DNA - 医療福祉eチャンネル

放射線治療に関して大切なことは
全て乃木坂で学んだ
第14章・化学放射線療法
国際医療福祉病院
放射線治療・核医学センター
北原 規
化学放射線療法
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
がん治療概論
放射線療法とは?
化学療法とは?
両者の併用に関して
両者を併用することのメリット
両者を併用することのデメリット
化学放射線療法の臨床
分子標的薬とは?
化学放射線療法のこれから
日本人の主要死因(2008)
死因別死亡率年次推移
性・年齢別死因と死亡者数
悪性腫瘍死亡者の性別・
部位別年次推移
がんの罹患数と死亡数
罹患数*
胃
大腸
肺・気管
乳房
前立腺
肝臓
膵臓
子宮
胆道
食道
死亡数**
117,320 肺・気管
109,140 胃
93,402 大腸
60,986 肝臓
47,318 膵臓
45,367 胆道
29,025 乳房
27,822 食道
20,734 前立腺
19,994 リンパ腫
70,293
49,830
45,744
31,875
28,829
18,186
12,838
11,970
10,823
10,336
* 2007年地域がん登録全国推計値 ** 2011年厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計 がんの治療方法はいろいろあるが 3つの柱
外科腫瘍学
Surgical oncology
内科腫瘍学
Medical oncology
放射線腫瘍学
Radiation oncology
ただし
放射線の利用率は低い
手術
薬剤
放射線
米国65%
日本25%
放射線は認知度が低い
DNA2重鎖切断 -6-
DNA鎖切断
DNA1本鎖切断
(DNA single-strand break; SSB)
主にOHラジカルによって生成され、
速やかに完全に修復される
DNA2本鎖切断
(DNA double-strand break; DSB)
相対する鎖に、6塩基対間以内でSSBが
生じるとDSBとなる。1個の低エネル
ギー電子によって生じる可能性もある。
•
•
放射線による細胞致死の、直接的な原因となるDNA損傷はDSBであ
り、たった1個の未修復なDSBによっても、細胞死が引き起こされ
ると考えらえている。
DSBは、他のDNA損傷と比較して、単位線量あたりの生成頻度は低
いが、2重鎖DNAの両鎖が切断されることにより、大きな構造変化
が生じることから、修復が困難であり、誤修復により遺伝子を失
9
う可能性が高いためであると考えられる。
DNA損傷修復と細胞周期
DNA損傷修復と細胞周期
P53, ATM
チェックポイント
S
G2
G1
G1
M
放射線による細胞死
アポトーシス及びこれに関連する
シグナル伝達,蛋白,遺伝子等
が注目されているが,
実際の放射線治療ではむしろ
分裂死、壊死(ネクローシス)
の方が重要といわれている.
細胞死の代表的概念の比較
間期死
アポトーシス
プログラム細胞死
分裂死
壊死(ネクローシス)
非プログラム細胞死
アポトーシスは代表的なプログラム細胞死で,種々の
生理的あるいは病的な原因によって誘発され、あらかじめ
遺伝的に組み込まれていたプラグラムに従って、特徴的な
形態を示しながら,細胞は死に至る.
細胞死の形態学的分類 1
2
3
アポトーシス オートファジー ネクローシス タイプ 細胞死型 顕著な濃縮を示す 時に濃縮が見られる
が、顕著ではない 細胞質 容積の減少、 細胞表面の平滑化 早期にリソソームの増
大、オートファゴソーム 全般的な崩壊、 (オートファジー小胞) 細胞内小器官の膨化 の出現 終末像 断片化し、迅速に周辺
細胞により貪食される 断片化はあまり見られ 非常に細かい断片に
ず、後に周辺細胞によ 分断化し、周辺細胞に
り貪食されることもある よる貪食はみられない 頻度 頻出 頻出 部位 細胞がまとまって脱落
散発的に孤立して起こ
する状況で起こること
ることが多い が多い 核 後期に崩壊 稀 空胞化軟骨細胞での
み確認されている オートファジーと抗がん効果の関係 オートファジーを促進する
ことでがんの初期過程に
抗腫瘍効果
オートファジー機構欠如の
がん細胞が増殖 Gozuacik D, Kimchi A.
