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-1-
目
Ⅰ
次
研究の概要
1
研究の背景
(1) 「言語活動の充実」の意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(2) 秋田県内の各学校における言語活動への取組 ・・・・・・・・・・・・・・・1
(3) 秋田県総合教育センターにおける取組 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
(4) 言語活動に関する課題の傾向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2
研究のねらい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3
研究の内容
(1) 平成25年度(1年次) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(2) 平成26年度(2年次) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
Ⅱ
実践と検証
1
話合いの場の在り方-「考えを引き出す」「多様な考えをつなげる」「学び合う力を高める」-
(1) 小学校
理
(2) 中学校
美術科 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
2
科 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
話合いの場の在り方-「比較・検討で考えを深める」「校種のつながりを意識する」-
(1) 小学校
算数科 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
(2) 中学校
数学科 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
(3) 高等学校
数学科 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
3
ねらいを意識した言語活動の設定-ねらいと手立てと評価を関連付けた指導計画-
(1) 高等学校
保健体育科
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
Ⅲ
研究のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
■
資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
■
研究協力校・協力者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
■
引用・参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
Ⅰ 研究の概要
1
研究の背景
(1) 「言語活動の充実」の意義
学習指導要領では,これからの時代を担う児童生徒に「生きる力」を育むという理念の
もと,いわゆる「学力の三要素」,基礎的・基本的な知識及び技能の習得,思考力・判断
力・表現力等の育成,主体的に学習に取り組む態度の育成を重視しています。中でも,思
考力・判断力・表現力等を育むことは,我が国の児童生徒の実態を踏まえた喫緊の課題で
あり,各教科等を貫く重要な改善の視点となっています。そのために欠かせないのが,全
ての教科等の指導において言語活動を充実させることです。
『言語活動の充実に関する指導事例集』(文部科学省)では,「各教科等においては,
国語科で培った能力を基本に,それぞれの教科等の目標を実現する手立てとして,知的活
動(論理や思考)やコミュニケーション,感性・情緒の基盤といった言語の役割を踏まえて,
言語活動を充実させる必要がある」としています。つまり,国語科においては,基本的な
国語の力を定着させるとともに言語活動を行う能力を高めること,各教科等においては,
国語科で培った能力を基本に,それぞれの教科等の知識及び技能を活用する学習活動を充
実することが大切だということです(図1)
。
(2) 秋田県内の各学校における言語活動への取組
本県においては,学習指導要領改訂以来,各校種で様々な研究,実践がなされてきてお
り,「言語活動の充実」という言葉は,すっかり定着している感があります。各学校にお
ける取組を見ると,「言語活動の充実」を研究テーマとして設定し,学校全体で積極的に
実践を進めているところも多いようです(図2)。
図1
各教科等における言語活動の意義
- 1 -
図2
各学校の研究テーマの例
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
(3) 秋田県総合教育センターにおける取組
秋田県総合教育センター(以下,当センター)でも,「言語活動の充実」を研修講座編
成の重点として,様々な取組をしてきました。
平成21年度からは,言語活動の充実に関する講座を実施しています(図3)。また,平
成22年度からは,当センターのホームページ上の「ことばナビ」により情報を発信してい
ます(図4)。さらに,平成24年度からは,学校支援講座において「言語活動の充実のポ
イント」の研修も行っています。
図3
言語活動の充実に関する講座
図4
ことばナビ
(4) 言語活動に関する課題の傾向
「言語活動の充実」に関して様々な実践がなされていますが,その一方,課題も明らか
になってきました。例えば,『初等教育資料』(平成25年6月号)では,全国的な傾向と
して,
・指導のねらいと言語活動との関係がはっきりせず,当該教科のねらいに応じてどのよ
うな力が付いたのか不明確な場合があること
・時間がかかることや,指導のポイントがつかみにくいということなどから,言語活動
の位置付けを躊躇してしまう場合があること
・学習評価との関係をどう捉えるかが不明確なまま指導がなされる場合があること
といったことが挙げられています。本県においても,同様のことが言えるのではないでし
ょうか。そこで,当センターでは教科指導における「言語活動の充実」に焦点を当てて研
