1 頁 1 演題 1 頁 1 演題 (2 段組)表あり 1 頁 1 演題 (2 段組)図版あり 1

1 頁 1 演題
1 頁 1 演題(英語併記)
一般演題 1
O-04
平成 22 年度の新人看護師看護技術研修の実際と今後の課題
O1-3
和歌山県で 1977 年∼ 2008 年に診断され報告された川崎病 2 , 416 例の
疫学像 ― 川崎病全国調査に報告された和歌山県症例の分析 ―
― 医療安全教育の側面から検討して―
Epidemiological study of 2 , 416 cases of Kawasaki disease reported from Wakayama
Prefecture
○大松 真弓 1)、今永 たか子 2)、長野 裕子 1)、小竹 友子 1)
1 )産業医科大学病院 看護部、2 )産業医科大学病院 医療安全管理部
〇北野 尚美 1)、屋代 真弓 2)、上原 里程 2)、中村 好一 2)、柳川 洋 2)、鈴木 啓之 3)、
武内 崇 3)、末永 智浩 3)、垣本 信幸 3)、渋田 昌一 4)、上村 茂 5)、竹下 達也 1)
1 )和歌山県立医科大学 医学部 公衆衛生学、2 )自治医科大学 公衆衛生学、
3 )和歌山県立医科大学 医学部 小児科学、4 )社会保険 紀南病院 小児科、
5 )昭和大学 横浜市北部病院 循環器センター
【 背景 】平成 22 年 4 月から新人看護職員の臨床研修などの努力義務化に伴い、看護技術
の知識の講義と技術演習、医療安全教育を 3 本柱に新人看護師看護技術研修として集合
〇Naomi Kitano1 ), Mayumi Yashiro2 ), Ritei Uehara2 ), Yoshikazu Nakamura2 ),
Hiroshi Yanagawa2 ), Hiroyuki Suzuki3 ), Takashi Takeuchi3 ), Tomohiro Suenaga3 ),
Nobuyuki Kakimoto3 ), Shoichi Shibuta4 ), Shigeru Uemura5 ), Tatsuya Takeshita1 )
教育を計画立案、実施している。今回、新人看護師看護技術研修の実際と課題を医療安
全教育の側面から検討したので報告する。
1 )Department of Public Health, Wakayama Medical University School of Medicine,
2 )Department of Public Health, Jichi Medical University,
3 )Department of Pediatrics, Wakayama Medical University School of Medicine,
4 )Department of Pediatrics, Social Insurance Kinan Hospital,
5 )Center of Cardiology, Showa University Northern Yokohama Hospital
【 新人看護師看護技術研修の実際 】
1. A 病院に就職した平成 22 年度の新人看護師 54 名(年齢 22.3 ± 2.2 歳、基礎教育は大学
35 名、3 年課程 14 名、5 年課程 5 名)を対象に、内容は 4 月「病院の医療安全の組織と
【 目的 】川崎病全国調査によると、和歌山県は罹患率が比較的高値で推移している。県下から症例
活動」
「事故防止 5 つの視点」
、6 月「輸血管理の注意点と観察」
「安全対策の基本」
、
が初めて報告されたのは 1970 年である。和歌山県下で発生した川崎病について、過去の全国調査
9 月「転倒転落予防・リスク感性を学ぶ」
「看護観察と判断」
、11 月「チーム医療安全
報告例の分析によって疫学像を明らかにする。
を考える」
、翌 2 月「安全な与薬」で主に講義と演習である。
2. 質問紙調査:無記名で各研修終了時点に 4 段階評定とその理由を自由記載し、回収を
【 方法 】川崎病全国調査の事務局で管理されている既存のデータベースから、第 5 回∼第 20 回調査
もって質問紙調査の同意とした。その結果、98 ∼ 100%が「理解できた」
「だいたい
で、住所地が和歌山県であった報告例を抽出した。連結不可能匿名化されたデータセットを用いて
理解できた」と答え、理由にはグループワーク、映像の活用など研修方法がわかり
記述疫学的分析を行った。本研究は和歌山県立医大が設置する倫理委員会で疫学研究倫理指針に基
やすく、確認行為の重要性や先入観を持たないことなどを学んだと記載していた。
づく審査を受け承認を得て実施した。
3. 4 月∼ 9 月までインシデント・アクシデント報告を調査すると、看護職員全体では 755
件そのうち新人看護師は 107 件(14.2%)で、影響レベルは《レベル 0 》
4 件、
《レベル 1 》
【 結果 】1977 年∼ 2008 年の 32 年間に 2,416 例(男 1,421 例、女 995 例;男女比 1.43)が報告され、
35 件、
《レベル 2 》
57 件、
《レベル 3a 》
11 件、月別にみると4 月2 件で以後月平均 21±5
前半(1994 年以前)1,202 例は男女比 1.38、後半(1995 年以降)1,214 例は男女比 1.48 であった。年
件であった。発生のジャンルでは、
「薬剤に関すること」67 件(62.6%)
、
「療養場面に
間報告数は平均 76 例で、1982 年 189 例と 1986 年 132 例が目立って多く次いで 2007 年に 118 例で
関すること」19 件、
「ドレーン・チューブ類に関すること」10 件であった。
「薬剤に関す
あった。月別発症数は多い順に 1 月、3 月、4 月、5 月、12 月で、10 月と 9 月は少なかった。診断は
ること」の要因は『確認を怠った』65 件(96.9%)
、
『知識不足』41 件(61.1%)で、発
確実 A 90.2%、確実 B 0.7%、容疑 9.2%で、再発例 3.6%、同胞例 1.1%であった。年齢別発症数は
多い順に 3 ∼ 5 か月 214 例、12 ∼ 14 か月 207 例、6 ∼ 8 か月 206 例、9 ∼ 11 か月 199 例で、1 歳 6 か
生場面の内容は『無投薬』24 件(35.8%)
、
『与薬時間』
『与薬速度』各 9 件であった。
月未満の発症が前半は 46.8%、後半は 39.1% を占めた。心後遺症は第 8 回以後の 2,071 例中 160 例
(7.7%)で報告され、男児は前半(1982 年 7 月∼ 1994 年)484 例の 14.3%、後半(1995 年∼ 2008 年)
【 考察 】川村は「不慣れな技術への不安は大きいが知識不足への不安は小さい。
」と述べ、
724 例の 4.7%、女児は前半 373 例の 9.7%、後半 490 例の 4.3%であった。巨大冠動脈瘤は 12 例(男
わからないまま短絡的に実行する新人特有の行動パターンを指摘している。新人看護師
6 例、女 6 例)で 1992 年と 2005 年は 3 例発生があった。死亡は 7 例(剖検あり 1, 不明 2, なし 4)報
のインシデント・アクシデントを考慮すると 5 月から注意喚起をしていくこと、薬剤の
告され、川崎病発症が 1979 年∼ 1995 年で、初診から死亡までの期間は 19 ∼ 1,714 日間だった。
危険に関する知識とともに確かな看護技術の修得、指差し呼称などの確認行為を臨床現
場で活用できるような研修内容を計画していくことが必要である。さらに、看護の対象
【 まとめ 】和歌山県居住者に発生した川崎病 2,416 例の疫学像を報告した。1995 年以降、心後遺症
である患者の病態の観察を含めた医療安全教育が重要である。
合併頻度の性差は縮小した。巨大冠動脈瘤は減少傾向を認めなかった。
― 70 ―
― 71 ―
1 頁 1 演題 (2 段組)表あり
P-03
口頭発表
2
― 40 ―
1 頁 1 演題 (2 段組)図版あり
P-04
母乳成分の昼夜の変動と乳児の睡眠との関連
夜間の排尿が乳幼児の睡眠に及ぼす影響
○水野 一枝 1)、水野 康 2)、山城由華吏 3)、須藤 元喜 3)、上野加奈子 3)、富樫亜紀子 4)、
矢田 幸博 3)
○山村 淳一、小林俊二郎、中埜 拓
ビーンスターク・スノー株式会社開発部
東北福祉大学感性福祉研究所、2 )東北福祉大学子ども科学部、
花王株式会社ヒューマンへルスケア研究センター、4 )東北福祉大学総合福祉学部
1)
3)
一方、乳児の睡眠・覚醒リズムは、生後 1 か月では短
い時間での睡眠・覚醒を繰り返すウルトラディアンリズ
ム(縮日リズム)であるが、1 か月を過ぎると、主とし
て覚醒している時間帯と主として睡眠をしている時間帯
が出現する。しかし、日毎に入眠時刻、覚醒時刻が遅れ
てフリーランを示し、昼夜の明暗の区別に一致しない。
2 か月を過ぎると覚醒の時間帯が昼間に集まりだし、4
か月になると覚醒の時間帯が昼間に集中しサーカディア
ンリズム(概日リズム)が形成される 2)。よって、唯一
の栄養源である母乳は、サーカディアンリズムにより昼
夜を区別する睡眠・覚醒リズムの形成に寄与している可
能性がある。そこで、母乳を昼夜に分けて採取し、一般
成分と微量成分を分析し、日内変動を調べた。
【 方法 】文書による同意を得た産後 1 ∼ 4 か月の健康な
完全母乳哺育の母親から、8 時∼ 20 時を昼間、20 時∼
翌 8 時を夜間と定義して、母乳を採取した。母子の生活
習慣を調べるために、母親の就寝時刻、起床時刻、一日
の授乳回数、児の夜間覚醒回数、一回の睡眠時間、体重、
出生体重、および在胎週数を調査した。
母乳の一般成分は、たんぱく質、脂質、灰分含量を測
定し、固形分含量から炭水化物含量と熱量を算出した。
ほかに脂肪酸組成を分析し、ヌクレオチド、タウリン含
量を測定した。
【 結果 】昼夜の母乳各 22 検体を比較すると、一般成分に
ついては昼夜の間に有意な差は認められなかった(表 1)
。
脂肪酸については夜間にステアリン酸が有意に高く、オ
レイン酸とパルミトレイン酸が有意に低かった。微量成
分であるヌクレオチドのうち、5 -CMP は夜間で有意に
高く、5 -UMP は高い傾向を示した(表 2)
。タウリンは
夜間で有意に低かった。
さらに一般成分の測定値と夜間覚醒回数の相関を調べ
ると、夜間の脂質含量と固形分、ならびに熱量に有意な
正の相関が認められた。夜間覚醒回数の多寡で層別解析
すると、回数が少ない群では昼間に比べて夜間の脂質含
量が低い傾向を示し、固形分と熱量は有意に低かった。
なお、この回数と週齢には相関が認められなかった。ま
た、週齢とたんぱく質、固形分含量、ならびに熱量の間
にはいずれも有意な負の相関が認められた。
【 考察 】母乳の脂質含量が夜間に低下することは多くの
報告がある 1)。母乳から摂取する脂質が低下することは
血中遊離脂肪酸の低下を誘導し、成長ホルモンの分泌を
促すと考えられる。また、5 -CMP と 5 -UMP はピリミ
ジンヌクレオチドと分類されるが、それらの代謝中間体
であるウリジンは睡眠促進物質として同定された物質で
もあり、夜間の睡眠への寄与、ならびに乳児の睡眠・覚
醒リズムの発達への寄与が考えられる。これらのことか
ら母乳には日内変動があり、乳児の睡眠・覚醒リズムの
発達に影響を及ぼすと考えられる。
【 目的 】幼児のオムツ離れは 2 ∼ 3 歳頃が一般的である。
しかし、オムツ使用中の睡眠時における排尿が夜間睡眠
た紙オムツの重量を測定して排尿量の目安とするととも
検討した結果、乳幼児の睡眠時の排尿は、発達過程にお
定 し た。オ ム ツ 内 温 湿 度 に は ㈱ ワ イマ チ ック 社 製
尿に移行して夜尿の消失に至る可能性を報告してきた。
(SHTDL-1)の温湿度センサーを用い、オムツ内の股間
そこで、本研究では幼児の夜間睡眠と夜間排尿量、夜間
の吸収体部と腹のギャザー部に装着して 10 秒毎に連続測
