つの生産工程があります。宮城県内で 天然採苗から生産している地域は、県北部の歌津地区・雄勝東部地区等で、その他の地域では、中間育成中の 稚貝を県外から購入し、垂下養殖に使用する方法がとられています。順調に成長すれば 2 年で成貝になります。 天然採苗 中間育成 垂下養殖 ( 本養殖 ) 度を浮遊生活で過ごし、稚貝に成 種苗として利用できる大きさまで ることを本養殖と言います。中間 地域によって違いはありますが概 します。垂下方法には様々な形態 採苗器に付着している殻長 10 ∼ りが主流です。殻の 耳 部分に 着器はネトロンネットやポリエチ し、割れ殻や付着物の除去をした グスを通し吊るす方法です。 脱落を防止する目の細かいものを 延縄式の育成施設に垂下します。 貝を北海道等から購入していま ホタテは、孵化後 30 ∼ 40 日程 長すると海底の砂などに足糸で付 着します。天然採苗では、この習 性を利用し採苗器に稚貝を付着さ せます。 施設は延縄式施設が主流で、付 レン製のタマネギ袋など、稚貝の 用います。 6月 11 10 12 20 0.3 35 貝殻 ホタテガイの養殖 3月 12 中間育成は採取した稚貝を養殖用 育成する手順です。宮城県では ね 7 ∼ 9 月にかけて行います。 20mm 前後になった稚貝を採取 後、パールネット等の籠に入れ、 種苗を出荷サイズまで垂下養殖す 年輪のように成長の障害輪を数える ことで年齢がわかりますが、養殖貝 では作業中に欠けたりするため難し くなります。左右の貝殻の形が異な り、右殻は膨らみが大きくやや大き いのが特徴です。薄くて硬く成分の 9 割以上が炭酸カルシウムです。 育成と同様に延縄式の施設を使用 がありますが、宮城県内では耳吊 中腸腺 ( ウロ ) 2mm 程度の穴を開け、これにテ 生殖巣 採苗を行わない地域では、半成 エラ 生殖巣 ホタテの生態 250,000 10 天然資源対応型の漁業に代わっ て増養殖による生産が中心と なったのは、近年のことです。 主要生産地の北海道オホーツク 沿岸では、明治初期の漁業開発 から昭和 40 年代半ばまでの約 100 年間にわたって天然資源対 応の漁業を続けていました。昭 和 40 年に採苗技術が確立され、 殻長 3cm 以上の種苗が大量に生 産されるようになりました。 変わった生態として、生まれ てから1年はすべて雄で、2 年 貝 以 上 で 半 分 が 雌へと 性 転換することが知られていま す。産 卵 前 に は 卵 巣 は ピ ン ク、 精 巣 は 白 色に変 化 す る た め 雌 雄を区別することができます が、産卵後は生殖巣の色が消え て透明になるため、ふたたび雌 雄の区別がつかなくなります。 農林水産省: 漁業・養殖業生産統計(S45∼H24)より 300,000 11 成貝のもつ卵数は2年貝︵殻長 ∼ ㎝程︶で約1億個、4年 貝 で は 約 1 億 6 千 万 個にな り ます。 海水中で受精し生れた 幼生 ︵浮遊幼生︶ は、約 日間海 中を浮遊した後、殻長約 ㎜ になると海底の砂や養殖施 設 な どに足 糸 で 付 着 す る ようになります。付着して か ら 2 ∼ 3ヵ月 後 に は 殻 長が ∼ ㎜になり、足糸 を切って海底︵着底︶生活に 入ります。 国内ホタテ生産量の推移 350,000 20 ホ タ テ ガ イ は 海 水 をエ ラ で ろ 過し、植物プランクトンや生物 の 破 片・死 骸・排 出 物 や そ れ らが分解されたものを とし ています。 33 成長は天然では4年で殻高 ㎝くらい、養殖ではそれより成 長が早く2∼3年で ㎝くら いにな り ま す。場 所 や 年によ り 差 が あ り、春 と 秋 に 良 く 成 長 し、夏と冬に一時止まります。夏 に成 長 が 止 ま る の は 高 水 温 や 産卵後の活力低下のためと言 われており、成長が止まるとき に殻 表にで き る 成 長 輪 で 年 齢 がわかります。生まれてから3 ∼4年で漁獲され、一般家庭の 食卓に上ります。寿命は約 年 で、最大 ㎝にも な り ま す が、 最近ではそのような大型貝は ほとんど見かけることはあり ません。 21 ホタテと水産業 5 20 国 内 で 天 然 ホ タテの 漁 獲 を 行っている の は 北 海 道 と 青 森 県 で、平 成 年の漁獲量は約 万 t で し た。そ の 内 の 9 割 以上が北海道で漁獲され て い ま す。稚 貝 を 放 流 し、 成長後に漁獲する﹁地まき ﹂の拡大により、オホーツ ク地 域 を 中 心に生 産 量 が 増加しています。 