ファーマシーレジデントが目指すべき行動目標と経験目標 (ア) 共通項目は、病院薬剤師に求められる医療人としての基本的な倫理観と責任感を評価する項目であ り、チーム医療を円滑に遂行するうえで重要な項目である。 1. 責任感 1-1. 自己の役割を良く理解し、責任を持って誠実に仕事を最後までやり遂げたか。 1-2. 適切なタイミングで、上司等関係者への報告、連絡、相談や申し送り等を行ったか。 1-3. 本学の職員としての自覚を持ち、服務規律や職場のルールを遵守したか。 1-4. 患者および内外の関係者への接遇、対応、気遣いに心がけているか。 2. 協調性 2-1. 自分の担当分野に固執せず、相手の話を聞き柔軟に対応し、関係者と協調したか。 2-2. 上司、同僚や他職種等と協力し、仕事を進めたか。 2-3. 医療チームとしての関係を形成し、医療職としての役割を果たしたか。 3. 積極性 3-3. 探求心、向上心を持ち専門性を高める努力を行ったか。 3-4. 新しい業務・課題への挑戦を行ったか。 3-5. 自己啓発および職務遂行のため、内外の研修会等へ積極的に参加したか。 4. 知識・技術力 4-1. 職務に必要な知識や技術を修得し、業務に活用できたか。 4-2. 担当業務や関連する他の業務についての知識と技術の修得に努めたか。 5. 業務遂行能力 仕事の結果は、正確で信頼のおけるものであったか。 5-1. 仕事の重要度、優先度を的確に判断し、迅速に仕事をすることができたか。 5-2. 仕事のトラブルに対し、迅速かつ適切に処理できたか。 6. 説明能力・表現力 6-1. 患者や内外の関係者にわかりやすく正確に説明できたか。 6-2. 上司等関係者に対し、的確な説明を行えたか。 6-3. 作成資料等は効率的かつわかりやすい内容であったか。 7. 理解力 7-1. 医療事故防止、感染防止等、院内の各種マニュアルを理解し適切に行動できたか。 7-2. 部門の方針、上司の指示を理解し行動できたか。 8. 課題対応能力 8-1. 従来のやり方を参考にしながら効果的な改善を提案、実行したか。 8-2. 適切な情報収集に基づき、現状を分析し、対応したか。 8-3. コスト意識を持って経費節減に努めたか。 (イ) 調剤室、注射薬供給管理室、薬効評価解析室、医薬品情報室、総合製剤室、薬剤管理指導室の業務を 修得するために、1 年次にすべての部署をローテートする。 1. 調剤室 1-1. 調剤室業務全般 1-1-1. 調剤室で行う業務の内容と1日の流れ、1週間の流れを説明できる。 1-1-2. 処方薬の発注業務の流れと注意点について説明できる。 1-2. 医薬品管理 1-2-1. 毒薬、劇薬、向精神薬、糖尿病薬、覚醒剤原料等について手順に従って調剤、管理が できる。 1-2-2. 処方薬の有効期限の管理を手順に従って実施できる(自動分包機内の錠剤や散薬、水 薬など含む)。 1-2-3. 処方薬の返品処理、破損伝票の処理を実施できる。 1-3. 調剤 1-3-1. 処方せん、薬袋の記載事項が整っているか確認でき、調剤(散剤、液剤含む)ができ る。 1-3-2. 処方鑑査ができる。 1-3-3. 処方内容に修正・中止が生じた場合に正しく処方修正できる。 1-3-4. 処方データを部門システムから適切に送信できる(エラー対応含む) 。 1-3-5. 自己注射、吸入器具、インスリン器具等の取扱い方を患者へ説明・指導できる。 1-3-6. 調剤機器(秤量器、分包機、錠剤自動分包機など)の基本的な取扱いができる。 1-3-7. 簡易懸濁法が適用できるかどうか検討し、必要に応じて提案できる。 1-3-8. 診療科からの依頼(再加工、至急調剤等)に対応できる。 1-3-9. 手書き処方せんでの調剤ができる(特別購入医薬品を要望書取扱含む)。 1-3-10. 病棟常備薬の取り揃えができる。 1-3-11. 調剤済み処方薬の鑑査ができる。 1-4. 疑義照会 1-4-1. 疑義照会を適切に実施できる(その場で確認が取れない時の対応も含む) 。 2. 