I SSN0 3 8 7-1 7 8 9 大 阪市大 r 季刊経 済研 究j γol . 2 5No. 4Ma r c h2 0 03,pp.7 590 空 間計量経済学 ( Spa t i a lEc onome t r i c s ) にお け る 空 間的外 部性 の扱 い方 につ いて 小長谷 一 之 【 摘要】 通常の統計 ( 分析)手法 は観測単位 ごとの独立性 を仮定 しているが,たいていの地域 デー タは,空間的 自己相関が存在す るため独立でない. この空 間的 自己相 関のため に,本来,す べ ての地域 デー タにおいて,通常 の統計分析手法 を安易 に適用 で きないはず である. この間 題 をあつか う上で ヒン トとなるの は,時間方向の手法である. いわゆる時間方向の相関デー タは,計量経済学 で もっ とも頻繁 にあ らわれ,それゆえ重要であ り,時系列分析では,時間 的 自己相関 を考慮 した正統的統計手法が確立 されている. この時系列分析 を空 間次元 に拡張 したのが 「 空間計量経済学」( Spa t i a lEc onome t ic r s )であるが,時間 1次元 を空間 2次元 (+ 時間 1次元) にす るだけで も,方向性が出て くるため複雑であ る. しか し本来 は地価や土地 利用 な どの地域経 済デー タの分析 には不可欠である.現在 は手法 の洗練化 の段 階であるが , 最終 的 には,時系列分析 の ような多様 な手法が 開発 され るこ とが望 ま しい とみ られている. 本論文では,その最近の試み を整理 し,最尤法の計算法 に関する若干の考察 をお こなう. Ⅰ.空間計量経済学 とは 1.空間計量経済学の意義 空 間経 済学 ,地域経 済学 ,都 市 経 済学等 で あ らわれ る地域 デ ー タには空 間的 自己相 関 ( spa t i a lAut o c o汀e l a t i on) とい う特殊 な問題があることが知 られている.多変量解析等の通常 の統計手法 は,観測値 の独立性 とい う大前提 に基づいてお り, これ を前提 と して地域 デー タ に対 して も通常の続計手法の無批判的な適用がな されるが,実 は,空 間的 自己相関が強い場 合は,こうした適用 自体がすべて疑 わ しくなって しまう. 1 9 7 0 年代 ∼1 9 8 0 年代 にかけて, この空間的 自己相関の問題 に気がついた研究者 は, これに 76 季刊経済研究 5巻 第2 第 4号 対 処 す る方 法 をい くつ か 開発 したが , もっ とも有望 なの は,近年計 量経 済学 の分野 で急 速 に 進 歩 した時系 列相 関分析 に並 行 的 な理論 を構 築す る とい う もので あ る.時系 列 相 関分 析 は, 時 間方 向の 自己相 関 を,主 に回帰 モ デル をベ ース と して, これ に時 間方 向の ラグ を もった項 を追加 したモ デル を明示 的 に特定化 す る こ と・ に よって,正面 か らあつ か う手 法 であ る. これ に対応 して,空 間的 自己相 関その もの を組 み込 んだモデ ル を特 定化 す る こ とに よって ,空 間 spa t i a lEc o nome t ic r s ) 的 自己相 関問題 を正面 か ら解決 しようとす る方法 を,空 間計 量経済 李 ( とい う. これ は ク リフ ( Cl i f) とオル ド ( Or d) による空 間的 自己相 関研 究 か ら出発 し, 1 9 8 0 年代 にア ンセ リン ( 血s e l i n) によってその概容が整 え られた. 本論文 は, この空 間計量経 済学 の 出現 の経緯 とその枠組 に関す る短 い ま とめ を行 ったあ と, 特 にその分析面 で重 要 な役 割 をはたす行列方程式 に対 す る最 尤推定法 の適用 と計算法 につ い て若干の考察 をお こな うこ とを目的 としてい る. 2.