養殖業では国内の約8∼ 9割を北海道・青森県で、 残りの約1∼2割を岩手 県・宮 城 県 で 生 産 し て い ます。南三陸町での生産量 は平成 ・ 年には、とも に約 2 万 5 千 t あ り ま し た。平成 年の東日本大震 災の影響で生産量が落ち 込みましたが、翌年には再 開されています。 23 22 ホタテの仲間は雌雄同体 のものが多いですが、ホ タテガイは雌雄異体で す。産卵期が近付く冬に なると大きくなり、雌は 橙赤色やピンク色、雄は 乳白色に変化します。 閉殻筋 ( 貝柱 ) 体の中で最も大きい器官です。二枚貝は 貝柱が 2 つありますが、ホタテの仲間は 成長の段階で一方が退化します。ホタテ が泳げるのはこの巨大な貝柱のおかげ で、貝殻を瞬間的に閉じるための有紋筋 でできています。大きい貝柱の横には三 日月状の小さな貝柱もあり、こちらは貝 殻をじっと閉じておくために使います。 靭帯 ( 蝶つがい ) 心臓 閉殻筋 ( 貝柱 ) す。育成状況を見ながら適宜浮 玉の追加や付着物の除去を行うと 9月 12月 3月 6月 9月 12月 ともに、ムラサキイガイ等の付着 3月 時期は垂下連を下げ、付着を防 ぐ必要があります。 天然採苗 中間育成 ここが耳 垂下養殖 販売 眼 外套膜 ( ヒモ ) が いとうまく 外套膜( ヒモ ) 左右の貝殻内部の周辺は半透明 な外套膜で被われています。貝 殻を作る、泳ぐ方向を決めるな どの働きがあります、また周辺 には、100 個にも及ぶ発達した 目が存在します。1 つの目で 100 度ほど見渡せます。 4 貝殻のリサイクル 平成 12 年 6 月より「循環型社会形成推進基本法」が施行され、様々な産業廃棄物のリサイクルへの取り組みが 進められています。 加工後に大量に排出される水産系廃棄物であるホタテ貝殻の ホタテガイの主な栄養成分 廃棄量は、生産量のおおよそ 5 割にも及びます。南三陸町 ( 可食部 100g 中 ) 文部科学省:五訂増補日本食品標準成分表より 内だけでも、震災以前は年間 1 万 t もの貝殻が廃棄されてい た計算になります。肥料や飼料の添加材等、多方面におい 制ガン作用 近年ホタテに、制ガン作用のある糖タンパク 質が含まれていることが明らかになりました。 この物質には生体の免疫細胞を活性化させる 働きがあり、従来の制ガン剤のように直接ガ ン細胞を攻撃することはありませんが、他の リンパ細胞や骨髄細胞などの大切な細胞まで 破壊する危険を伴うことなく、生体自身の免 疫力を高め、ガン細胞の増殖を抑制できる可 能性を示していると考えられています。今後 の研究により、実用化が期待されています。 栄養成分 エネルギー (kcal) 水分 (g) タンパク質 (g) 脂質 (g) カルシウム (mg) リン (mg) 鉄 (mg) ナトリウム (mg) カリウム (mg) 食塩相当量 (g) 炭水化物 (g) ビタミン B1(mg) ビタミン B2(mg) ビタミン C(mg) 生 72 82.3 13.5 0.9 22 210 2.2 320 310 0.8 1.5 0.05 0.29 3 干し ( 貝柱 ) 322 17.1 65.7 1.4 34 610 1.2 2500 810 6.4 7.6 0.12 0.3 0 ホタテガイの利用と加工品 てリサイクルが進められていますが、有効なリサイクル方法 は確立されていないのが現状です。 ホタテの体は貝殻と軟体部に分けられ、さらに軟体部は貝柱・外套膜(ヒモ) ・中腸腺(ウロ) ・生殖腺 しかし近年では、これまで用いられてきた土木工事の暗渠資 ボイル製品・乾貝柱・薫製品・油漬け・水煮・缶詰等に加工されます。貝柱以外では外套膜が佃煮等 等に分けられます。この中で特に商品としての利用価値が高いのは貝柱で、 生鮮で出荷される他、 冷凍品・ に利用されています。最近では加工技術の進歩、さらには惣菜産業や即席食品の需要増加も相まって、 材やカキの養殖資材に加え、路面表示用の塗料やチョークな どの新たな用途が開発され、多方面での利用が進んできまし た。ホタテの貝殻は炭酸カルシウムが成分の9割を占め、 粉々 に砕いて粉末にすることで、石灰石の代替として利用できる 多様な加工品が見られるようになりました。ボイル加工の際に出る煮汁のエキス成分が抽出され調味料 ホタテの貝殻粉末は市販されており、 家庭でもチョークづくりに挑戦することができます。 ホタテと食卓 ※MU(マウスユニット) :1MU とは、体重 20g のマウスを一定時間(下痢性は 24 時間・まひ性は 15 分間)で死に至らしめる毒の量。 