注射薬供給管理室 2-1. 注射薬業務全般 2-1-1. 注射薬供給管理室で行う業務の内容1日の流れ、1週間の流れを説明できる。 2-1-2. 注射薬の発注・納品・検収・保管・供給業務と注意点について説明できる。 2-2. 注射薬管理 2-2-1. 毒薬、向精神薬、筋弛緩薬についての手順に従って調剤、管理できる。 2-2-2. 注射薬の有効期限の管理が手順に従って実施できる(ピッカー内注射薬、生物由来製 品含む)。 2-2-3. 注射薬の返品処理、破損伝票の処理を適切に実施できる。 2-3. 注射薬調剤 2-3-1. 注射薬処方せん(無菌製剤、抗がん剤含む)に従って正しく調剤し、外来、病棟、無 菌製剤などの払出しが手順通りできる。 2-3-2. 処方鑑査ができる。 2-3-3. アンプルピッカーを操作し、日常的なエラーに対応できる。 2-3-4. 処方内容に修正・中止が生じた場合に処方修正を正しく実施できる(抗がん剤レジメ ン含む)。 2-3-5. 診療科から至急調剤、及び注射薬が届いていないとの連絡に対応できる。 2-3-6. 管理システムを用いて特定生物由来製品の調剤ができる(常備薬の取り揃えを含む) 。 2-3-7. 手書き処方せんでの調剤ができる(特別購入医薬品を含む) 。 2-3-8. 病棟常備薬の取り揃えができる。 2-3-9. 手術室への定数払出しと救急救命センター・アンギオの常備カートの補充ができる。 2-4. 疑義照会 2-4-1. 疑義照会を適切に実施できる(その場で確認が取れない時の対応も含む) 。 3. 薬効評価解析室 3-1. TDM 業務全般 3-1-1. 薬効評価解析室の業務内容を説明できる。 3-1-2. TDM 対象薬物の動態学的特性を説明できる。 3-1-3. 解析に必要な情報を抽出できる。 3-1-4. 抗 MRSA 薬の初期投与設計ができる。 3-1-5. 各試薬の管理(使用期限・保存条件)ができる。 3-1-6. 各測定機器の精度管理ができる(キャリブレーションの実施を含む) 。 3-1-7. 各測定機器の日常的なメンテナンスができる。 3-1-8. 各測定機器で検体・コントロールを測定できる。 3-1-9. 症例に対して適切なコメントを記載できる。 4. 医薬品情報室 4-1. 医薬品情報室の業務全般 4-1-1. 医薬品情報室の所掌業務について説明できる。 4-2. 医薬品の採用と使用中止、自主回収 4-2-1. 当院の登録医薬品の分類と定義について説明でき、申請、登録、購入、周知の手順を 説明、実践できる。 4-2-2. 採用医薬品、患者限定医薬品、院外処方せん用登録医薬品の見直し手順について説明 できる。 4-2-3. 製造販売中止医薬品、自主回収医薬品についての確認事項、とるべき措置について説 明できる。 4-2-4. 医薬品の販売名変更が行われる際の旧販売名、新販売名の取扱いについて説明でき、 また販売名変更が行われる理由が説明できる。 4-3. 医薬品の情報収集・管理・加工 4-3-1. 入手できる公的文書(イエローレターなど) 、メーカー作成書類(インタビューフォー ムなど)の位置づけについて説明できる。 4-3-2. 官公庁、関連団体から医薬品関連法規情報や医薬品情報、DSU を入手することがで きる。 4-3-3. 各種検索(論文、ガイドライン、医薬品情報など)がサイトや媒体、言語(日本語・ 英語)を問わずできる。 4-4. 医薬品の情報提供 4-4-1. DI-Weekly、薬の適正使用情報、薬剤部ニュースが作成、提供、あるいは登録できる。 4-4-2. 問い合わせの回答や入手した医薬品情報を、適切なデータベースに登録することがで きる。 4-5. がん化学療法レジメンの申請と登録 4-5-1. がん診療連携拠点病院の定義・基準・算定要件について説明できる。 4-5-2. 申請されたレジメンの事務局としての一連の工程(取り扱い、事前審査の準備、デー タベースへの登録、会議資料の作成)が実践できる。 4-6. 副作用に関する情報の取り扱い 4-6-1. 