地価 デ ータの特殊性 経済学 にお いて,空 間的 自己相 関分析 の要 因 とな る外 部性 効 果が 反映す る典型 的 な空 間チ ー タと して,地価 ・不動 産価格 の デー タが あ るが, これ には,以下 の ような特有 の問題 が あ ることを最初 に指摘 してお く. (1) デー タ平滑化 の必 要性 地価 は,理想 的 には, 同一地点 の時系列 変化 を分析 す るべ きであ るが,そ れ は,実 質 的 に も理論 的 に も不可 能であ る. た とえば公示地価 の場合 ,観測 点 を意識 的 に変 える政策 が あ り, 実 質 的 に 5年程 度 で場 所 が 変化 す る. この よ うな場合 , な ん らか の形 で ク ロス セ ク シ ョン ( 同一時 間断面) の地価 関数 を推定 し,平滑化 した外挿地価 を計算 し,同一定点 の修 正地価 と してデー タセ ッ トを整備 す る必要がある. (2)空 間的相互作用 の構 造 の把握 の問題 土地利 用 と同 じく,構 造行 列 には,① 隣接相互作用 ( - 計 量 地理 学 でい う ところの近 隣効 莱),② 遠隔相互作用 ( - 計量地理学 でい うところの階層効 果 ,離 れ た都市 ( ない し都心) か らの重力 モデル型行列) の 2者が ある. これ に通常 のオ ンサ イ トの説 明変数 が加 わる. Ⅰ .空間計量経済学の歴史 1.空間的依存性 ( 空間的 自己相 関)の発見 一空間統計学 か らの貢献 今 日の空 間計 量経 済学 が成立 す る最大の 誘 因 となったの は,空 間・ 的依存 性 の定量 的証拠 で Spa t i a lAut o c o 汀e l a t i on)の発 見であ る.空 間的 自己相 関 ある, いわゆる 「 空 間的 自己相 関」( 空間計量経済学 ( spa t i a lEc onome t r i c s ) における空間的外部性の扱い方 について 77 はいわゆる時系列相 関 を空 間方 向の 「 近 隣」に拡張 した ものであ り,典型 的 にはモ ラ ンの Ⅰ 統計量 Ⅰ-eーwe/ e′ ° に よって計測 され る. ここでW は近隣 を指定す る空 間的 ウェイ ト行列 ( 構造行列), eは誤差 項 で,結局 Ⅰは近 隣の 2点 の誤差 ベ ク トルのモ ー メン ト和 を とった ものであ る.特 にク リフ とオル ド ( 1 97 3, 1 981) に始 まる,バ ー トレッ ト,ベ ネ ッ ト, リグ リー, グ リフ ィス, ア ブ トン, フィングル トンらの研 究 は重 要であ る.空 間的 自己相 関 の存在 は,地域 デー タに対 し て空 間的効果 を明示 的 に取 り入 れ ない通常 の統計学手法が適用 で きない こ とを示 し,地域科 学 における空間計量経済学手法 の確立 を急がせ たのである. 2.空間計量経済学 モデル (空間的 自己回帰モデル)の考案 空 間統計学 にお け る空 間的 自己相 関の研 究 は,空 間的依存性 の存在 を示 しただけで,その 対処法 を提示す るこ とはで きなか った. ここに空 間統計学 にお け るデ ー タ志 向 の アプローチ か ら,モデル志 向の アプローチ- の移行 が どう して も必 要 だ ったので あ る.