究を進めることにしました。
また,平成26年度全国学力・学習状況調査〔学校質問紙〕における話合い活動に関する
質問項目を見ると,肯定的な回答の数値は高いものの,「よく行った」「そのとおりだと
思う」という数値が低いことから,まだ質的には改善が必要なことが読み取れます(図5)。
教科指導における様々な言語活動の中で,授業での「話合いの場の在り方」や指導計画
での「ねらいを意識した言語活動の設定」の具体的な指導について研究する必要性を再確
認できました。
- 2 -
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
図5
2
話合い活動に関する項目について(平成26年度全国学力・学習状況調査〔学校質問紙〕より)
研究のねらい
本研究では,県内の各学校における言語活動への取組状況を分析して課題を把握し,そ
の解決に向けた方策を発信することで,
「言語活動の充実」に向けた取組が更に推進され,
児童生徒の学びの質が高まることを目指します。
3
研究の内容
(1) 平成25年度(1年次)
①アンケート調査(平成24年度に実施)のデータ分析
当センターにおける講座の受講者を対象に,アンケート調査を実施しました。その中
で、学習指導要領改訂に伴い「授業で意識して力を入れるようになったこと」を,複数
回答していただきました(P32参照)
。
- 3 -
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
その結果,小学校,中学校,高等
学校のいずれにおいても「考えたり
話し合ったりする活動」や,「発言し
たり発表したりする活動」に力を入
れているという特徴がありました。
このことから本県の教師は,言語活
動を積極的に取り入れていると言え
ます(図6)。
図6
意識的に取り入れている活動
このことは,平成25年度の全国学
力・学習状況調査の,児童生徒質問
紙調査の結果にも現れています。図
7は,「授業中に,話合い活動の機会
がある」という項目に対して,「当て
はまる」「だいたい当てはまる」と答
えた児童生徒の割合を表しています。
小・中学校ともに秋田県が全国平均
を上回っています。発表の機会につ
いても同様です。県内の多くの教師
が積極的に言語活動を授業に取り入
れており,児童生徒もそれを感じてい
図7
授業における話合い活動の状況
ることが分かります。
アンケート調査の自由記述を見る
と,「授業で困っていること,悩んで
いること」について,全体で最も多
かったのは「言語活動」の取組に関
するものでした(図8)
。
これは,話合い活動や発表の機会
が全国に比べて多く,熱心に取り組
んでいるからこその悩みとも言えま
す。
図8
- 4 -
困 っ て い る こ と ,悩 ん で い る こ と
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
図9は,「言語活動に関する悩み」に
ついて,小学校,中学校,高等学校のデ
ータをまとめたものです。授業に関する
ことが52%と半数を占め,次いで指導計
画についての悩みが38%,校内研修など
に関わるものが10%でした。
主な悩みとして挙げられたのは,授業
については,「練り合いが深まらない」
「発言する子どもがいつも同じになって
しまう」で,指導計画については,「話
合い活動をしていると時間が足りなくな
図9
言語活動に関する悩みの内訳
ってしまう」「授業の進度が遅れる」と
いうものでした。
②各課所に所属する指導主事等への聞き取り調査
県内の各課所の指導主事等に聞き取り
調査を行い,「言語活動の充実」に関す
る現状を分析しました。その結果,秋田
県の教師は,話合いの場を十分に保障し
ていることを再確認できました。そこで
は,ペアやグループによる話合いといっ
た学習形態の工夫や話型の活用なども行
われています。しかし,話合いが深まら
ず,授業のねらいに迫ることができない
など,結果的に児童生徒の考えを生かし
切れていない場合も見られます。
図 10
当センターが行った分析
また,言語活動を指導計画に組み入れ
ている学校が増えていますが,計画性や系統性は十分とは言えないようです。それは,
「何のために,その言語活動を取り入れるのか」という目的が不明確なためではないで
しょうか。当センターは,児童生徒の考えを生かし切れていないことと,言語活動の目
的が不明確であることが密接に結び付いているのではないかと考えました(図10)。
③言語活動に関する課題とその解決に向けた提案
「言語活動の充実」に関する実態把握を受け,課題を次の2点に整理しました。
1点目は,授業に関するもので「話合いの場の在り方」,2点目は,指導計画に関す
る「ねらいを意識した言語活動の設定」です(図11)
。
そして,これらの課題を解決する手がかりを「児童生徒の考えを生かす指導」として,
提案しました*(図12~14)。
*提案内容と事例の詳細は,平成25年度研究紀要45集参照
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
図 11 言 語 活 動 の 課 題
図 13
平 成 25年 度 の 提 案 内 容
図 12
平 成 25年 度 の 提 案 内 容
図 14
平 成 25年 度 の 提 案 内 容
(2) 平成26年度(2年次)
平成25年度に提案した内容について,連携協力校の協力を得ながら実践に基づく検証を
行いました。
【話合いの場の在り方】
「考えを引き出す」
「多様な考えをつなげる」「学び合う力を高める」
・潟上市立大豊小学校
第3学年 理科
・潟上市立羽城中学校
第3学年 美術科
「比較・検討で考えを深める」「校種のつながりを意識する」
・潟上市立大豊小学校
第4学年 算数科
・潟上市立羽城中学校
第1学年 数学科
・秋田県立秋田西高等学校
第1学年 数学科
【ねらいを意識した言語活動の設定】
「ねらいと手立てと評価を関連付けた指導計画」
・秋田県立秋田西高等学校
第1学年 保健体育科
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
Ⅱ 実践と検証
1
話合いの場の在り方
