Term中間発表 近距離通信技術を利用した災害時の被災者捜索システム

Term 中間発表
近距離通信技術を利用した災害時の被災者捜索システム
ISC CPSF B3 板橋孝典 (pia)†
1.
はじめに
本 TERM における背景と問題意識, それに対応する
既存の研究について述べる.
1.1 背景
3年前,私は世界的にも有名な東日本大震災を経験し
た.一時的なことではあったが,通信インフラの一部が
破壊され外部と連絡を制限され、震源に近いところに住
む親戚の安否を確認することが困難な状況に陥った.災
害時、既存の通信インフラに接続できない状況に陥った
場合,外部と連絡を取る手段が限られ,救助が大きく遅
れてしまう可能性がある.スマートフォンやウェアラブ
ルデバイスに搭載されている bluetooth,wi-fi などの無
線技術が急速に発達してきた現代ではこれらを利用して,
インターネットに依存しないネットワークをより確立し
やすい環境になってきたと考えられる.
1.2 問題意識
最も解決しなければならない問題の一つに救助時間の
短縮化があげられる.”72 時間の壁 ”という用語からも
わかる通り救助作業は迅速かに行う必要性がある.しか
し,現実的な問題として人的資源には限りがあり被災地
すべての地域を網羅することは困難である.そういった
状況下において、既存の通信インフラが完全に破壊され
てしまうことは致命的な問題となりえる.
1.3 関連研究
前節であげた問題意識に対する関連研究が存在する。
無線通信技術の一種である可視光通信技術を利用する
ことで災害時の人命救助を行う研究がある,可視光と
いう特性を活かすことで被災者の発見を促進し,さらに
情報伝達を行うというものである,しかし,光は周囲の
環境の影響を大きく受けやすいものであり,特に,日中
は太陽が大きな障害となってしまうため夜間にのみ効果
を発揮することが可能であるという制約がある.また,
MANET を用いた位置情報収集システムの提案を行う研
究がある.自動車に搭載された GPS や wi-fi ルータを使
用することでネットワークを作り出し被災者を探索する
システムである.これは、ルータが完全に破壊されてい
たり,自動車のエンジンがかかっている必要があるため
実行環境に制限がある.そして、雪崩ビーコンを使用し
被災者を捜索するシステムを提案するものがある.これ
は本研究に近いものがあるが,雪崩ビーコンそのものが
端末と同程度の大きさであるため、現状では実現が難し
い.また,生体データの収集を行っていないため被災者
の詳細な情報を取得することは困難である.
2.
目的
本研究では,既存の通信インフラに全く依存せず効率
的かつ容易に被災者の捜索を支援するシステムの開発を
† 慶應義塾大学 環境情報学部
‡ 慶應義塾大学 政策・メディア研究科
親:武田圭史 坂村美奈 (mina)‡
行う.
2.1 アプローチ
無線通信技術を利用した位置を特定するシステムを構
築することで,GPS に頼ることなく被災者の位置情報
を取得する.また、ウェアラブルデバイスに搭載されて
いるセンサーを利用することで被災者の生体データをセ
ンシングし,そのデータを救助者側でモニタリング可能
な機能を付加する.それにより、これまで目視に大きく
頼ってきた救助活動の効率を向上させる.さらにスマー
トフォンのアプリケーションとして配信することで民間
人による一次捜索の能力を向上させ救助までの時間短縮
を目指す.
3.
位置特定手法
今回,要救助者の位置を特定するために,iBeacon を
使用する.理由として,NFC より遥かに広範囲での通
信が可能であり、距離や端末を識別することが可能であ
ることがあげられる.加えて,現存するほとんどの端末
で使用することが可能であり実用性に優れていると考え
る.iBeacon から発信される電波の強度を測定すること
で距離の判定を行う.
4.
予備実験
iPhone6 を iBeacon のレシーバーとして実装を行った.
1秒ごとに電波強度の値を取得することが可能である.
また,m 単位での電波強度の変化を確認できている.
5.
課題と解決策
実際に予備実験を行った上で生じた課題が2つある.
一つは方向情報の取得である.電波強度からは方向を取
得することはできない.これを解決する上ために,端末
に搭載されている磁気センサを使用する.電波強度と磁
気センサのデータを同時に配列に格納していき最も大き
な電波強度を示した方角を出力するシステムを実装する.
2つ目は,内的,及び外的要因により発信側の端末が機
能停止した場合の対処である.これについては,瞬間的
に検知した beacon の端末情報と日時を記録することで
解決を計る.
6.
評価方法
アンケートを利用した定量的評価,定性的評価を実施
する.10 人の被験者に実装したアプリケーションを使用
してもらう.その際の環境として,電波がよく飛ぶと考
えられる見通しの良い場所,電波が遮られる見通しの悪
い場所の二つを用意し,その中で,実際に3つの Beacon
を探し出してもらう.そして,それぞれの場所で,探し
出すまでの時間,経路,そして,アプリケーションの使
用感などを調査し総合的に評価する.
7.
今後の予定
災害時を想定している以上,なるべく多くの要救助者
を発見する必要があるため iBeacon の複数認識は必要と
なる.したがって,方向検知の実装とあわせて 12 月末
までに終了させる.平行して生体データのモニタリング
機能も実装する.これらが終了ししだい,評価を行う.
参考文献
[1] 災 害 時 に お け る 人 命 救 助 の た め の 携 帯 用 照
明を利用したLED可視光通信システム
https://kaken.nii.ac.jp/d/p/24760307/2012/11/ja.ja.html
[2] MANET を 用 い た 災 害 時 に お け る 被 災
者 の 位 置 情 報 収 集・追 跡 シ ス テ ム の 提 案
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003224216
[3] 雪 崩 ビ ー コ ン に 基 づ く 被 災 者 捜 索 シ ス テ ム
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009480630