そ のモデル志 向 アプローチの研究が クリフ, オル ド, ドライア ン, ドゥ,ア ンセ リンらに よって始め られた. (1)空 間的効果モデル ( 被説明変数の空間的 自己相関) 9 8 0年 に ドライア ン ( Do r e i a n)が,空間的 自己相 関は,被 説明変数 自身 に反映 され まず ,1 pa t i a lEfe c tMode l ) を導入 した. ( 以下,ス カ ている として,空 間的効果モデル (SEM :S ラー以外 のベ ク トルや行列 をゴチ ック体活字で示す) Y- pW .Y+X β+ ∈ - (1) E (【)-0 E (Eel ) -62 tl ( 分散均一) ここで, Y:従属変数の N次元列ベ ク トル ( Nはデー タ数) x: 一般説明変数 の NXK行列 ( Kは説明変数 の種類) β :一般説明変数パ ラメー タの K次元列ベ ク トル W, :従属変数の空 間的 ウェイ トの N次正方行列 ( 構造行列) p :従属変数 Yの空 間的 自己回帰パ ラメー タ 【 :誤差項の N次元列ベ ク トル (2)空 間的撹乱モデル ( 誤差項の空 間的 自己相関) 982年 に ドゥ ( Do w)が ,空 間的 自己相 関 は,誤差項 に反 映 してい る と して,空 間 次 に, 1 S p a da lDi s t ur ba nc eMo d e l ) を導入 した. 的撹乱モデル (SDM : 78 季刊経済研究 第2 5巻 第 4号 Y-x β+ 【 ∴・(2) ∈- AW 2 ∈+ p - (3) E (p)-0 こ こ で, Y:従属変数 の N次元 列ベ ク トル ( Nはヂ- タ数) x:一般説明変数の NXK行列 (Kは説明変数 の種類) β :一般説明変数パ ラメー タの K次元列ベ ク トル W2:誤差項 の空 間的 ウェイ トの N次正方行列 ( 構造行列 ) 人 :誤差項 【 の空 間的 自己回帰パ ラメー タ 【, ド :誤差項 の N次元列ベ ク トル 3.ア ンセ リンによ る空 間計量経済学 モデルの統合 (1) ア ンセ リンの研 究の背景 ア ンセ リンは, 1 9 8 0 年代 後半 に空 間計 量経 済学 の基本 的枠組 み を確 立 した人物 で あ る. 当 Aが 設置 され,地理情報科学 時彼 の いた カ リフ ォルニ ア大学 サ ンタバ ーバ ラ校 は, NCGI と他 の科学 の融 合が進 め られ ていた. い わば地理情報科学 と地域 科学 ・経 済学 の幸福 な出会 いが 空 間計 量 経 済 学 が 生 み 出 した とい え る. ち なみ に ア ンセ リ ンは そ の 地 理 ・経 済 学 部 ( De p a rt me ntofGe o g r a p hya ndEc o no mi c s )において空 間計量経済学の基本 を構築 したのであ る. こ う した ク リフ, オル ド, ア ンセ リン らに よる1 9 8 0 年代 後半 の空 間計量経 済学 は,それ ま での空 間的 自己相 関研 究 か ら進 んで,確 率 モデル を用 い た推計 統 計 学 的観 点 を確 立 した こ と に よって大 き く進展 した. これ まで,横 断面の地 域デ ー タは 「ユ ニ ー クで あ り二度 と生起 し ない母集 団 その もの で ある」 とい う立場 が あ ったが,推計統計学 的確率 モデル では,「背後 に 母集 団 をも った確 率 モデルの実現 で ある」 とい う立場 を とる. これ によ って, さま ざまな計 量経済学手法の適用が可能 とな ったので ある. (2) ア ンセ リンによる空 間計量経済学 の定義 ア ンセ リンに よれば,空 間計 量経済学 とは, 「空 間的依 存性 と空 間的不均 一性 の構造 を定式 化 して,地域 科学 にお け るモ デル構築 の ため,適切 な特 定化 ,推 定 ,仮 説検証 を実行 す る手 段 をあたえる方法」 と定義 され る.