1 4 1 総合都市研究第1 1号 1 9 8 0 サイスミック・マイクロゾーニングにおける 震度分布の評価手法について 一ーその 4 . 内陸型中級地震の墓石・住家被害などによる震度分布一一 望月利男* 松田磐余料宮野道雄*料 要 約 我が国においては,墓石の転倒調査から激震地において作用したであろう震度を推定する試みが, 1 8 9 1 年濃尾地震以来,少なからぬ地震に対して実施されてきた。この報告では,そのうちマグニチュー ドM 6台の 6つの地震について震源断層(判明あるいは推定されている場合)などからの距離・地形 (地盤)と震度の関係を検討している。 ただ,結果的にはこれらの規模程度の地震の場合,地形(地盤)と震度の相関性はあまり明白には現 われてこないケースが多く,また墓石の転倒のみによる推定震度のみでは,その距離減衰の不明瞭なも のも幾つかある。しかし,その反面墓石の転倒による震度と墓石の転倒率, 住家被害などを l i n k して 考えれば,距離減衰は幾つかの地震において明白に現われてくる。 すなわち,この報告は,中級直下型地震に対するマイクロゾーニング、のための基礎研究に関するもの であり,種々の規模・地震型に対する一連の研究の一部に関するもので、ある。 震度とみなして,水平震度を引き下げると過少評価とな 1 . はじめに る ) 。 1 8 9 1年濃尾地震以来,我が国で発生した被害地震の多 ては,墓石の転倒調査は限界をもっており,表ほか くに対し,墓石の転倒から震度を推定する試みがなされ ( 1 9 7 9 ) は,震央近傍の墓石転倒による推定加速度は電 気でいうところの実効値的なものであり,その推定加速 度を、/玄倍すれば,アメリカなどで観測されている震央 また,上記の理由から短周期の大加速度の評価に対し てきた。また,この震度と木造住家全壊率の関係が物部 ( 1 9 2 5 ) により実験式で表わされた。これらは,現在の 気象庁の震度階にも少なからず影響をおよぼしている。 一方,墓石のような物体(単体)の振動入力に対する 挙動の理論的・実験的研究も最近に至るまで,幾っか報 告されてきた。望月ほか ( 1 9 7 6,1 9 7 7,1 9 7 8 ) は,単体 の運動の理論的検討から,単体の寸法で定まるある周期 以上の加速度は,墓石の転倒j から推定できることを示し た。また,墓石転倒により推定される加速度は,水平加 速度とみなした方が実状に近いことも明らかにした(合 *東京都立大学都市研究センター・工学部 料東京都立大学都市研究センター・理学部 ***東京都立大学工学部研究生 近傍の強震計の記録およびそれらによる実験式によく合 うようになることを示した。 したがって,この報告で示す震度あるいは加速度も有 効加速度的なものであるが,上記表ほかの試行も理論計 算によりある程度実証しうる。ただ,この報告の範閤内 で、は,墓石調査を中心とした震度分布の評価にとどめ, 実際に得られている強震計による地震動の最大加速度と の対応性は後日発表する予定である。 1 4 2 総 合 都 市 研 究 第1 1号 2 対象地震と検討方法の概要 この報告で対象とする地震は 1 9 3 3 年能登地震 M6.0 , 1 9 3 6 年河内・大和地震 M6.4, 1 9 4 1年長野地震 M6.2, 1 9 6 2 年宮城県北部地震 M6.5,1 9 7 4年伊豆半島沖地震 M 9 7 5 年大分県中部地震 M6.4の合計 6個の地震であ 6 . 9,1 る。これらの地震の墓石調査密度には精粗があり,かっ その範囲も様々であるため,検討方法も全く共通には行 いえないがおおよその手法,手順を以下にまとめて示 す 。 ( 1 ) 墓石調査地点の地形図(主として 2万 5千分の 1 を使用)へのプロット。 ( 2 ) 被災地近辺の地盤柱状図の収集と住家全壊率の両 者の地点(地区)の向上地形図への表示。 ( 3 ) 墓石調査地点・住家被災地の柱状図,空中写真, 調査時野帖(写真),現地調査並びに地形図による地形・ 地盤種区分。 ( 4 ) 地震断層あるいはそれが不明の場合,被害の中 心,最大震度の中心(線)の地図上への記入並びに調査 墓地,住家被害記録地区の記入。 ( 5 ) ( 4 )の各地点,地区の地震断層等からの距離の算 疋。 3-4mの層厚(それ n 深は固結層)でも 2種とする。 第 3(皿)種:未固結層厚 10m以上30m未満,ただし未固 結層が泥炭層を含む場合,層厚 5-lOm程 度あれば第 3種とする。大体,谷底,一般 低地並びに未固結層厚の大きい洪積地盤 第 4( N )種 未 回 結 層 厚 30m以上の地盤,厚さ 5m以上 の盛土地(経過 3 0年未満) ,10mを越える 泥炭層など極軟弱層を有する地盤 なお,上記の他に,未固結層厚がほとんどゼロの場合 は,第 o(ゼロ)種地盤として表わしている。 