排尿開始前後の睡眠および活動量について検討すること
会による審査・承認を受け、対象となる乳幼児の保護者
前∼ 1 分後の 3 分間を排尿時とし、それ以 前と以後につ
いても 3 分間毎に睡眠・覚醒および活動量を解析した。
とし、平成 21 年 9 月下旬∼ 10 月に測定を行った。被験
【 結果 】夜間睡眠の就寝および起床時刻は、平均 21:06
者には通常通りの生活をしてもらい、測定はすべて自宅
± 0:57 お よ び 7:07 ± 0:45 で、 睡 眠 効 率 は 79.8 ±
で行った。測定項目は、アクチグラフ、オムツ内温湿度、
5.7% であった。日中と夜間の排尿量の割合と、アクチ
およびオムツ重量とした。AMI 社製アクチグラフ(腕時
グラフによる睡眠変数には有意な相関が見られ、夜間排
計型の活動量モニター)は 1 週間手首に装着してもらうと
尿量の割合が高いほど、睡眠時の活動量、覚醒が増加し、
睡眠効率が低下した。夜間排尿開始前後の睡眠には有意
な変化が見られ、覚醒が排尿時に急に増加し、排尿後約
9 分で減少した(図 1)
。また、活動量も有意な変化が見
ぬ㓰᫬㛫
᤼ᒀ᫬
㻟
られ、排尿時に急に増加し、排尿後約 12 分で減少した
㻞㻚㻡
(図 1)
。排尿前と排尿時の覚醒時間には相関が見られ、
㻞
排尿前の覚醒が多いほど、排尿時の覚醒が増加した。活
㻝㻚㻡
䠆
動量が有意に低下した排尿後 12 分以降の活動量と睡眠
䠆
䠆
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㻜㻚㻡
䠆
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㻠㻡㻜
㻙㻝㻤
㻙㻝㻡
㻙㻝㻞
㻙㻥
㻙㻢
㻙㻟
㻜
㻟
㻢
㻥
㻝㻞
㻝㻡
άື㔞
㻝㻤
44
άື㔞
5' CMP
1.94 ± 0.65
2.16 ± 0.65 **
㻝㻡㻜
たんぱく質(g/㎗ )
1.16 ± 0.14
1.14 ± 0.12
5' UMP
0.26 ± 0.14
0.31 ± 0.21
㻝㻜㻜
脂質(g/㎗)
3.21 ± 1.38
2.89 ± 1.23
5' AMP
0.02 ± 0.01
0.01 ± 0.01
㻡㻜
炭水化物(g/㎗)
7.90 ± 0.34
7.82 ± 0.45
5' GMP
0.04 ± 0.02
0.04 ± 0.02
灰分(g/㎗)
0.19 ± 0.02
0.19 ± 0.03
5' IMP
0.01 ± 0.01
0.00 ± 0.01
固形分(g/㎗)
12.5 ± 1.4
12.0 ± 1.1
合 計
2.27 ± 0.75
2.53 ± 0.7 ** 日本赤ちゃん学会第 10 回学術集会(2010 年 6 月 東京大学)
ている可能性が考えられる。また、夜間排尿量と睡眠は
㻞㻡㻜
夜 間
61.9 ± 10.3
平均値±標準偏差
昼間に対して有意差あり(p < 0.01)
排尿時に増加し、排尿後約 12 分の間に減少し、連動し
㻟㻜㻜
昼 間
量と最長覚醒時間が増加した。
【 結語 】排尿開始前後の覚醒と活動量は排尿前から急に
㻠㻜㻜
65.1 ± 12.3
時の平均活動量、最長覚醒時間には相関が見られ、排尿
後 12 分以降の活動量が増加すると、睡眠時の平均活動
㻜
熱量(kcal/㎗)
**
1 分)を 対応させ、排尿開始時刻を含むエポックの 1 分
から研究参加の同意書を得た。対象は、心身ともに健康
㻟㻡㻜
平均値±標準偏差
とアクチグラフによる睡眠・覚醒判定結果(1 エポックが
な乳幼児 17 名(女児 7 人、男児 10 人、年齢 1.3 ± 0.2 歳)
㻝
夜 間
定した。結果から、急峻なオムツ内湿度の上昇を排尿と
みなして排尿開始時刻とした。また、この排尿開始時刻
を目的とした。
【 方法 】研究実施にあたり、東北福祉大学研究倫理委員
1)Jackson DJ, Imong SM, Silprasert A, et al. Circadian
variation in fat concentration of breast-milk in a rural
nothern Thai population. Br J Nutr 1988;59:349-363.
昼 間
に、第 1 夜および第 3 夜についてはオムツ内温湿度を測
いて覚醒を伴わない排尿から、尿意による覚醒を伴う排
【 文献 】
表 2 昼夜の母乳のヌクレオチド含量の比較(㎎/㎗)
Sadeh らのアルゴリズムを用いて睡眠・覚醒の判定を行
い、睡眠変数を算出した。この期間中の 3 日間、使用し
でに、乳幼児の睡眠時の排尿が夜間睡眠に及ぼす影響を
2)瀬川昌也.
睡眠と脳の発達.
保健の科学.
2009;51:4-10.
表 1 昼夜の母乳の一般成分の比較
ともに、母親に睡眠日誌を記録してもらった。結果は
に及ぼす影響についての報告例は極めて少ない。これま
ぬ㓰䠄ศ䠅
【 目的 】乳児は生後 5 か月間は母乳のみで発育する。母
乳にはたんぱく質、脂質などの一般成分に加え、微量成
分など様々な栄養成分と生理活性物質が含まれている。
それらの成分は産後日数に伴い変動するものもある。そ
のほかに、脂質については一日のうちに含量が変化する
日内変動があることが報告されている 1)。
関連しており、夜間排尿量の割合が高いほど、睡眠時の
㻞㻜㻜
活動量、覚醒が増加し、睡眠効率が低下する可能性が示
䠆
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唆された。
㻜
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㻝㻡
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*
p < 0.05 ᤼ᒀ᫬䛸䛾᭷ពᕪ䜢♧䛩䚹
図 1 排尿前後の覚醒時間と活動量の変化
日本赤ちゃん学会第 10 回学術集会(2010 年 6 月 東京大学)
45
1 頁 1 演題 (1段組)図版あり
176
1 頁2演題
一般演題 A[ 身体障害
] 第 1 18
会場
:30
11:30 ∼ 12
日本家族看護学会第
回学術集会講演集
(2011
年・京都)
日本家族看護学会第 18 回学術集会講演集( 2011 年・京都 )
D-09
A-1
重症児を養育する家族の抱える不安とニーズの変化
― 家族のエンパワメントプロセスに照らし合わせて ―
電子ポスター 3
○石川 真希、小口 和代(MD)
、後藤 進一郎
Changes in family's anxiety and needs rearing children with severe motor and
intellectual disabilities in the light of the family empowerment process
医療法人 三九会 三九朗病院 リハビリテーション部
人間総合科学研究科、2 )千葉県立保健医療大学
○Rie Wakimizu1),Hiroshi Fujioka2)
of Tsukuba Graduate School of Comprehensive Human Sciences,
Prefectural University of Health Sciences
1 )University
2 )Chiba
【 目的 】
“ 重症児を育てること ”に伴う家族のエン
との関わり・共感・協働」
「在宅介護の継続と休息」
がそれぞれ経時的に捉えられた。
パワメントプロセス、不安およびニーズの変化を捉
える。
【 考察 】在宅で重症児を養育する家族に関わる医療、
【 方法 】在宅で重症児を養育中の保護者 18 名に半構
療育、行政機関の各専門職は、上述した家族のエン
造化インタビュー調査を行い、内容を質的に分析し
パワメントプロセスのいずれの段階においても、エ
た。大学の倫理委員会の承認を得て、
研究を遂行した。
ンパワメント促進要因としての重要な役目を担って
いる。各専門職は地域ケアシステムとして一体感を
【 結果 】家族のエンパワメントプロセスとして〈 療
有し、シームレスな連携を図れることが望ましい。
育における孤立化 〉
、
《 親仲間・専門職・行政との
そのなかで訪問看護師は、単なるケアの提供にとど
関わりの拡充 》
、
〈 療育体制の確立 〉の 3 段階が抽
まらず、児・家族の日々の生活をアセスメントして
出され、不安として「先行きの見えない療育生活」
家族の不安やニーズを汲み取り、それらをシステム
「家族員の身体的・精神的負担」
「児の容態悪化」
「家
族員の健康維持と在宅介護の継続」
「親亡き後の児
座長:吉田 慎一 江南厚生病院
高次脳機能障害を呈した患者に対する
CI 療法
○玉渕 愛、松重 好男、玉井 照久、八尾 宏美、
小池 知治(MD)
刈谷豊田総合病院
○涌水 理恵 1)、藤岡 寛 2)
1 )筑波大学大学院
A-2
維持期右片麻痺患者に対する
外来 CI 療法の試み
内で共有し、他職種と連携して、家族に関わってい
くことが強く望まれる。
の行く末」が、ニーズとして「知識や情報」
「他者
【 はじめに 】維持期右片麻痺患者の麻痺上肢日常生活参加
向上を目的に、外来で CI 療法を施行した。
【 対象 】40 代男性。左急性硬膜下血腫による右片麻痺患者。
2 年 9 ヶ月経過し自宅療養中。ADL 自立。軽度失語症、高
次脳機能障害あり。簡易知能検査 22/30 点。報告に際し対
象者より同意を得た。
【 方法 】1 日 5 時間の自主訓練を 10 日間外来通院で実施し
た。佐野の shaping 項目より 14 項目を抜粋し、1 日 6 ∼ 8
項目をランダムに実施した。片手項目実施時の非麻痺上肢
は指間を縫い合わせた手袋で拘束した。CI 療法開始時と
終了時、終了より 2 週後の 3 回評価を実施し、効果判定を
行った。上肢機能評価は、BRS、12grade、SIAS-M、握力、
Modified Ashworth Scale( MAS)
、Wolf Motor Function
Test( WMFT)の 所 要 時 間 と Functional Ability Scale
(FAS)
、STEF を実施した。生活動作評価は、FIM、Motor Activity Log(MAL)のQuality Of Movement( QOM)
と Amount Of Use( AOU)
、更衣(前開き服の着衣)を実
施した。
【 結果 】3 回の評価結果は手指 BRS Ⅴ→Ⅵ→Ⅵ、12grade
手 指 10 → 12 → 12、SIAS-M 上 肢 遠 位 4 → 5 → 5、 握 力
25 → 28 → 27kgf、WMFT: 合 計 時 間 71 → 28 → 40 秒、
WMFT:FAS67 → 71 → 71 点、STEF78 → 82 → 77 点、
MAL- 14:QOM 12 → 18 → 14 点、MAL- 14:
AOU11 → 18 → 14 点、更衣時間 78 → 41 → 45 秒であった。
いずれも CI 療法直後の機能が最も高く、2 週後で低下し
ていたが、CI 療法開始時より随意性や日常生活への参加
は向上していた。
【 考察 】一般に入院で実施されることの多い CI 療法を外
来で実施し、麻痺上肢の随意性と日常生活での参加度が向
上した。上肢近位よりも手指の随意性が改善した要因とし
て、巧緻動作を主体とした訓練項目が多かったことが考え
られる。畑中ら 1)が言うように、巧緻動作は利き手の機能
の主体であることに加え、生活環境を大きく変えることな
く外来通院で実施したことが、麻痺上肢の使用が日常生活
に汎化しやすかった一因と考えられた。花田ら 2)の先行研
究のように、自主練習の継続で麻痺上肢参加の定着が期待
される。CI 療法終了時、上肢使用への意欲的な発言が聞
かれ、患者の自覚が芽生えたと考えられた。
【 参考文献 】
1)畑中美菜:麻痺側の違いは CI 療法の効果や ADL 使用頻度
に影響を与えるかどうかについての検討.第 44 回作業療法
学会,2010.
