農業の成長産業化に向けた提言等 (中間とりまとめ) 平成25年11月6日 宮崎県農業成長産業化推進会議 宮崎県農業成長産業化推進会議の概要 1 目的 フードビジネスの振興やTPP交渉への参加など、状況の変化に的確に対応し、本 県農業の着実な成長産業化を図るため、より幅広い視点から、農業施策全体を多角的 に検証。 2 会議の位置づけ 農政水産部長の私的諮問機関(平成 25 年 4 月 25 日設置) 3 委員 氏 名 職 名 廉谷 展良 公益社団法人 河野 幸代 株式会社 河野農園 倉掛 正志 社団法人 宮崎県商工会議所連合会 後藤 仁俊 元農政水産部長 田村 通康 農事組合法人 根岸 裕孝 宮崎大学教育文化学部 長谷川 真幹 福田 晋 宮崎県畜産協会 等 おびファーム 専務理事 日本政策金融公庫 専務理事 代表理事組合長 准教授 農業食品第一課長 九州大学大学院農学研究院 教授 松田 安廣 宮崎県経済農業協同組合連合会 見戸 康人 宮崎県農業協同組合中央会 山下 實 南九州大学理事客員教授 吉田 誠 三菱商事株式会社 常務理事 専務理事 都城地域連携室顧問 シニアアドバイザー (50 音順、敬称略) 1 4 これまでの開催実績 (1)第1回会議 ○ 開催日:平成 25 年 4 月 25 日 ○ 論 点:本県の農業が、多様な地域特性を前提としつつ、今後もバランスのと れた発展を遂げていくためには、どのように変わっていくべきか。 また、変わるために足りないものは何か。 (2)第2回会議 ○ 開催日:平成 25 年 8 月 6 日 ○ 論 点:本県の農業を、今後とも維持・発展させていくために、地域の生産を 安定的に担う経営体をどのように育成・確保していくべきか。 ○ その他:宮崎県農業実態調査結果(中間とりまとめ)の報告 (3)第3回会議 ○ 開催日:平成 25 年 10 月 8 日 ○ 論 点:これまでの議論を踏まえ、また、本県農業の置かれている状況や進む べき方向性、さらには、国における重点取組等も勘案して、本県農業 の喫緊の課題である「農業生産力の維持・向上」を実現するために求 められる骨太の施策は、どのようなものであるべきか。 (4)第4回会議 ○ 開催日:平成 25 年 11 月 6 日 ○ 議 題:会議における議論の中間とりまとめ ○ その他:宮崎県農業実態調査結果(最終)の報告 2 会議における議論の中間とりまとめ 1 会議の概要 (1)宮崎県の農業は、現在、大きな岐路に立っている。 農業者の減少や高齢化、耕作放棄の増加等により、生産基盤は大きく揺らいでいる 一方で、マーケットをはじめとする周辺環境は大きく、急激な変化を遂げており、生 産現場では、否応なしに変革を求められている。 このような中、本会議では、県が提示する資料を基に、宮崎県農業の成長産業化を 進めていく上での課題、そして、新たな施策の方向性について、これまで3回に亘っ て熱心な議論を進めてきた。 (2)農業の成長産業化を進める上での課題については、委員の間でも多様な考え方が示 されたが、全体の議論の流れは、①フードビジネスを起点とする議論、②中山間地域 の振興に焦点を当てた議論、そして、③広義の担い手に関連する議論に大別された。 会議における委員それぞれの発言については、県から「会議における主な意見」と して詳細に公表されているので、ここでは、会議全体における大きな流れ・方向性と して整理したい。 ①フードビジネスを起点とする議論 農政においては、これまでも、農商工連携、六次産業化、マーケティング強化、海 外輸出等の施策が進められてきたが、これらの取組を更に強化していくことが丌可欠 である。 取組の強化に際しては、全体を俯瞰して戦略的に進める必要があることは言わずも がなであるが、具体的な取組を支える人材や情報が丌足している面もあり、他産業の 活力を取り込むという点においても、今後、より視野を広く持った、積極的な対応が 求められている。 また、後継者のあり方や、集落との結びつき、多面的機能をはじめとする様々な役 割など、農業は、他産業と異なる特殊性を有していることは事実であるが、ことビジ ネスという観点からは、そのような特殊性を乗り越え、他産業のあり方から学んでい く姿勢が重要である。 