この報告では,すでに述べてきたように M6.0-6.9の 6個の地震を対象に,墓石調査による震度 K (推定加速 度 Amax) と断層からの推定距離 x(あるいは断層が推 定不能の場合,被害または震度分布の中心からの距離 Xう・地形(地盤種)の関係を整理し,検討を加える。 i p これらの地震に共通していることは,地震断層の d 00 に近いことであり,断層が判明または推定 a n g l eが 9 a u l tt r a cからの水平距離で表 されている場合 xは f わせる(厳密には,断層上端が地表ないし,その近辺に まで至っているとは限らないが,その深さが十分判明し ている場合は少ない。ただ,いずれも浅発地震である) と近似的に考えている。 以上が,v まぼ共通の作業であるが,可能なものについ ては,震度と断層等からの距離の実験式の作成,住家全 壊率 Pと墓石調査による震度Kの関係等も求めた。以下 に地形,地盤種について述べる。 3 . 1 9 3 3年 能 登 地 震 M6.0 この地震について用いた記録資料は“鈴木武夫:昭和 8年 9月2 1日の能登地震踏査概報,地震第 5巻,第 1 1 地 形 a 斜面 A (山地・丘陵地斜面) b 斜面 B (台地斜面,すなわち段丘崖) c 緩斜面(斜面の末端部にみられる緩斜面,ゆるやか d e f g に起伏している段丘面,ほぼ 1 / 2 0 以下の傾斜,微高 地) 台地上の平坦面 砂諜質な沖積低地(扇状地,沖積錐,谷底低地) 砂泥質な沖積低地(三角州,自然堤防,後背湿地, 泥質な氾濫原,谷底低地) 海岸平野(砂州、l,浜堤) h 干拓地 号 1 9 3 3 "である。 棟 , 主な被害としては,住家全壊 2棟,半壊(相当 )12 1名であり,墓石調査は,七尾町:3 4 0 死者 3名,重傷 1 0 6 g a l,石崎 3 8 5 g a l,田鶴浜:2 9 4 g a lの 4地 g a l,赤浦:3 点で行われている。また,鈴木は人,住家,土蔵,その 他の建物,道路,その他の被害から総合的に被害分布の コンターラインを描いた(上記文献,第 1表,第 1図 ) 。 図ー 1の被害の中心線は,その被害分布の中心を直線 で表わしたものであり,断層は追跡しえていなし、。した がって図- 1,図- 2における距離の表現も被害の中心 'としてある。また,墓石調査(上記文 からの距離 x 献,第 2表)による推定加速度は Amax,地形は第 2章 におけるようにアルファベットで,地盤種は 埋立地 地盤種 第 1<1)種:未固結層(大体 N値3 0 未満)厚 5 m未満の 地層,未固結層は通常の砂,シルト,粘土 など 第 2(II)種:未悶結局厚が 5m以上 10m未満,ただし, 未回結層が泥炭層など著しく軟弱な場合, I-Wで表 現してある。 この地震では,墓石調査は 4地点でしか行われておら ず,また被害も小さいため, Amax (あるいは K)の距離 2 )。 減衰・地形・地盤種の関係は定かではない(図一1, 最大加速度は石崎 (b :台地上の平坦面)で 3 8 5 g a l と推 定された。なお地盤種田,調査地点 1が被害の中心線か ら相当離れているにもかかわらず Amax はかなり高く 望月他 4 サイスミック・マイクロゾーニングにおける震度分布の評価手法 143 核官の中 I~'線 ¥ ¥ , 1 墓石調査地点と地形・地盤種・推定加速度 図 (Amax) ( 1 9 3 3 年,能登地震,断層不詳) a l 9 ∞ 1 0 J 「 @~\⑥CI 50) ム1 x n 寸 ロ I 一 一 九 雪 正 正 二 二 干 初 初g ω誠 : コ ; ハ ド i 一 し 0 , α 旬U 工 - j 戸 一 O川~ lU~ゐふ h1 可Tち1芯 肌初 。←1五.0二 5 Ì-N. す 一も,~....~γ『へヘ~、\、JJ : 4 1 H 4 5 . 0 4 図 -2 Amax (推定加速度)と x '(被害の中心線 図- 3 墓石調査地点と地形・地盤種・ Amax ( 1 9 3 6年 ,i l l ) からの距離)・地形・地盤種(添字I.n 河内・大和地震,断層不詳) の関係 a a l 巴 士 1 b d ム e . . この地震について使用した調査記録資料は,次の 3文 回L (i) 棚橋嘉市:墓石の転倒よりみたる河内,大和強 震の震度について,海と空,第 1 6 巻 第 6号 1 9 3 6 。 ( i i ) 棚橋嘉市:河内大和強震地域,踏査報告,験震 1 9 3 60 ( i i i ) 吉山良一:昭和 1 1 年 2月2 1日河内大和の地震調 査 報 告 , 地 震 第 9巻 第 6号 1 9 3 7 。 ・ c X 4 . 1 9 3 6年 河 内 ・ 大 和 地 震 M6.4 献による。 