2)花田恵介:Constraint-induced movement therapy(CI 療
法)終了後,更なる患手の機能改善を認めた一症例.第 42 回
作業療法学会,2008
【 目的 】Constraint-Induced movement therapy(以下 CI
療法)は非麻痺側上肢を一定期間拘束し、強制的に麻痺側
上肢を使用することで learned non-use を解消し、機能
改善を図るものである。脳卒中片麻痺の上肢機能改善訓練
として著名な高次脳機能障害がない者に推奨されている。
今回、失行症状を呈する患者に対し、CI 療法を行ったの
でその経過を報告する。
【 対象 】A 氏 60 歳代右利き、右片麻痺男性。発症 87 日後
より CI 療法を開始した。CI 療法開始時の BRS は上肢Ⅵ、
手指Ⅵであった。高次脳機能障害は観念運動失行、肢節運
動失行、失語症、注意障害であった。ADL は FIM にて
運動 82 点、認知 26 点で、ADL の特徴は、両手動作は拙
劣さなく可能であったが、歯ブラシ操作時の前腕回内外・
箸操作時に体幹前傾での代償が著明となるなど失行の影響
がみられた。尚、今回の研究にあたり患者と家族に十分な
説明の後、了承を得て署名して頂いた。
【 方法 】CI 療法(以下失行 CI)は 1 日 3 時間 2 週間施行し
た。評価時期は、開始時・1 週間後・終了時の 3 回とした。
失行症状を呈しているため、① 徒手的な誘導を多く行う
② 実際の物品を多く使用 ③ 模倣・誘導にて指示を行う
④その都度のフィードバック ⑤スピードを取り入れた訓
練の導入など工夫をした。
【 結果 】STEF は 65 点から 72 点に、WMFT70 点から 75
点となり、代償動作や拙劣な動きは軽減し、スムーズさ・
スピードが向上した。ADL 面では徐々に麻痺側使用頻度
が向上し、歯磨きなどの動作が自発的に見られるように
なった。通常 CI 患者(以下通常 CI)は機能面・ADL 面と
もに改善率が初期から中間にかけて大きかった。通常 CI
と比較して失行 CI では ADL 面は同様の結果だったが、
STEF・WMFT では改善率が中間から最終で大きかった。
【 考察 】失行症状のある患者に CI 療法を行い、通常の CI
療法と同様に麻痺側上肢の機能改善がみられた。失行患者
は自分がどのような動きをしているかなど「病態への気
づき」を得る経験が低下していると推測される。また失
行に対して行為を自発的に行わせることが効果維持に有用
であるとされている。今回の CI 療法において失行を考慮
した訓練を取り入れたことで、行為のメカニズムが強化さ
れ、ADL で麻痺側を使用することへの意識の向上、機能
改善につながったと考えられる。一方機能面の改善におい
て通常 CI に比べ失行 CI では機能向上に汎化されるまで
に時間を要した。これは状態の認識をするのに時間を要し
たが、集中的なフィードバックにより動作の再学習を強化
した結果、失行症状による動作の拙劣さが改善したと考え
られる。今後はより気づきを得る経験を多く取り入れるこ
と・長期間行うことで汎化に影響を及ぼすかを検討してい
きたい。
図 1 重症心身障害児( 重症児 )を養育する家族のエンパワメントプロセス
― 不安とニーズの変化に照らし合わせて ―
─ 26 ─
1頁2演題
S1 - 1
S1 - 2
RB に着目した新規癌分子診断システムと
分子標的薬の開発
がんの免疫療法
−基礎研究から POC 臨床試験へ−
○酒井 敏行
○珠玖 洋
京都府立医科大学 分子標的癌予防医学
S1 - 3
S1 - 4
テロメラーゼ活性を標的とする
ウイルス製剤の癌診断・治療への応用
HB-EGF を標的とした卵巣癌治療薬の開発
○藤原 俊義 1)、浦田 泰生 2)
○宮本 新吾
1 )岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 消化器外科学、
2 )オンコリスバイオファーマ㈱
三重大学大学院医学系研究科
がんワクチン治療学/遺伝子・免疫細胞治療学
分子生物学の進歩により、発癌原因はかなりの部
最近の、生体内における T 細胞免疫応答の分子
分まで明らかにされてきた。その中でも最も本質的
機構の研究成果、およびそれを取り入れた悪性腫瘍
な原因は細胞周期の異常である。すなわち、G1 期
細胞に対する免疫の理解と解析は、がんの免疫的治
における R ポイントにおいて癌抑制遺伝子 RB が
療の新しい科学的基礎を作りつつある。腫瘍拒絶に
+
は T 細胞が重要であることが示され、CD8 T 細
ことが、発癌において最も重要であることが判明し
胞は
ている。
る、いわゆるキラー T 細胞(別名細胞障害性 T 細胞、
の実験系で腫瘍細胞を特異的に破壊す
+
私達はそこに注目し、RB 蛋白を失活させるサイ
CTL)であり、CD4 T 細胞は他の免疫応答を増強
クリン依存性キナーゼ(cdk)活性を定量化できれ
又は制御する多彩な機能を示す細胞集団であること
ば、癌の診断、予後診断、薬剤感受性診断に用いう
が示された。今回、腫瘍に対する T 細胞免疫応答
る可能性を考え、シスメックス株式会社と C2P と
に関する研究の最近の進歩と動向についてご紹介す
いう診断システムを構築した。その結果、C2P は
ると共に、私共が開発を進めて来たがんに対する免
上記の診断に有用であることが示されたので、その
疫的治療法の可能性についてお話ししたい。
一部を紹介する。
研究の展開として進める臨床試験は、基礎的な研
また、失活した RB 蛋白を再活性化させる薬剤ス
究成果を臨床に応用するという意味で重要であると
クリーニングを、JT 医薬総合研究所、中外製薬、
共に、ワクチンを受けたヒト個体における他では得
アステラス製薬などと、それぞれ p15、p27、p21
られない免疫学研究の機会を提供し得ることを意味
発現増強物質のスクリーニング系を用いて行った結
している。
果、フェーズ 3 に入った MEK 阻害剤、フェーズ 1
実験的な意味合いの濃いこれらの臨床試験は、ト
に入った Raf/MEK 阻害剤、前臨床の HDAC 阻害
ランスレーショナルリサーチ(探索的臨床研究)と
剤を見出すことができた。
呼ばれ、幅広い研究領域での新しい治療法の開発に
これらの私達独自のスクリーニングコンセプトと、
は不可避の検討手法及び段階であり、がんの免疫的
最近の臨床試験の結果を紹介する。
治療研究もその典型的な一つである。
我が国ではこれまで新しい治療の開発がほとんど
製薬企業等に担われてきたこともあり、アカデミック
な研究を臨床研究へと展開させるための環境があま
り整備されてこなかった。我々のがん免疫療法の臨
床試験が直面してきた種々の問題を含め、我が国で
ウイルスによる腫瘍融解療法(Oncolytic viro-
医学の発展に伴い癌治療は刻々と変化している。
therapy)は、新たな癌治療戦略として積極的に開発
従来の手術、放射線療法、化学療法に加え、最近で
が進められている。ウイルスは、本来ヒトの細胞に
はグリベック、リツキサン、アバスチン等の分子標
感染して増殖複製し、その細胞を様々な機序により
的薬の登場が癌治療の世界に大きなインパクトを与
破壊する。遺伝子工学技術によりこの増殖機能に選
えている。これらの治療法は副作用が少ないと考え
択性を付加することにより、ウイルスを癌細胞のみ
られ、癌治療の標準療法として他の治療法との組み
を傷害する治療用医薬品として用いることが可能と
合わせで広く使用される可能性があり、10 年後に
なる。テロメラーゼは多くのヒト悪性腫瘍でその活
は癌治療において一つのカテゴリーとして確立する
性の上昇が認められており、活発な増殖能を反映し
ことが期待されている。我々は癌増殖機構において
ていると考えられている。われわれは、アデノウイ
重要な役割を果たすヘパリン結合性 EGF 様成長因
ルス 5 型を基本骨格とし、ウイルス増殖に必須の E1
子(HB-EGF)が卵巣癌において標的分子となるこ
遺伝子をテロメラーゼ・プロモーターで制御するこ
とを見出し、その特異的抑制剤である BK-UM を
とで、腫瘍融解ウイルス製剤 Telomelysin(OBP-
用いて、薬事法及び「医薬品の臨床試験の実施の
301)を開発した。基礎実験にて、Telomelysin 感染
基準に関する省令」ならびに関連通知を遵守した
は放射線による DNA 修復を阻害することで、放射
進行・再発卵巣癌に対する第Ⅰ相臨床試験を平成
線感受性を増強していることが明らかとなった。米
19 年 12 月より開始した。目的は BK-UM のヒトで
国で固形癌に対する Telomelysin 単独投与による第
の安全性の立証と BK-UM 投与による標的分子
I 相臨床試験が終了し、本邦では放射線治療を併用
HB-EGF の抑制(POC:Proof of Concept)であり、
する臨床研究が準備中である。Telomelysin に GFP
現在治験を終了し、推奨用量を決定することと標的
蛍光遺伝子を搭載した TelomeScan(OBP-401)は、
分子 HB-EGF の発現の低下(POC)を認めた。以
診断用医薬品としても応用可能である。体外では循
上の結果より、BK-UM は卵巣癌治療薬として有
環癌細胞(circulating tumor cells;CTC)を高率に
望であり、現在実施中の第 I 相試験の終了と続く第
検出することができ、体内投与では蛍光検出携帯プ
Ⅱ相試験を早期に終了し、実用化・製品化を図る予
ローブあるいは鏡視下手術用ビデオスコープにより
定である。
微小癌を可視化する外科ナビゲーション・システム
となりうる。これらのウイルス製剤のトランスレー
ショナル・リサーチの基盤となる基礎研究およびそ
の臨床応用の現状を紹介する。
開発研究としてのトランスレーショナルリサーチを進
める際の課題と基盤整備についてもお話ししたい。
― 26 ―
― 26 ―
― 27 ―
― 27 ―
シンポジウム ❶
シンポジウム ❶
失活することにより、無限の細胞増殖を引き起こす
福岡大学 医学部 産婦人科
1頁2演題:上下
O-1
O-3
血清補体価( CH 50 )測定試薬の比較検討
○吉田 雅紀 1)、脇坂 勇輝 1)、福田 佳織 1)、上野 真祐 1)、中本 和男 1)、胡内 久美子 1)、宗川 義嗣 1)、
梅木 弥生 2)