3 ②中山間地域の振興に焦点を当てた議論 地形的な制約などにより、平地と同じような農業を展開することが困難な中山間地 域においては、「地域振興」的な視点を基礎として、「産業振興」に取り組んでいく 必要がある。 農業と地域振興が融合している代表例としては、農産物を活用した、集落における 加工・販売活動や、農家民泊などとも関連するグリーンツーリズムなどが挙げられる が、いずれも、高い満足度(やり甲斐)に着目した推進を図りつつ、「モノ」だけでな く「ヒト」を地域に呼び込んでいくという視点が重要である。 また、農業生産自体についても、環境や健康といった今後のトレンドを踏まえ、ま た、気象条件の厳しさなどを逆手にとって、マーケットのニッチ的な品目の生産等を 進めることにより、規模は大きくなくても、安定的な生産活動を継続することは十分 に可能である。 ③広義の担い手に関連する議論 担い手に関する最も本質的な方向性は、しっかりした「経営力」を持った農業者を 育成することであり、現在、研修や関係機関によるフォローアップが進められている が、数値化・指標化の難しい「経営力」という概念を、どのように施策と結びつけて いくかは、今後の大きな課題である。 現在、県内には様々な形態の担い手がおり、小規模農家や、家族経営的な農家であ っても、しっかりとしたビジョンに基づく営農活動を行っている(経営力を備えてい る)経営体も少なくないが、農業に関する多くの指標(販売農家数や耕地面積、農業 産出額等)が右肩下がりとなる中では、産地を担う大規模な法人経営体や集落営農、 JAなどが果たす役割について、再評価する必要がある。 担い手の育成支援に対しては、これまでも様々な施策を講じられてきたが、上記の とおり「経営力」についての更なる洞察と、大きな役割が期待されている地域の担い 手の伸び悩みについて、その原因分析等が欠かせない。 (3)以上のとおり、フードビジネスを起点とする考え方、中山間地域の振興に焦点を当 てた施策の方向性、そして、広義の担い手の育成については、いずれも、今後の宮崎 県農業の発展の鍵となる、極めて重要なテーマである。 農業は、宮崎県の基幹産業として極めて幅広い役割を担っており、そのあり方につ いて議論はどうしても拡散しがちになるため、ある程度議論のポイントを絞ることは 丌可欠である一方、フードビジネス、中山間地域振興の視点と健全な担い手の育成は、 切っても切り離せない一体的なものであることを念頭におきながら、具体的な施策の 構築・推進を進めていく必要がある。 4 2 産地経営体構想について 第3回会議においては、新たな担い手育成・強化の推進ビジョンとして、「産地経営 体構想」の議論を行った。 この構想については、第3回会議の議論を通じてある程度概念が整理された反面、委 員からの多様な意見が提示されたままとなっていることから、この場において、改めて 「産地経営体構想」に関する共通認識を整理するとともに、県に対して、今後の構想推 進に当たっての提言を行う。 <産地経営体構想のポイント(構想の概要等は7・8ページを参照)> ○ 農業人口が減少し続ける中で、全体として農業の生産力や競争力を維持し続 けるためには、個々の農家の経営だけでなく、ある程度の「品目ごとのまとま り」や「地域的な広がり」を踏まえた課題解決のアプローチが重要。 ○ 現在の宮崎県の農業を俯瞰すると、「品目ごとのまとまり」や「地域的な広 がり」を持った生産体系を構築していく上では、法人経営体や集落営農、JA 等が、その中心・柱となって、意欲ある家族経営体など、周りを牽引していく ことが求められている。 ○ 「品目ごとのまとまり」や「地域的な広がり」を伴った生産主体(広い意味 での「産地」)は、マーケットニーズに基づく安定的な販売や、販売の視点か ら立てられる中長期的な生産戦略が不可欠。 構想では、産地を牽引する経営体を「産地経営体」と呼称し、産地経営体 にとって特に重要な「マーケットニーズに的確に素早く対応できる組織力」 と「価格交渉を行う上でも重要なロットを確保できる供給力」について集中 的な支援を行うことで、産地の現状を変革する原動力としていく考え。 