彼 は次 の諸点 を指摘 している. ① 空 間計量経済学 は,地域科学 ( RS:Re i gona l S c i enc e)の一分野で もある. ( 参通常 の計 量経 済学 と異 な る点 は,空 間的効 果 を明示 的 に取 り入 れて い る こ と. これ に よ って,空 間デ ー タの非独立性 の問題 を克服 しよ うとす る. また空 間の多方 向性 の ため,通常 空間計量経済学 ( spa t i a lEc onome t ic r s ) における空間的外部性の扱い方 について 7 9 の計量経済学の時系列分析 の時間方向 を空 間方向 に単純 に拡張 した もの にはな らない⊥ ③ デー タ志向型 の空間統計学 と異 なる点 は,モデル志 向型 アプローチである こと. ④ 空 間 的効 果 は , 空 間 的 依 存 性 ( Spa t i alDependenc y) と空 間 的 不 均 一 性 (Spa t i al He t e r o ge ne i y) に分 け られる. t ⑤ ア ンセ リン以前 にアイサ ー ドが空 間経済学 ・地域科学 の領域 と して きた テーマ ( 空 間的 相互作用,都市 の密度 関数 ,地域計量経済モデ ル等)の うち,通常 の計 量経 済学 の手法 でで きる もの も,空 間的効果 ( 特 に空 間的 自己相 関) を明示的 に取 り入 れ る こ とに よって深化す る可能性がある. ⑥ 「 空 間的依存性 」 をモデル において実現す る道具 は空 間的 ウェイ ト行列 ( 構造行列)で あ る.空 間的依存性 は, トープ ラ-の地理学第 1法則 「 すべ ての ものが他 のすべ ての もの関 係す るが,近い もの は遠方の もの よ り強 く関係す る ( e v e r y t hi ngi sr e l a t e dt oe v e r y t hi nge l s e, butne r t a hi n gsa r emo r er e l a t e dt ha ndi s t a ntt hi ngs ) 」が よ く示す ように,地域科学の中心的概 念である. ⑦ 「空間的不均 一性」 は,モデ ル内の関数形 とパ ラメー タ ( 特 に分散 )が位 置 やデー タセ ッ トの中で一様でない ことを示す.標準的計量経済学手法 によって対処 で きる ものが多い. (3) ア ンセ リンによる空 間計量経済学モデルの統合 被説 明変数お よび誤差項双方 に空 間的 自己相 関 を もち,かつ空 間的不均 一性 を もらた もっ とも一般的モデルは,空間的効果モ デル と空間的撹乱モデルを融合 した形 を している. Y-PW, Y+Xβ+ ∈ - (1) ・-AW2∈+ p - (3) E (p)- 0 E (川 ' ) -n ( 一般行列 は分散不均一 -空 間的不均一性 をあ らわす) こ こで, Y: 従属変数の N次元列ベ ク トル ( Nはデー タ数) x: 一般説明変数 の NXK行列 ( Kは説明変数 の種類) β :一般説明変数パ ラメー タの K次元列ベ ク トル W, :従属変数の空 間的 ウェイ トの N次正方行列 ( 構造行列) W2:誤差項の空 間的 ウェイ トの N次正方行列 ( 構造行列) β :従属変数 Yの空間的 自己回帰 パ ラメー タ 人 :誤差項 亡 の空 間的 自己回帰パ ラメー タ E,p:誤差項の N次元列ベ ク トル Oが表現 してい る・ ここで,空間的依存性 は, pW .と AW 2,空 間的不均 一性 は,. 季刊経済研究 80 第2 5 巻 第 4号 Ⅱ.空間計量経済学のモデルの解法 1`一般形 (1)非線形モデルの陰関数表現 Y と 【 の変数 をまとめるため, A- I-PW I B- I- 1W 2 とお く. こうす る と,一般 モデル (1), (3) は, AY-Xβ- 【 (6) B ∈〒 p (7) となる. これ を解 くには,正規分布 とい う性 質 のわか ってい る独 立誤差項 pか ら逆 に出発 す る.誤 差共分散行列 E [いい' ]が対角 的であるので, これ を Q とお くと, Q 1/ 2 日は,標準正規分 .