○西山 有紀子 1)、吉田 賢司 2)、山本 千穂 1)、田中 美智男 1)、高倉 俊二 1)、一山 智 1)
1 )京都大学医学部付属病院 検査部、2 )株式会社日本凍結乾燥研究所
1 )奈良県立奈良病院、2 )奈良県立三室病院
【 目的 】血清補体価(CH50)は補体の古典経路における総
5)評価項目と方法:a. 同時再現性(2 濃度、10 回連続測定)
、
合的な活性の指標である。現在は一般的に自動分析装置で
b. 日差再現性(2 濃度、7 日間測定)
、c. 希釈直線性(2
測定されており、そのための試薬は原法である Mayer の
濃度、10 段階希釈)
、d. 共存物資の影響、e. Mayer 変
50% 溶血法の変法を基準として調整されているといわれ
法との相関および測定値の乖離。
ている。今回われわれは、市販の 3 社の自動分析装置用
【 結果および考察 】同時再現性は変動係数(CV)1.5%以内、
CH50 試薬の基礎的性能について比較検討をおこなったの
日差再現性は CV2.3% 以内と良好であった。希釈直線性
で報告する。
は理論値に対しての相対 % が B 法、D 法は 10% 以内、W
【 材料および方法 】
1)材料:当院に CH50 の依頼のあった臨床検体約 200 例。
Mayer 変 法 と の 相 関 に つ い て、B 法 は 相 関 係 数(r)
2)試薬:a. Mayer 変法(日本凍結乾燥研究所)
、b. 免疫濁
=0.960、D 法は r=0.918、W 法は r=0.920 とほぼ良好で
度測定法:CH50 オート「KW」
(日本ビーシージー製
あった。測定範囲を拡大しても、B 法は r=0.971、D 法は
造㈱、以下 B 法)
、オート CH50「生研」
(デンカ生研
r=0.958 と良好であった。Mayer 変法の測定値に対して
㈱、以下 D 法)c. リポソーム免疫測定方法:HA テス
30% 以上の乖離を示したのは B 法 3 例、D 法 2 例、W 法
トワコー
(和光純薬工業㈱、以下 W 法)
。
13 例で、ほとんどが高値に乖離していたが、明らかな原
査目的で 2010 年 1 月当院受診。当院 CEA 値は基準値範囲
の識別が出来る系と出来ない系がある。ケミルミ ACS-
内であった。CT・MRI では、CEA が上昇する臨床所見
CEA では、CEA 特異部分のみを測定しているが、アー
はなかったが CEA 値に乖離があった為、担当医師より問
キテクト・CEA では CEA 特異部分と NAC-2 とよく交
い合わせがあり、検討を行った。
叉反応を示す。この反応物質の違いから測定結果に乖離が
生じたと考えられる。今後この様な症例があった場合には、
ACS-CEA(シーメンス)
」紹介病院:ARCHITECT アナ
臨床との連携を重視し、臨床所見と乖離データとの関係に
ライザー「アーキテクト・CEA(アボットジャパン)
」共
ついて集積に努めたい。
連絡先:奈良県立奈良病院 0742-46-6001( 内線 2358)
安定した ProGRP 測定値を得るための検体保存条件
○増田 千紘、山本 章史、栗原 有紀子、髭野 明美、井戸田 篤
地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター臨床検査科
た。この 7 例は異常値が病態に基づくものと判断しその旨
とは困難である。しかし、非特異反応を疑う症例に遭遇し
を報告した。主治医の対処を追跡調査したところ、5 例は
た場合は速やかに検証することが必要となる。今回、当院
何かしらの対処がなされていたが、2 例はその後の患者の
における過去 5 年間の非特異反応の成績をまとめ、報告後
来院歴がなく追跡不可であった。5 例中 3 例は腫瘍マー
の追跡調査を行った。
カーで、うち 2 例(α- フェトプロテインと CEA)は報告
【 対象および方法 】対象は 2005 年から 2010 年に確認試験
3 ヵ月後に腫瘍が発見され、残り 1 例(CA19-9)は画像診
を実施した 17 例であった。17 例の内訳を調査し、非特異
断にてフォロー中であった。5 例中 2 例はホルモンで、1
反応を示さなかった症例について報告後の経過を追った。
例(TSH 高値)は報告後すぐに治療が開始された。残りの
【 非特異反応確認方法 】非特異反応の確認方法は、まず希
1 例(インスリン)は報告によりインスリン自己免疫症候
応の有無を確認した。
データの信頼性を保証するだけでなく、その後の診断につ
実施でき、積極的に行い報告することは意味があった。
および画像診断や臨床症状との不一致のため医師からの問
【 結語 】非特異反応であるか、あるいは病態に基づいた結
い合わせが 8 例であった。確認試験の結果、非特異反応を
果であるかを判断して報告することは大変有用であった。
じめ、24 時間後では約 30% の低下となり、その後も低下
(NSE)に比較し、病期の早い時期から検出可能であり、
し続けた。-20℃では 2 時間後に約 5%の低下を認めたが、
溶血の影響を受けにくいなどの特徴を有する。ProGRP は、
その後の変化はみられなかった。血漿検体(EDTA-2Na)
血清中に存在する活性化したトロンビンにより分解され、
は、室温、4℃、-20℃共に 48 時間後までは有意な測定値
低値を示すことが報告されている。今回我々は、安定した
低下は認められなかったが、室温保存の 72 時間後では 8%
の低下を認めた。また、4℃、-20℃共に 2 時間後に約 5%
の低下が認められた。
【 対象・方法 】当センター職員 10 名から採血した血清及び
【 まとめ 】ProGRP の測定は、血清検体を用いた場合、保
血漿を対象とした。測定検体は採血後 30 分以内に遠心
存条件によって測定値が大幅に低下することが確認された。
(3000rpm 10 分間)し、分離後直ちに測定を行い、比較の
ながることを認識した。確認試験は特別な装置がなくても
前回値との乖離や関連項目とのバランスから疑った 9 例、
86%低下した。4℃保存では 4 時間後から徐々に低下しは
どに用いる腫瘍マーカーである。神経特異エノラーゼ
検討を行い許容される最適条件の探索を行った。
【 考察 】説明のつかない異常値が非特異反応であるか、あ
るいは病態に基づくものかを判断して報告することは、
24 時間後で約 70%、48 時間後で約 80%、72 時間後で約
(ProGRP)は、小細胞肺癌の診断補助や治療の経過観察な
ProGRP 測定値を得るため、被検材料種および保存条件の
群が否定された。
ラミニダーゼ処理、熱処理、酸処理のいずれかで非特異反
【は じ め に】血 中 ガ ス ト リ ン 放 出 ペ プ チ ド 前 駆 体
また、血漿検体では保存条件による測定値の大きな差は認
基準とした。検体をそれぞれ常温、4℃、-20℃の条件下で、
められず、安定した測定値を得ることができた。しかし、
2 ∼ 72 時間保存した場合の ProGRP 値を測定し比較検討
血漿検体であっても長時間の保存ではわずかに低下が認め
を行った。分析装置は ARCHITECT i2000SR(Abbott)
られる。安定した ProGRP 測定値を得るためには、血漿
による化学発光免疫測定法(CLIA)にて測定した。
検体を用い、採血後早期に測定することが重要である。
【 結果 】血清検体は、室温放置の場合、2 時間後で約 15%、
連絡先:06-6972-1181( 3411)
4 時間後で約 28%、6 時間後で約 30%、8 時間後で約 40%、
連絡先:0743-63-5611( 内線 7439)
─ 126 ─
─ 127 ─
─ 127 ─
1頁3演題:上下
OA-3:DNA 損傷・修復( 3 ) OA-3-1 ∼ 3-5
座長:細井 義夫(広島大 )
OA-3-1
11 月 19 日( 土 ) 11:00 − 12:00 D 会場
試験管内転写反応に対する DNA- タンパク質クロスリンク損傷の阻害効果
OA-3-4
〇大内 綾、中野 敏彰、川添 淳也、井出 博
た生成物バンドは認められなかったが、runoff 生成物の生成量はコ
ントロールに比べ約半分に減少した。以上の結果から、転写鎖の
DPC は T7RNP の進行を強く阻害するが、鎖伸長は完全には止ま
らず DPC を乗り越えて合成が起こることが明らかとなった。また、
非転写鎖の DPC は T7RNP の進行速度を低下させる可能性が示唆
された。DPC に由来する転写エラーを調べるため runoff 生成物の
塩基配列を解析している。
DNA 損傷、転写、T7 RNA ポリメラーゼ
Nbs1 と Ku70 の二重欠損細胞における DNA 損傷への応答
OA-3-5
〇大原 麻希、阿部 紘子、田中 彩、井坂 早央里、戸松 静香、田内 広
ユビキチン化と FANCI のリン酸化も激減した。
キナーゼ
反応では、ATR が FANCI をリン酸化することが分かり、このリ
ン酸化は FANCD2 の存在下で増強された。さらに、我々は、同細
胞で ATRIP をノックアウトしたうえに、RPA との結合部位を欠
損した ATRIP の変異体を発現させた場合には、FANCD2 のモノ
ユビキチン化が低下するのに対し、TopBP1 との結合部位に点変異
をもった ATRIP の変異体を発現させた場合には、モノユビキチン
化 に 影 響 が な い こ と を 見 出 し た。こ れ ら の 結 果 か ら、ATRATRIP キナーゼ複合体が、TopBP1 を介したチェックポイントシ
グナルとは独立した機構で、ファンコニ貧血経路の活性化に重要な
働きをもつことが示された。
ファンコニ貧血、ATR-ATRIP キナーゼ複合体、FancI のリン酸化
メダカにおける DNA-PK 機能、制御機構の解析
〇漆原 佑介 1)、小林 純也 2)、小松 賢志 2)、尾田 正二 1)、三谷 啓志 1)
茨城大学 理学部 生物科学
1 )東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 動物生殖システム研究室、2 )京都大学 放射線生物研究センター ゲノム動態研究部門
放射線照射により生じる DNA 二重鎖切断(DSB)は細胞にとっ
て最も重篤な DNA 損傷であり、うまく修復されなかった場合には
突然変異や細胞死を誘発し、がん化の原因にもなる。DSB 修復に