3 提言 本会議における議論では、農業の成長産業化を図る上で最も重要な要素として、個々 の農家の「経営力の向上」を指摘する意見が多数を占めたが、「何をもって『経営力』 というか」という概念は委員間でも多種多様であり、その向上に必要な対策もまた、様 々な方向が考えられる。 この産地経営体構想は、「『経営力の向上』には、『生産面での取組(品質や収量の 向上、コスト削減)』だけでなく、『確たる販売ビジョン(何をどれだけ売る/売れる のか)の構築』を丌可欠なものである」と捉え、実際に販売のプレーヤーとなり得る経 営体を柱とした、産地底上げの発想である。 5 「産地」というマクロの視点から「経営力の向上」を波及的・集団的に進めていくこ の構想は、農業人口の減少や高齢化が急速に進行するとともに、個々の農家間の経営力 にも格差が生じつつある中では、時宜を得た、現実的なアプローチとして評価されるも のである。 県におかれては、以下の提言を踏まえた上で、この構想を積極的に推進することによ り、農業の生産現場に経営概念が更に浸透し、最終的に成長産業化が大いに進展するこ とを期待したい。 (1)「産地経営体」という言葉は、聞く人によって、多様なイメージをもたらす言葉で ある。県として、今後の担い手施策を推進する上での核となる考え方を示すため、新 たなキーワードを掲げるという姿勢は良とするが、その意図するところを、2のポイ ントを基本にして、丁寧に説明すること。 (2)産地経営体構想においても、フードビジネスと同様に、マーケットインの考え方が 最も重要である。この構想は、生産現場だけで自己完結するものではなく、産地の変 革が、激動するマーケットから求められているということを基本として進めること。 (3)県内の農業構造は、家族経営体が基礎となっており、産地を単位とするこの構想に おいても、意欲ある家族経営体に対するしっかりとした動機づけができるように留意 すること。また、県内の法人や集落営農、JAだけでなく、県外や他産業から農業に 参入する経営体も、産地を変革する大きな力となるものであり、このような新しい力 をうまく地域に溶け込ませた産地改革を進めること。 (4)生産現場の変革は待ったなしであり、構想を描くだけでなく、実際に具体化し、し っかりとした成果を挙げることが何よりも重要である。会議においても、水田におけ る施設園芸や畑地かんがいの推進、畜産などの本県農業固有の事情を議論してきたと ころであり、水田におけるハウス等の経営資源の集約や、畑地の状況に応じた適切な 作物の選択等が円滑に進むよう、万全の推進対策・事業の構築に努めること。 4 今後の会議の進め方について 中間とりまとめをもって、検討はひとつの区切りとなり、今後は、この内容を踏まえ、 県において、施策立案作業が行われることとなる。この際、新規の支援策だけでなく、 既存の施策についても、産地経営体構想との関係性が考慮されていくものと考える。 一方で、TPP協定交渉の進展をはじめ、農政を取り巻く情勢はめまぐるしく変化し ているところであるので、産地経営体の推進に係る新たな施策の概要や、TPP協定交 渉等についてある程度方向性が見えてきた段階で、県からの説明をお願いし、今後の議 論の方向性についても改めて検討することとしたい。 6 産地経営体構想 1.考え方 変化するマーケットに対応するためには、停滞する生産現場の変革が不可欠であり、その 原動力となる経営体を集中的に育成・強化 産地経営体 マーケットへの対応力を高めるために、現状を変える意欲のある経営体又はグループ 法人経営体 集落営農組織 連携 JA(部会) 構成 発展 参加 家族経営体 役 割 具体的な取組 展 開 産地経営体は、家族経営 体と一体となって、産地 (品目のまとまり、地域 的な広がり)を意識した 営農を強化 ①販路・ニーズを基にした生 産ビジョンの構築・推進 ②生産ビジョンに即した産地 規模の拡大(維持)により、 農業所得の向上を実践 より生産性の高い営農に 向けて、農地やハウスの 集約・再編など、産地内 の経営資源の効率化に発 展 2.