Oncogene. 23: 2891-906, 2004
オートファジーを阻害する
ことでがんの後期過程に
抗腫瘍効果
栄養飢餓のがん細胞にオートファジーが
起こることで周囲のがん細胞に栄養供給 Edinger AL, Thompson CB.
Cancer Cell. 4: 422-4, 2003
オートファジーを標的とするがん治療戦略は
がんのタイプや進行度によって異なる
がん細胞において、生に貢献するオートファジーは正常に誘導されるが、オートファジー様細胞死は
誘導されにくい。がん細胞においてはオートファジーの誘導からオートファジー細胞死の実行に至る
経路に障害があるїJNK の関与 Shimizu S. et al. Oncogene. 29: 2070-82, 2010.
放射線治療による線量効果曲線
抗癌剤の多様性
1.殆どの抗がん剤は、作用機序に応じて細胞周期の時期に作用
特異性がある。
2.抗がん剤の主たる標的はDNAの合成・複製・修復に関し直接・
間接的に反応に関与する分子である。
3.標的組織に至るまでの経路は臨床薬理学的に分析され、薬剤
の投与・分布・代謝・排泄等の
phamacokinetics と 生体側のpharmacodynamicsが関与する。更
に最終的な標的分子に対する作用に関する細胞内薬理や分子
薬理レベルでの反応は非常に複雑である。
4.効果発現に関与する因子は ADEM
A(absorption/administration)、D(distribution)
M(metabolism),E(excretion, elimination), と表される。又、細胞周期、
アポトーシス、標的分子等も関連し、多岐に亘る。
抗がん薬の歴史
細胞障害性薬
ナイトロジェンマスタード
1950年代
マイトマイシンC,ブレオマイシン
メソトレキセート,フルオロウラシル(5‐FU)
1960年代
シクロホスファミド
ホルモン療法
タモキシフェン
ビンカアルカロイド
ドキソルビシン
1970年代
シスプラチン
1980年代
エトポシド
1990年代
イリノテカン
パクリタキセル,ドセタキセル
ベノレルビン,ゲムシタビン
オキサリプラチン
2000年代
プロゲステロン
アロマターゼ阻害剤
分子標的治療薬
ハーセプチン、リツキサン
グリベック、イレッサ、アバスチン
抗悪性腫瘍薬の分類
大分類
小分類
アルキル化剤
マスタード類、ニトロウレア類
代謝拮抗剤
ピリミジン拮抗剤、プリン拮抗剤、葉酸拮抗剤
抗がん性抗生物質
アンスラサイクリン系、マイトマイシン類、アクチノマイシンD、
ブレオマイシン系
微小管阻害剤
ビンカアルカロイド、タキサン系
トポイソメラーゼ阻害剤
トポイソメラーゼI阻害剤、II阻害剤
白金製剤
ホルモン・ホルモン拮抗剤
免疫・生体反応
分子標的薬
サイトカイン類(interferon, interleukin)
非特異的な免疫療法薬(ピシバニール、クレスチン)
成長因子シグナル伝達阻害、血管新生阻害
抗がん剤の作用機序
抗がん剤の細胞周期特異性
放射線と薬剤との併用効果
CRT相互作用に関する用語
RT及びCRTの効果発現
部位別提携と局所提携
RB2. 部位別提携と局所提携. jpg
乳癌における局所病と全身病の概念
化学療法と放射線治療による細胞死の時間経過による相違
腫瘍細胞
1010
108
106
104
102
化学放射線療法
0
月
放射線治療
‡均一な線量分布
ĺすべての腫瘍細胞が細胞死に必要
な均一な(同一の)線量を照射される
‡内因性および外因性の放射線感受性
により細胞死が決定
化学療法
‡不均一な薬剤濃度
ĺ腫瘍の細胞死(薬剤感受性)は薬
剤濃度、ドラッグデリバリー、内
因性耐性因子、などにより決定.