対厚労省、および院内運用の副作用報告について、説明・登録・記載(場合によって は送付)ができる。 4-6-2. 製薬企業から依頼される詳細調査の手続きを説明、実践できる。 4-6-3. 「医薬品副作用被害救済制度」および「生物由来製品感染等被害救済制度」について、 除外規定も含めて説明できる。 5. 総合製剤室 5-1. 入院がん薬剤業務 5-1-1. 調製に必要な溶解手順を理解して記載できる。 5-1-2. 調製に必要な器具・機器や正しい服装について説明及び使用できる。 5-1-3. 投与量・投与速度・投与時間に制限のある抗がん剤について説明できる。 5-1-4. 抗がん剤調製が正しく実施できる。 (液体、固体及び閉鎖系器具も含む) 5-1-5. 溶解液や希釈液に注意が必要な抗がん剤を理解して調製できる。 5-1-6. 入院抗がん剤鑑査手順を理解して実施できる。 5-2. 外来がん薬剤業務 5-2-1. 代表的ながん疾患の特徴やレジメンの検査値確認(中止基準、CTCAE 等)について 理解して説明できる。 5-2-2. レジメンチェックを正しく実施できる。 5-2-3. 外来で抗がん剤調製が正しく実施できる(液体、固体及び閉鎖系器具、ルートプライ ミングも含む) 。 5-2-4. 外来化学療法部における抗がん剤鑑査手順を理解して実施できる。 5-2-5. 患者に医薬品情報、治療スケジュール、副作用、投薬上の注意などを説明できる。 5-3. 製剤業務 5-3-1. 院内製剤の必要性及び PL 法(製造物責任法)の要点を説明できる。 5-3-2. 医師からの申請から薬剤部での製造までの過程が説明できる。 5-3-3. 無菌室(クリーンベンチ)での無菌操作を実施できる。 5-3-4. 軟膏、坐剤、注射剤などの院内製剤の特徴、製法などを理解し、調製できる。 6. 薬剤管理指導室 6-1. 薬剤管理指導業務及び病棟薬剤業務 6-1-1. 病棟における薬剤師の業務や薬剤師の役割を概説できる。 6-1-2. 病棟における薬剤の保管場所や管理方法について説明できる。 6-1-3. 薬剤管理指導の算定要件が説明でき、指導記録に必要な書類について列挙できる。 6-1-4. 臨床検査値と薬の関連性を説明できる(薬による検査値の変動を説明できる)。 6-1-5. 患者の診断名、病態から薬物治療方針を把握できる。 6-1-6. 患者と良好なコミュニケーションをとり、共感的な態度で実施できる。 6-1-7. 持参薬を正確に確認し、確認表を作成し適切な処理ができる。 6-1-8. 初回面談時、患者または家族に確認すべき事項を確認し記録作成できる。 6-1-9. 患者に分かり易い言葉で薬の説明ができ、開放型の質問方法を実施できる。 6-1-10. 薬の効果や副作用について、患者との会話や様子より確認し、検査値などとの関連性 を考えながら定期的な指導が実施できる。 6-1-11. 薬物治療上の問題点をリストアップし SOAP を作成できる。 6-1-12. 退院指導に必要な事項を理解し実施できる。 6-1-13. カンファレンスで医師に情報提供ができる。 6-1-14. 医師に処方提案できる。 6-1-15. 送信前の入力処方の鑑査を行い、不備への対応を医師に提言できる。 6-1-16. 薬剤情報提供書や手帳シールを作成できる。 7. 特別な管理が必要な医薬品の取り扱いについて 7-1. 麻薬、筋弛緩薬、特定生物由来製剤、サリドマイド、レナリドミド、プレグランディン、イン スリン製剤の取り扱いについて 7-1-1. 「麻薬及び抗精神薬取締法」について理解している。 7-1-2. 麻薬処方せんを適切に取り扱うことができる。 7-1-3. 麻薬製剤について、適切に実施確認できる。 7-1-4. 入院麻薬製剤の返納について、適切に対応できる。 7-1-5. 持ち込み麻薬について、適切に対応できる。 7-1-6. 麻薬事故届、麻薬廃棄届について理解している。 7-1-7. 筋弛緩薬の処方せんを適切に取り扱うことができる。 7-1-8. 