産地経営体の取組イメージ 例1 法人経営体を核とした露地野菜の共同出荷体制構築 家族経営体 ≪加工用ほうれんそう≫ 家族経営体 法人自身の規模拡大 1 【放棄地の引き受け】 小規模法人 1 小規模法人 1次加工 工場 3 中核法人 2 ≪取組例≫ 中核法人を窓口とした 3 共同受注・共同出荷 家族経営体 例2 集落営農組織における水田再編と法人化 TMRセンター 3 ≪取組例≫ 焼酎メーカー 加工メーカー 構成農家間の農地再編と 1 ゾーニング・輪作計画 法人化による ≪主食用米 ≪飼料作物 ≪加工用米 ≪露地野菜 ゾーン≫ ゾーン≫ ゾーン≫ ゾーン≫ 1 法人化 周辺農家と協力し 2 生産・出荷計画策定 2 意思決定の迅速化 ゾーニングを生かした 3 複数の販路への対応 2 例3 JAの部会組織によるハウスの集約化と新たな販路開拓 ≪取組例≫ 1 リタイア農家等のハウス 1 承継による集約・拡大 集約に伴うコスト削減、 ≪ピーマン≫ 2 3 7 量 販 店 2 生産技術の平準化 特色ある栽培による 3 新たな販路の開拓 求められる施策のイメージ 1 産地経営プランの策定 ☆産地経営体を核とした産地再生 規模拡大や組織化を進めながら産地の再生を図る「産地経営プラン」を策定 ☆産地経営プランのフォロー 産地経営体のコスト管理意識の定着・向上に向け、関係機関が一体となって、 継続的なフォローを実施 2 産地経営体に対する支援 ◇ 産地経営プランを策定した産地経営体に対し、以下の取組を支援 ☆販路の開拓・充実 販路の形成、需要に応じた経営・生産体制の構築 ☆産地の拡大・効率化 生産規模の拡大や、品目の集約等による営農の効率化 ◇ 「人・農地プラン」や「農地中間管理機構」と一体的に運用し、地域における 合意形成から基盤整備まで一貫して対応 水田農業の再生 畑かんの最大活用 ◇ハウスが無秩序に乱立している状況は、水田の集 約・規模拡大を阻害しているだけでなく、施設園 芸の効率化にとっても大きなマイナス ◇畑かんに対する期待が高まる中で、「水の恩恵が 大きい作物(加工・業務用野菜等)」と「小さい 作物(飼料作物等)」の峻別・ゾーニングが重要 ハウス 飼料 ハウス 現 状 農業法人 ハウス ハウス 飼料 現 状 ハウス ハウス 農業法人 飼料 ハウス 集落営農 飼料 飼料 ハウス 集落営農 法人 飼料 畑かん地域 目 指 す 姿 ハウスを一箇所に集約 ハウス ハウス 団地 ハウス 農業法人 経営規模の拡大 新たな組織化 農業法人 目 指 す 姿 集落営農 集落営農 法人 新たな組織化 コントラクター 経営規模の拡大 集落営農 法人 法人化 8 飼料畑を集約 畑かん地域 飼料 第1回農業成長産業化推進会議における主な意見(概要・順不同) 平成25年4月 1. 「農業の担い手」関係 ○ 農業の生産構造を変える前に、生産者の意識を改革し、経営者としての意識を持つ ようにしていくことが重要。 ○ 本県では、水田プラス園芸の複合的な経営が確立してきたところであるが、単なる 生産技術だけでなく、経営管理能力を持った農業者が育ってきているか、再度、問い 直すことが必要。 ○ 本県では、企業的な感覚を持った農業後継者の育成システムが確立していない。 ○ 意欲の高い今後の担い手に対しては、先行投資として、海外に出て行く機会の提供 など、様々な研修を用意して、全面的にバックアップすべき。 ○ 「スケールメリットを追求する経営」、「付加価値を高めて差別化を図る経営」のい ずれを指向するとしても、経営感覚が求められる。ディスカッション形式のセミナー や、異業種との交流など、能動的な研修機会を増やすことが望ましい。 ○ 個人での就農には高いリスクが伴い、結果、資金面でのハードルが高くなる。他県 では新規就農者向けの「里親制度」もあるが、技術的な面であったり、周辺住民との 関係づくりなどの様々なリスクを下げることについては、行政が支援する余地。 ○ 個人単位では産地の維持が難しい地域の担い手の受け皿として、JA では、出資法 人を立ち上げているが、うまく機能を発揮させるのが難しい。