・必ずしも腫瘍全体が充分な薬剤濃度
になるとは限らない
放射線と薬剤の相互作用
放射線
放射線応答
がん細胞特異的な放射線応答
癌細胞・腫瘍特異的な細胞死
化学放射線療法のタイミング
化学療法・放射線治療併用のメリット
1.局所療法である放射線治療で局所に制御を図
ると共に、全身療法である化学療法で遠隔転移
を防ぐ。
2.細胞周期、酸素濃度などに関して放射線と異な
る特性を持つ薬剤を使用することにより、互いに
弱点を補うことが可能となる。
3.照射による障害からの回復を阻害する薬剤に
は相乗効果が期待できる。
4.有害事象発生のメカニズムが異なる為、2つの
治療法を組み合わせることにより、有害事象の
分散化が可能となる。
有害事象
- 頭頸部癌 -
Kasibhatla et al. IJROBP 2007; 68: 1491-95
放射線治療単独
( 通常分割)
<
化学放射線療法
( 通常分割)
(%)
放射線治療単独
化学放射線療法
RTとCTX併用による副作用の増強
RT併用により障害が増強される薬物
リコール現象
(Recall phenomenon)
放射線による急性炎症の消退後、抗がん剤
投与によりそれが再燃する現象のこと。
照射後の化学療法の追加により、照射野に
一致して急性炎症反応が喚起される。
抗がん抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗薬、
微小管阻害薬等により、皮膚・肺・中枢神経系
での発症が報告されている。原因は明らかに
されていない。
放射線皮膚炎の病態生理
ホジキンリンパ腫のCRT後の2次発癌
化学放射線療法・まとめ(1)
化学放射線療法・まとめ(2)
化学放射線療法・まとめ(3)
7.化学放射線療法の臨床
臨床の現場では様々ながんに対して種々の化学放射線療法が
行われているが、臨床効果が明らかになり、プロトコールとして
確立されているものは限られている。
1)頭頸部がん
2)食道がん
3)肺がん
4)子宮頸がん
5)肛門・直腸がん
6)その他
(脳腫瘍、乳がん、膵がん、悪性リンパ腫、 小児がん等)
1)頭頸部がん
切除不能頭頸がんに対する治療法は、化学放射
線療法が標準治療である。同時併用が一般的(シ
スプラチン)であるが、継時併用療法や交替療法
(5FU+プラチナ製剤、5FU+プラチナ製剤+タ
キサン)も症例に応じて使用される。
①上咽頭がん
②上咽頭がん以外の頭頸がん
③選択的動注療法併用の化学放射線療法
上咽頭がんの化学放射線療法
(スケジュール)
上咽頭がんの照射野(LG)
下咽頭がんの化学放射線療法
下咽頭がんの照射野(LG)
①下咽頭癌の放射線同時併用
CDDP, 5-FU療法(36症例)
5年生存率
T3
100 %
T4a
49.1%
T4b
25.0%
喉頭全摘出術→失声
喉頭温存率
0% 咽頭・喉頭・頸部食道摘出,
両側頸部郭清術後
0%
0%
超選択的動注化学放射線療法
DOC・CDDP・5‐FU
腫瘍栄養動脈の同定
喉頭温存のための
原発巣に対する治療
(高濃度薬剤の注入)
進行舌・舌根部がんの動注CRT
動注化学放射線療法のスケジュール
舌がんの動注化学放射線療法
2)食道がん
1)近年食道がんの化学放射線療法は手術に匹敵
する治療成績が報告されている。
2)標準的併用薬剤は、CDDP+5FU(同時併用)
3)本邦では切除可能な食道がんに対しても化学
放射線療法が1次治療として用いられる。
4)肺・心臓等に対する晩期障害の発生に注意が
必要である。
5)目的は①放射線の局所効果を化学療法により
増感 と ②化学療法による潜在性微小遠隔転
移の制御 である。
食道がんのCRT
食道がんのCRTスケジュール
化学放射線療法と放射線療法 RTOG8501
胸部食道癌
cT1-3, N0-1, M0
+ 化学療法 z 放射線増感作用 z 微小転移 長期成績 SCC (n=107)
AC (n= 23)
16.9% 12.2% p<0.0001
CRT 64Gy, 5FU/CDDP RT alone 50.0Gy 27%