m a0 一0 一 ×Vム × 一 夫A 庄苅 A せるが,上記したような調査地点数が少なく,明確なこ とはいえなし、。 1 α b ぷ│ ( 3 4 0 g a l ) 推定され,地盤と Amaxの相関性を推測さ 0 . 1 f 口 9 • 5 . 01 0 . 0 km 加速度分布の中心線からの距離) 図 - 4 Amaxと X'( ・地形の関係(地盤種は全てI) 報 告 第 9巻 この地震においても断層の追跡は不能のようである。 橋(i)により,震度分布のコンターが示されている(i の第 2図)。それでこの報告では, その震度分布の中心 線からの距離で Amax あるいは Kを表わすことにした ')。 (距離 X また,被害規模も比較的小さく,死者は 8名,負傷者は 図- 3に加速度分布の中心線が示してあるが,それは 5 1名生じているが,全壊住家 4棟にとどまっている(半 7地点で行われており,棚 壊 5針案)。ただ,墓石調査は 1 棚橋(j)より 2本得られる。図では 1 7の調査地点のう ち,場所(地形・地盤種)の判明した 1 5 地点の Amaxと 1 4 4 総 合 都 市 研 究 第1 1号 地形が示してある。 Amax の最大は駒ヶ谷村で推定さ 3 1 g a l である。 れ,その値は 4 図-4によれば地形 C,すなわち,この地震の被災地 としては,比較的軟らかい堆積物が地表を覆う地点 (x 印,緩斜面)が,砂磯質な地盤(地形 e, A 印)より Amaxが高いことは認められる。また,より地盤が良い とみなせる地形 a(0印)の iAmaxはさらに低い。ただ, いずれもここでいう地盤種でいえば 1であり(未固結 層厚 5 m未満)未聞結層厚による区分はできない。また 以上の資料の範囲内では X'が 3km未 満 程 度 か ら Amaxが低下する傾向は認められるが,それより X'が 小さい範囲での距離減衰は,ほとんどみられない。 5 . 1 9 4 1年 長 野 地 震 6 . 2 図-6(a) Q ( 墓石転倒率)と X'(墓石転倒率の 中心線からの距離) ・地形の関係 使用せる調査資料は下記の 2編である。 (i) 岸上冬彦・永田 武・宮村摂三:昭和 1 6 年 7月 1 5日長野地震の統計的調査,震研葉 報 第1 9号 第 4冊 1 9 4 10 ( i i ) 金 井 清 : 昭 和1 6 年 7月1 5日長野地震の家屋被 害について,向上。 図 -6(b) Q (墓石転倒率)と X'(墓石転倒率の中 心線からの距離) ,地盤種の関係 この地震もまた,地震断層は確認(推定)されていな い。また墓石調査も転倒率 Q に限られている(岸上ほ か , i ) 。したがって,この報告で用いている X 'の基 線は,墓石転倒率 Qの中心線とした (Qの高い地点を結 ん だ 線 , 岸 上 ほ か の 第 2図などから) ( 図 5) 。 Qの調査は, 5 0 地点で行なわれている。それを地形 別,地盤種別に Q-X'関係としてプロットしたもの が図 - 6(a),図- 6(b)である。この 2枚の図から, Qは X 'でいって 2km内外を境として急激に低下する 傾向を示すことがわかる。これは,いいかえれば加速度 の急激な減衰が,この境界付近から生ずることを意味し よう。また,図← 6(a)より最も地盤のよい地形 aの Q • 90<Q~1∞ ( )7 0<Q壬9 0 ① 叩 く Q壬 7 0 @ お<Q~三日 図 E Dl ü<Q~30 が低く,地盤の悪い fの Qが高い側にある傾向も読みと のü< Q~10 れる。 なお,この地震における被害は,まず人的被害につい 0 00/。 , 5 墓石調査地点と地形・地盤種・ Q (墓石転倒 19 4 1年長野地震) 率) ( , 負傷者 1 1名である。住家被害では全壊 ては死者 6名 1 0 4 棟,半壊209 棟と前記 2つの地震に比べれば,住家被 害はかなり多い(金井 i iによる)。因みに望月ほか 望月他:サイスミック・マイクロゾーニングにおける震度分布の評価手法 ( 1 9 7 8 ) はこの地震における Q-P (住家全壊率)の関 係をすでに示している。 1 4 5 i o S │ l 時 0・ 犯α r n a x )は ところなこの地震では直接 K (あるいは A 福富ほか ( 1 9 5 4 ) ,1 9 7 8 年伊豆大島近海沖地震に対する 岩崎ほか ( 1 9 7 8 ),望月ほか ( 1 9 8 0 ),1 9 7 8 年宮城県沖地 震に対する岩崎ほか ( 1 9 7 9 )がある。 ︿ム企口・ で Q-K( A r n a x ) の関係を推定する必要がある。この 関係を求めたものとしては, 1 9 5 2 年十勝沖地震に対する V bcdefg 実測されておらず, Qのみ与えられている。