-「考えを引き出す」「多様な考えをつなげる」「学び合う力を高める」-
(1) 小学校
○学
○単
元
理科
年
第3学年
名
「ゴムで動かそう」
○単元のねらい
ゴムで物が動く様子を調べ,ゴムの働きについての考えをもつことがで
きる
○指導の実際
図15は,この単元の学習の流れです。こ
こでは,主に1~4の段階において,児童
の考えを引き出し,多様な考えをつなげ,
学び合う力を高めた実践を紹介します。
図 15
単元の学習の流れ
最初の「自然事象への働きかけ」の場面です。まず,教師が自作した「戻ってくる紙コ
ップ」を転がします(図16,17)。
図 16
スタート地点から
離れていく紙コップ
図 17
- 7 -
スタート地点へ
戻ってくる紙コップ
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
今まで経験したことのない出来事に,
児童たちの気持ちは引き付けられ,授業
への興味・関心が一気に高まりました。
教師の自作教材を通して,児童は自分の
既知概念との違いに気付き,「自分でやっ
てみたい!」という意欲を強くもちまし
た(図18)。
図 18
既知概念との違いへの気付きの場面
そこで,教師は一人に1個ずつ教材を
渡し,体験する時間を十分に保障しまし
た。すると,何度も試す児童,立ち止ま
って考えたり調べたりする児童など,自
分の紙コップを手にした児童たちには様
々な姿が見られました。一人一人の疑問
や気付きから問いが引き出された場面で
す(図19)。
図 19
問いを引き出す場面
体験した後,教師は「どうして動
いたの?」「ゴムが元に戻ろうとして
動いたならこの車も動かせるの?」
と根拠や方法を尋ねたり,
「え!本当,
輪ゴムって元に戻るの?」と思考を
揺さぶったり,「では,本当にこの車
が動くか試してみましょう」と見通
しをもたせたりする発問をすること
で,教師と児童,児童と児童の間で
双方向的なやりとりを行いながら児
童の考えを引き出しました(図20)。
図 20
双方向的なやりとり
そして教師は児童の疑問や気付きを共感的に受け止めながら,それらを黒板に整理して
授業を進めました。
図21は,「問題の把握・設定」の場面での板書の様子です。「なぜ動くの?」という児
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
童の疑問から授業が始まり,児童の根拠を共有化できるように図で可視化し,児童が考え
た方法を大切にし,今後の学習の見通しをイメージできるようにしています。
図 21
「問題の把握・設定」の場面での板書の様子
ここには,「児童の言葉を生かした学習問題を設定する」という教師の意図がありまし
た。児童の考えを見事に学習問題につなげた事例と言えます(図22)。
図 22
児童の言葉を生かした学習問題の設定
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
そして,次の「予想・仮説の設定」の場面では,自分たちで設定した学習問題に対して,
児童は自分なりに根拠をもって予想をノートに書くことができました(図23)。
図 23
根拠をもって予想を記述
「検証計画の立案」の場面では,自分の予想に基づいて一人一人が実験計画を立てまし
た(図24)。しかし,児童が立てた実験計画には不十分な面もあるので,ペアになって互
いに計画を改善する場を設定しました。その際,多様な考えに触れることができるよう相
手を替え,ペアで改善する活動を2回行いました(図25)。
図 24
児童が立てた実験計画
図 25
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ペアで計画を改善
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
図26は,ある児童のノートです。この児童は,1回目のペアによる改善で,ゴムをねじ
る回数ではなく,紙コップを引く「長さを決める」ことを,2回目のペアによる改善で,
ゴムをねじるために逆向きに引く長さを「2mぐらい短く」ということをメモしており,
実験計画をより具体的にすることができました。
図 26
実験計画が具体化された例
また,別の児童は,1回目のペアによる改善で,「引く長さを長くしたり短くしたりす
る」ことを,2回目のペアによる改善で,「数字を比べる」ことをメモしており,何のた
めに実験をするのかを意味付けすることができました(図27)
。
図 27
実験計画が意味付けされた例
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
この実践では,問題解決のステ
ップを踏み,児童が今どのステッ
プの学習をしているのか,何をし
なければいけないのかということ
を意識して授業に取り組むことが
できるようにしています。その際,
個での学習,ペアでの学習,全体
での学習を教師が適切にコーディ
ネートすることによって,児童同
士の学び合う力を高めることがで
きました(図28)。
図 28
実験計画が意味付けされた例
図29は,単元の前後に行った児
童のアンケート調査の結果です。
「自分の考えをもち,問題に取り
組むこと」,「自分の考えを書いた
り話したりすること」について,
「そ
う思う」と答えた児童の割合が高
まっていることが分かります。
図 29
児童のアンケート調査の結果
児童の意識が高まった理由は,
教師が児童の疑問や気付きから問
いを引き出し,引き出した問いを
つないで解決すべき学習問題を明
確にしたこと,また,ペアでの活
動を行い児童同士の学び合う力を
高めてきたことが挙げられます。
このように,問題解決のステッ
プにおける話合いの場で,「引き出
し」「つなげ」「学び合う力を高め
る」ということを,教師がコーデ
ィネートすることで,単元のねら
いに迫ることができました(図30)。
図 30
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教師のコーディネート
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
(2) 中学校
美術科
「考えを引き出す」「多様な考えをつなげる」「学び合う力を高める」指導について,