0%
Al-Sarraf M et al. J Clin Oncol 1997
化学放射線療法と手術の治療成績 全生存の比較 Stage Ⅰ Stage Ⅱ, Ⅲ 食道がんの照射野
脊髄遮蔽によるBoost照射 IMRT
Comparison of Heart and Coronary Artery Doses Associated With
Intensity-Modulated Radiotherapy Versus Three-Dimensional Conformal Radiotherapy
for Distal Esophageal Cancer
Kole et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys 2012 IMRTによる正確で効果的な照射プランニング
3D-RT
IMRT
3)肺がん
切除不能局所進行非小細胞肺がんと限局型小細胞肺
がんは同時化学放射線療法が標準治療である。
放射線治療は、GTV主体に照射野を設定し、線量は
非小細胞肺がん(60Gy/30f∼66Gy/33f),小細胞肺癌
(1.5Gy/f, 2f/d, 45Gy/30f/ 又は 54Gy/27f)前後。
併用薬は、白金製剤と他剤の2剤併用が標準的。
非小細胞肺がんでは シスプラチン+ビノレルビン、
カルボプラチン+パクリタキセル、小細胞肺がんでは
シスプラチン+エトポシドが標準的である。
CR例には予防的全脳照射が推奨される。
NSCLCのCRT
非小細胞肺がんの化学放射線療法
非小細胞肺がんの照射野
限局性SCLCのCRT
小細胞肺がんの化学放射線療法
小細胞肺がんの照射野
4)子宮頸がん
1.北米での複数の大規模無作為化比較試験に
より、1992年にNCIより「進行子宮頸がんの
放射線治療において同時化学放射線療法(CCRT)」
が推奨された。
2.米国NCCN,NCIのガイドライン、本邦の「子宮頸が
ん治療ガイドライン」でもCCRTは局所進行子宮頸が
んに対する標準的治療、と明記されている。
3.近年、実地臨床における子宮頸がんに対する
CCRTの適応は急増しつつある。
子宮頸がんのCRT
子宮頸がんのCRTスケジュール
子宮頸癌治療ガイドライン2011 «««エビデンスの根拠となるRCTは皆米国のもの。 → 1) 日本人での安全性不明、2) 日本の放射線治療法での有効性不明 子宮頸癌 Chemoradiation 化学療法併用方法 選択的動脈内投与(動注) y 頸部腫瘤に対し選択的に高濃度の抗癌剤を投与 =進行子宮頸癌は局所制御の向上が生存率向上に最も寄与する? =全身への抗癌剤灌流が少なく、副作用を軽減? 1980-90年代に流行
Kaneyasu Y, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2009;; 75: 369-­377. 子宮頸がんの照射野・腔内照射
5)直腸・肛門がん
1)局所進行直腸がんに対しては、術前化学放射線同
時併用療法の後、切除を行うのが標準的治療の1つ
である。
2)併用薬としてはフルオロウラシル系又はフルオロウ
ラシル系+ロイコボリンを用いる。
3)肛門癌治療の第1選択は、同時化学放射線療法で
ある。(治癒率の高さは手術に劣らず、肛門温存が
可能となるメリットを有する。)手術はサルベージ療
法として用いられる。
4)併用薬剤はマイトマイシンCとフルオロウラシルである。
直腸がんのCRT(5FU+LV+RT)
直腸がんのCRT(5FU持続 i.a.+RT)
直腸がん照射野(1)
直腸がんの照射野(2)
肛門がんのCRTスケジュール
肛門がんの照射野
脳腫瘍のCRTスケジュール
膠芽腫のCRT
多形性膠芽腫CRTスケジュール
多形性膠芽腫照射野
髄芽腫CRTスケジュール
髄芽腫照射野
ウイルムス腫瘍のCRT
ウイルムス腫瘍の照射野
膵臓がんのCRTスケジュール
膵臓がんの照射野
睾丸原発NHLの対側睾丸照射
早期非ホジキンリンパ腫のCRT
8.分子標的薬とは?