したがっ て , Kまたは A r n a xを推定するためには,何らかの型 しかしこれらの地震は,ここで対象としている長野 地震に比べれば,地震規模がかなり大きい。墓石の転倒 率は,優勢な地震動の継続時間(波数)にも少なからず 影響を受けると考えられる。それゆえ,ここでは地震規 模が比較的良く似ている後述の 2つの地震,すなわち, 宮城県北部地震 M6.5と大分県中部地震 K6.4 における Q - K関係の平均関数を求め,長野地震 M6.2の Q から K (Amax) を類推することを試みた。 図 7は,上記 2つの地震の平均的な Q-K 関係を表 関係を求めうる地震は極く少 (方法は後述,また Q-K 数である)わしたものであり,図- 8,図 - 9は,この Q-K関係から類推した Arnax-X'・地形, Arnax-X'. 10km 図 -8 A r n a xと x '(墓石転倒率の中心線からの 距離) ・地形との関係 1 d 誤i 1 巴皇星稜 o0 Q 9 9 . 9 9 ム 宮ぬ県定静問農ヒ大分県中静也農の平均 田. K o = O . 3 5 6 ~=O.092 玄l X= O . 0 5 5 切 レ イ ト / レ イ • 同/ ー ー ト O 図 • • 2 X 3 ム 4 口 1 0拘1) 9 Amax と X'(墓石転倒率の中心線からの 距離) ・地盤種の関係 / γ 地盤種の関係を表わす。図上に併記したように Amax X'の関係は相関係数 R=0.805をもって関数化され る。関数化は,地形(地盤種)を区分して行ってはいな ト l づ いが,図から A r n a x と地形・地盤間の相関性は読みと れる。 また,図 -10は上記のようにして類推した Amaxの 分布を,それぞれ地形,地盤種を併記して示したもので 0 . 0 ある。図中には前記した基線が示してある。推測される 最大加速度は若槻村徳間 (Q=100%) で , 5 9 0 g a lない 0 . 2 0 0 お Q . ω L一 一一 な臼 図- 7 宮城県北部地震と大分県中部地震の墓石転 倒率 Q と震度 Kの平均的関係 K しそれ以上となり,この地点の Amax が他地点に比べ て特に著しい{直を示している。しかし,平均的にみれ ば,ここでいう基線至近傍でも 4 0 0 g a l 内外である。 1 4 6 総 合 都 市 研 究 第1 1号 部 種 m A VA十l十1 J 弓 - ・ b > < d ム e . . Ji f 口 ロ 1 0 0L 9 • 句 この地震の検討に使用した資料を下記に示す。 3 0日宮城県北部地震調査報告,震研 繋 報 第4 0号 1 9 6 2 。 ( i i ) 大沢幹・細田良彦:昭和 3 7 年 4月3 0日宮城県 北部地震の家屋被害について,向上 この地震は,規模のわりに,住家被害の多い地震であ 櫨骨 嶋一。一 λ n u r l﹁ 1 也的 a 0 c 6 . 1 9 6 2年 宮 城 県 北 部 地 震 6 . 2 7 年 4月 (i) 佐藤泰夫・松田時彦・柴野陸郎.昭和 3 h い一緋酬 と県 点城 地宮 ヨwnu 桂砕 1 0 墓石転倒率 Qと震度 Kの関係(図 7)から類 推した Amax の分布(添字は地形・地盤種) ﹃ 竺一 図 石臼 墓( 図 m S T l ∞km 1 図-12 Amax と x '(加速度分布の中心線からの 距離) ・地形の関係 g o l な氾 箆 る。主な被害はまず人的被害で,死者 3名 , 負傷者 2 72 名,住家全壊 340 棟,半壊 1 ,1 1 4 棟に達する。 x ロ 0 d •主 h 主 この地震もまた断層が追跡できないため, ( i i )佐藤ほ かによる推定加速度分布の中心線を基線とし,そこから の距離を x 'とすることにし,図-11に示した。墓石調 K ' 4 3 o 2 t En r> < 1 一 0 五 芝 生 一 b . 査は,図 -11に示すように 20 地点 (Amax判明は 1 7地 点)で行われ, Amax と Q の両方が調べられている。 図-12 ,図ー 1 3は Amax と日己のようにして仮定し た x 'の関係であり,それぞれ地形,地盤種が区分でき るようにしてある。調査地域の多くは低地であるが,一 部は台地も含まれる。ただ,この 2枚の図からは地形・ 地盤種と Amax の聞に明瞭な相関性は見出せな L、。し かし, Amaxの距離減衰は明らかに認められる。 図-13 Amax と x '(加速度分布の中心線からの 距離) ・地盤種の関係 また,図一 1 4は , QとKの平均的な関係である。図と して正規確率紙を用いていることからわかるように,こ の実験式は,次式を基本型として仮定している。 1 4 7 望月他:サイスミック・マイクロゾーニングにおける震度分布の評価手法 Q 泊. 9 9 $ . 