第1章 電圧増幅の Ep-Ip 特性図を描いてみよう

第1章 電圧増幅の Ep-Ip 特性図を描いてみよう
本章では、真空管の Ep-Ip 特性図をエクセルのグラフ機能を使って描かせることによ
って、電圧増幅を学んでいきます。
前提とする知識は、中学校程度の数学と理科の知識です。忘れている方は読みながら
復習して下さい。なおパソコンの知識としては、エクセルのグラフを書かせたことのあ
るという程度の知識で OK です。まったく知らないという方は、まずパソコンと表計算
ソフト(エクセル)の基本を別途マニュアル等で学んで下さい。
1.1 真空管と記号
ここで真空管についてあまり詳しくはお話しません。詳しくお知りになりたい方は、
別の教科書等をお読み下さい。
真空管は、ガラスや金属筒中に電極を入れて密閉し、筒内を真空にしたものです。真
空といっても完全ではありませんが、電極間を電子が移動するのに空気中の分子があま
り邪魔をしない程度に真空にします。
電極にはヒーター(H)、カソード(K)、グリッド(G)、プレート(P)があります。括弧内
は記号です。
ヒーターは、電流を流して加熱する熱源です。別名フィラメント(F)とも言います。
カソードがヒーターで加熱されるとそこから電子が追い出されます。従ってヒーターそ
のもがカソードの場合もあります。これを直熱といい、そうでない場合を傍熱といいま
す。
プレートは板状の電極で、カソードに対してプラスの電圧をかけて電子を吸引します。
グリッドは格子状の電極で、カソードに対してマイナスやプラスの電圧をかけて、電
子の流れを邪魔したり加速したりして制御します。
上述したことは、回路図によって図 1-1 のように表します。円が真空管の筒を表し、
円の中が真空管の電極を表し、円の外の直線は導線です。この図は次節で詳しく説明し
ます。
1.2 理想的三極管による電圧増幅
電圧増幅がなぜ必要かといいますと、CD からにしろメモリーからにしろ、そこから
最初に取り出す音の信号は、弱い電圧で、そのままではスピーカーを鳴らせません。そ
こで電圧増幅と電力増幅が必要になります。電圧増幅は電圧を強める、電力増幅は電気
エネルギーを強めると理解すればいいでしょう。
また、理想的というのは、直線であるということです。人間は基本的に直線しか直接
理解できません。曲線になるととたんに微分という数学を使って直線部分に分解して理
解しなければなりません。世の中に完全な直線は存在しないのですが、理想的に直線と
考えるのです。直線は傾きと切片という定数だけで表せますので、中学校で習う直線の
知識だけですむのです。直線はあらゆる数学の基本となりますから、傾きと切片は頭に
入れておいて下さい。
1.3 三極真空管の静特性と三定数
上に、直線は定数で表されるといいましたが、真空管の場合 3 つの定数があり、これ
を三定数といいます。以下に詳しく述べていきましょう。
図 1-1
図 1-1 では、プレートに rp がつながっていますが、これは内部抵抗といい、便宜上に
真空管の外側に描いていますが、実際には真空管内部の抵抗です。真空管の中の電流は
様々な要因で制限され、これが電気抵抗となって現れます。ヒーター電源、プレートカソード間電源、カソード-グリッド間電源をそれぞれ A 電源、B 電源、C 電源と呼び、
直流の電源です。上図では A 電源が省略されています。
上記図 1-1 において、
・ Eg:グリッド電圧(V)
・ Ep(または Eb):プレート電圧(V)
・ Ip:プレート電流(A)
の三つが変数です。これらのうち一つが一定のとき、残りの二つの変数は理想的には、
直線(正比例)関係が成り立ちます。ですからそこには一定の傾きが存在します。つまり
三つの定数が存在することになり、これを真空管の三定数といいます。
① 内部(プレート)抵抗(Ω):rp =
E p
I p
これは、グリッド電圧が一定のときのプレート電圧の変化に対するプレート電
流の変化の比で、いわゆる真空管の電気抵抗にあたるのでΩの単位を持ちます。
② 相互コンダクタンス(S):gm =
I p
E g
これは、プレート電圧が一定のときグリッド電圧の変化に対するプレート電流
の変化の比で、抵抗の逆数の単位なので、コンダクタンス(伝導度)の単位であ