意図的・計画的でありながら生徒の実態に柔軟に対応して展開している事例です。
考えを引き出し,つなげることについて,
「生
徒の思考に沿った問いでねらいに迫る」と「双
方向的なやりとりで思考を深める」の二つの
ポイントを紹介します(図31)。
図 31
○学
○題
材
年
第3学年
名
「マグリットの世界を楽しむ」
○授業のねらい
話合いの場の在り方のポイント
作品の表現の工夫と表現意図の関連を考えながら,よさや美しさを感じ
取り,交流の中で見方や感じ方を深める
○指導の実際
この授業では,生徒の思考に沿った問いで生徒の考えを引き出し,ねらいに迫っていき
ました(図32)。
生徒の考えを引き出すために,教師がまず意識したことは,じっくりと鑑賞作品と向き
合う時間を保障することでした。そして,作品との様々な向き合い方について保障する教
師の発問から,自分なりの考えをもつことができました(図33)。
図 32
発問の流れ
図 33
- 13 -
対象と向き合う時間と
自分なりの向き合い方を保障
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
次に,教師は,生徒の考えを引き出
すために,発言がどんな内容であって
も受容し,授業に生かそうとしました。
例えば「部屋の感じが怖い」という
発言を受容し,
「どこからそう感じる?」
と尋ねると,生徒は「大きさの違いか
ら」と答え,その後,他の生徒からも
発言が引き出されました(図34)。
図 34
発言を受容し根拠を問う
教師がまずは受容してから,生徒の抱いた印象を造形的な要素で整理させたことで,根
拠が明確になり,安心して自分なりの考えを表現することができました。
こうした教師側の支援により,生徒
の中に新たな課題意識が生まれていき
ました。
それを教師が見取り,主発問となる
「作者は何を表そうとしたのだろう?」
という問いを発しました。
この発問により,生徒は作者の表現
意図に着目し,考えを巡らせていきま
した(図35)。
図 35
課題意識を主発問へつなぐ
そして,授業のねらいに更に迫るため,
作品の特徴である「物の大きさの描き方」
に問いの焦点を絞り,生徒に投げかけま
した。
すると生徒から,更に思考の深まった
発言が引き出されました。
多様な考え方を受容しつつ,問いの焦
点化を図ることによって,生徒の思考は,
拡散から収束へ向かい,更に考えを深め
ることができました(図36)。
図 36
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焦点化した問いで更にねらいに迫る
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
このような教師と生徒の「双方向的
なやりとり」によって,引き出した考
えをつなげていきました。
表現の特徴である「部屋にある物の
大きさ」に気付いたAさんの発言を受
けて,教師が学級全体に問うと,Aさ
んの考えと自分の考えを照らし合わせ
た発言が次々と飛び出しました(図37)
。
教師はそれらの発言を生かし,つな
げていき,考えを深めさせていました。
図 37
双方向的なやりとりで思考を深める
集団と個において,それぞれ相乗効果で
学びが高まる指導と言えます。
続いて,「学び合う力を高める」ことにつ
いて,「主体的に考えるきっかけをつくる」
と「協働的な学習で多様な考えを生かす」
の二つのポイントを紹介します(図38)。
図 38
○学
○題
材
話合いの場の在り方のポイント
年
第3学年
名
「魅力を探ろう!-浮世絵と印象派-」
○授業のねらい
美術への関心を高め,よさや美しさを感じ取り,自分の価値意識をもっ
て批評し合うことにより見方や感じ方を深める
○指導の実際
教師は四つの造形的な要素を視点とし,
それを一方的に割り振るのではなく,どの
視点で考えたいのか生徒に選ばせました。
自分で決めたことで,自ら学びたいとい
う気持ちが生まれ,また,一人一人がグル
ープ代表という,責任ある立場となったこ
とも,意欲を高めました。このように,主
体的に考えるきっかけをつくることが,よ
い学びにつながりました(図39)。
図 39
- 15 -
主体的に考えるきっかけ
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
話合いはジグソー法で進めました。
初めに,グループ代表同士が視点ごと
に集まり,互いの考えを紹介し合います。
次に,元のグループに戻り,得られた
新たな考えを紹介し合います。
最後に,それまでの話合いを基に,学
級全体で意見を交わし合い,授業のねら
いに迫りました。
こうした協働的な学習によって,多様
な考えを生かすことができました(図40)。
図 40
ジグソー法での活動
図 41
振り返りの記述の一部
図41は,生徒の振り返りの記述の一部
です。
自分が選んだ視点を基に,他者の多様
なものの見方や感じ方を取り入れ,思考
を深めていき,授業のねらいが実現され
ていることが分かります。
図4 2は, 生徒を対象
N-32
に授業の事前と事後に
行ったアンケート調査
の結果です。
全ての質問項目で「そ
う思う」という肯定的
な回答が増えています。
このことから,生徒
の主体的・協働的に学
ぶ力が育まれているこ
とが分かりました。
図 42
言語活動に関するアンケート
- 16 -
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
そうした生徒の姿に結び付いた教師のコーディネートは,図43のようにまとめられます。
この事例は,生徒の考えを引き出し,つなげ,高める学習活動を繰り返し行うというコ
ーディネートによって,ねらいに迫ることができた実践と言えます(図44)。
図 43
教師のコーディネート
図 44
ねらいの実現に迫るイメージ
ここで,ある生徒Bさんの事前・事後の
アンケートの記述を紹介します。
事前では,「人の意見なんて興味ない」と
いう,学級でただ一人否定的な回答でした。
しかし,事後の記述は図45にあるように変
わっていました。
生徒が主体的・協働的に取り組むことが
できる授業を,教師が意識して進めた結果,
他者の見方・考え方を尊重できるまでに変