9 丹J 2 4 2 九(均) K o = 0 . 3 0 3 (1) Q= 宮城県t t 静地震 ー 00 ~λ=0.075 ここに, y=K-K o・墓石の滑動落下あるいは転 ,K o 倒に対する標準抵抗震度(墓石の 50%が上記の状態に至 るに要する震度), h:墓 石 の 上 記 抵 抗 震 度 の 一 様 さ 9 9ト 下 ジ =100581 zL1J- ( u n i f o r m i t y ) を示す指数で,標準偏差 σ との問に, σ=1 / ( 、/Zh) の関係がある。すなわち, hが小なるほど σの値は大となり,墓石の摩擦係数などが広く分布して いることを表わす。 は , ( 1 ) 図-15 2 5 )が提案した木造建物の全 式を物部(19 壊率 Pと震度 Kの関係そのものに適用し hと K oを決 日 : : : σ )が最小に 定したものである。いずれも,誤差の和 0 法るようにして, Q-K, P-K 関係を定めている。た だ,図 -15の Pの母数は主として市町村単位であり,地 表の規模からみれば,単位地域が広過ぎる。ために K o . 8 1 5と異常に高い値になって (住家の標準耐震度)が 0 いる。 は,それぞれ QとX'・地形, QとX'・ ,図 -17 図-16 地盤種の関係である。図 0 . 0 1 0. 9 J K 図一 1 4 墓布転倒率 Qと震度 Kの関係 み ? 1 4を介すれば, Qをも考慮し ム ロ 地問 ・ ・ αO 鈎.99 9 9 9 . ロ 宮城県沈静地震 c X d ム e K o = O . 8 1 5h = 3 . 4 4 9 ZO := O . 0 5 9 A f 口 9 帆叫 9 9 b 切 P o o k m 5 J竺 '(加速度分布の中心線からの距離) 図-16 Q と X 地形の関係 句 日 o f o 山 l ム . 地盤種 r o 1 0 ム ム 1 0 1 UH n u 図-15 住家全壊率 Pと震度 Kの関係 Ill--116 LJ 5 . . , t ) 一 一 』 o0 1 • 2 X 3 ム 4 口 r o k m '(加速度分布の中心線からの距離) 17 Q と X 図地盤種の関係 総 合 都 都 研 究 第1 1号 1 4 8 たKに読みかえることもできるが,約 17-18km 以遠で 壊1 1 8 棟,半壊 271 棟を数える。図一 1 8が示すように調査 の Qの低下は著しい。 墓地の大半の地形は山地・丘陵地であり,低地の墓地は 7 . 1 9 7 4年伊豆半島沖地震 M6.9 わずかである(全数 44 地点)。断層は,図-18 が示すよ うに大体追跡可能であり,この t r a c eからの距離を X と して,図-19,20を作成した。上記したように墓地の多 使用した資料は,“東京都立大学地震研究グ、ループ: くは地形 a (地盤種もI, 1 1 ) であり, Amaxと地形, 地盤種の関係は見出せないが,距離減衰は明らかに認め 9 7 4年伊豆半島 最近の内陸直下地震の調査報告,第 1部 1 沖地震調査報告"並びに墓石調査時の野帖(国井隆弘ら による)。 この地震による主な被害のうち,人的被害の死者は 30 名(行方不明を含む) ,負傷者は 8 2 名であり,住家の全 られる。 また被害の多くは,南伊豆町に集中しているが,それ らの集落は,墓地に比べれば一般に地盤の悪いところに 立地している。ところで,南伊豆町のなかでも多くの被 害を生じた集落,石廊崎,中木(斜面崩壊により大被害 をうけた) ,入聞はほぼ直接的に断層活動の影響をうけ ており,振動により大きな被害をうけた建物はむしろま ? … ま … 一 一 は カ な りの相関性を示しており,山地などでは断層にかなり近 くても被害の度合は低地に比べて相当に低い(低地とい っても砂州等であり,一般に地盤は良好である)。そし て地盤の悪い田牛地区,下田市低地(断層からそれぞれ 約 6km,lO kmはなれている)などでも少なからぬ被害 が生じていることも,この地震の特徴の一つである。 図-21は , この地震における住家全壊率 p (%)と 震度Kの平均的な関係である。前記,宮城県北部地震の OJ234 k m 同様な関係図-15に比べ勾配は著しく急になっている。 これは全壊率の集計が小地区単位(例えば,石廊崎,入 間など)になっているからである。 図-18 墓石調査地点と地形・地盤種・推定加速度 (Amax) ( 19 7 4 年伊豆半島沖地震) ィ副日何│ 地G b c d e f 9 的0・×ム A 口 園 d s l ∞ 1 、 町l 0 . 1 0 .5 . 1 0 図 X" 5 . 0 1 0 . 0 1 9 Amax と X ( t r a c e方、らの距離) ・地形の関係 日lokm 望月他:サイスミッタ・マイクロゾーニングにおける震度分布の評価手法 組 ~..