るジーメンス S の単位を持ちます。かつてはジーメンスをオーム(ohm)の逆で
モー(moh)モーといいΩを逆さまにした記号を使いました。
③ 増幅率:μ=
E p
E g
これは、グリッド電圧の変化に対してプレート電流を一定にするために必要な
プレート電圧の変化の比、つまり電圧増幅率の意味を持ち、単位はありません。
ここで変化の方向について考えてみましょう。グリッド電圧が正に大きくなっ
たとき電子をより強く引き寄せますから、同じ電流を保つためには電圧は下が
らなければなりません。そこでグリッド電圧の変化の方向とプレート電圧の変
化の方向は常に逆になります。
これらの三定数の間には、上の定義によって、以下の関係が成り立ちます。
μ rp  g m
式 1.1
この式 1.1 は、有名なオームの法則 E(電圧)=I(電流)R(抵抗)と対比させ、μ(電圧増
幅率)=gm(電流感度)rp(内部抵抗)とすると覚えやすいです。
実際の真空管では、Ep、Ip そして Egは上記のような直線関係が完全には成り立たちま
せんが、それについてはあとでで述べましょう。とにかくも、このような比例関係が成
り立つのが理想的真空管です。
※Δは大きい数値から小さい数値を引くことを意味するとします。
※数学的に厳密に言うと、Δはδで置き換えられる偏微分です。
このように、理想的真空管の3つの変数(Ep、Ip、Eg)には上記のような3つの直線関
係があって、これを静特性といいます。なお、直流 Eg を変化させる代わりに交流 eg を
使って変化させる場合は動特性といいます。それぞれの比例定数つまり直線の傾きが
rp、gm、μとなるわけです。
これまで述べてきたことを、Ep-Ip 直線図、つまり Ep を x(横)軸、Ip を y(縦)軸にした
座標系を使って考えてみましょう。図 1-2 の Ep-Ip 直線図には、代表的にグリッド電圧
が Eg1 と Eg2 が一定の場合の理想の二本の Ep-Ip 直線を示してあります。図 1-2 はあく
までも数学的な取り扱いでありますから、マイナスの Ip や Ep(点線部分)の場合は直線
関係がもはや成立しないのですが、直線の式として取り扱うためにあえてマイナス部分
も直線の延長として描いてあります。なおロードラインとあるのは後で説明しますので、
今は無視して下さい。
さて、上記のことから、図 1-2 の Ep-Ip 直線は一般に下式 1.2 で表されます。
Ip 
1
E p I 0
rp
式 1.2
つまり、内部抵抗の逆数 1/rp が傾きで、I0 が切片です。また Eg=Eg1 と Eg=Eg2 での二
本の直線の式はそれぞれ、
1
Ip 
Ip 
rp
E p  I 02
1
E p  I 01
rp
となります。
Ip
ΔEg=Eg1-Eg2
Eg2
Eg1
Ebb
RL
(Ep1,Ip1)
Ep-Ip 直線
ΔIp=Ip1-Ip2
(Ep1,Ip1)
(Ep2,Ip2)
ロードライン(後述)
ΔEp=Ep2-Ep1
Ebb
E01
E02
Ep
ΔE0=E02-E01
I01
ΔI0=I01-I02
I02
図 1-2 理想三極管の Ep-Ip 直線とロードライン
ここで内部抵抗 rp と、点(Ep1, Ip1)の座標値がわかっているとしましょう。これを上
式に代入して、
I p1 
1
E p1  I 01
rp
これを変形して切片 I01 は、
I 01  I p1 
1
E p1
rp
そこで、Eg=Eg1 の時の Ep-Ip 直線の式 1.2 は
Ip 
となりますから整理して、
1
1
E p  I p1  E p1
rp
rp
Ip 
E p  E p1
rp
 I p1
式 1.3
となります。式 1.3 は、無数にある直線式 1.2(傾き 1/rp は一定)の直線のうち点(Ep1,
Ip1)を通るものです。
次に、図 1-2 の Eg2 についての Ep-Ip 直線を考えてみましょう。これは Eg1 の直線を
Ep 軸にΔE0=ΔEp=Ep2-Ep1(あるいは Ip 軸にΔI0=ΔIp=Ip1-Ip2))だけ右(あるいは
下)に平行移動したものです。そこで、Eg=Eg2 の時の Ep-Ip 直線の式 1.3 は次のように
表せますね。
Ip 
E p  E p1  ( E p 2  E p1 )