容したと言えるのではないでしょうか。
図 45
アンケートの記述
Bさんだけでなく,学級としても変容が
見られました。
最初は,発言に消極的な雰囲気もあった
そうです。それが,教師が話合いの場にお
ける指導を工夫したことで,互いの共通点
や相違点を見いだしながら,確かな学びを
実感することができ,徐々に学び合う集団
に変わっていきました(図46)。
学び合う学級風土の醸成につながる指導
が大切であるということは,どの教科にも
通じるのではないでしょうか。
図 46
- 17 -
学び合う生徒の姿
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
2
話合いの場の在り方
-「比較・検討で考えを深める」「校種のつながりを意識する」-
(1) 小学校
○学
○単
元
算数科
年
第4学年
名
「式と計算」
○授業のねらい
加法の交換法則,結合法則が小数でも成り立つことを理解する
交換,結合,分配法則などの計算のきまりを使って工夫して答えの求
め方を考える
○授業の実際
導入では,「100に関するクイズ」を行い,興味付けをしました。そして,4問の学習
課題を掲示し,どのようにすると計算ができそうか見通しました。そこで出た児童の考え
を板書に表しながら,本時のめあてを確認しました(図47)
。
その後,授業は,図48のように進められていきました。
図 47
図 48
導入における学習活動
授業の流れ
初めは,学習グループの中で分担した問
題を自力解決する場面です。
Aさんは,分担した1問目の問題につい
て式に表された数字を順に足して解答しま
した。
その後,問題ごとのグループで解き方を
説明し合った際,Aさんは,友達の発表か
ら「100をつくって」計算するという結合
法則に気付きました(図49)。
図 49
- 18 -
個別による自力解決の場面
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
学習グループに戻ったAさんは,結合法
則を基に数学的な理由付けを伴う説明をす
ることができました。
これらのグループ活動に当たって,教師
からの「はやく,かんたんに,せいかくに」
という算数のよさの視点からの助言により,
児童は互いの解き方について検討すること
ができました。このように話合いを焦点化
することも大切なポイントです(図50)。
図 50
グループにおける説明の場面
図 51
全体における共有化の場面
次の全体の場では,4問全てのまとめを
行い,それぞれの問題の解き方の共通点や
相違点などについて共有化を図りました。
算数のよさの視点で,自分の解き方を説
明するだけでなく,学級のみんなと「100
をつくる」ことなど,数の見方を共有化し
たことで,Aさんに理解の深まりが見られ
ました(図51)。
この授業を「思考力・判断力・表現力等
の育成につながる学習活動」という視点から
見てみます。
児童は,グループ活動において,自分が
考えた計算手順,式変形の理由や根拠につ
いて説明し,互いの考えを伝え合う活動を
行いました。こうした言語活動を充実させ
るために,教師は次のように指導を工夫し
ました。まず, 導入の段階で「100をつく
る」場面を設定し,本時の授業に必要な基
礎・基本の定着を図ることで意味理解を促
進させました。次に,
「はやい」
「かんたん」
「せいかく」という算数のよさの視点で児
童が互いの考えを比較・検討できるように
しました。そして,問題を分担したり,グ
図 52
小学校の実践例における
思考力・判断力・表現力等
の育成につながる学習活動
ループでの話合いを2回盛り込んだりすることで,児童の気付きや考えを生かす学習
展開にしました。このことにより,児童は数理的な処理のよさを実感したと言えます(図52)。
- 19 -
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
図 53
言語活動に関するアンケート
図53はそれを裏付けるデータです。
この授業の前後に行った,児童を対象としたアンケート調査では,これらの項目におい
て,「そう思う」と答えた児童の割合が増えています。
言語活動の充実により,よく聞き伝える力,見通す力,表現する力が高まったことを,
児童自身が自覚できるようになってきており,主体的に学ぶ児童の育成につながった事例
と言えます。
この学校の教師にインタビューしたとこ
ろ,次のことが分かりました。それは,話
すことを含め,授業に一層積極的に参加す
る児童が増え,家庭学習への取組も意欲的
になったという児童の変容です。
また,教師も,児童が目的意識をもって
主体的に考えることができるよう,当たり
前の指導について見直し,一層工夫するよ
うになりました(図54)
。
図 54
- 20 -
教師へのインタビュー
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
(2) 中学校
○学
○単
元
数学科
年
第1学年
名
「文字と式」
○単元のねらい
文字を用いることのよさを理解するとともに,数量などの関係を表現
し,一般的に考えることができる
○本時のねらい
数量の間の関係について,条件に合わせて不等式で表すことができる
○指導の実際
この授業では,教師の弁当を例に挙げ,
カロリーと値段から条件を設定しました。
その条件に合うおかずの組合わせを考え
て,それを不等式で表すことが本時のめあ
てです。
*
条件は,①鐙弁当は唐揚げを入れて800
*
キロカロリー以下にすること,②眞壁弁当
は一口カツを入れて1,000円以上にするこ
とです(図55)。
*「鐙弁当」「眞壁弁当」は,連携協力校
の授業者名によるもの
図 56
主な学習活動
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図 55
授業のめあて
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
主な学習活動は図56のとおりです。まずはペアで,条件に沿った弁当のおかずを決めま
す。その後,考えた不等式をペア・個別で確認し合います。そして,条件①で立式したペ