とお くと, 散の正規分布の独立撹乱項ベ ク トル となる. これ を V V-a-1 /2日 (8) す る と p-Ql /2V (9) で,誤差項 【は 【-B-1・Q l /2V ( 1 0) とな り, (6) に代入 して AY-Xβ+B-一・O/2V ( ll) 変形 して, E ) 1/2B ( AY-XP)- V ( 1 2) これは,非線形モデル ( すなわち,パ ラメタ群 0が非線形)の陰関数形の表現 f( Y, X, 0)- V となっている. (2)対数尤度 関数の導 出 尤度 関数 は Yに関す る確率密度 関数 の積 なので,対数尤度 関数 は Yに関す る確 率密度 関数 の対 数和 となる.い ま, Vは標準正規分布であ るか ら Vに関す る確率密度 関数 は簡単 であ る. そ こで, Vか らYへ の確率密度 関数の変換公式 を使 えば Yに関す る ものが求め られ る. f( Y) - lJト f (V) ここで確率変数 Vのベ ク トルか ら,確率変数 Yのベ ク トルへの,変換 のためのヤ コピアン ∫-de t (∂ V/ ∂Y) 空間計量経済学 ( spa t i a lEc onome t r i c s ) における空間的外部性の扱い方について 81 は, ( 1 2) よ り, J- l E )1/2 ・ B ・A l - I Q1/2 I ・l Bl・ lA l ( 1 3) 誤差項 Vが結合標準正規分布 なので,観測値 Yの対数尤度関数 は, 1--( N/2)l n (7 T)-( 1 /2 )・l nl aI +l nJ BI +l nl A ト ( 1 /2 )vl v ここで, VV- (Ay-Xβ)B' 01 1B (Ay-Xβ) ( 1 4) ( 1 5) は,適当に変換 された誤差項 の二乗和 である. 結局,尤度関数の最大化 は,「ヤ コピア ンの行列式 によって修 正 された ( 変換 された)誤差 15)式 の誤差項 の なかの二次形 二乗和 の最小化」に同等 となる.対数尤度 の本質的部分 は, ( 式 で , これはふ る まいの よい最適 化問題 であるが, Aと Bの中 に空 間的項 が 隠れてお り, こ M LE) は最小 2乗推定値 (LSE) と異 なる.その違 いの程度 は,空 のため最尤推定値 ( 間的 ウェイ ト行列 W ., W 2を含 む A, Bに関す る行列式 に よってお り,・p- + 1か ス- + 1 に近 づ くにつれて大 き くなる.最 尤推定量 のための漸近 的 な特性 を確保 す るため に,通常 は a, A, Bに適当な条件 をかすのが普通である. 2.空間的に均一 な SEMの例 (1)モデルの定義 SEM)を調べ るこ とに よ り, 被説 明変数のみ に空 間的 自己相 関があ る空 間的効果モデル ( 被説 明変数 と誤差項 の双方 に空 間的 自己相 関があ る場合 も一般性 を失 わず , ほぼ同 じ扱 いが で きるので, ここで は SEMを考 える. Y-PWY+Xβ+ 【 ・ ・ ・(1) E (e)-0 E (【【' ) - 62I ( 分散均一) ここ で , Y:従属変数ベ ク トル ( NXl) x: 一般説明変数行列 ( NXK) W:空間的 自己回帰構造行列 ( NXN) p :空間的 自己回帰パ ラメー タ β :一般説明変数パ ラメー タベ ク トル 【 :誤差ベ ク トル ( NX l) である. (2)最尤法 1) 【に関す る尤度関数 変換手続 きで, Cは正規分布 ( nor ma ldi s t ibut r ion)であることに注 目す る. 82 季刊経済研究 第2 5巻 第 4号 AY-Xβ- 【 と変形す る. ここで, A- J-pW -A (p) - pの関数,である・ 【 は,正規分布 なので,尤度関数 は簡単である. L (【)- 1/ (27 T62 )N /2・exp l - 1/ (262 ) ・【e] 2)Yに関す る尤度関数 そ こで, 【か らYへ変換す る.