公開シンポジウム 「先端フォトニクスの展望」開催の趣旨 - J

特集2◆先端フォトニクスの展望
公開シンポジウム
「先端フォトニクスの展望」開催の趣旨
小舘香椎子
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日本学術会議では、国際的な活動をその他
究者の育成、新しい産業やコミュニティの創
の三つの柱(政府に対する政策提言、科学者
生の推進を目指して、グローバルなネットワー
間ネットワークの構築、科学の役割について
ク構築を進めることを目的としている。委員
の世論の啓発)に並ぶ重要な活動の一つと
会のスタートにあたり、委員会設立の意義と
し て 位 置 づ け、44 の 分 科 会 を 設 置 し、 国 際
目指すところを知らしめるため、日本学術会
学術団体と連携しながら支援を行っている。
議主催の公開シンポジウム「先端フォトニク
そ の 一 つ で あ る ICO 分 科 会( 委 員 長 荒 川 泰
スの展望」を開催することとなった。シンポ
彦:第三部会員)は、国際光学委員会(ICO,
ジウムの前半では、日本を代表する産学の最
International Commission for Optics、 会 長:
先端研究者 5 名による講演、後半は、大学、企
Maria L.Calvo(スペイン)
、副会長:荒川泰彦
業、独立法人等に所属する 96 名の若手研究者
(日本)他、参加国数:56)に対応する分科会
(女性研究者 16 名)によるポスター発表を行っ
として、日本学術会議第三部の総合工学委員
た。シンポジウムの概要については、本編を
会に設置され、ICO に関連する国内外の光科
お読み頂きたい。
学関連の活動をリードする役目を担っている。
日本学術会議主催の公開シンポジウムは、
ICO 委員会は、従来、日本学術会議の委員の
様々な学術分野で、毎年数多く開催されてい
意見交換をその活動の中心としてきたが、第
る。通常、参加者はシニアの方々ですが、今
20 期の新生学術会議の発足をきっかけとして、
回は、多数の若手研究者が参加し、シニアを
その役割も含めて見直すこととなった。とり
含めて 300 名収容の会場が、立ち見が出るほど
わけ、これまで世界のトップを走ってきた日
ぎっしりと埋め尽くされていた。特に、専門
本の光科学技術を維持・発展させていくため
性の高い前半部の講演に皆じっくりと聞き入
には、光関係学会の活動の横断的連携や人材
る様子は壮観であった。後半は、
「光」という
育成の推進を積極的に行う必要があると判断
キーワードに繋がる分野で研究開発を推進す
し、荒川委員長のリーダーシップの下、コア
る若手研究者 96 名が、40 秒で独自性の高いプ
組織として、2009 年に「光量子科学技術連携
レゼンを行うというものであったが、幾分緊
委員会」を設立し、
応用物理学会における学術・
張しながらも発表を粛々とこなしていく姿も
社会連携委員会(委員長:小舘)がその運営
印象深いものであった。また、その後、ホテ
を行うこととした。当委員会は、光量子科学
ルはあといん乃木坂に場所を移したポスター
技術の研究のインパクトやイノベーションを
会場での活発な議論は、日本の光量子科学分
アピールするとともに、次世代を担う若手研
野の研究開発のレベルの高さとともに、当該
学術の動向 2010.9
PROFILE
シンポジウムに参加する意義が、若手研究者
にも十分認識されるとともに、予想以上に広
小舘香椎子
(こだて かしこ)
日本学術会議第三部会員、日本女子
大学名誉教授
専門:応用物理学、光エレクトロニ
クス
く浸透していたことを示していた。来賓とし
ていらした文部科学省科学技術・学術政策局
次長渡辺格氏・経済産業省産業技術環境局大
臣官房審議官西本淳哉氏は、この光景に接し
て、日本の科学技術の将来を託する若手研究
力強い活動の展開を期待するものである。
者に対して、改めて大きな期待を抱いた、と
最後に、シンポジウムの開催にご協力いた
のご挨拶を下さった。ポスドク問題や学術分
だいた総合工学委員会の矢川元基委員長、応
野のポスト減など、若手研究者には厳しい将
用物理学会の白木靖寛会長をはじめとする理
来が予測される昨今の状況はあるものの、ICO
事会のご理解とご支援、事務局の皆様のボラ
分科会が初めて試みた当シンポジウムは、世
ンティアによるサポート、快く展示ブースを
代を超えた研究者のイノベーション創成への
出し、協力下さった企業の方々、そして若手
活力、研究活動の原動力につながる大きな成
を代表して実施に尽力された実行委員の方々
果を残すものだったと実感している。シンポ
にこの場を借りてお礼申し上げる。
ジウムの発案者としては、今後の光量子科学
分野の研究促進と人財育成に向けたさらなる
シンポジウムでの講演風景
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