アと,条件②で立式したペアを合わせてグループをつくり,自分たちが立てた式を,根拠
をもって説明し合います。
最後に,全体で,各条件で考えた不等式について発表し,共有化を図ります。
この授業を,「思考力・判断力・表現力
等の育成につながる学習活動」という視点
から見てみます(図57)
。
まず,導入において,身近な弁当を取り
上げた課題を設定し,生徒の興味・関心を
高めました。
次に,ペアを基本単位とした協働的な学
習を展開しました。ペアで行うことにより
話合い活動が焦点化するとともに,活性化
しました。
そして,ペアで確認した後にグループに
なり,不等式という数学的な表現を用いて,
数量などの関係を説明し比較・検討できる
図 57
中学校の実践例における
思考力・判断力・表現力等
の育成につながる学習活動
ようにしました。
このように,条件に合った数量の関係について,数学的に表現した不等式を用いて説明
し,互いの考えを根拠に基づいて伝え合う活動を段階的に設定することにより,生徒に数
学的な見方や考え方の広がりを実感させ授業のねらいに迫ることができました。
図58は,この授業の前後に,生徒を対象として行ったアンケート調査の結果です。
図 58 言 語 活 動 に 関 す る ア ン ケ ー ト
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
「自分の考えと友だちの考えの似ているところ,違うところを意識しながら,友だちの
考えを聞くことができますか」,「自分の考えが友だちによく伝わるように,話す順番を
考えたり考えた理由などを入れたりして,発表するように気を付けていますか」,の二つ
の質問項目において肯定的な回答をした生徒が増えました。その要因として,言語活動の
充実により,自他の共通点や相違点を意識して聞く力,相手意識,目的意識をもち,発表
する力が高まったことを生徒自身が自覚できるようになったことが考えられます。
(3) 高等学校
○学
○単
元
数学科
年
第1学年
名
「図形と計量
○単元のねらい
鋭角の三角比」
三角比の定義及び相互関係を用いて,他の三角比を表現する求め方や
考え方を根拠をもって説明できる
○本時のねらい
三角比の値が一つ分かるとき,残りの三角比の値を求めることができ
る
○指導の実際
図59は,前述した平成24年度に当センタ
ーが行ったアンケート調査の結果です。言
語活動に関する悩みの内訳として,指導計
画に関するものは38%,その主な内容とし
ては,「話合い活動をしていると時間が足
りなくなってしまう」,「授業の進度が遅
れる」,というものでした。特に,高等学
校では悩みの半数が,進度の遅れを心配す
るものでした。このことから,高等学校で
は指導計画の作成段階から話合い活動には
図 59 言 語 活 動 に 関 す る ア ン ケ ー ト
消極的な傾向があるのかもしれません。今
回,授業を担当した教師は,授業実践前の
段階では,数学科の授業において,ペアワ
ークやグループワークに必要感をあまり感
じていませんでした。
しかし,当センターでの授業研修をきっ
かけに,教師は話合い活動を取り入れた授
業に改めて挑戦することにしました。そし
て,授業を構想するに当たり,ねらいを実
現するための話合い活動を,次のように位
置付けていきました。
図 60 授 業 構 想 の イ メ ー ジ
まず,三角比の小単元において,異なる
2通りの解法をもつ学習課題を設定し,それぞれの解法をグループの中でクロスさせて
「説
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明し合う」,「教え合う」,という話合い活動を取り入れようと考えました。また,数学の
苦手な生徒ばかりにならないようにメンバーのバランスを調整したり,リーダーになる生
徒を決めたりして,話合い活動を円滑に進めるためのグループ編成に配慮しました
(図60)。
図 61 学 習 課 題 等
図 62 主 な 学 習 活 動
授業では,まず最初に,前時の復習を行い,学習課題が提示されました。その学習課題
は,「sinA=5/13のとき,他の三角比を求めなさい」というものであり,奇数グループ
は「三角比の相互関係」,偶数グループは「具体的な三角形」を手がかりに取り組みまし
た(図61)。
この場面の学習形態はグループでしたが,課題解決に当たっては,自分で解き始める生
徒やペアで考える生徒など様々でした(図62)。
次に,同じグループ内において,それぞ
れが自分の解いた方法について説明し,そ
の後,奇数グループと偶数グループの間で
二人ずつ入れ替わり,異なる解き方を説明
し合いました(図63)。
図 63 グ ル ー プ 活 動 の 様 子
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
その後,全体の場で代表者がそれぞれの
解き方を板書し,それを基に発表しました。
全員で解き方の共通点や相違点を確認し,
共有化を図りました(図64)。
この授業で生徒は,グループ活動におい
て,三平方の定理や図形を活用し,立式の
理由と根拠を伝えながら数学的に考察して
いき,それを比較・検討することで,更に
深く説明し合い,教え合うことができまし
た。
図 64
全体での発表の様子
このように話合い活動を充実させ,
思考力・判断力・表現力等の育成につなげるために,
教師は次のような工夫を取り入れました(図65)。
一つ目は「対話重視の学習展開」です。
生徒の自発的な考えを引き出すために,そ
れぞれの生徒の実態に合わせた関わり方で
対話を重ねました。
二つ目は「思考過程の可視化」です。生
徒は思い付いたことをすぐにノートに書き
込みながら自分の考えを整理していきまし
た。周りに説明する際にも,生徒はこのノ
ートを活用していました。
三つ目は「想定外も比較・検討」です。
想定していなかった生徒の考えた解法を生
かして全体の場で比較・検討をしました。
図 65
高等学校の実践例における
思考力・判断力・表現力等
の育成につながる学習活動
その場面では,既有知識の中でそれをどう捉えようか一生懸命に考える生徒の様子が見ら
れました。
このような工夫は,生徒の数学的な見方や考え方を深めることにつながりました。