は複数の修復経路が報告されているが、相同組換え(HR)修復と非
相同末端結合(NHEJ)が主要な経路と考えられている。
本研究では、HR と NHEJ の両経路が欠損した細胞の放射線誘発
DNA 損傷応答を明らかにするため、HR 修復に関与する Nbs1 と
NHEJ に関与する Ku70 のダブルノックアウト細胞を樹立してその
表現型を解析した。
Nbs1/Ku70 ダブルノックアウト細胞はシングルノックアウト細
胞と比べて増殖が遅く放射線に非常に高感受性であり、DSB の再
結合も著しく遅かった。一方で、ダブルノックアウト細胞でも放射
線照射による DSB の 50%近くが再結合されたことから、主要とさ
れてきた HR と NHEJ 以外の経路が DSB 再結合に寄与する割合も
大きいことが強く示唆された。また、Nbs1/Ku70 ダブルノックア
OA-3-3
ファンコニ貧血経路は、蛋白質リン酸化とモノユビキチン化によ
り制御される DNA 損傷シグナル伝達ネットワークで、その異常に
よって稀な小児遺伝性疾患であるファンコニ貧血が発症する。複製
ストレスによるファンコニ貧血経路の活性化の中核となっているの
が、FANCD2 と FANCI のモノユビキチン化である。我々は、以
前の研究で、DNA 損傷後の FANCI のリン酸化が FANCD2 のモ
ノユビキチン化の分子スイッチとして機能していることを明らかに
した。また、ATR をノックダウンもしくは低発現させた細胞では、
DNA 損傷による FANCD2 のモノユビキチン化が低下することが
報告されている。我々は、ATR-ATRIP キナーゼ複合体がファン
コニ貧血経路の活性化に関与するのかを検討するために、ATRIP
の ATR 結合部位をコードするエクソンをコンディショナルにノッ
クアウトするニワトリ DT40 細胞を作成した。タモキシフェン投
与によって ATRIP をノックアウトすると、ATRIP の発現はほぼ
完全に消失し、マイトマイシン C で誘導される FANCD2 のモノ
ウト細胞は DNA 損傷剤であるカンプトテシンにも高感受性であり、
同様の HR と NHEJ 欠損である Rad54/Ku70 ダブルノックアウト
細胞と比べて感受性が高かった。以上のことから、典型的な HR と
NHEJ 以外の DNA 損傷修復経路に Nbs1 が関与すると考えられる。
DNA 修復、Nbs1、相同組換え
NBS1 部分的抑制が相同組換えに与える影響
DNA-PK は DSB 修復初期に働く因子として知られ、多くの
DSB 修復因子との関係が報告されているが、未だにその機能の全
ては明らかとなっていない。放射線感受性変異体メダカ RIC1 系統
は、これまでに放射線照射後の H2AX のリン酸化に異常を持つこ
とが明らかとなっている。RIC1 における H2AX リン酸化の異常が、
H2AX のリン酸化を担う ATM もしくは DNA-PK の異常による
ものなのかを検証するため、ATM、DNA-PK 各阻害剤処理後の
H2AX リン酸化度合いを野生型系統と RIC1 で比較した。その結果、
野生株と異なり RIC1 では DNA-PK 阻害による H2AX リン酸化
の低下がみられなかった。このことから、RIC1 では DNA-PK の
異常が H2AX リン酸化の異常をもたらしているが示唆された。こ
れまでに、RIC1 では DSB 修復経路の一つである Homologous
recombination(HR)経路を介した修復能が低下していることが明
らかとなっている。そこで次に、RIC1 の HR 修復能の低下が
DNA-PK の異常からもたらされているのかを検証するため、
ATM、DNA-PK 各阻害剤処理後の HR、NHEJ 修復能を解析した。
その結果、野生株では DNA-PK 阻害によって HR 修復能の低下が
みられたが、RIC1 ではみられなかった。このことから、RIC1 で
は DNA-PK 機能の異常が H2AX リン酸化の異常、HR 修復能の
低下をもたらしていることが示唆された。これらの結果から、
原因遺伝子は DNA-PK 機能に関わる因子であることが考えられる
が、RIC1 では DNA-PK 機能に異常を持つマウスやヒト細胞の示
す表現型とは異なる点が多く存在することから、DNA-PK を制御
する新規因子であることが期待される。また今回、メダカではマウ
スやヒトとは異なり、DNA-PK が DSB 後の H2AX リン酸化に大
きく寄与することが明らかとなった。これらに加えて、各修復因子
の挙動解析の結果から、メダカにおける DNA-PK 機能、制御と
原因遺伝子機能について考察する。
〇宮本 智弘 1)、船生 悠美 1)、関 良太 1)、飯島 健太 1)、坂本 修一 2)、小松 賢志 2)、田内 広 1)
1 )茨城大学 理学部 生物科学、2 )京都大学 放射線生物研究センター
放射線は DNA 二重鎖切断(DSBs)を効率的に誘発する。DSBs
を修復する経路には相同組換え(HR)および非相同末端結合
(NHEJ)の少なくとも二つの経路がある。HR は修復の鋳型として
姉妹染色分体を必要とするため、細胞周期の S 期後半から G2 にか
けて働くと考えられる。MRN(MRE11/RAD50/NBS1)複合体の
構成因子である NBS1 は、HR 経路において中心的な役割を担う。
今回、我々は、NBS1 機能の部分的抑制が HR にどのような影響を
与えるかを調べた。変異型 NBS1 を作成し、HeLa または MRC5
細胞へ導入し、細胞内での変異 NBS1 の発現が放射線誘発フォー
カス形成の部分的抑制を起こし、HR 頻度を有意に減少させること
を見出した。さらに、変異型 NBS1 を発現している細胞の放射線
感受性について調べたところ、野生型 NBS1 を発現している細胞
と比べて X 線に対してわずかに感受性であったが、分割照射を行
うと放射線感受性の差は顕著になった。これらの結果は、NBS1 機
能の部分的抑制が HR 経路において、内在性 NBS1 に対するドミ
ナントネガティブな効果を示し、亜致死損傷からの回復を抑制する
ことを示唆するものである。
― 94 ―
相同組換え、NBS1、DNA 修復
― 95 ―
メダカ、DNA 二本鎖切断修復機構、DNA-PK
一般演題︵ 口頭発表 ︶
一般演題︵ 口頭発表 ︶
A
1 )京都大学 放射線生物研究センター DNA 損傷シグナル分野、2 )九州大学大学院 消化器・総合外科、3 )早稲田大学大学院 先進理工、4 )金沢大学 がん研
電離放射線は、酸化塩基損傷や鎖切断などのゲノム損傷を誘発し、
それぞれ塩基除去修復および組換え修復により修復される。これら
の損傷に加え、電離放射線は DNA- タンパク質クロスリンク
(DPC)を誘発する。我々は、これまでに DPC 修復機構を検討し、
大腸菌ではヌクレオチド除去修復と相同組換えが協調して働くこと、
哺乳類では相同組換えのみが働くことを明らかにした。DPC は、
従来の bulky な損傷(pyrimidine dimer, aromatic adduct)と比べ
かさ高く、転写および複製装置の進行を強く阻害すると予想される
が実験的な証拠は少ない。本研究では、試験管内転写反応に対する
DPC の影響を検討した。反応は T7 RNA polymerase( T7RNAP)
を用いて行い、転写産物は変性 PAGE で分析した。転写鎖に DPC
を含む鋳型では、DPC 部位で RNA 合成が停止した強い生成物バ
ンドと弱い runoff 生成物バンドが認められた。runoff 生成物の生成
量はクロスリンクタンパク質のサイズ増加とともに減少した。一方、
非転写鎖に DPC を含む鋳型では、DPC 部位で RNA 合成が停止し
OA-3-2
複製ストレスによるファンコニ貧血経路の活性化には、ATR-ATRIP キナーゼ複合体が必須である
〇茂地 智子 1, 2)、冨田 純也 1)、佐藤 浩一 3)、小林 昌彦 4)、内田 恵美 1)、山本 健一 4)、胡桃坂 仁志 3)、前原 喜彦 2)、高田 穣 1)
広島大・院理・数理分子生命
A
一 般 演 題
一 般 演 題
免疫反応において、非特異的な反応を完全に回避するこ
─ 126 ─
者来院予定の為、その他の検討を行う予定である。
【 まとめ 】CEA は測定系により、CEA と CEA 関連抗原
O-4
天理よろづ相談所病院
示したのは 17 例中 10 例で、7 例は非特異反応を示さなかっ
104.7%(アーキテクト・CEA)であった。次回 9 月 1 日患
除術施行。OPE 後紹介病院で Follow 中 CEA 値上昇、精
ケミルミ ACS- CEA:1.66ng/㎖
○藤川 麻由美、伊東 裕之、畑中 徳子、山本 慶和、松尾 収二
【 結果 】17 例の確認試験実施に至った経緯は、担当技師が
CEA の 回 収 率 は、99.4%(ケ ミ ル ミ ACS- CEA)
、
【 検討結果 】それぞれの測定結果を示す。
当院の免疫反応における非特異反応の成績と確認試験を実施した症例の追跡調査
疫グロブリン除去試験を行った。次に測定項目によりノイ
②酢酸バッファー添加後 70℃15 分加熱処理後検体
によって大きく乖離した症例を経験したので報告する。
に化学発光免疫測定法(CLIA)を原理としている。
た。B 法と D 法は測定範囲の拡大が可能な点が優れていた。
釈直線性確認試験かつポリエチレングリコールを用いた免
①酢酸バッファー添加後室温 15 分後検体
メーカー間差がある。今回、CEA 値が測定試薬メーカー
【 測 定 機 器・ 試 薬 】 当 院:ADVIAcentaur「ケ ミ ル ミ
概ね良好な結果が得られ、CH50 の日常検査に有用であっ
4)機器:TBA-200FR-NEO(東芝)
。
非特異物質除去目的で①・②の検体を測定した。
つであるが、CEA 類似物質のとらえ方により CEA 値に
6 月上行結腸癌 OPE 目的で当院紹介、腹腔鏡下右結腸切
【 結語 】3 社の自動分析用試薬は今回の基礎検討において
4.4 ∼ 120, 4.7 ∼ 75U/㎖まで測定範囲を拡大)
アーキテクト・CEA:79.00ng/㎖
効果測定など臨床的有効性は高く重要な腫瘍マーカーの一
【 症例 】70 代後半男性。既往歴は高血圧、糖尿病。2008 年
因は不明であった。
10 ∼ 60U/㎖(B 法と D 法は血清の希釈・増量にて各々