rp
次いで、
μ
 I p1
式 1.4
E p
E g
を変形して、
E p  E p 2  E p1  μE g  μ( E g1  E g 2 )
式 1.5
となりますから、これを式 1.4 に代入すれば
Ip 
E p  E p1 μ( Eg 2  Eg1 )
rp
 I p1
式 1.6
つまり定数rp、μおよび Eg1の時の Ep1 と Ip1 さえわかれば、式 1.3 から Eg=Eg1 の時
の Ep-Ip 直線が引け、しかも Eg=Eg2 に変化させた直線も式 1.6 から計算できるのです。
その具体例を、エクセルを使ってで描いてみましょう。例として、真空管 6BM8 の三
極部について、Ep1=100V、Eg1=0、Ip1=3.5mA、μ=70.0、gm=2.2mA/V (0.00022 S)
がデータシートから入手できます。このとき内部抵抗 rp=μ/gm=31.82kΩですからか
ら、式 1.6 は、
Ip 
E p  100  70.0 E g 2
31.82
 3 .5
式 1.7
となります。この式が導けたならば、これを使ってグラフ化するのはそう難しいことで
はありません。
まず、表 1-1 のようにエクセルの表を作りましょう。A の列には 0V から 10V 刻みで
250V までの数値をいれます。単位はセルの書式設定から表示形式でユーザー定義を作
って入れます(図 1-4 参照)。4 の行には Eg=0 から-0.5V 刻みで-3.5V まで文字入力
します。一番下の 31 行には実際の計算に使う Eg の数値を入れましょう。
次に計算に使う定数を右下の青色のセルに入力します。単位はユーザー定義の表示形
式を使っていますので、単位は入れないようにしましょう(単位をいれると文字になり
エラーになります)。
表 1-1 理想的 6BM8 三極部の Ep-Ip 対応表
最 後 に 緑 色 の セ ル に は 計 算 式 を 入 れ ま す 。 ま ず B5 の セ ル に 、
=($A5-$I$36+$I$39*B$31)/$I$41+$I$38 と入力します。これが、式 1.7 をエクセル式
に直したものです。詳しくは説明しませんのでご自分で確認して下さい。ついで、この
セルを選択したときに出る四角を下にドラッグしてコピーします。同じことを右にも行
います。
これをドラッグ
する
図 1-3
図 1-4 セルの書式設定(ユーザー定義)
ここまできたら、あとはグラフを書かせるだけです。A5 から I30 までのセルを選択
して、挿入の散布図をクリックすれば、グラフの原型ができます。エクセル 2013 です
と図 1-5 のようなグラフが得られました。次に系列名を指定しましょう。グラフを右
クリックして、データの選択から編集に入って、系列名を順次 0 から-3.5V までマウ
スで指定しましょう。またタイトル名を書き換えましょう。そうすると図 1-6 のよう
になるはずです。これで一応の完成です。私の場合は、これを元に、表の設定を様々変
えて、さらに三定数のイメージ図を付け加えて、図 1-7 のようにしました。設定の変
え方はここでは説明しません。御自分の好きなように自分でカスタマイズすることによ
って、エクセルを覚えていくことができますので、挑戦なさって下さい。
図 1-5 グラフの原型
図 1-6 系列名を指定し、タイトルを書き換える
図 1-7 理想的 6BM8 三極部の Ep-Ip 直線
1.4 電圧増幅とロード(負荷)抵抗
さてこれまで、Ep-Ip 直線関係を見てきましが、Eg の変化を増幅させて Ep に反映させ
るという増幅目的では、B 電圧を一定の Ebb(以下プレート供給電圧といいます)とし、
さらにロード(負荷)抵抗 RL を B 電圧のプラス電極とプレート電極の間に挿入します。
これを回路図にしたものが、図 1-8 です。
このとき、プレート回路は直列ですから、プレート電流 Ip は回路のどの部分にも等
しく流れます。もちろん RL にも流れます。そうするとここに電圧降下 Ebb-Ep が起こ
ります。オームの法則を適用すれば、電圧降下=Ebb-Ep=IpRL となります。この式を
Ip について変形すると、以下のようになります。
Ip 
Ebb  E p
RL

