シイタケ栽培ハウスにおける雪冷熱利用実証支援事業概要(抜粋)

シイタケ栽培ハウスにおける雪冷熱利用実証支援事業概要(抜粋)
Ⅰ
概要
シイタケ栽培ハウスの温度調整に雪冷房を導入する事業を支援した。平成 25 年度の
事業が注目を集め、新たな導入に向けてより実証的なデータが求められている状況を踏
まえ、26 年度は本システムの有効性を検証するとともに、改良に向けての課題等も明ら
かにすることを視野に、25 年度に続き継続実施したものである。
なお、本事業においてコンソーシアムは、エネルギー収支、CO2 削減効果等に関する
測定・解析・評価等を担った。
Ⅱ
事業結果
1
事業実施場所
新潟県南魚沼市雷土
(有)きのこはうす上村シイタケ栽培ハウス 4 棟
(平成 25 年度の 3 棟に対し冷房対象施設を拡大して実施)
2
雪冷房のシステム
(1)雪山の造成
3 月の下旬にロータリー除雪機を用いて高さ 6~7mの雪山を造成し、もみ殻による
断熱被覆を施した。
・雪山造成:ロータリー除雪機を使用し約 1 日間で造成。
・もみ殻による断熱被覆:ロータリー除雪車を使用(厚さ:20~30 ㎝。作業時間:約 4
時間)。もみ殻は昨年、一昨年に使用したものを継続して使用した。
1
(2)雪山冷房システム
雪山の雪解け水を集水し、栽培ハウス内に設けた FCU(ファンコイルユニット)で熱交換し
て冷風を供給する。熱交換の終わった雪解け水は雪山に戻され、循環使用される。配管系に
はもみ殻などの異物を除去するため、3 段階のフィルターが設置されている。
3
雪冷房の実施対象ハウス
26 年度は FCU を 3 基から 5 基に増設し、栽培ハウス 4 棟(25 年度は 3 棟)で雪冷房を実
施した。規模及び位置関係は図-2 のとおり。
2
図-2
4
雪冷房の稼働期間及び測定項目・期間
(1)稼働期間
雪冷房の稼働期間は 6 月 6 日~9 月 9 日までの 95 日間となった。
(2)測定項目・期間
データ収集はレンタルによる計測器を使用し、冷水の温度・流量、FCU からの吹き出し温
度、ポンプ、送風機の電流等を測定した。
3
図-3 流量測定
図-4
5
取得冷熱量の推計
(1)測定期間中の取得冷熱量
測定結果をもとにデータ処理し、各ハウスごとの冷熱取得量を求めた結果を図-5 に示す。
測定期間(8/7~9/9)に取得した冷熱量の合計は 37.1[GJ]となった。
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図-5
(2)測定前の稼働期間における取得冷熱量の推計
8 月 7 日~8 月 16 日の間における取得冷熱量の傾きを内挿して得た総取得熱量の推計を、
図-6 に示す。
図-6
この図から、
□6/6~8/7 の間の累計取得冷熱量=128[GJ]
■稼働期間の総取得冷熱量=128[GJ]+37.1[GJ]=165.1≒165 [GJ]
と推計される。
5
(a)
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雪山冷房システムにおける消費エネルギー量
(1)消費電力量
本システムの稼働に要する水中ポンプ及び FCU(ファンコイルユニット)の測定電
流値に電圧をかけることにより、測定期間中の消費電力量を求めた。
稼働期間(95 日)における消費電力量=2,660[kWh]
(b)
(2)雪山造成にかかる消費エネルギー量
雪山は、雪、もみ殻、もみ殻の飛散防止シートの 3 つで構成されている。これは、3 月
末にロータリー式除雪機を用い約 1 日半で造成されたもので、これに要した使用燃料(軽
油)量は軽油約 100ℓであった。
消費エネルギー量=100ℓ×37.7[MJ/ℓ]=3,770[MJ]
7
(c)
雪山冷房システムによる CO2 削減量
以上のことから、本システムによる CO2 削減量は、次のとおりとなる。
表-3 雪山冷房による CO2 削減量
区
削減量
エネルギー
消費量
分
エネルギー量
CO2 排出係数
CO2 換算値
(*)
[kgCO2]
0.057
冷熱取得量 (a)
165,000[MJ]
電力消費量 (b)
2,660[kWh]
雪山造成消費エネ
3,770
0.0187
△258
ルギー
[MJ]
[ tC/GJ]
**
(c)
[ kgCO2/MJ]
0.591
[kgCO2/kWh]
9,405
△1,572
7,575
差引削減量
* CO2 排出係数:環境省 HP「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」に
よる。(電力消費量は東北電力の排出係数)
**増加量③: 3,770×0.0187×44/12=258 [kgCO2]
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まとめ
26 年度における設備の稼働状況及び測定データの分析から、雪山による冷房システムの効率
及び CO2 削減効果を更に高めるためには、次の技術的改良を加えることが有効であると評価
された。
○雪山の規模設計にあたっては十分な安全率を考慮し、取得冷熱量(目標)とのバラン
スを確保すること。
○断熱材に使用しているもみ殻による「目詰まり」の防止策としては、還流配管(雪山に
冷水を戻す配管)からの戻り水が断熱被
覆材(もみ殻)と極力接触しないような管経
路を工夫することが望ましい。また、もみ殻の劣化による支障を防止するため、使用年
数の制限を設けるなどの配慮も有効である。
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