がん細胞の持つ特異的な性質を分子レベルでと
らえ、それを標的として効率よく作用するようにつ
くられた薬。
がん細胞と正常細胞の違いを遺伝子レベル・分
子レベルで解明し、がんの増殖や転移に必要な
分子を特異的に抑える。
「抗悪性腫瘍薬」=広義の抗がん剤
化学療法剤
生物製剤
(殺細胞性抗がん剤)
B R M :biological response modifier
内分泌療法剤
分子標的治療薬
(ホルモン療法剤)
molecular-target therapy
98
「抗悪性腫瘍薬」=広義の抗がん剤
化学療法剤
生物製剤
(殺細胞性抗がん剤)
B R M :biological response modifier
内分泌療法剤
分子標的治療薬
(ホルモン療法剤)
molecular-target therapy
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「抗悪性腫瘍薬」=広義の抗がん剤
化学療法剤
生物製剤
(殺細胞性抗がん剤)
B R M :biological response modifier
内分泌療法剤
分子標的治療薬
(ホルモン療法剤)
molecular-target therapy
100
分子標的の局在 細胞外標的
増殖因子 細胞死アゴニスト 細胞表面標的
増殖因子受容体
細胞死受容体
CD抗原
リガンド 抗体薬 レセプター 細胞質内標的
シグナル伝達物質 プロテアソーム 熱ショックタンパク質 アポトーシス関連 ミトコンドリア 翻訳 シグナル 薬剤の種類 小分子化合物 核 DNA
赤血球 血管内皮細胞 標的 細胞 がん細胞 核内標的
細胞周期
有糸分裂
DNA修飾
DNA修復
転写因子
従来の抗悪性腫瘍薬と分子標的薬
抗がん剤
分子標的薬
スクリーニング
多くの候補から抗腫瘍効果を
持つものを探す
細胞増殖の特定分子標的を
ターゲットに創薬
作用機序
DNA合成阻害、代謝拮抗など
細胞増殖シグナル阻害、
血管内皮増殖阻害など
特徴
Cytotoxic
Cytostatic (細胞増殖抑制)
有効性の指標
奏効率
副作用
骨髄毒性、消化器毒性、腎毒性、皮膚毒性、手足皮膚反応、
脱毛など
間質性肺炎など
(細胞毒性)
無増悪期間
保険適応のある主な分子標的薬
一般名
商品名
Imatinib
G leevec
G efitinib
I ressa
E rlotinib
Tarceva
Trastuzumab
H erceptin
Sunitinib
Sutent
Sorafenib
Nexavar
C etuximab
E rbitax
Panitumumab Vectibix
Bevacizumab Avastin
L apatinib
Tyverb
E velorimus
A finitor
標的
Bcr-A bl, c-kit
E G F R-T K
E G F R-T K
H er2
M ultikinase
M ultikinase
EGFR
EGFR
VEGF
H er1/H er2 T K
m-T O R
疾患
C M L , G IST
NSC L C
NSC L C , P C
B reast C a, G C
R C C , G IST
R C C, H C C
CRC
CRC
C R C , NSC L C
B reast C a.
RCC
保険適応のある主な分子標的薬
一般名
商品名
標的
Imatinib
G leevec
Bcr-A bl, c-kit
G efitinib
I ressa
E G F R-T K
-mab: モノクローナル抗体
E rlotinib
Tarceva
E G F R-T K
Trastuzumab
H erceptin H er2
Sunitinib
Sutent
M ultikinase
Sorafenib
Nexavar
M ultikinase
C etuximab
E rbitax
EGFR
Panitumumab Vectibix
EGFR
Bevacizumab Avastin
VEGF
L apatinib
Tyverb
H er1/H er2 T K
E velorimus
A finitor
m-T O R
疾患
C M L , G IST
NSC L C
NSC L C , P C
B reast C a, G C
R C C , G IST
R C C, H C C
CRC
CRC
C R C , NSC L C
B reast C a.
