郡山市学校図書館協議会だより える・あい Library. Information 平成27年2月発行 No.4 《巻頭言》 郡山市中学校教育研究会会長 沼 正志 「子どもが本を読むことはいいことである。」これは誰も異存がない。文句のつけようもないのである が,そうであるならばなぜ低学年,高学年,中学生,高校生になるにしたがってだんだん読まなくな るのか。または「読まない」で済ませてしまうのか。目の前にどんなにたくさん本があっても,放っ ておくだけでは子どもは本を読むようにならない。であれば,読書は「趣味」でいいのか。学校図書 館と公共図書館の違いは,足を運ぶ人の本に対する必要性の違いだという。学校図書館には様々な子 どもが(必要性なんかにお構いなく)足を運ぶ。学校図書館がしなければならないことは, 「読めな い」 「読みたくない」子どもをいかにして本好きにするか・・・・。 前置きが長くなりましたが,これは学校図書館アドバイザーとして有名な五十嵐絹子氏の談話にあ ったものを短くまとめたものです。これを読みながら,私はまさに「読めない」 「読みたくない」子ど もであったなあ・・・と思いました。私事で恐縮ですが,家に「世界文学全集」がずらりと並んでい ました。子どもがいつか読むであろうと親が期待し,毎月揃えたのですが,私はその膨大なボリュー ムを見るといつも「読めない」 「読みたくない」気持ちが込み上げ,期待を見事に裏切りました。あの 本たちはどこに行ったのか・・・。人に読まれず,かわいそうな運命をたどる本たちを一冊でも少な くするために,私たちはどうすればいいでしょう。 読書離れ,本を読まない大学生,活字離れ・・・など,日本人は最近本を読まなくなった!と危機 感をあおるような言葉によく出会います。でも一方では朝の読書が学校に浸透したり,調べ学習で参 考書のページを一生懸命めくったりする子どもの姿がたくさん見られるようになりました。これらは まさに先生方と学校図書館の連携プレーです。コミックも活字と考えれば,あの「コミケ」 (年二回東 京で開催される「コミックマーケット」 )には日本だけでなく世界から一回で50万∼60万の人が集 まるといいます。 ( コミケの場合は活字以外の要素がいろいろ加わりますから一概には言えませんが。 ) これらを考えると,私たちはまったく読書や活字から遠のいているわけではないでしょう。ただし, ここまで情報化が生活の隅々に行き届くと,読書についての考え方も柔軟にする必要がありそうです。 さて,今年の歌会始の題は「本」でした。 「この本に全てがつまってるわけじゃないだから私が続き を生きる」これは15歳の中学生の歌です。想像の世界,未知の世界に心を躍らせ,生き方を考える。 役者のように自分以外の人生を演じてみる・・・。読書は楽しいものです。 「読めない」 「読みたくな い」子どもとも根気強くかかわっていきましょう。私も気軽に永く読書を楽しみたいと思います。 『提 言』 楽しく読み、書くことを実感できる読書 郡山市学校図書館協議会副会長 齋藤 義益 50歳を過ぎてから私が経験した読書と、その感想を書く楽しさについて紹介します。 はじめに感想を書くことです。市教委に勤務していたころは、 「わかり易い文章をいかに書くか」という課 題がありました。行政では挨拶文や事業の説明文などを発議(作成)した場合、決裁を部長等から受けますが、 その際、わかり易い文章についての指摘がありました。 国語教師の私が、行政職のN部長から文章の指摘を受けることはある意味衝撃的でした。はじめは教師の誇 り云々と思いましたが、現実問題としてその力をつけなければ仕事は進みません。そこで私はN部長に戦いを 挑みました。 「部長の文章力を超えたい。部長は文章力をどのようにしてつけましたか」と。N部長の答えは「読 書と感想を書くこと」でした。以来、本を読み終わった後は感想や書評を書いています。 「うまくなっている な」という美しい誤解(自己満足)は、 「楽しく書く」ことへ成長させることができたため、この習慣は今も 続いています。 次に、本の選び方を紹介します。私は基本的に他力本願です。知人の紹介に頼る場合が多いです。紹介する 人の作者や作品への情熱を感じたときは迷わず本を手にします。知人のプレゼンと自分の感想を「比較」し「違 い」を楽しむのです。 「違い」が新たな興味を生み、さらに「比較」するおもしろさの快感から同じ作家や同 じテーマの本を貪るようになりました。 本を読み、感想を書く力を育てるためには、その楽しさの根源やおもしろさの実体を追究する体験を重ね、 本を楽しむ自分流の「価値観」を獲得することが大切であると私は思います。 そういった意味で図書館担当の先生や、司書補の皆さんが子ども達の読書を豊かにするため様々な視点から 創意工夫されていることに心から感謝を申し上げます。私も機会をとらえ、この話を子ども達や先生方に紹介 し、ブックトークなどを実現したいと思っています。 《随 想》 『夢のワンダーランド∼図書館∼』 安積第一小学校 教諭 生江 喜代子 その部屋は、廊下の突き当たりにある。 入り口に向かう壁面は、歓迎ムード一杯の明るく楽しい掲示物で埋め尽くされている。