E
1
E p  bb
RL
RL
式 1.8
この式を図にしたのが図 1-2 にあるロードライン(負荷線)です。これは、切片(真空管の
内部抵抗がゼロになるため電圧降下がない Ep=0 の時のプレート電流)が Ebb/RL で、傾
きが-1/RL の直線であると言えるでしょう。もう少し詳しく言うと、ロードラインの切
片(Ip 軸との交点)での状態は、Eg が正の値で真空管の電圧降下 Ep=0 となり真空管の
内部抵抗がゼロである状態を表します。一方 Ep 軸との交点は、Eg が負の値で電子反発
が大きく真空管の内部抵抗が無限大となったため Ip=0 で、RL 抵抗の電圧降下がゼロに
なるため、Ep=Ebb となる状態を表しています。
Ip
Ebb
Ep
Eg
図 1-8 負荷抵抗 RL を持つ三極管回路
さて、ではロードラインの式 1.8 が得られましたので、図 1-7 に描いてみましょう。
表 1-2 は表 1-1 に 200 kΩのロードラインの列を加えたものです。J8 のセルに、
=($I$35-$A5)/$I$34 と入力して、前と同様に下にドラッグコピーしましょう。ついで
表を右クリックして、データの選択からこの系列を追加します。こうして出来上がった
ものが下の図です。
表 1-2
6BM8 三極部の Ep-Ip 直線とロードラインのデータ
図 1-9
6BM8 三極部の Ep-Ip 直線とロードライン
このように、ロード抵抗を一本入れることにより、B 電圧が一定(この場合 250V)でも、
プレート電圧は、グリッド電圧を変えることによって、この直線上を動くことができる
のです。この様な真空管の特性を動特性といいます。この様子を数式で考えて見ましょ
う。まず、ロードライン上では、Ep-Ip 直線の式 1.2 とロードラインの式 1.8 が常に成
り立たなければなりませんから、
E
1
1
E p  I0  
E p  bb
rp
RL
RL
となり、Ep について変形しますと、
Ebb
Ebb
 I0
RL
RL
Ep 