-O.0761 mA Amax= 3 . 5 9 1 0 -X 7 副日dl 種0・×ム口 地01234 α S a i l 1 4 9 句。 ⋮ 一 1 ∞ 目 『 0 . 5 . 1 0一五→ 5 . 0 1 0 . 0 図-20 Amax と X ( t r a c eからの距離) ・地盤種の関係 k 5 O . 0 m i ﹁Li p 帳である。さらに表俊一郎九州産業大学学長の御好意 により多数の調査資料を使わせていただいた。 図-22は墓石調査地点とそこでの墓石転倒による Amaxを地形・地盤種併記の型で示しである。この地 震では地上で断層は確認されていないが余震分布,被害 の発生状況などから断層が図に示したように推定される (例えば,日本建築学会, 1 9 7 6 ) 。図が示すように地形 (地盤)は全般的には良好であるが,地形 C,地盤種 E のように,この地区としては,比較的表層の軟らかいと ころもある。 9 9 ト l﹁﹁トト!" ﹄ 日ゎ ﹂ IL--汁 ただ,他の主として山地における中級内陸型地震の場 合と同様に,地形・地盤種と Amax の聞に明瞭な相関 3,図 -24) 。しかし,推定断 関係は見出せない(図ー2 層からの距離が大きくなるに従い, Amaxが減少する傾 向は認められる。 L m u - q mnu 0 . 3 0 . 4 0 . 5 0 . 6K 21 住家全壊率 Pと震度Kの関係 図8 . 1 9 7 5 年 大 分 県 中 部 地 震 M6.4 使用した資料は 7,における文献の“第 2部 1 9 7 5 年 大分県中部地震調査報告 1 9 7 6 "並びに墓石調査時の野 は,墓石転倒率 Qと震度 Kの平均的な関係であ 図-25 る 。 Koは0 . 3 8 8であり,宮城県北部地震 (Ko=O, 3 0 3, 図-14) の場合に比べれば,この地域の墓石の摩擦係数 等の方が高い,あるいは優勢な地震波の継続時間(波 数)が短かかった等の理由が考えられる。 また,図 2 6は PとKの平均的な関係であるが,前記 母数の関係で直接比較できるのは,ここでは伊豆半島沖 地震におけるそれである(図-2 1)。すなわち,この地 震における Pも小集落毎に集計している。 なお,この地震における被害は,比較的軽微であり, 死者ゼロ,負傷者2 2 名,住家全壊 5 8棟,半壊 93棟であ る。しかし,筆者らの現地調査の印象では,この住家被 害の数値は過大である。 総合都市研究 1 5 0 第1 1号 9l) 4氾 m g α l 図 2 2 墓石調査地点と地形・地盤穐・ Amax (大分県中部地震) ま ) ( ) ー ム : : . . 切 1 0 . 0 図-23 Amax と X (推定断層からの距離) ・地形の関係 回Okm A 1 . 0 x cdefg Q5 x ny S C O ] 池ム vAVハ rAnu -ムム A X × 2. : 0 1 . 0 1 んn a x = 4 . 4 2バ0 -X b 的 0 ・×ム 抑︼ -G g a l α】3 口 • Q P 9 9 . 9 9 旬1 . 9 9 大分県中部地震 K o = 0 . 3 8 8 ふ= 0 1 . 7 7 鈎1 . 9ト !~=ー 0.198 的 大介巣中主P 坦震 9 a9 K o = 0 . 5 2 6h = 1 2 . 4 0 5 kc ; ( = 0 . 6 6 3 9 9 一 一 句 レ . . . . i. ト わ 円 レ 〆 -レ/ ト 』 印 司 ・ ド ト - ~ 1 0 • / ト 0 . 1ト 0 1 .トー 0 . 0 1 02) メ 〆 的 O 却 弘0 Q50 図-25 墓石転倒率 Qと震度 Kの関係 K 0 0 1L Q 2 / 0 3 0 . 4 0 . 5 図-26 住家全壊率 Pと震度 Kの関係 0 . 6K 1 5 2 総 合 都 市 研 究 第1 1号 ゐ 1 A ー ト 戸 r E.スム 五 台 x x x 拍 ← 0 5 き @ 然 〈5 1 メ メ 。 x . × : D ' f . x d o ) ( . ) ( ) ( 1 也m 下 〈 a 0 Aム 士 宅 主 メ ー ー ト x ~_.í? x 忠 b x 山│ d ム e ぜ 〉 【 . . .I ' f . O 品企 ト え 〉 A ト L-1 0 1 . A f ロ g 掴 UXA A L L ・ c X ) ( . x A I IJI x ~,~ 0 . 5 ' . 1 0 X~ 与ず‘ 5 . 0 1 0 . 0 9 J . O k m x(推定断層からの距離) ・地形の関係 図-27 Q と x .地盤 また,図ー 2 7,図ー28に QとX ・地形, Qと ( 2 ) Amax の距離減衰については,比較的明瞭に認 の関係をそれぞれ表わす。