RCC
分子標的治療薬に特徴的な有害反応
輸注反
応・ア
ナフィラ
キシー
心
毒
性
肺
毒
性
セツキシマブ
○
○
○
◎
トラスツズマブ
◎
◎
○
○
ベバシズマブ
○
○
リツキシマブ
◎
○
一般名
肝
障
害
皮
膚
障
害
消
化
管
穿
孔
○
ゲフィチニブ
◎
◎
エルロチニブ
○
○
ラパチニブ
○
○
イマチニブ
◎
ダサチニブ
○
○
ニロチニブ
○
○
スニチニブ
○
ソラフェニブ
○
ボルテゾミブ
○
出
血
高
血
圧
症
◎
◎
低
P
血
症
神
経
毒
性
◎
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
○
低
Q M
T g
延 血
長 症
○
◎
○
◎
血
栓
塞
栓
症
○ ○
◎
○
創
傷
治
癒
遅
延
○
◎
○
○
○
◎
○
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
105 ◎
分子標的薬の主な有害反応
1)皮膚
±皮疹:にきび様皮疹
±手足皮膚反応
2)間質性肺炎
3)高血圧
4)動脈血栓、静脈血栓
5)消化管穿孔
6)その他
肺臓炎 (間質性肺炎)
症状・所見
±乾咳
±息切れ・呼吸困難
±発熱
±倦怠感
±CRPの急な上昇
±KL-6, SP-D
±胸部CT
当該薬剤の即刻中止
ステロイド(パルスを含む)
非常に高い死亡率
放射線治療とセツキシマブ同時併用による皮膚炎
Bernier et al: Annals of Oncology 22: 2191±
2200, 2011
病理学的に成因が異なる ĺ 放射線の効果にCetuximabの変化が皮膚変化を修飾
RT alone
RT+cetuximab
医療経済の問題
*アービタックス 100mg, 1V
35,894円
± 1回目 25万円、2回目以降1回14万円
*F O X F O X +ベバシズマブ
± オキザリプラチン 100mg, 1V
72,768円
± ベバシズマブ100mg, 1V
50,291円
± 1回の治療 約360,000円、720,000円/月
± 30%負担
216,000円/月
± 月4回
560,000-670,000円/月
± 30%負担
168,000円/月
*ソラフェニブ
± 腎癌、肝細胞癌に適応
± 経口剤:1錠200mg 5,426.2円
± 1日4錠服用
21,848.8円、655,464円/月
± 延命効果
プラセボ7.9ヶ月、ソラフェニブ群10.7ヶ月
現在放射線との併用が試みられている分子標的薬
Cetuximab(アービタックス):現在放射線と併用可
能な唯一の分子標的薬。放射線単独に対する
上乗せ効果が報告されている。
併用の際は皮膚障害・粘膜障害・急性肺障害
等が増強されるので注意が必要である。
その他、Gefinitib、Eritinib,Lapatinib,
Panitumumab,Nimotmumab,Bevacizumab
Vandatanib,Celecoxib,KGF等で放射線併用
の有用性が検討されている。
放射線治療とセツキシマブ同時併用
- 局所進行頭頸部癌 -
Bonner et al. Lancet Oncology, 2009
Radiotherapy alone
Radiotherapy +
cetuximab
All
grade
grade
3/4
grade 4
All
grade
grade
3/4
grade
4
Skin
reaction
94.3
21.2
1.4
98.2
35.1
1.9
Mucositis
93.9
51.9
4.2
93.3
55.8
6.3
Acne
9.9
1.4
0
83.7
16.8
0.5
RT + cetuximab
RT alone
Overall survival
分子標的薬と放射線治療の併用
現在多数の分子標的薬が開発され、臨床上有用性が
報告されている。分子標的薬の中には放射線増感
作用を有するものもあることが知られている。
分子標的薬は既存の殺細胞性抗癌剤と比較して
腎毒性・心毒性等の有害事象が出現しにくい為、
①放射線単独で制御が困難な進行例でかつ抗癌剤治
療の適応外の症例(高齢者・有合併症)
②放射線感受性が高く、現在の標準治療ではover
treatment である症例
③既存の治療では充分な制御が期待出来ない
局所進行症例
等を対象に開発が進められている。
1.抗がん剤と放射線治療の併用はある種のがんで
は標準 治療となり得る程の有用性が立証されて
おり、外科的手術に充分対抗し得る治療手段となっている。
2.しかしながら両者の併用により治療効果と共に有害事象も
増強する為、併用に当たっては注意深い経過観察と担当科
相互の情報交換、丁寧な支持療法が必要である。
3.分子標的薬と放射線治療の併用は今後大きな期待が持た
れるが、両者の相互作用メカニズムは依然として解明されて
おらず、第Ⅲ相レベルで既存の治療に対する分子標的薬の
上乗せ効果を立証した報告は現時点では無い。
臨床応用に向け更なる基礎データの積み重ねが望まれる。
おことわり
図表は全て 北原 規・相羽恵介
編著・「化学放射線療法プラクテ
ィカル・ガイド」2009より引用
(一部改変)致しました。