子どもたちの足取りは自 然に速くなり、部屋へのパスポートであるカードを手に取って、入り口をくぐると・・・・そこは、まさにワンダ ーランド!本好きにはおなじみのキャラクターが壁面や棚の上で子どもたちを出迎え、バーコードマシンを手に持 ったスタッフが笑顔で迎える。子どもたちは抱えた本を素早く差し出し返却の手続きをすると、足早に去っていく。 今持っている本を、本棚に戻すために。そして、一刻も早く、次に借りる本を手に入れるために・・・。 本校の図書館で、毎日休み時間に目にする光景である。子どもたちがわくわくした 気持ちで喜んで通う図書館の環境は、司書補の菊地由美子が16年間で培ってきた賜 物だ。静かに過すべき図書館で、にこにこしながら子どもたちとおしゃべりを楽しむ 菊地は、まぎれもなく図書館のドンである。そして、司書教諭は知っている。 「もう、 大変、大変。 」と言いながら、掲示物を作り、お便りを発行し、全校生に配る図書館 のしおりを作っている菊地が、実はそれらの仕事が大好きで、楽しみながら作業をし ていることを。まさに、菊地由美子あっての安積第一小学校図書館なのである。 《随 想》 『現代に生きるコペルニクスを育てる』 小原田中学校 教諭 栗原 洋美 コペルニクスは、16世紀初頭の天文学者。多数の印刷本から集めた観測記録をもとに、天動説の矛 盾を発見し、地動説を唱えた。私たちは、入手できる情報量が激増しているという点で、コペルニクス と似た時代を生きている。だからこそ、情報を相互に結びつけ、体系的な理解をしていくことが大切な のである。 (国語3 光村図書「ネット時代のコペルニクス」吉見俊哉 より 一部抜粋) この教材は、情報化社会の可能性などを示唆したものである。この教材の授業を通して、情報センタ ーとしての図書館の役割が見えてきたような気がした。情報を提供するだけでは、その情報を知ること だけにとどまってしまう。しかし、情報と情報を相互に結びつけて体系的に理解できれば、それはやが て「知識」となり、 「生きる力」の基礎になるのではないか。コペルニクスが、本をたくさん読んで天動 説の矛盾に気づき、地動説を唱えたように、様々な本を読んだ子どもたちが、新しい考え方を形成し、 多角的に物事を考える力が育まれるように支援したい。子どもたちの知的好奇心を揺さぶり、探究心を 育てていくことが、 「情報化社会を生き抜くコペルニクス誕生」の原動力となるのかも知れない。 ところで、個人的なことではあるが、初任校の教え子が本を出版しているので、私は購入して読んで いる。彼は様々なデータや知識をもとに分析・考察したことや、様々な方との対談などを本にしている。 彼の本を読み、私自身も考えさせられることがたくさんある。教え子の成長を読書を通して感じること ができる。国語科教師として、こんなに嬉しいことはない。また、昨年度の福島県学校図書館研究大会 (北会津大会)で、小学校三年生の時に担任して下さった先生に30年ぶりに再会した。自分の発表す る分科会の運営責任者として先生がいらっしゃった時は、本当に驚いた。様々な仕事で忙しい毎日では あるが、出会いの不思議さ、素晴らしさを実感している。本と人と、それぞれの出会いを大切にしたい。 『私の学校図書館紹介』 喜久田小学校 司書補 郡司 都子 本校の図書室は、南校舎3階で普通教室の1.5倍。この中にぎっしりと書架と閲覧机が配置され、2 014年12月現在で10,291冊蔵書している。やや手狭ではあるが元気で明るい255名の喜久田 っ子達は「としょしつのやくそく」を守って上手に利用している。 ここ数年、全校で取り組んでいることは、おすすめの本「BOOKチョイス」の完読と1年間の目標と して「友だち100冊つくろうよ!!」と全員100冊読破にむかってがんばっている。 「BOOKチョイス」は、国語の教科書に掲載されている本を中心に質の高い本を学年毎に30冊選定。 完読した児童をお昼の放送で紹介。それと「認定書」 「BOOKチョイス賞」 「しおり」などをエコバック に入れてプレゼントしている。 また、今年度初めての試みとして保健委員会で行っている清潔検査(ハッピーつうちょう)とのコラボ こころもからだもおおきくなあれ!! ” と題し11月の読書月間に20冊クリアすると「ボーナスポイ ント50はぴ」と「月間賞luckyチケット」のダブルプレゼントと楽しく行えた。 委員会活動としては、課題図書の紹介・図書新聞の発行・読書クイズ・イラストコンテスト・読み聞か せ・春と秋の読書週間・11月読書月間のイベント(読書郵便・しおりコンテスト)などがあり参加者への プレゼントなどを考え活発に活動している。 この他にもさまざまな企画を考え、児童が楽しく図書室に足を運び、少しでも本の楽しさを知ってくれ れば・・・と日々思い、試行錯誤している毎日である。 「BOOKチョイス」 の掲示。 気球 ・UFO・星と毎 年変えている。 図書室廊下の季節の掲示。 「全校目標」 友だち100冊つくろうよ!! 入口の廊下壁面に年間を通しての掲示 「BOOKチョイス」完読児童の名前が 運動着についている。通年の掲示。 100冊達成した児童 破損した本をここに
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