変換後の Yに関す る尤度関数 は, L (Y) 主 L (C) ・ l∂ 【/ ∂ ・ l( 変換のヤ コピア ン) Y -L (【) ・ lA l ±1/ (27 rq2 )N /2・exp l - 1/ (262 ) ・(AY-Xβ) -( AY-X β) ]・JA 1 3) Yに関する対数尤度 関数 l( Y)- 1nL ( ・ Y) --N/ 2・ln (2' r)-N/ 2・ln (02 )- 1/ (202 )・(YI A■ AYl 2β● XAY+ β一 XI Xβ)+ ln lA 1 4)対数尤度最大化問題 , 1( Y)を β, 0 2で偏微分 し,その偏微係数 -0の条件 か ら β*- (xx) 1 (X■ AY) YI AI AY-2βXAY+ βl X. X β) c r'2-2/N ・ ( これをまた 1 ( Y) に代 入すれば, 1 (Y, p, β書, g'2 )- const-N/ 2 (lno'2-2/N ・ln lA l ` ) 言い換 えると, 対数尤度最大化問題 は, le 触 dve l (Y) - Ino*2- 2/N ・ 1n IA Jの最小化問題 に帰着 され る. に代入する と,完全 に β が消 えて さらに, β書を o*2 o*2- 2/N ・ ( Y' A■ MAY) ( M≡ Ⅰ-X (X. X)-1 XT ) これを代入すれば, lで完全 にβ, Oが消 えて,定数 を除けば, le ue c d v e le u dv e2 (Y) - 1n ( YI A' MAY)-2/N ・ 1n lA'tの最小化問題 に帰着 される. この表式 で は,パ ラ メー タ β, Jが消去 され ,完全 に p のみ の関数 とな って い るの で , In lA lが計算で きれば, pのみの最小化問題 を考 えれば よい. (3) オル ドによる固有値分解法 ( 1 97 5) 結局, 1n I A lを評価す ることになるが,こ れはオル ドが問題 を簡単化 させている. 構造行列W の固有値 Ai の定義か ら,固有値 は最高次係 数が 1の固有方程式の解であるので, 固有多項式 は, 空間計量経済学 ( spa t i a lEc onome t r i c s ) における空間的外部性の扱い方について IA I-W l-r I. . . N =1. 8 3 (A- li ) と変形で きる. したが って, JA l- Jl- pW l -l(1/ p) l-W Ixp" -r l i=1. . N ( 1/ p- li) xp" -r li =1. . N ( 1- p li ) 最終的に,このヤ コピアンも評価 で き, le u e c d v e3 (Y) - In (Y' A' MAY)- 2/N ・∑ , . =1. . N ln ( 1- p li ) の最小化問題 となる.結局,解の概略は,構造行列Wの固有値で決 まるといって よい. Ⅳ.構造行列の固有値の構造 1.構造行列 と空間伝播 上下左右 の隣接格子点 との 間のみ非 0の 構造行列 は,正方格子 セルな ら,図 1の ように,L 成分 をもつ ような行列 となる. 図 1 典型的構造行列 ( ル ーク型)を取 った場合の時空間相互作用の伝播の仕方 8 4 季刊経済研究 第2 5巻 第 4号 構造行 列 の,空 間的波 及効 果 モ デル との関係 と しては,山 田 ・安 藤他 の波動方程式 モ デル 9 9 7 ) .波動方程式の主要部 をなす ラプラシア ン作用素 との関係 をあげてお きたい ( 西村他 ,1 △-∂2 /∂2Ⅹ +∂2 /∂2y+∂2 /∂2Z は,隣接 セルの変化 の平均 を平滑化 した 2次量であ り,空 間的 自己 回帰 モデルの隣接 相互作 用 で表現 可能であ る.す なわ ち,局所 的 な総合作用 に よって波 が伝 わるので あ るか ら,両者 は きわめて密接 な関係 にあ る とい える. 2.