この授業を終えた教師は,「生徒はいつもよりよく話し,よく聞いていた」と意欲的に
取り組んだ生徒の様子を振り返っていました。また,話合い活動を取り入れることによっ
て普段の授業の中で見ることができない,言語活動の中で見えた生徒の新たな一面に驚き
を感じていました。そして,今回の授業実践をきっかけにして,生徒に参加意識をもたせ,
積極性を引き出すことのできる話合い活動のよさも実感できました。
- 25 -
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
図 66
話合い活動と校種のつながり
このように,小学校,中学校,高等学校の算数・数学科の授業では,充実した話合い活
動が展開されていました。その背景には,「分かった」「なるほど」を実感させる授業づ
くりに向けた教師のコーディネートがありました。
これは「学校教育の指針」(平成26年度
秋田県教育委員会)において示されているこ
とと共通しており,基礎的・基本的な知識・技能を活用して課題を解決するために必要な
思考力・判断力・表現力等を育成する指導として重視しています。
そして,小学校,中学校,高等学校の全ての校種,全ての教科等において,ねらいの実
現のための言語活動を意識して進めていくことが大切です(図66)。
3
ねらいを意識した言語活動の設定
-ねらいと手立てと評価を関連付けた指導計画-
(1) 高等学校
○学
○単
元
保健体育科
年
第1学年
名
「球技
○単元のねらい
バレーボール」
基礎的・基本的な知識や技能を身に付け,チームや自己の課題に応じて
練習方法や戦術を考え,ゲームに生かすことができる
○本時のねらい
フォーメーションの課題に気付き,適切な練習方法を選び,戦術に生か
すことができる
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
○指導の実際
10時間の単元計画の中には,ねらいを実
現するためにどのような手立てを設定し,
どのように評価するかが,明確に位置付け
られ,指導と評価の一体化が図られていま
す(図67)。
この計画により,「運動時間の確保と言
語活動とのバランスの取り方」という保健
体育科の課題の解決に取り組みました。
図 67
保健体育科の単元計画例
図68は単元の5時間目の場面です。 3人ず
つのグループに分かれ,「横型のフォーメーシ
ョン」でゲーム形式の練習を行いました。
生徒たちは,前後への攻撃に対応できてい
ないという課題を,実感を伴いながら把握
していました。
図 68
課題把握の場面1
図 69
課題把握の場面2
次に,その課題の解決を目指し,「縦型
のフォーメーション」で実践してみました。
前方と後方の役割分担により,前後の攻撃
に対応できるようになり,横型に比べてボ
ールがつながるようになりました(図69)。
- 27 -
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
その後6人のグループに戻り,課題を解
決するための方法をボールのつながりの視
点に沿って話し合い,「横型」よりも「縦
型」が自分たちには適していることに気付
きました。意見を交わしながら,最終的に
フォーメーションを変えるという合意が形
成されました(図70)。
図 70
課題解決の場面1
図 71
課題解決の場面2
実践を振り返りながら,新たな課題につ
いても話し合うことができました。互いの
考えを伝え合い,自分の考えやチームの考
えを発展させている様子が見られました。
これは,技術的な課題を発見し,解決に
向けての本時の取組を自分たちで評価し,
改善しようとしている姿と言えます。グル
ープ内で,知識を共有して考えを深める言
語活動が展開されました(図71)。
運動領域において言語活動を行うために
は,1単位時間以内で活動時間と運動量を
確保した上で,視点を絞り,短時間で効率
よく話し合う場を設定する必要があります。
今回はその点を意識した言語活動を展開し
たことにより,活動時間と運動量を十分に
確保できていました(図72)。
図 72
- 28 -
短時間で効率よく話し合う場の設定
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
授業の中で教師は,話合いが短時間で進
行するようチームリーダーを決めておき,
話合いの視点を明確にし,ねらいが外れな
いように観察していました。
そして,ホワイトボードに視点を掲示す
ることで,話合いを効率よく進められるよ
うにコーディネートし,授業のねらいに迫
りました。
その結果,生徒は短時間で効率よく話合
いを進めていくことができました(図73)。
図 73
教師のコーディネート
この授業を通して,ねらいと手立てと評
価を関連付けた指導計画に,言語活動を「意
図的」「計画的」「継続的」に位置付けるこ
とがねらいに迫る上で重要であると再確認
できました。
これは他の教科に関しても同様です。各
教科の特質を踏まえながら指導計画を見直
し,「指導と評価の一体化」を具現化して
いくことが大切です(図74)。
図 74
- 29 -
年間指導計画への言語活動の
適切な位置付け
秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
Ⅲ
研究のまとめ
本研究では,児童生徒の考えを引き出し,つなげ,学び合う力を高めていく言語活動の
在り方について,授業実践を通して検証してきました。
そこから見えてきたことは,児童生徒の
考えを生かすための教師の働きかけによっ
て,授業のねらいに迫り,思考力・判断力
・表現力等の育成につなげていくというこ
とです。
そして,授業全体をコーディネートして
いく力を教師自身が向上させることによっ
て,各教科等のねらいに迫ることもできる
でしょう(図75)。
図75 教師の働きかけ
また,教師による授業全体のコーディネ
ートは,児童生徒が考えを引き出し合い,
多様な考えをつなげ合い,学び合う力を高
め合う主体的,協働的な学びにつながりま
す。
全ての児童生徒が,全ての授業において
学び合い,未来につながる授業を受けたと
き,「児童生徒が学びの主体」になること
ができます(図76)。未来の社会を創造し
ていく,児童生徒の「生きる力」を育むた