1
1
1
1
1
1



rp RL
rp RL rp RL
 I0 
式 1.9
です。ここで Ebb、RL、rp が定数ですから、Ep は I0、についての直線の式となりますか
ら、次式が成り立ちます。
ΔE p 
ΔI 0
1
1

rp RL
式 1.10
となます。ただし、ここでΔは変化の絶対値とします。ここで電圧増幅の利得 A=ΔEp/
ΔEg と定義しますと、ΔI0=ΔIp(図 1-2 より)であることを考慮して、
ΔI p
ΔI 0
ΔE p
ΔE g
ΔE g
ΔI p r p  R L
利得 A 




1
1
1
1 ΔE g r p  R L
ΔE g


rp RL
rp RL
ここで
式 1.11
μ rp  g m
かつ
gm 
I p
E g
であることは前述しましたので代入すると
利得A 
ΔE p
ΔE g
 gm 
rp  RL
rp  RL
 μ
RL
rp  RL
式 1.12
となります。このように一定のロード抵抗を入れると、Ep は Eg に比例しその比例定数
は利得 A であるといえます。また、A はμに比例するがμよりも小さく、また内部抵抗
rp が小さい(Ep-Ip 直線の傾きが大きくなり立つ)方が、あるいは RL が大きい(ロードラ
インの傾きが小さく寝る)方が、利得が高い(最大値μに近づく)ということになります。
このようにμと rp が分かっていればロード抵抗 RL での利得が計算できるのです。
1.5 Ep-Ip 曲線
これまでは、理想的真空管を取り扱って来ました。しかし実際の Ep-Ip 特性は直線で
はなく曲線です。表 1-3 は、6BM8 の三極管部に対して、一定のグリッド電圧 Eg のも
とで Ep の変化に対する Ip の関係を測定し、Eg いくつか変えて同じ繰り返しをしてい
った場合の Ep-Ip の関係です。実際には、メーカーのデータシートの Ep-Ip 特性図か
ら読み取った値です。これをエクセルでグラフにすると図 1-10 のようになります。
この図に見るような曲線を Ep-Ip 曲線といい、立ち上がり部分を除けばかなりの直線
性を持つことが見て取れるでしょう。表 1-3 には、前の表 1-1 の Eg=0 と Eg=-1.5V
の計算値(calcd)も加えて、図 1-10 に示してあります。ごらんになればわかりますよ
うに、計算値(直線)と実際(曲線)は完全には一致しませんが、かなり近いということ
がわかるでしょう。立ち上がりの曲線部分を除いてオーディオ用に使うのならば、こ
の程度のずれはほとんどわかりませんので、直線とみなして回路設計を行ってもなん
ら問題は無いわけです。しかしこの直線性は電圧増幅用三極管に限られますから注意
が必要です。
表 1-3 実際の Ep-Ip 曲線と計算による Ep-Ip 直線
6BM8 三極管 Ep-Ip曲線 (Philipse : ECL 82, 10.10.1957より)
Ep
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
200
210
220
230
240
250
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
V
Eg = 0 V Eg
0.00 mA
0.40 mA
0.70 mA
1.05 mA
1.40 mA
1.70 mA
2.00 mA
2.40 mA
2.78 mA
3.10 mA
3.50 mA
3.85 mA
4.30 mA
4.70 mA
= -0.5 V Eg = -1 V Eg
0.00 mA
0.03 mA
0.10 mA
0.30 mA
0.00 mA
0.50 mA
0.03 mA
0.70 mA
0.12 mA
0.90 mA
0.21 mA
1.20 mA
0.40 mA
1.50 mA
0.60 mA
1.80 mA
0.80 mA
2.20 mA
1.10 mA
2.50 mA
1.40 mA
2.85 mA
1.65 mA
3.25 mA
2.00 mA
3.60 mA
2.40 mA
4.00 mA
2.70 mA
4.40 mA
3.05 mA
4.80 mA
3.40 mA
3.80 mA
4.20 mA
4.60 mA
5.00 mA
= -1.5 V Eg = -2 V Eg = -2.5 V Eg = -3V
0.00
0.03
0.08
0.23
0.40
0.58
0.76
0.98
1.20
1.45
1.80
2.10
2.41
2.80
3.20
3.60
4.00
4.40
4.80
5.20
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
0.00
0.01
0.10
0.20
0.35
0.43
0.62
0.82
1.03
1.33
1.60
1.95
2.28
2.60
3.00
3.40
3.80
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
0.00
0.03
0.05
0.10
0.25
0.40
0.60
0.80
1.00
1.25
1.48
1.82
2.10
2.45