法人の安定的な経営を 支える対策も考えることが必要。 ○ 本県は、これまで、大ロットの主産地を形成する方向性が強かったが、「ここでし か食べられない」、「ここにしか売っていない」というような地域ブランドづくり、地 域づくりも考えていく必要がある。その際には、農業だけでなく、地域を支えるとい う意味で、農協の役割が非常に重要。 ○ 農業法人の中でも、実質的には家族経営レベルに近い法人から、常時雇用の労働者 がいる法人、更には、いわゆる経営者・管理職がいて組織体としてしっかりしている 法人など、様々な実態があるので、分析・整理してほしい。 ○ 本県の地理的条件などに合った集落営農のビジネスモデルができるのではないかと 期待しているので、事例を検証してみることが必要。 ○ 集落営農では、せっかく組織が立ち上がっていても、次のリーダーが養成されてい ないために、組織全体が根本から揺らいでしまうことがあるので、リーダー育成のあ り方が課題。 ○ 農家経営の実情を、「家族経営的なもの」か「企業的なもの」か見極めた上で、適 切に対応していく必要があるが、後継者確保の問題を踏まれば、今後、家族経営的な 農家をどのような方向にもっていくかが課題。 ○ 土日しか作業できない農業者や兼業農家の方達が、実際には地域を支えている。地 域をまとめていこうと頑張っている農業者に対する支援も必要。 9 2.「中山間地域の振興」関係 ○ 集落営農の視点を取り入れ、農を核として、観光や加工・販売に集落全体で取り組 むことで活性化が図られる。行政は、これをどうフォローするかが重要。 ○ 単に農業だけでなく、民泊や民宿経営、農家レストランなどのきっかけにより集落 の活性化が進んでいく。こういう動きをバックアップする上での、県の施策やサポー トの仕方などを検証すべき。 ○ 「産業振興」の視点ではなく、「地域振興」の視点から、中山間地型の集落営農が できた事例があると聞いている。集約化や大規模化が難しい条件不利地域では、この ような視点の転換を考えることが必要。 ○ 農業振興や農業政策のみで地域を維持するのは困難であり、直払い制度も、なかな か次のステップアップにつながっていない。単にモノを作るだけでなく、グリーン・ ツーリズムなどの第三次産業を生かして、地域に人を呼び込んでいくことが求められ る。 ○ 環境、あるいは健康に関連するものが、今後の成長産業になると考えられている中 で、中山間地域でも、このようなトレンドを踏まえて、雑穀米など、条件の不利を補 うことができるような付加価値を生む品目に転換していくことが求められてくるので はないか。 ○ 品目の選択と集中を進めて行く上では、気象条件などの中山間地域の特性も踏まえ、 中山間地域の魅力・強みを生かした選択をするとともに、消費者ニーズに合うように 品種改良された品目など、消費者目線も考慮して、長期的な視点から判断することが 重要。 3.「フードビジネスからの視点」関係 ○ 農業は、これまで以上にマーケティングの視点から捉え直し、観光や製造業なども 含めた複合的な視点を持つことが必要。例えば、直売所についても、農業を軸とした 周辺産業を含んだ拠点として活用する可能性を考えていく必要。 ○ 食品加工は非常に大事だが、プライスリーダーはメーカーなので、農産物の生産か ら加工までを手がけ、自らがプライスリーダーになることが重要。 ○ 他産業からの参入では、例えば、「食の安全・安心」の観点からは飲食産業、「生産 性の向上」という観点からは製造業による野菜工場や植物工場などが考えられるが、 参入を活発化させるために、参入のハードルを下げるような仕掛け・工夫が必要。 ○ 農業は、安定供給路線と、高付加価値化路線に二極化すると考えているが、高付加 価値化に対応する上では、アジア戦略の一環として輸出に力をいれるべき。 ○ 日本の加工食品は非常に信頼があるのだから、徹底的なマーケット調査を行って、 現地に合う商品づくりをした上で、アジア向けの輸出戦略を強化すべき。 ○ マーケティング、農商工連携、六次産業化などを進めていく上で、現場が必要とし ているのは、コーディネーター的役割を果たす人材であり、人材育成が前提。 ○ 農業団体では、いわば、自己完結的な事業体づくりが進められてきたが、現在の産 業が分化している状況をみると、生産現場が、県内の様々な食品産業と協力していか ないとうまく機能しないという印象。本県の高品質な素材を活用して、農業と商工業 が、機械、ノウハウ、人材等を互いに利用し合いながら協力していくためには、コー 10 ディネートする人材が必要。 ○ 末端の農家が輸出や加工などに取り組もうとしても、絶対的な情報量が足りないの で、コーディネーターやセミナー、加工施設など、有用な情報に関する発信の仕方が 重要。 4.その他 ○ TPP などで輸入が増加すれば、農業経営は、生き残りをかけて、高付加価値化路線 と、低価格・安定供給路線に、二極化することになると思われるが、経営者ごとに路 線を判断していくことが必要。 ○ TPP の影響が大きい稲作では栽培期間の短い品種の開発、施設園芸ではペレットボ イラーの普及に向けた環境整備など、ソフト面の対応も進めていくことが必要。 ○ 畜産分野は、飼料価格の高騰が大きな課題となっているが、行政では、現場サイド での努力では如何ともしがたい構造的な課題への施策を強化していくことが必要。 ○ 優良農地における遊休化・耕作放棄地化に対しては、これまで以上に施策的な対応 が不可欠。 ○ 畑作農業については、畑地かんがいというインフラ整備が整いつつある状況で、水 を生かすという点が非常に重要。 ○ 農業生産でコストダウンを図るためには、土地を集約し、機械化を進めて生産性を 高めることが必要。狭い土地で生産性を上げることは容易ではないが、世界第2位の 農産物輸出国であるオランダのように、付加価値向上により対応している事例は参考 になる。 ○ 農家といっても、企業的な農家から家族経営的な農家まで多種多様であり、このよ うな実態を踏まえた地に足のついた議論が必要。 ○ この会議は、本県農業の未来を切り拓いていくような議論をすべきであって、悲観 的な話に終始すべきではない。 以上 ※ 意見の分類については、事務局の責任において、便宜上、上記のとおり整理した。 ※ 同様の趣旨の意見が複数あったものについては、一つの意見に集約して記載しているものがある。 また、一つの意見の中に複数の趣旨があったものについては、分割して記載しているものがある。 11 第2回農業成長産業化推進会議における主な意見(概要・順不同) 平成25年8月 1.所得に関連した議論 ○ 今の農業は、生産現場に価格形成力がないという構造的な問題を抱えているので、農 業団体などの現場では、(価格に左右される)収益ではなく、反収増などによる所得向 上に焦点を当てた運動を展開。 生産者の部会内でも課題を共有しながら、経営管理意識の醸成を進めている。 ○ 農業団体は、これまで、「品目」ではなく、「地域」を基本単位として活動してきてお り、これが、価格形成力の有無と関係あるのではないか。 ○ 収益を確保するには、コスト管理・経営管理の観点が重要であり、これまでは、いわ ゆる「技術者」の育成、生産力の向上に施策の重点が置かれてきたが、今後はむしろ、 経営管理能力の向上が求められる。 ○ コスト管理は、単なる「節約」ではなく、稼働率をどう向上させていくかが本質的な ポイント。 2.家族経営体に関連した議論 ○ 他の産業にはない、農業が抱えている固有の課題としては、後継者・担い手の多くが、 血縁関係に基づいて決定されていること。 ○ 農地を誰に引き継ぐか、というのは地域にとっても大きな問題であるが、特に家族経 営体にあっては安直に「子供(血縁者)」という選択になりやすい。後継者が経営管理 能力を備えるための研修等が必要。 ○ 担い手育成に関して認定農業者制度があるが、理念が立派な反面、経営体に対するフ ォローアップや継続的な指導が十分に出来ておらず、制度が形骸化。 ○ 家族経営体の資質(経営感覚)というのは、資金調達の観点からも重要な要素であり、 経営感覚向上のために、普及センターも含めた現場でのフォローが重要。 ○ 家族経営体による法人化は、経営を捉え直す一つの転機となるが、経営分析をできて いない現状が法人化によって解消されるものでもなく、あくまで、目的達成のための手 段として捉えるべき。 3.地域の担い手に関連した議論 ○ 地域の担い手として期待される集落営農の伸びが鈍化していることは残念。 ○ 集落営農では、参加農家の多数決による意思決定が基本であり、土地持ち非農家の声 なども大きく反映。 その結果、流通サイドからみると、ビジネスの相手方としては不安定な存在であり、 法人化等により、真の意味での「経営体」になることが求められる。 12 ○ 本県における集落営農は、中山間地域で特に大きな役割を果たし、多面的機能の維持 という観点からも引き続き重要な役割を担うが、合意形成に難点があるため、責任の所 在をはっきりさせるという観点からも、業務執行体制の整備が課題 ○ 個人・家族経営体が衰退する中、今後は、地域ぐるみで農業を支えていく必要があり、 JA 出資型法人は、地域の雇用確保も含め、地域密着型で進めていくべきもの。 現状では、赤字法人も多く、収支上の安定を図ることが、継続的に地域の役割を果た していく上での課題。 4.担い手・経営を考える別の視点からの議論(1~3に記載したもの以外) 【地域性】 ○ 農業実態調査の結果にも、地域的な傾向がはっきりと現れており、担い手の育成につ いても、地域性を踏まえたきめ細かなシナリオが必要。 ○ 本県の土地利用型農業は、畑作が大規模法人、水田利用が集落営農、という大きな方 向性があるように見えるが、水田利用の今後の経営展望が難しい。 ○ 稲作地域については、水稲しか展開できないような土地もあり、経営的な見通しが厳 しい。その意味で、土地改良の役割は重要であり、大いに期待。 【品目別】 ○ 本県の耕種部門では、大まかな経営の方向性が確立している施設園芸に対して、露地 園芸の課題が大きく、契約取引の拡大などが求められている。 ○ 宮崎県の品目的な強みは、厳冬期のハウス栽培にあることから、ここを起点とした考 え方も重要。 ○ 畜産の世界では、基礎的な経営力が不足している例が多く見られ、基礎的な研修・講 座等を繰り返しすることで経営力を高めていくことが必要。 ○ 畜産は、地域内の役割分担を進めることで地域を維持することが課題。 ○ 畜産の分野では、コントラクター組織の役割が重要だが、運営基盤が確立しておらず、 JA や行政におけるサポートが強く求められている分野。 【その他】 ○ 農業という産業が、製造業や IT 産業といった他産業と、どのようにつながりを確保 していくかを、農業の今後の成長戦略の柱とすべき。 ○ 新規就農者は、担い手として大きな位置付けを占めるが、新規参入時には、土地も資 源もないため、研修制度等を通じ、どのように地域にスムーズに溶け込ませていけるの かが課題。 ○ 本県農業の振興を考える上では、米を基本とする日本型食生活の普及等を通じ、米の 消費を増やしていくことも重要。 13 5.今後の議論の方向性について ○ 流通サイドにとっては、カウンターパートとして実際に姿が見えているのは、個人・ 家族経営体ではなく、農協や法人、組合など。長期・安定的なサプライチェーンを期待 する実需側の視点を踏まえた担い手育成の議論が重要。 ○ 地域における役割・期待が高い農業法人が、今後更に伸びていくために必要なものは なにか、現状で何が妨げとなっているか、を明らかにしていく必要。 ○ 中山間の議論は、個々の経営体、地域コミュニティ、農地保全等、様々なテーマが絡 み合っている。この会議でも、抽象的な議論に陥らないように、具体的にどこに焦点を 当てていくか、ある程度絞っていく必要。 以上 ※ 意見の分類については、事務局の責任において、便宜上、上記のとおり整理した。 ※ 同様の趣旨の意見が複数あったものについては、一つの意見に集約して記載しているものがある。 また、一つの意見の中に複数の趣旨があったものについては、分割して記載しているものがある。 14 第3回農業成長産業化推進会議における主な意見(概要・順不同) 平成25年10月 1.