構造行列 Wの ある表現 -チ ェッカー型の基底 相互作 用 の興味深 い構 造 を把握 す るため, グ リッ ド空 間で市松模様 に基底 を と り表現 して み る. 今 ,現実 の地理 的 ( 物 理 的)空 間 を一辺 が 2Nのスケールであ る とす る.す る と相互作 用 次 の正方行列 となる.相互作用 をチ ェ ッカーの市松模様 の よう分解 し ( 表現 の基 行列 は 4N2 底 を組 み替 える ことに相 当), 2つの レイヤー同士 の重ね合 わせ として捉 え直す. 【ノー ド番号のチ ェ ッカー的番号づ け順序 】 Ll(1st 1ayer) 1 2 3 N+1 N+ 2 2 N+1 2 N+ 22 N+ 3 N1 N 2 N・ 2 2 N1 2 N 3 N1 3 N N2 N・ 12 N2 」 N . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .2 2 N2 2 N+12 N2 2 N+ 22 N2 ・ 2 N+ 3 . 2 N2 ・ 12 N2 L2 (2nd lay er) 2 N2 +12 N2 + 22 N2 + 3 2 N2 + N+12 N2 + N+ 22 N2 + N+ 3 4 N2 1 2 N+14 N2 2 N+ 24 N2 2 N+ 3 4 N2 N+14 N2 N+ 2 4N2 N+ 3 2 N2 + N12 N2 + N 2 N2 + 2 N 4 N2 N 4 N2 N- 4 N2 ・ 14 N2 1 空間計量経済学 ( spa t i a lEc onome t r i c s ) における空間的外部性の扱い方 について 8 5 この ようにす る と,相互作用 は一方か ら他方 に移 る変換 として定式化 で きる N-4の場合 01 3 3 3 70 5 0 9 41 4 5 1 3 1 74 9 5 3 21 2 55 7 61 2 9 0 2 3 4 3 80 6 1 0-4 2 4 6 1 4 1 85 0 5 42 2 2 65 8 6 23 0 0 3 3 9 1 1 4 7 1 9 5 5 2 7 6 3 3 5 0 7 4 3 1 5 51 2 3 5 9 31 0 4 4 0 1 2 4 8 2 0 5 6 2 8 6 4 3 6 0 8 4 4 1 6 5 2 2 4 6 0 3 2 3.チ ェッカー基底 に対 す る相互作用行列 W の表現 Z 器; ] W- た :≡:≡ ; ` 4" 2次 の正方行i' J ' ただし、 N) l( N) ∪(2N2 )- J( N) I I( N) I( N) J( l( N) J( N) l( N) l( N) J( N)I l( N) (2N2次 の正方行列) N)I l( N) J( I( N)はN次単位行列 J( N)は左下三角のN次 のJ or da n細胞 この ようにす る とW の高次作用 も一般公式 で得 られ,固有値 の振 る舞 い も明確 になる.時系 列分析 とある程度並行 的 に扱 うこ とがで きる もの もある. 86 季刊経済研究 第2 5 巻 第4 . 号 4.固有方程式の リダクシ ョン -M とお くと、 簡単のため、 2N2 W ZM [u u ] 固有 方 程式 Jw2 N- A L2 M ×A M (2M次行列式) ×A M (2M次行列式) =巨 人IM + 1/ … YyM ' (× ( -)) " (M次行列式) =l川 M +UMUM ' ( M次行列式) であるので,固有方程式 は, Jl 2 IM +UMUM ' I- o とな り,かな らず絶対値 の同 じ士のペ アとなる解 となる. 0も偶 数 回縮退 している. 5.固有値の例 (1) N-1のケース 物理的空間 :2N-2次 のサ イズ 工 …… 構造行列 : (2N) 2 -4次行列 日日 J ■ l 。 ー● ー● ● 一ー ● l日日 = Wl = 固有方程式 : lw 1 - 人 I2l- Ⅹ 4-4Ⅹ 4 -Ⅹ2(Ⅹ-2)(Ⅹ+2) 固有値 :±2 . 