直接,墓石の転倒から求めた K (Amax) に比べ, その距離減衰が極めて明瞭にわか められるケースが多い(但し,いずれも平均的にみてと る。それは,図 25の Q - K関係を用いて,図 22 ,図 -23,図 -24の Q を K に読みかえることによっていえ 登地震 M6.0,河内・大和地震では,その距離減衰が推定 Amax'のばらつきのなかに埋没してしまっている(な る 。 お,能登地震は いうことであり,かなりのばらつきはある)。また,能 4地点の墓石資料があるのみである)。 ( 3 ) 墓石転倒率 Qの低下は,ある距離又(または X ' ) 9 . まとめ から急激に低下する傾向がある。その距離は,長野地震 M6.2で 4~ 5km; 宮城県北部地震 M6.5 では 17~18 ( 1 ) この報告で対象とした M 6台の地震では,墓石転 倒による推定加速度 Amax と地形・地盤種の聞の量的 な相関付けを行うことは困難である。それは墓石調査の 範囲,いいかえれば激震地の範囲が狭く,多種の地形・ 地盤にそれがまたがっていないということも一因と考え られる。また,墓石調査による推定 Amax の精度のば km,大分県中部地震 M6.4では 7~ Skmであり,宮城 県北部地震がやや M が大きいとはいえ,その距離の大き いことが目立つ。それは,この地震の震央とその近傍が 主として低地であち,地形 fなど比較的軟弱な層から成 ることも一因であ予う。すなわち,この種の地盤 T ( ' ¥ 土硬 らつきのなかにその効果が埋没していることも推察され る。しかし幾つかの地震で,その効果を推測することは 質地盤に比べ,優勢な継続時間の長い地震波が, .より遠 方にまで及ぷ。 ( 4 ) ( 3 )より Qと K の関係を求めれば, B/H (B :墓 できる。例えば,河内・大和地震 M6.4では,地形 Cの Amaxが eのそれより高い傾向がある(図 4)。また 長野地震では,地形 eの墓石転倒率 Qが,他の地形にお 石の横寸法, H 同じく高さ)による Kの み か ら は 判 定できない低加速度地域,あるいはいわゆる C o r n e r d i s t a n c eを見出し, 震央とより遠方の K(Amax)-x けるよりも高い(図 5) 。 (または X')の関係を関数化することもある程度可能と 1 5 3 望月他:サイスミッグ・マイクロゾーニングにおける震度分布の評価手法 • 1 0 0ー ト ト 一 a f > < e 5 0ート ・ ト ‘ge↓ ' 6鋤 • •・、。'•¥-..1f‘ . ,•• • •• • ) < ' X 』 〉 x x ー 〉 h .1 v ハυ R u fつ d x × 1 - ー ト ー • 時 ト 同嗣 │ b IL 11 ハ. x ト ー 地盤覆 o0 1 ・ 2X 3ム 4口 メ ) < • x 斗 ム す 句Z r o . O k m x(推定断層からの距離) ・地盤種の関係 図 2 8 Qと 思われる。ただし, Qの測定に際しては,墓石が台石に 固定されているものなどを除く必要があり,単なる聞き こみなどでは,精度が期待できなし、。 以上,この報告は内陸型中級地震に関するものであっ たが,現在内陸型大地震並びに海洋型(巨)大地震につ いてもまとめており,次号等々に報告する予定である。 なお,地震規模を考慮した K(Amax)-X(X)・地形 (地盤)の関係の関数化,墓石調査による K(Amax)と 強震計による値との対応性などの検討も実施中である。 未尾ながら,墓石調査資料を使わせていただいた表俊 一郎九州産業大学長に深く感謝いたします。またボーリ ング柱状図の収集に格別の御協力をいただいた各地の市 町村長,並びに担当者各位に心から感謝申し上げる次第 です。 島一彦・高木義和 岩崎敏男・JlI 1 9 7 9 f 1978年宮城県沖地震による地域別地震動強 動の分布に関する調査報告 J W 土研資料』第 1 5 1 2 号 。 表俊一郎・三宅昭春・楢橋秀衛 1 9 7 9 I 大地震時の震央域に於ける地動最大加速度 (転倒墓石による最大加速度と強震記録との 対比 H日本建築学会秋季大会学術講演梗概 集』。 経済企画庁総合開発局・国土庁 ∞ , 000 宮主主県,長野県, 土地分類図 1:2 静岡県,大阪府,奈良県,大分県 建設省国土地理院 土地条件図 1:2 5, 000 岩沼,若柳,古川 コロナ社 文献一覧 岩崎敏男・川島一彦 1 9 7 8 墓石の転倒状況からみた 1 9 7 8 年 1月伊豆大 島近海の地震による地震強度の推定 J W土研 r 資料』第 1 3 9 9号 。 