国内の食料消費が、国産でどれだ け賄えているかを示す指標に「食 料自給率」というものがあります。 食事の洋食化や外食の増加を受 け、日本の食料自給率は年々低下 し、世界的に見ても低い水準と なっています。 そんな中、ホタテは生産自給率が 100% を超える数少ない食品の1 つです。国内消費量を超えた分は、 中国などへ輸出されています。 ホタテは、甘みの強い特有 の風味が特徴です。うま味 に 関 係 す る ア ミ ノ 酸 の一 種 であ る グリシンが 他の 魚 介 類 に比 べて 多 く、ア ラ ニ ン・グ ル タ ミ ン 酸・ タウリン等、他のアミノ酸 の 含 有 量 も 多 いこ と に よ り ます。また、全体の味をまとめ る 役 割 を 持つ グ リ コ ー ゲ ン も 多く含まれています。 出荷自主規制 0.05MU/g 4.0MU/g これら多くのアミノ酸は、うま 味 と し てのみ な ら ず 様 々 な 効 能を持ちます。たとえばタウリ ンは 網 膜 の 発 育 や 視 力 低 下 の 防止のほか、肝機能を強化し胆 汁中の脂肪を乳化する作用も あるので、コレステロール系の 胆石を溶かす働きも持っていま す。 監視強化基準 0.04MU/g 3.0MU/g 不 飽 和 脂 肪 酸 のEPA ︵エイコ サペンタエン酸︶等が含まれて いま す。中 腸 腺 に 多 いEPAに は、血液が凝固することを防ぐ 作用があり、脳卒中や動脈硬化 等といった血栓による病気を予 防 す る 効 果 が あ り ま す。さ ら に、子 ど もの成 長に欠 か せ な い亜 鉛 や カ リ ウム・マグネ シ ウム 等 の ミ ネ ラ ル も 比 較 的 多 く含まれ、コレステロール分も 少 な い の で、ホ タ テ は 低 カ ロ リーの健康食品といえます。 貝毒の種類 下痢性貝毒 まひ性貝毒 部位別に見ると、貝柱と外套膜 にはアミノ酸・グリコーゲンが 多く、中腸腺には粗脂肪や高度 貝毒の基準規制値 て﹂ の水産庁長官通達を出し、監 視 点 検 体 制 の 強 化・毒 量 が 規 制 値 を 越 えた 場 合の出 荷 自 主 規 制 措置を講じるよう指導するよう になりました。 宮城県でも﹁ホタテガイ等貝毒の 対応指針﹂ を策定し、生産者及び 流 通 業 者 に対 し て 安 全 確 保 の 指 導に努めています。貝類の生産実 態 等 を 考 慮 し て 種 類 ご と に海 域 を 設 定 し、県 漁 連 と 連 携 し な が ら 定 期 的 に 貝 毒 検 査 を 行ってい ます。また、自主規制解除のため の 安 全 確 認 につい ても同様の 検査態勢 を実施 し て いま す。 可食部に含まれる貝毒の量が基準 値を超えると、 監視体制の強化(検 査回数の増加や検査期間の短縮) や出荷自主規制等の措置がとられ ます。 出荷を自主規制している生産海域 における検査の結果、毒量が規制 値以下となり、さらに、1週間後 及び2週間後の検査においても同 様に安全が確認された場合には、 関係機関の協議の上、出荷を再開 することができるとしています。 ホタテと環境 51 貝 類 を 食 べる こ と に よ り 下 痢 や腹痛等の中毒を起こすこと は、昔から経験的に知られてい ましたが、貝類養殖が盛んにな り 消 費 量 が 拡 大 す るに伴って、 消費者の安全確保の面から貝 毒の問題がクローズアップされ るようになりました。 53 その契機となったのは、昭和 年に宮 城 県 産 ム ラ サ キ イ ガ イ による中毒の発生です。初めて 下痢性貝毒が検出され、その後 も ホ タテ 等によ る 中 毒 が 多 発 したことから、厚生労働省が出 荷 時に関 し ての 安 全 基 準 を 策 定しました。 これを受け、水産庁は学識経験 者と協議した上で、ホタテの食 品 と し ての安 全 性 と 流 通の円 滑化を図るため、昭和 年7月 に﹁ホタテガイ等の貝毒につい 7 として利用されるなど、その用途は多岐に渡っています。これに伴い、国内消費量も順調に伸びています。 可能性を秘めています。 宮城県で生産されたホタテガイは、そのほとんどが生鮮、あるいはボイル貝柱に加工されて出荷されて 今後も、環境への負荷が少ない循環型社会の形成に向けた努力が必要となっています。 加工されて出荷されています。 いますが、生産量の多い北海道や青森県等では生鮮の他、乾貝柱・ボイル・冷凍貝柱・水煮缶詰等に 6
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