O-2
【 はじめに 】CEA の測定は、癌の診断・経過観察・治療
法は 15%以内であった。共存物質の影響は認めなかった。
3)測定範囲:B 法 11 ∼ 60U/㎖, D 法 14 ∼ 60U/㎖, W 法
CEA が測定試薬によって乖離した症例
1頁4演題
口頭発表 第
口頭発表
01
口頭発表
02
酢酸菌のゲノム易変異性
P-002
日目
1
P-063
一般演題 1
転写開始点の塩基種に依存した枯草菌の
緊縮転写制御ネットワークの解明
○東 慶直 1)、古谷直子 1)、細山 哲 2)、松谷峰之介 1,3)、
平川英樹 4)、松下一信 3)、久原 哲 4)、藤田信之 2)、白井睦訓 1)
1 )山口大院・医・ゲノム機能分子、2 )製品評価機構、
3 )山口大院・農、4 )九大院・生物資源
○東條繁郎、広岡和丈、藤田泰太郎
酢酸菌は花や果実などに広く分布するα-proteobacteria で、
食酢醸造槽からも主要発酵菌として分離される。アルコールや酢
酸に対する高い耐性、バイオポリマー生成など多彩な特徴を持つ
一方で、その形質は継代培養によって変化しやすい。我々は酢酸
菌が有する有用遺伝子の発掘と形質の易変異性の解明を目的とし
て、本邦伝統的酢酸発酵菌
とセルロー
ス合成能を特徴とする
の全ゲノム
DNA 配列を解読した。
は、計算上約 2000 世代
継代培養される間に形成された複合菌群を用いて全ゲノム DNA
配列を決定した。酢酸菌のゲノム易変異性の要因として、全遺伝
子の数%にもおよぶトランスポゾン、複数のプラスミド、複製関
連遺伝子などに極めて高変異速度のマイクロサテライトが観察さ
れた。さらに、致死高温環境へ適応させた高温耐性株を樹立し全
ゲノム配列を決定した。複製終結点に観察された約 90kbp の大
規模な欠落のみが高温適応の確立直前に起きたことから、この培
養環境において不要であるゲノム領域の欠落が複製コストの低減
に繋がったと考えられる。本学会では以上の
と
のゲノム解析、類縁菌種間での比較ゲノム解析結果に
ついて詳細に報告する。
枯草菌の緊縮転写制御には、窒素代謝制御因子である CodY
に依存性のものと非依存性のものと 2 種の制御系があることを明
らかにしている。後者は、アミノ酸飢餓等により活性化する
RelA が合成する ppGpp による IMP 脱水素酵素の阻害により引
き起こされる GTP 濃度の低下と ATP 濃度の上昇が、直接 RNA
ポリメラーゼの転写開始反応を転写開始点のプリン塩基種に依存
して制御する。このヌクレオチド濃度に依存する制御系は、転写
開始点が A であれば正に、G であれば負の制御になることを塩
基置換実験により明らかにした。
この緊縮転写制御ネットワークを解明しようと DNA マイクロ
アレイ解析とメタボローム解析を遂行したところ、プリンヌクレ
オチド濃度に依存した緊縮制御が広範な RNA あるいは蛋白質遺
伝子の発現制御に関わっていることが明らかになった。この緊縮
制御では、リボソーム RNA と蛋白質が極度に抑制され、またア
ミノ酸合成系遺伝子が活性化される。これにともない炭素代謝で
は、グルコースの取り込み系とアセチル Co-A 合成系が抑制され、
菌体内に蓄積するピルビン酸を分岐鎖アミノ酸、アセトインやオ
キサロ酢酸への合成系を活性化することにより、その蓄積を解除
していた。この転写制御の基層を形成すると思われる転写制御因
子の絡まない緊縮制御が、枯草菌たぶんグラム陽性の低 GC 細菌
全般の緊縮制御に大きな役割を演じていると推察できた。
口頭発表
口頭発表
O-001
○藤井 智浩、宮地 禎幸、月森 翔平、清水 真次朗、福元 和彦、
海部 三香子、原 綾英、常 義政、横山 光彦、永井 敦
福山大・生命工学
03
P-006
○岩﨑裕貴、阿部貴志、伊藤正恵、和田健之介、池村淑道
長浜バイオ大学
04
P-012
一般演題 1
O-002
当院における根治的前立腺摘除術の臨床的検討
− 内視鏡下小切開手術への取り組み−
○新 良治、瀬野 祐子、津島 知靖
国立病院機構 岡山医療センター 泌尿器科
川崎医科大学 泌尿器科
【 目的 】2009 年 12 月より腹腔鏡下前立腺全摘除術(LRP)を開
始し、2010 年 6 月の時点で 14 例に施行した。今回 LRP の初期
成績について検討した。
【 対象 】手術法は全例腹膜外アプローチにて行った。年齢は
66-79( 中央値 70)歳、BMI は 20.5-26.4( 中央値 22.3)
、診断
時 PSA 値 4.7-16.3( 中 央 値 6.7)ng/㎖、 臨 床 病 期 は T1c/
T2a/T2b:3/5/6 例、生検時の Gleason score は 6 以下 /7/8
以上:6/7/1 例、前立腺容量は 11-45( 中央値 22)㎖であった。
LRP 導入前の恥骨後式根治的前立腺全摘術(RRP)の 26 例と
比較検討した。
【 結果 】手術時間は 214-630( 中央値 402)分で RRP と比較し
有意に長かった。出血量は尿込み 100-5300( 中央値 1300)㎖
で 11 例に自己血輸血(1 例は同種血併用)を施行した。術中直
腸損傷を含めた合併症は認めず、術後に吻合部縫合不全とリン
パ嚢腫の合併を 1 例に認めたが保存的に改善した。被膜浸潤は
3 例に認めた。切除断端陽性は 2 例(14.3%)で、うち尿道断端
は 1 例(7.1%)と RRP のそれぞれ 11 例(42.3%)
、7 例(26.9%)
に比較し有意ではないが少ない傾向にあった。カテーテル留置
期間は 5-21( 中央値 6)日であった。術後入院日数は中央値 9
日で RRP の 14 日と比し有意に短かった。
【 考察 】まだ症例数が少なく learning curve の途中であるが、
尿道断端陽性例が少なかった。LRP は拡大視野での前立腺尖
部の処置が可能であるという長所を生かすことで、良好な
cancer control が期待できる術式であると考えられた。
一般演題 1
新規情報学的手法によるインフルエンザ A ウイルス
の俯瞰的可視化及び新型 H1N1 の変化予測
当院における腹腔鏡下前立腺全摘除術の
初期成績
O-003
次世代シーケンサ SOLiD3 システムを用いた
泡盛実用黒麹菌の比較ゲノム解析
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術の
初期経験
○宮本 克利、小畠 浩平、郷力 昭宏、岩本 秀雄、沖 真実、
正路 晃一、増本 弘史、井上 省吾、大原 慎也、小林 加直、
梶原 充、亭島 淳、松原 昭郎
○鼠尾まい子 1, 2)、塚原正俊 1, 2)、照屋盛実 3, 2)、喜久里育也 4, 2)、
藤森一浩 5, 2)、今田有美 1, 2)、小池英明 5, 2)、矢野修一 1, 2)、
佐藤友紀 4, 2)、三輪友希乃 1, 2)、照屋邦子 4, 2)、城間安紀乃 4, 2)、
神野浩二 6)、堀川博司 6)、細山 哲 6)、藤田信之 6)、
町田雅之 5, 2)、平野 隆 5, 2)
1 )TTC、2 )沖縄先端ゲノム、3 )沖縄工技セ、4 )OSTC、
5 )産総研、6 )NITE
広島大学 大学院 医歯薬学総合研究科 腎泌尿器科学
【 目的 】da Vinci(Intuitive surgical 社)を使用したロボット
支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(robotic-assisted laparoscopic
radical prostatectomy:RALP)を導入したので手術成績を報
告する。
【 対象と方法 】2010 年 5 月から 6 月までに RALP を 5 例施行し
た。年齢 61-76( 中央値 67)歳、BMI23.8-28.1( 中央値 24.6)
、
術前血清 PSA 5.21-8.02( 中央値 5.49)ng/㎖ で、病期は T1c
4 例、T2a 1 例であった。手術は全身麻酔下に砕石位で 30°の
頭低位にて経腹膜的に施行した。ポートは計 6 本で、
カメラポー
ト(10㎜)
、da Vinci 用ポート(8㎜)3 本、助手用ポート 2 本を
使用した。
【 結果 】全例において開放手術への移行を認めず RALP を完遂
した。手術時間は 297-682( 中央値 383)分、console time は
232-621( 中央値 326)分、setup time は 33-61( 中央値 41)分。
術中出血量(尿込み)は 350-2000( 中央値 700)
㎖で、全例に輸
血を必要としなかった。全例術翌日に体動し、5 分粥以上の食
事開始は術後 1-3( 中央値 1)日で、カテーテル留置期間は
5-12( 中央値 6)日であった。病理組織学的所見は、pT2 が 4
例で、pT3 が 1 例で、断端陽性を 2 例に認めた。
【 結語 】RALP は出血量が少なく、前立腺尖部の細かい処置が
良好な視野のもと可能であり、有用な術式と考えられた。
インフルエンザ A ウイルスは RNA ウイルスで、複製には自
身の RNA ポリメラーゼを使用しており変異を起こしやすい。ゲ
沖縄県の伝統的蒸留酒「泡盛」の醸造には通常複数の黒麹菌
ノム配列の頻繁な変化を繰り返しており、宿主免疫からの逃避を
株が用いられる。これまでに、これらの黒麹菌株は醸造上異なる
可能にし、特定の部位のアミノ酸が変化することで様々な薬剤の
特性を示すと共に、最終産物である泡盛風味への影響が異なるこ
耐性を獲得してきた。2009 年の 4 月から流行が始まった新型
とを明らかにしてきた。また、これらの泡盛黒麹菌株について、
H1N1 についても半年で耐性株が確認されている。新たな抗イン
などを含む系統分類も興味深い。そこで、複
フルエンザ薬が登場してもいずれは耐性株が出現し、前年のワク
数の泡盛黒麹菌株について次世代シーケンサ SOLiD を用いたゲ
チンも効果があるとは限らない。これらに対応するためには、ウ
ノム全体の比較解析を進めている。
イルスゲノムの配列が変化する方向性を把握し、どのような変化
【 方法・結果 】複数の
(寄託機関菌株、泡盛醸造に用
を起こすかを予想することが重要となる。ヒトへの新たな感染を
いられている実用菌株)について SOLiD での解析を行った。得
起こす危険性のある、トリやブタインフルエンザ株の予測も重要
られたデータ間および既報の