1 9 6 6 W 大阪地盤図』 長野県建築士会 1 9 7 3 W長野市地盤図』 日本建築学会 1 9 7 6 H975 年大分県中部地震による R C建物の被 総 合 市 市 研 究 第1 1号 1 5 4 建築学会論文報告集』 害調査報告一九重レークサイドホテルおよび その周辺建物の被害』 福富孝治・田畑忠司・藤木忠美・金安公造 1 9 5 4 4 8 号 第2 望月利男・宮野道雄 r 墓石の転倒,移動等による十勝沖大地震の 最大加速度と,特異な地割れの観察 J 1 r 1952 年 3月 4日十勝沖大地震調査報告』 1 9 7 7 関東支部研究報告集』 望月利男・松田磐余・宮野道雄・国井隆弘 1 9 7 8 r サイスミック・マイクロゾーニングにおけ る震度分布の評価手法についてーその 1,墓 望月利男・小泉敏一・宮野道雄 1 9 8 0 f 1 9 7 8 年伊豆大島近海地震における墓石調査 石調査による震度と被害の関係からのアプロ 総合都市研究』第 2号 ーチ J W による震度についてのー検討 J W土木学第 3 5 四年次学術講演会講演概要集第 1部』 望月利男・小林三十代 1 9 7 6 単体の運動からの地震加速度を推定するた r r 震度に関する若干の検討J W 日本建築学会 物部長穂 1 9 2 5 W震災予防調査会報告~ 1 0 0 号,丁 めの研究一単体の動的挙動の解祈一J W 日本 O N THEMETHODT O E VALUATE DISTRIBUTION O F SEISMIC INTENSITY IN THE SEISMIC MICROZONING P a r t4 I n v e s t i g a t i o n so fD i s t r i b u t b u t i o n so fS e i s m i c I n t e n s i t i e sE s t i m a t e dfromToppledTomstonesand Damaget oW oodenB u i l d i n g sR e s u l t i n gfromMedium S c a l eLandBased E a r t h q u a k e s Toshio MochizukiペIwareMatsuda* and Michio Miyano林 Comprehe πs i v e UrbanS t u d i e s ,No. 1 1,1 9 8 0,p p . 141-154 Thep u r p o s eo ft h i s .s t n d yi st od i s c u s st h emoreg e n e r a l i z e ds e i s m i c' i n t e n i t i e si nt h e s e i s m i cm i c r o z o n i n gf o re a r t h q u a k e swhichmagnitude i s from6 . 0t o6 . 9 . E v a l u a t i n gd i s t i b u t i o n so fs e i s m i ci n t e n s i t i e sfromo v e r t u r n i n go ft o m b s t o n shavebeen c o n d u c t e d by many r e s e r c h e r si n many e a r t h q u a k e ss i n c et h e1 8 9 1 Great Nobi Earthquake i n] a p a n . This p a p e ri n v e s t i g a t e st h er e l a t i o n s h i p samongs u c hf a c t o r sa st h ed i s t a n c eo fe a c h from t h e i r f a u l tt r a c e so rl i n e sc o r r e s p o n d i n gt othem,l a n d f o r mand s o i ll a y e r sand s e i s m i ci n t e n s i t y . 0 6 . 9 ) a te a c hs i t ef o r6e a r t h q u a k e s (M 6 二 料 e t r o p o l i t a nU n i v e r s i t y * C e n t e rf o rUrbanS t u d i e s,TokyoM ResearchS t u d e n to fF a c u l t yo fTechnology,TokyoM e t r o p o l i t a nU n i v e r s i t y
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