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
0.00
0.01
0.10
0.20
0.30
0.40
0.60
0.78
1.00
1.20
1.50
Eg = -3.5 V
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
0.00
0.01
0.10
0.20
0.30
0.42
0.60
0.80
Eg = -4V
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
mA
0.00
0.01
0.05
0.12
0.17
0.22
mA
mA
mA
mA
mA
mA
Eg = 0 V(calcd) Eg = -1.5 V(calcd)
0.36 mA
0.67 mA
0.99 mA
1.30 mA
1.61 mA
1.93 mA
2.24 mA
2.56 mA
2.87 mA
3.19 mA
-0.11 mA
3.50 mA
0.20 mA
3.81 mA
0.51 mA
4.13 mA
0.83 mA
4.44 mA
1.14 mA
1.46 mA
1.77 mA
2.09 mA
2.40 mA
2.71 mA
3.03 mA
3.34 mA
3.66 mA
3.97 mA
4.29 mA
4.60 mA
Eg2 = 0.0 V
定数
変数
測定値/推定値
計算値/引用値
グリッド(自己バイアス)電圧
ロード(アノード)抵抗
プレート供給電圧
プレート電圧(対カソード)
プレート電圧(対アース)
プレート電流
増幅率
相互コンダクタンス
内部抵抗
-Eg2 = 1.5 V
特性(Phillips)
0V
100 V
Eg =
RL =
Ebb =
Ep-k =
Ep-e =
Ip = µ = gm = rp =
3.5 mA
70.0
0.0022 S
31.8 kΩ
5V
-2
Eg
=
Eg = -2 V
Eg = -3.5 V
Eg = -2.5 V
Eg = -3V
-3
.5
1.50 mA
Eg = -1.5 V
V
2.00 mA
Eg = -1 V
Eg
=
-3V -2. 5
V
2.50 mA
Eg = -0.5 V
Eg
=
3.00 mA
Eg = 0 V
V
-1.
V
-1
Eg
=
3.50 mA
Eg = -4V
=
1.00 mA
Eg
プレート電流 Ip
4.00 mA
Eg
=
Eg
=
4.50 mA
Eg
=
0V
5.00 mA
-0
.5
V
6BM8 3極部 Ep-Ip 曲線
0.50 mA
=Eg
4V
Eg = -1.5 V(calcd)
0.00 mA
0V
50 V
100 V
150 V
200 V
250 V
Eg = 0 V(calcd)
300 V
プレート電圧 Ep
図 1-10 実際の Ep-Ip 曲線の計算値の Ep-Ip 直線の比較
1.6 等価回路と出力インピーダンス
本章の最後になりましたが、少し難しいことを述べます。しかし回路を設計する上で
非常に大事なことなので、ぜひ理解してください。
前節では、プレート供給電圧 Ebb が一定で、ロード抵抗による電圧降下が Eg によっ
て変化して、その結果 Ep に増幅された変化が起こることを見てきました。
このことは単純なのでご理解いただけると思いますが、回路が複雑になるにつれて話
しがややこしくなってきます。そこで話を簡単にしてしまう等価回路なるものがありま
すので考えて見ましょう。
まず、利得を計算する式 1.12 は以下のようでしたね。
A
ΔE p
ΔE g
 gm 
rp  RL
rp  RL
 μ
RL
rp  RL
式 1.12
直感的にこれらの式は、並列抵抗の式と直列抵抗の分圧式と関連があると感じませんか。
並列の抵抗式とは、並列抵抗が各抵抗値の逆数の和の逆数の合成抵抗になるということ
です。分圧式とは、抵抗が直列になって電圧がかけられている場合、各抵抗にかかる電
圧(分圧)は全抵抗に対する各抵抗値の比になるとういことです。詳しく説明しましょう。
図 1-11(a)(b)(c)を見てください。これらの回路には、真空管が書いてありません。
代わりにμeg、gmeg、Aeg、とあります。簡単に言えば、真空管回路を一つの電源とみ
なした図です。このように真空管を一つの電源として単純化しても回路の本質は同じで
すから、図 1-11 の回路を図 1-8 の真空管回路の等価回路と呼びます。
(a)
(b)
(c)
図 1-11 等価回路
話がわかり難かったと思いますので、図 1-11 の(a)(b)(c)を一つずつ考えて見まし
ょう。式 1.12 で、ΔEg=eg、ΔEp=eo と交流電源 eg と eo に置き換えて変形すると、
eo  eg g m 
rp  RL
rp  RL
 eg  
RL
rp  RL
式 1.13
となります。この式を分解して考えましょう。まず、
eo  e g
RL
rp  RL
式 1.14
からです。この式にある eo は、入力交流信号 eg をμ倍増幅した電圧μeg を持つ
電源(内部抵抗ゼロの定電圧源)に rp と RL を直列につないだ図 1-11 (a)のような回路
出力交流信号とみなせます。つまり式 1.14 から、利得 A は、
A
ep
eg
eg