図76
児童生徒の学び合い
めに,これからも校種や教科の枠を超えて
オール秋田で取り組んでいくことが,今後
ますます必要となります。
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
<資料>
学校の学習環境と教員の勤務環境に焦点を当てた国際調査
【調査概要・目的】
2008年に第1回調査, 2013年に第2回調査(今回)を実施
日本は今回初参加
【調査対象】
中学校及び中等教育学校前期課程の校長及び教員
日本は全国192校, 各校約20名(校長192名,教員3,521名)
【調査時期】
平成25年2月中旬~3月中旬実施
【参加国】
34カ国・地域
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
<研究協力校・協力者>
研究をまとめるに当たり,次の皆様から御協力をいただきました。(平成25・26年度)
【教育委員会】(順不同)
-アンケートへの協力-
県教育庁義務教育課
【平成24年度研修講座等の受講者】
県教育庁高校教育課
就学前・小学校合同研修会
県教育庁保健体育課
小学校授業力向上研修講座Ⅰ,Ⅱ
北教育事務所
中学校授業力向上研修講座Ⅰ,Ⅱ
中央教育事務所
特別支援学校授業力向上研修講座Ⅰ,Ⅱ
南教育事務所
高等学校教職5年経験者研修講座
北教育事務所鹿角出張所
小・中学校新任教務主任研修講座
北教育事務所山本出張所
高等学校教職10年経験者研修講座
中央教育事務所由利出張所
高等学校英語科の授業スキルアップ
南教育事務所仙北出張所
高等学校初任者研修講座
南教育事務所雄勝出張所
思考力・判断力・表現力等を育む言語活動の充実
潟上市教育委員会
県立学校新任教務主任研修講座
大潟村教育委員会
小学校新任生徒指導主事研修講座
中学校新任生徒指導主事研修講座
【学校等】(順不同)
高等学校新任生徒指導主事研修講座
大潟村立大潟幼稚園
中学校初任者研修講座
大潟村立大潟小学校
小学校初任者研修講座
大潟村立大潟中学校
特別支援学校初任者研修講座
秋田市立土崎中学校
小学校教職5年経験者研修講座
潟上市立大豊小学校
中学校教職5年経験者研修講座
潟上市立羽城中学校
小学校教職10年経験者研修講座
秋田県立秋田西高等学校
中学校教職10年経験者研修講座
大館市立東中学校
高橋 晋 教諭(音楽科:平成25年度)
民謡から広がる我が国の伝統的な歌唱
秋田県立西仙北高等学校
關 友明 教諭(地理歴史科:平成25年度)
生徒指導総合研修講座
キャリア教育推進研修講座
秋田県立大曲農業高等学校
齋藤羽純 教諭(保健体育科:平成25年度)
小・中学校新任研究主任研修講座
潟上市立大豊小学校
佐々木公子教諭(算数科:平成26年度)
佐藤聡子 教諭(理科:平成26年度)
高等学校授業力向上研修講座Ⅰ,Ⅱ
専門的実践力向上研修講座
特別支援学校教職10年経験者研修講座
小・中学校道徳教育推進教師研修講座
潟上市立羽城中学校
鐙 基倫 教諭(数学科:平成26年度)
眞壁 豪 教諭(数学科:平成26年度)
特別支援学校教職5年経験者研修講座
秋田県立秋田西高等学校
河上貴子 教諭(数学科:平成26年度)
宮野悠香 臨時講師(保健体育科:平成26年度)
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秋田県総合教育センター 平成26年度 研究紀要
<引用・参考文献>
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秋田県教育委員会(2013)『平成25年度学校教育の指針(本年度の重点)』
秋田県教育委員会(2014)『平成26年度学校教育の指針』
秋田県教育委員会(2014)『平成26年度学校教育の指針(本年度の重点)』
秋田県教育庁義務教育課(2011)『“
「問い」を発する子ども”の育成に向けて』
秋田県検証改善委員会(2013)『平成24年度学校改善支援プラン』
秋田県検証改善委員会(2014)『平成25年度学校改善支援プラン』
秋田県総合教育センター(2012)『平成23年度研究紀要 43集』
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秋田県総合教育センター(2010)「あきたのそこぢから」
秋田県総合教育センター(2011)「ことばナビ」(改訂版)
秋田県総合教育センター(2012~2014)「特色ある学校(園)
」
ベネッセコーポレーション(2011)『VIEW21』[中学校版]Vol.2
ベネッセコーポレーション(2013)『VIEW21』[中学校版]Vol.1
文部科学省(2008)『幼稚園教育要領』
文部科学省(2008)『小学校学習指導要領』
文部科学省(2008)『中学校学習指導要領』
文部科学省(2009)『高等学校学習指導要領』
文部科学省(2008)『小学校学習指導要領解説
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文部科学省・国立教育政策研究所(2013)『平成25年度全国学力・学習状況調査【中学校】
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文部科学省・国立教育政策研究所(2014)『平成26年度全国学力・学習状況調査【小学校】
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文部科学省・国立教育政策研究所(2014)『平成26年度全国学力・学習状況調査【中学校】
報告書』
文部科学省(2013)『初等教育資料』6月号,7月号,8月号
リクルート(2014)『Career
Guidance』Vol.405
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各教科等のねらいに迫る言語活動の在り方
- 児童生徒の考えを生かす指導の工夫・改善 -
(2年次)
教科・研究班
主幹(兼)班長
主任指導主事
指 導 主 事
近
宮
伊
大
黒
熊
高
小
稲
浅
金
安
藤
野
藤
野
澤
谷
橋
玉
川
沼
田
正 実
真知子
暢
一 紀
望
禎 子
晋
和 彦
一 男
和 子
敬 子
大 介