視点 ○ 今回の説明を聞く限り、供給サイドからの発想で「産地経営体構想」が説明されてい たが、市場サイドが産地の変化を求めていることを、もっと前面に出すべき。 ○ 今回の「産地経営体構想」は、マーケットニーズから、脆弱な生産構造の改革が求め られていることを強調すべき。 ○ 産地全体というよりも、個々の経営をしっかりさせるという観点が大事であり、小規 模でも頑張っている農家を支える必要。 ○ 本県農業で大きな割合を占める兼業農家の中でも、営農継続の意欲はあるものの今後 の方向性に不安を抱える農家の位置づけについては、「産地経営体」という枠組みの中 でも議論が必要。 ○ 日本の生産技術や農産物の品質は世界でも戦える水準にあるが、これを小さい単位で やっても競争力は生まれない。宮崎に合った農産物、他に負けない農産物を、もっと大 きい産地としてのスケールで展開することで、国際競争力のある農業が展開可能。 2.考え方 ○ 組織形態も規模も違う法人・集落営農・JAが、「産地経営体」となっていくために は、求められてくる取組も違ってくる。これをしっかり示すことで、構想のイメージも 明確になってくるのではないか。 ○ 「産地経営体」への発展イメージを、経営力(ニーズ対応)・生産力(ロット確保) から説明しているが、企業収益や農業所得という考え方も追加すべきではないか。 ○ 私が考える「経営力」とは、事業を継続していく力(持続性)、環境変化への対応力 であり、経営者の素質や資源活用力を伸ばすことが重要。 ○ 個別の経営体であれば、経営者能力、組織力(組織内の役割分担)、経営継承力が重 要だが、産地を引っ張るイメージを強く出すのであれば、取引対応力やマーケティング 対応力という表現の方が適当ではないか。 ○ 「産地経営体」を一種の地域生産システムとして捉えると、(今回の構想には正面か ら取り上げられていないが)畜産サイドでの検討も必要。 ○ 話を聞いていると、「産地経営体構想」において、畜産というシステムが馴染むかど うか、やや疑問に思うところもある。一方で、飼料畑の集約化は畜産の大きな課題であ り、コントラクター組織の育成・活動強化の支援と併せて進めるべき。 15 ○ 「産地経営体」の効果として挙げられている規模拡大や集約化について、稲作につい ては自明の理だが、園芸ハウスの団地化はメリット・デメリットがあるので、一概に言 えないところがある。 ○ (「産地経営体」を一法人としてイメージすると)「産地経営体」に産地全体の経営資 源の再編までを役割として負わせるのは荷が重いのではないか。 ○ 「産地経営体」については、法人・集落営農・JAという内発型の類型だけでなく、 流通業者や食品メーカーからの参入のような外発型の動きを前向きに捉えることで、県 内経営体の技術向上につながる可能性も大きい。 3.定義 ○ 「産地経営体」が何を指すのかわかりづらい。 ○ 「産地経営体」は非常に斬新なワーディングなので、これが、法人のような経営組織 を対象としているのか、(協議会のような)産地組織として捉えるのか、確認したい。 ○ 「産地経営体」は、法人かどうかといった経営形態で整理するのではなく、ロット確 保などの役割で整理すべき。JAとしても、JA本体というよりも、既にまとまりのあ る部会組織が、産地経営体の有力な候補になるのではないか。 4.その他 ○ 経営力の向上というのは、施策と結びつかないところがあるが、主な経営指標を基に、 色々な経営体に共通する課題を整理して、解決策を検討することは重要。ビジネスの側 面からは、信用や与信の問題も大きい。 ○ 新規参入時点のリスクが高いのは当然だが、規模拡大時でも別のリスクが発生するた め、改善計画のフォローなどを通じ、経営体の発展過程(節目)に応じた支援が重要。 以上 ※ 意見の分類については、事務局の責任において、便宜上、上記のとおり整理した。 ※ 同様の趣旨の意見が複数あったものについては、一つの意見に集約して記載しているものがある。 また、一つの意見の中に複数の趣旨があったものについては、分割して記載しているものがある。 16
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