特定生物由来製剤の処方せんを適切に取り扱うことができる。 7-1-9. サリドマイド、レナリドミドの処方せんを適切に取り扱うことができる。 7-1-10. プレグランディンの処方せんを適切に取り扱うことができる。 7-1-11. インスリン製剤の院内の取り扱いについて理解している。 8. その他の薬剤業務について 8-1. 手術部、救命救急、ICU における薬剤業務 (ウ) 2 年次の医療薬学専門コースでは、以下の疾患について、疫学、発症機序、危険因子、臨床所見、診 断基準、標準的治療の知識を修得する。さらに、臨床薬剤業務を経験することで、チーム医療を実践 できる高度な知識および技能の修得を目指す。 1. 精神疾患:統合失調症、うつ状態、躁状態、神経症、心身症、不眠症、認知症、注意欠陥多動性障害、 薬物/アルコール依存、薬物乱用 2. 神経・筋疾患:てんかん、パーキンソン病、振戦、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、頭痛・片頭 痛、疼痛、末梢神経障害 3. 骨・関節疾患:変形性関節症、骨粗鬆症 4. 免疫疾患:アレルギー、アナフィラキシー、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、ベーチェット 病、臓器移植 5. 心臓・血管系疾患:高血圧症、低血圧症、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全、心筋症、末梢性動脈 閉塞、肺高血圧症、血栓塞栓症、脳内出血、脳梗塞、くも膜下出血 6. 腎・泌尿器疾患:慢性腎疾患(糸球体腎炎、ネフローゼ症候群を含む)、腎不全、透析、尿路結石、 神経因性膀胱・過活動膀胱、前立腺肥大症、性機能不全 7. 産科婦人科疾患:月経障害、更年期障害、子宮内膜症、妊娠悪阻、切迫流産、陣痛微弱、不妊症、避 妊 8. 呼吸器疾患:気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、びまん性汎細気管支炎、間質性肺炎、肺気腫、喫煙依 存、睡眠時無呼吸 9. 消化器疾患:消化性潰瘍、逆流性食道炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、下痢、便秘、 悪心・嘔吐、腸閉塞、痔疾患、肝硬変、肝炎、胆石症、薬物性肝障害、膵炎 10. 血液および造血器疾患:貧血、紫斑病、播種性血管内凝固症候群、血友病、白血球減少症、血小板減 少症 11. 感覚器疾患:緑内障、白内障、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、副鼻腔炎、メニエール病、めまい、 花粉症、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、味覚障害 12. 内分泌・代謝疾患:甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、糖尿病、脂質異常症、痛風・高尿酸血症、 副甲状腺疾患、尿崩症 13. 皮膚疾患:ざ瘡、アトピー性皮膚炎、白癬、乾癬、帯状疱疹、褥瘡、火傷、接触性皮膚炎 14. 感染症:感染症分類と起炎微生物、呼吸器感染症、尿路感染症、眼感染症、中耳炎、HIV 感染症、深 在性真菌症、中枢神経系感染症、発熱性好中球減少症、胃腸感染症、婦人科感染症、感染性心内膜炎、 敗血症、性行為感染症、皮膚/軟部組織感染症、結核 15. 悪性腫瘍:食道がん、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がん、肺がん、乳がん、白血病、悪性リンパ腫、 多発性骨髄腫、子宮がん、卵巣がん、腎がん、膀胱がん、皮膚がん、頭頸部がん、前立腺がん、脳腫 瘍、がんの支持療法、緩和ケア 16. その他の疾患:酸塩基平衡異常、電解質異常、栄養欠乏症
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