などのデータと比較解析
である。これらの予測を行うには、可能なかぎり多くの株を対象
を行うことで、
と
間には比較的大きな配列
にした大規模解析が容易で、それらからの能率的な知識発見を可
上の違いがあること、各
間では相同性が高いものの
能にする情報学手法が望まれる。
一部顕著に異なる領域が存在することがわかった。今回、2 種類
本研究ではデータベースに登録されている全インフルエンザ
の泡盛実用菌株で大きく異なっている複数の領域に含まれている
A ウイルスを対象に一括学習型自己組織化マップ(BLSOM)解
遺伝子について、詳細な比較を行い、それぞれの菌株のゲノム構
析を行った。BLSOM は強力な可視化機能を備えており、大量か
つ複雑な情報からの能率的な知識発見を可能にする。解析の結果、 造と菌株の特性について考察したので報告したい。
宿主ごとに使用頻度が異なる連続塩基やコドンを検出できた。興
味深いことに、新型 H1N1 はヒト由来株の特徴を、現時点では
十分に獲得しておらず、今後の変化の方向性について予測が可能
になった。
【 目的 】当院では内視鏡を併用し創を徐々に縮小していくこと
で根治的前立腺摘除術の創の縮小に取り組み、現在は 6-7㎝の
小切開にて施行している。当院の手術症例について臨床的検討
を行った。
【 対象と方法 】2005 年 11 月より 2010 年 5 月の間に当院にて内
視鏡下小切開前立腺摘除術を施行した 127 症例を対象とした。
5Fr. の軟性鏡にて術野の観察および記録を行い、基本的には
逆行性に手術を施行した。臨床病期 C 以上の症例は手術対象
としていない。当初は下腹部正中 12㎝の創で手術を開始して
い た が(29 例)
、 時 期 に よ っ て 10㎝(34 例)→ 8㎝(22 例)
→ 6-7㎝(42 例)と創を縮小していった。
【 結果 】手術時年齢は 52-78 歳(中央値 67 歳)
。術前の PSA 値
は 1.86-66.49ng/㎖(中央値 8.15ng/㎖)であった。術前内分泌
療法は 12 例に施行されていた。病理学的病期は T0 が 3 例、
T2 が 92 例、T3a が 25 例、T3b が 7 例、3 例は N1 であった。
24 例(18.9%)が断端陽性であり、5 例では術直後より内分泌療
法を開始した。観察期間中に死亡が確認された症例は 1 例(他
因死)のみであったが、PSA 再発を 7 例(5.7%)に認めた。手
術時間、出血量の中央値は 235 分、600㎖であり、手術時期に
よる差はみられなかった。また、断端陽性率も手術時期による
差はなかった。
【 結語 】当院における根治的前立腺摘除術の臨床的検討を行っ
た。内視鏡を併用し創を徐々に縮小していくことで安全に小切
開手術へ取り組むことができると考えられる。
一般演題 1
O-004
当院における根治的前立腺全摘後の
骨盤内症候性リンパ嚢腫の臨床的検討
○村橋 範浩 1)、関 利盛 1)、佐藤 拓矢 1)、堀田 記世彦 2)、
高田 徳容 1)、望月 端吾 1)、原田 浩 2)、平野 哲夫 2)、
富樫 正樹 1)
1 )市立札幌病院 泌尿器科、2 )市立札幌病院 腎移植外科
【 目的 】骨盤内リンパ嚢腫は骨盤内リンパ節郭清後に起こる合
併症の一つである。今回前立腺全摘後に症候性のリンパ嚢腫と
なった症例を臨床的に検討した。
【 対象と方法 】1991 年 4 月から 2010 年 3 月までに前立腺癌と診
断され当院で開腹根治的前立腺全摘術および両側閉鎖リンパ郭
清を行った 396 例のうち腹満感、下腹部痛、下肢の浮腫などの
症状からリンパ嚢腫を疑い CT、エコーで診断された 19 例
(4.8%)を対象とした。
【 結果 】手術時年齢は中央値 67( 56-76)歳、腹部手術歴あり /
なしが 6/13 例。観察期間中央値 73.5( 0-163)ヶ月であった。
治療前 PSA は中央値 7.9( 1.4-45.6)ng/㎖、前立腺癌の臨床病
期は T1c/T2a-c/T3a-b/T4 が 3/11/6/0 例、Neoadjuvant therapy あり / なしは 5/14 例であった。手術時間は中央値
187.5( 160 265)分、出血量中央値 1050( 550 2575)
㎖。前立
腺全摘後からリンパ嚢腫発症までの期間は中央値 10( 4 150)
日、改善までの期間は中央値 23( 7 169)日であった。治療内
容は無治療経過観察 6 例、経皮的ドレナージ 13 例、2 次的治療
として硬化療法 2 例、3 次的治療として腹腔鏡下開窓術 1 例で
あった。経過観察期間中に再発は認めなかった。
【 結論 】前立腺全摘後の症候性リンパ嚢腫は自然な経過あるい
は保存的治療にて術後数週間で大半が改善することが多いが、
難治例では開窓術は有効な治療であると考えられた。危険因子
に関してはさらに検討を加え報告する予定である。
─ 28 ─
1頁5演題
136
インスリン治療Ⅱ
O-006
1頁8演題
第 1 会場 9:30 ∼ 10:00
第 3 日目 9 月 19 日 B 会場 【 発生 】
座長:山田 太郎 熊本大学医学部 生体制御学講座
基礎インスリン補充を NPH 製剤からレベミル注に変更した 1 型糖尿病患者の使用経験
磯谷内科
○磯谷 治彦
月後増量例あり、減量 1 名。
【 結果 】変更 1 ヶ月後平均
HbA1c7.7%、3 ヶ月後 7.3%であった。夜間早朝の低血糖
の減少 8 名。継続できなかった 2 名は、低血糖の出現例と
コントロール困難となった例であった。
【 結語 】1)低血糖
症状の発現が減少する例が多い。2)コントロール改善の
ためにはレベミルの増量が必要な例があるが、平均
HbA1c の改善が得られた。3)一部の例では NPH を再選
択した。
【 目的 】1 型糖尿病患者で、NPH を基礎インスリン補充に
使用していた患者で、血糖コントロールや低血糖発現の問
題が認められた 10 名に対し、レベミルに変更したので報
告する。
【 方法 】1 型糖尿病患者 10 名(男性 5 名、女性 5
名)
。年齢 44 歳、羅病期間 12 年、眼底:NDR7 名、SDR1
名、PDR2 名。変更前 HbA1c8.0%。NPH と同量のレベ
ミル 1 回投与に変更し 3 ヶ月以上の経過をみた。2 名は当
初レベミル 1 回投与を試みたが途中 2 回投与に変更。3 ヶ
O-007
創傷治癒においてハイイロジネズミオポッサムは生後 9 日辺りで無瘢
痕から瘢痕へ移行する。しかし、
創閉鎖は詳しく研究されていない。我々
はオポッサム生後 15 日背部皮膚に皮膚全層欠損剤を施し、創閉鎖初期
の解析を行った。HE 染色の結果、傷つけ後 48 時間で創部は表皮によっ
て覆われる前に創内部へ侵出した表皮が肥厚化していた。抗ケラチン
(K14, K10)抗体染色の結果、創内部に侵出した細胞と創周辺で肥厚化
した細胞は K14( +)K10( -)細胞であることが示唆された。
差を認めなかった。2. レベミル 1 日 1 回投与に変更した 24
例の変更前後の体重は− 0.46kg 減少、HbA1c は同等、
低血糖減少 38%、インスリン使用量は同量で、8 例で新た
に内服薬併用開始した。
【 考察 】インスリン複数回投与等
から 1 日 1 回投与へ変更して、体重減少傾向、低血糖減少、
同等の血糖コントロールを維持できたため、肥満 2 型糖尿
病患者、高齢者、認知症患者にも有用であると考えられた。
天理よろづ相談所病院
で罹病年数に差有。3)尿中 CPR < 20㎍群で A1c 改善度
有意差有 FPG 下らず、2 回法と強化療法間で A1c 改善度
差なし。4)尿中 CPR > 20㎍ 群で A1c,FPG とも改善。
2 回法と強化療法間で A1c 改善度差なし。
【 考察 】インスリン分泌能低下群で 2 回法と強化療法群間
の A1c-FPG 改善度有意なしであった。早期からインスリ
ン強化療法が血糖コントロール改善にやはりのぞましいと
考えた。
○黒川 理永、岩本 龍哉、井原 亜里砂、山本 浩司、山田 祐也、南 雄三、松澤 佑次
症例は 54 歳女性。46 歳発症の糖尿病で近医加療中、
2007 年 8 月ストレスがあり夕食後飲酒し、経口血糖降下
薬を内服、さらにインスリンリスプロ混合製剤を自己注射
した(単位数不明だがおそらく大量)
。翌日意識混濁し転
倒、救 急 搬 送 さ れ た。来 院 時、軽 度 意 識 障 害 が あ り
PG25㎎/㎗と低血糖を認め入院した。ブドウ糖で補正し、
経口血糖降下薬およびインスリン皮下注を中止、ブドウ糖
を持続点滴、食事摂取、間食をしたが第 4 病日の朝まで低
血糖を繰り返した。遷延する低血糖の病態解析のため血清
IRI 濃度を 2 種類の測定方法で行ったところ、大きく値が
乖離し A 法でのみ高値を示した。そこで両測定法におけ
るアナログインスリンの交叉率について検討した結果、A
法では約 70% アナログインスリンと交叉 LB 法では交叉
しない事が判明した。これにより低血糖の原因がアナログ
インスリンの作用の持続であることを確認した。
アナログ混合インスリン製剤注射後の血中インスリン値の変化
医療法人社団 正名会 池田病院
○宇佐美 勝、井田 健一、清水 祐介、成澤 勇樹、立石 晃子、萬 元宏、柴野 めぐみ、山内 真理、小松 隆之、池田 正毅
【 目的 】インスリン注射(Ins)後の血中インスリン値(IRI)
の動態を観察した。
【 方法 】アナログ混合 Ins 製剤を 1 日
2 回注射の 2 型糖尿病者(24 例)の血糖日内変動検査時に
IRI を 2 種類の方法で測定した。A 法はヒトのみ、B 法は
ヒト + アナログの両者を測定するため、その差が注射し
た Ins の変化を示す。そこで、朝の Ins 注射後の IRI の変
化を注射量、BML 年齢により分類して比較した。
【 結果 】
朝の Ins 注射量の平均は 12.5U、IRI 増加量は 73 μU/㎖、
3B-1215
イトマキヒトデ形態形成:間充織細胞の配置パターン
Spatial placement of mesenchyme cells in a sequence of
morphogenesis of the starfish, Astenna pectimfera
○西原 大輔 Nishihara Daisuke1)、築地 長治 Tsukiji Nagaharu1)、