RL
rp  RL
RL
rp  RL

eg
式 1.15
となり、増幅率μを抵抗の比で分配したものが利得 A ということになります。
次に、
eo  g meg
rp RL
式 1.16
rp  RL
です。同じようにこの式の eo は、入力交流信号 egを gm 倍した電流を流す交流電源(内
部抵抗無限大の定電流源)に、rp と RL を並列につないだ場合の回路図 1-11 (b)の出力
交流信号 eo とみなせます。従って利得 A は、
A
eo

eg
g m eg
rp RL
rp  RL
eg
 gm
rp RL
rp  RL
式 1.17
となりますね。ここで yp=1/rp 、YL=1/RL としましょう。このように交流抵抗の逆数
をアドミタンスといいます。これを使って式 1.16 を書き換えてみましょう。
eo  g m eg
rp RL
rp  RL
 g m eg
1
1
1

rp
RL
 g m eg
1
y p  YL
式 1.18
となります。このようにアドミタンスで記載するほうが一般的ですので覚えて起きまし
ょう。ではこのとき RL に流れる電流 iL を考えて見ましょう。オームの法則から、
1
RL
YL
iL  eo RL  g m eg
 g m eg
y p  YL
y p  YL
式 1.19
となります。式 1.19 は定電圧源の式 1.14 と似ていると思いませんか。この式は rp と
RL が定電流をアドミタンス(抵抗の逆数)の比で分け合っていることを意味しています。
またここで YL が無限大、つまり RL がゼロである(短絡する)と、式 1.19 から iL=gmeg
となりますね。つまり定電流gmeg というのは回路を短絡(ショート)させたときの電流
に比しいのです。
また、出力側からみた交流抵抗を出力インピーダンスといいます。(a)の電源は内部
抵抗ゼロですから内部でショートさせたのと同じことですね。(b)の電源は内部抵抗無
限大ですから電源を取り去ったのと同じことです。そうすると結局(a)でも(b)でも 出
力インピーダンスは rp と RL の並列抵抗値ということになります。この抵抗値を新たな
Aeg のという電源の内部抵抗 Ro とみなすと、図 1-11 (c)の回路となります。以後同じ
ように回路を延ばしていっても、常に並列抵抗が出力インピーダンスとなり、非常に話
が簡単になります。
以上、定電圧電源を考えた場合を一般化したものをテブナンの定理といいます。すな
わち、負荷を開放したときの回路網(どんな複雑な回路でも良く、電圧を与える一つの
ブラックボックス)の電圧を Vf 、電圧源を短絡したときの回路の内部抵抗を Ro 、負荷
RL 接続したときの電圧を VL、電流を IL とすると、次式が成り立ちます。
VL 
RL
Vf
Ro  RL
式 1.20
1
IL 
Vf
Ro  RL
このテブナンの定理を図 1-11 (a)にあてはめると、負荷を開放したときの電源部の電
圧はμeg 、電圧源を除いたときの回路の内部抵抗は rp、負荷を RL、負荷を接続したと
きの出力電圧は eo ですから、
eo  eg
RL
rp  RL
式 1.21
とななり、式 1.21 は式 1.14 に同じになりました。また、これを利得 A の増幅回路で
一般化すれば、
VL  Ae g
RL
Ro  RL
式 1.22
となります。
一方、定電流源を考えたときの場合を一般化したものをノートンの定理といいます。
出力端子を短絡したときの回路網 の電流を If 、電流源を除いたときの回路の内部抵抗
を Ro 、負荷 RL を接続したときの電圧を VL、電流を IL とすると次式が成り立ちます。
VL 
IL 
1
1
1

Ro RL
1
RL
If
式 1.23
1
1

Ro R L
If
このノートンの定理を図 1-11 (b)にあてはめると、負荷を短絡したときの電流がgmeg、
内部抵抗は rp、負荷 RL を接続したときの電圧が eo、電流が io だから、
eo  g m e g
1
1
1

rp
RL
となって、式 1.16 に同じとなります。
 g m eg
rp R L
rp  R L
式 1.24