0,0,0 ( 含縮退) 空間計量経済学 ( spa t i a lEc on ome t r i c s ) における空間的外部性 の扱 い方 について (2) ・N-2のケース 87 ・ 物理的空間 :2N-4次 のサ イズ 1 9 2 1 0 l l 3 1 2 4 5 1 3 6 1 4 1 5 7 1 6 8 1 -● 1 I l i l 一 一 一 ● ー● ● ● ● 「 l ● ● 一 I⇒ 1 1 1 1 固有方程式 : l w 2- 日 1 6 1 1 1 1 1 1 1 r I I I L I I i 1 l l ︰ l ' I ●● 一 一 一 ●▼ 一 一 1 1 ;1 1 1 _ _ _ _ _ _ ー _ _ 「 _ ー ー _ W2 = 1 l 1 r L ● ■ 1 1 1 1H 1 1 1` 1 1 1 ▼ ー ● ー「ー ● H HH Hr H H _ _ _ _ _ _ _ ._ _ _ ._ _ _ _ + _ _ _ . _ L . _ . 構造行列 : (2N) 2 -1 6 次 行列 J-Ⅹ4 (Ⅹ2- 1)2 (x12- 5)2 ((Ⅹ2- 4)2- (2 Ⅹ)2) - Ⅹ4 (Ⅹ21 1)2 (Ⅹ2- 5)2 (Ⅹ4 ・ -1 2Ⅹ2+1 6) 固有値 :±3 . 2 4, ±2 . 2 4, ±2 . 2 4, ±1 . 2 4, ±1 . 0 0, ±1 . 0 0,0,0,0,0 ( 含縮退 ) これ らの固有値の振 る舞いは一般化することが可能で,それが最終的な対数関数尤度 ( の逆 ・ 符号) ' 3( Y)- 1n ( YI A' MAY)-2/N ・∑ i. 1 . . Nln (1- pl I- - e 決定する. 【 参考文献 】 ns A e l i n, L( 1 988)' T S pa b ' a J Ec o no me t 7 1 c s : Me 肋o d sa ndMo d e I s ' ' , 氾u we r . La ndRFl or a x( 1 995)H Ne t vDL ' t l e C b ' o nsL ' nS pa ぬJ Ec o no me b l c s H , Spr in ge r . ns A e l i n, i) の最小化問題 を 8 8 季刊 経済研 究 第2 5 巻 ‥第 4号 Ar or a ,S.a ndM.Br own ( 1 977) ` Al t ema t i veAppr oa c hesi nSpa t i a lAut oc or r e l a t i on:n A I mpr o ve mento ve r a c t i c e' , I nt e ma b ' o n a J Re B T ' o n a J Sc J ' e nc eRe v 7 ' e w,2,pp. 6 7 7 8. Cur r e ntPr ,Re B T ' o na J Bl ommes t ei n( 1 9 85)■ El i mi na t i onofCi r c ul r Rout a esi nSpa t i a lDynami cRe gr es s i onEqua t i ons ■ Sc l e nc ea ndur b a nEc o no mJ ' c s ,1 3, pp. 2 51 27 0. 7 7 meSe n ' e sAt 7 a J ys J ' S , Fwe c a s dn ga ndCo nb T O l . ,Hol de nDa y. Bo x, G. a ndG. J e nki ns( 1 976)‖ f, Åa n dJ . Or d( 1 9 7 3)H S pa ぬJ Au t o c o t T e J a t i o nH , Pi on. Cl i f f , Åa ndJ . 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