矢嶋 伊知朗 Yajima Ichiro2)、武田 和久 Takeda Kazuhisa3)、
柴原 茂樹 Shibahara Shigeki3)、山本 博章 Yamamoto Hiroaki1)
1 )東北大・院・生命、2 )中部大・生命健康科学・生命医科、
3 )東北大・院・医
○金子 洋之 Kaneko Hiroyuki1)、濱中 玄 Hamanaka Gen2)、
保坂 恵利 Hosaka Eri3)、細谷 夏実 Hosoya Natsumi3)
1 )慶応義塾大学自然科学研究教育センター、
2 )慶応義塾大学理工学部生命情報、3 )大妻女子大学社会情報
3B-1130
3B-1230
イトマキヒトデ胚に存在するクロマチン会合性トランスグルタミナーゼの
機能解析
Function of chromatin-associated transglutaminase in early
embryos of the starfish,
24
○池上 晋 Ikegami Susumu1)、西山 了 Nishiyama Ryo1,2)、
山崎 明子 Yamasaki Akiko3)、加藤 宏一 Kato Koichi2)
1 )長浜バイオ大学、2 )名古屋市立大学・院システム自然科学、
3 )広島大学・院生物圏科学
イトマキヒトデ胚発生においてヒストン二重化を触媒する核型トラン
スグルタミナーゼ(nTG)が胞胚期中期以後に核内に出現し、これがク
ロマチン会合性であることは昨年度の本大会で発表した。本酵素タンパ
ク質を中期原腸胚から各種抽出操作で精製・単離した。その酵素科学的、
細胞学的特性を解析した。
3B-1145
3B-1245
Wnt シグナリングは四肢再生に対して幼生期と成体期で異なる関与をする
Different involvement of Wnt/beta-catenin signaling in limb
regeneration of larval and adult Xenopus
カタユウレイボヤ Nodal の左右非対称な発現制御機構と機能の解析
Analysis of the transcription regulatory mechanism and function of
the left-right asymmetric expression of Nodal n Ciona intestina is
○横山 仁 Yokoyama Hitoshi1)、越智 陽城 Ochi Haruki2)、
荻野 肇 Ogino Hajime2)、田村 宏治 Tamura Koji1)
1 )東北大学・院生命科学・生命機能科学、
2 )奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス
○吉田 慶太 Yoshida Keita、西駕 秀俊 Saiga Hidetoshi
首都大・院理工・生命科学
アフリカツメガエルは幼生期には高い四肢再生能を示すが、成体期に
は限られた四肢再生能しか持たなくなる。我々は以前に、幼生期の四肢
再生においてトランスジェニック技術を利用して再生開始の時期に同シ
グナリングを阻害すると再生が起こらなくなることを報告した。しかし
同じ手法を用いて成体期で同シグナリングを阻害すると、幼生期で見ら
れたような再生そのものへの抑制効果が見られず、成体期の四肢再生に
は Wnt シグナリングは必ずしも必須ではないことを示す結果が得られ
たので報告する。
両者には正の相関を認めた IRI のピークは注射量の増加に
より遅れる傾向が認められた。そこで、1 単位による IRl
の変化を算出して比較すると、BMI により IRI の変化は
認めなかったが、高齢者では IRI 上昇の遅延がみられた。
【 考察 】高齢者では Ins の吸収が遅延する可能性が示唆さ
れ、Ins 治療時には注意が必要である。
イトマキヒトデ形態形成過程における間充織細胞の配置パターンを免
疫組織学的に解析した。胚∼ピピンナリア初期過程において、一部の間
充織細胞は口・体腔嚢形成域に一過的に配置し、続いて食道・胃・腸形
成領域へも移動する。一方、同幼生期以降に現出する繊毛帯領域では、
プラキオラリア幼生期を通して一部の間充織細胞は偏在し続ける。この
時期には、成体原基の骨片形成領域にも多数の間充織細胞が存在する。
間充織細胞の配置に関するイトマキヒトデ形態形成の研究テーマを提示
したい。
スカシカシパンにおける二次間充織細胞の新しいサブポピュレーション
New subpopulation of the secondary mesenchyme cells in
スカシカシパンのプルテウス幼生の繊毛帯直下に、色素の蓄積がみら
れない UV 励起でのみ自家蛍光を発する一群の細胞が観察された。今回、
この細胞について、初期発生中の出現場所と時期、その挙動や分裂回数、
specification における Notch シグナルの役割・作用時期などについて
通常の色素細胞との比較を行った。その結果、この一群の細胞は、新た
な二次間充織細胞の一群であり、通常の色素細胞とは移動経路・シグナ
ルの作用時期など多くの点が異なっていることが示唆された。
住友病院 内分泌代謝内科
イトマキヒトデ胚の間充織細胞が有する形態形成能を探索した。単離
培養した間充織細胞を胞膳に移植する予備実験で、ピピンナリア幼生の
サイズ増加を見出した。この現象を追求するために、胚体の構成細胞を
計数する実験系を考案し、移植間充織細胞の動態追跡を伴った定量解析
を行った。その結果、間充織細胞自身は分裂することなく、上皮細胞の
増殖に寄与することが判明した。本研究から、間充織細胞の ECM への
張力発生能、異物の食作用能に加え、上皮細胞増殖誘起能を言及できる
ようになった。
3B-1115
○高田 裕美 Takata Hiromi、小南 哲也 Kominami Tetsuya
愛媛大・院理工・生物
インスリン過量投与後の症例検討で判明した IRl 測定法間のアナログ製剤の交叉率の差
○濱中 玄 Hamanaka Gen1)、松本 緑 Matsumoto Midori1)、
金子 洋之 Kaneko Hiroyuki2)
1 )慶大・院理・基礎理、2 )慶大・生物
網膜色素上皮形成時の Mitf による p27 Kip1 を介した細胞増殖の抑制
Mitf negatively regulates the cell proliferation through p27Kip1
during the development of retinal pigment epithelium
眼の組織の一つである網膜色素上皮(RPE)は、成体の眼の視覚なら
びに視細胞の維持に不可欠だが、その腫発生過程における形成メカニズ
ムについては知見が少ない。そこで我々は、RPE 形成に必須な転写園
子として知られる Mitf に着目し、その機能解析に取り組んだ。ニワト
リ勝への遺伝子導入実験から、Mitf が細胞増殖抑制園子 p27Klpl の発現
を誘導し、RPE における細胞増殖を抑えることを強く示唆する結果を
得た。加えて、この Mitf の機能に対する制御についても議論する。
口演発表
2 型糖尿病患者におけるインスリン分泌能で分けたインスリン療法の相違点
○植田 玲、藤田 直尚、岡村 真太郎、近藤 八重子、松永 佐澄志、奥山 さくら、飯降 直男、古家 美幸、田中 正巳、辻井 悟、石井 均
O-010
上皮細胞増殖誘起能:イトマキヒトデ胚間充織細胞に見出した新規な形
態形成機能
A novel experimental approach shows that mesenchyme cells can
induce epithelial cell proliferation in starfish embryos
○林 愛之 Hayashi Yoshiyuki、松崎 貴 Matsuzaki Takashi、
猪原 節之介 Ihara Setsunosuke
島根大・院生物資源・生物生命
1 )独立行政法人国立病院機構兵庫中央病院 内科、2 )〃 看護部、3 )〃 薬剤科
○鴻山 訓一 1)、岡村 一子 2)、杉山 喜久 3)、福永 みちる 1)、里中 和廣 1)
【 目的 】血糖コントロール目的入院患者で 1 日尿中 C ペプ
チド 20㎍/g/Cre 以上・以下に分け検討。
【 方法 】2 型糖
尿病患者 37 症例を尿中 CPR20㎍/ 以上以下に分けインス
リン療法 2 回法と強化療法を行い各因子を検討。入院時退
院前で比較。
【 結果 】1)患者背景は尿中 CPR49.5 ± 46.1
㎍、年齢 61.2 ± 9.0 歳、罹病期間 13.5 ± 9.12 年、A1c9.42
± 1.5、FPG162.1 ± 61.6㎎/㎗、BMI24.5 ± 4.3、インスリ
ン使用量 27.9 ± 15.7U。2)尿中 CPR20㎍以上・以下群問
O-009
3B-1200
ハイイロジネズミオポッサム生後 15 日皮膚における創閉鎖の解析
Wound closure in the 15-day postnatal Monodelphis domestica
skin
当院におけるレベミル 1 日 1 回投与への切り替えについて
【 目的 】レベミル 1 日 1 回投与への切り替えについて検討
した。
【 方法 】平成 19 年 12 月から平成 20 年 6 月までにレ
ベミルを使用した 51 例のうち、他のインスリン治療から
レベミル 1 日 1 回投与に切り替えた 24 例について 4 ヶ月
follow を行い、体重、インスリン使用量、HbA1c、低血
糖、内服薬併用状況の変化について検討した。
【 結果 】
1. 当院入院中にノボラビッド 30 ミックス 2 回投与からレ
ベミル 1 日 1 回投与に変更した 4 例では 1 日血糖値に有意
O-008
3B-1100
第 81 回日本動物学会東京大会
カタユウレイボヤの
( )は尾芽腫期に左側の表皮およ
び内膜葉で発現するが、その左右非対称な発現の制御機構および機能に
ついては未解明である。 の転写調節機構の解析を行ったとこ
ろ、左側表皮における発現の開始は Nodal シグナル非依存的であること、
その後の発現は Nodal シグナルに依存して調節されることが明らかに
なった。また、シグナル阻害実験により、Nodal シグナルが左右非対称
な尾部の伸長、および消化管の形成に関わることが示唆された。