認知症・新薬・治す・防ぐ - 男性介護者を支援する会

平成 27 年 3 月 11 日 発行
第 51 号
認知症・新薬・治す・防ぐ
認知症を発症させる成
んぱく質を切り取る「γセクレターゼ」の動きを
分として、アミロイドβが
止める物質を発見した。
脳神経を破壊する事が分かってきている。今、多
国立長寿医療研究センターは、アミロイドβの
方面で新薬の開発が急ピッチで進んでいる。
蓄積が誘発する「タウ」と呼ばれる別のたんぱく
富士フィルムグループの富山化学工業が治療・
質が原因ではないかと指摘する。タウは脳神経細
予防薬として開発中の薬名は「T-817MA」。日米
胞の骨格となるたんぱく質の一部。脳が老化する
で臨床試験に入り、マウス実験で改善効果が確認
と脳内の酵素が活性化し、タウが悪いタウに変わ
された。「T-817MA」の働きは、①脳神経細胞の
り、結合して糸くず状のたんぱく質のごみになる。
保護、アミロイドβによって脳神経細胞が傷つか
これを神経原線維変化と呼ぶ。この変化により脳
ないように抵抗力を高める。②神経突起の伸展促
神経細胞が死に、神経細胞が壊れる事で物事の認
進効果を持つ。神経細胞の先には情報伝達物質を
識が十分できなくなり、認知症が発生すると考え
分泌する樹上突起があるが、T-817MA はこの突起
られる。悪いタウが増えるのは認知症が発症する
の成長を促進させる。樹状突起を育て、細胞間の
20 年以上前、アミロイドβは認知症発症 10 年前
繋がりを密にさせ、認知機能の低下を抑える。京
から蓄積が増える。今ある薬で認知症を治せる可
大 iPS 研究所と連携し、年内に iPS 細胞を使った
能性が有る。マウスでの実験では効果を確認した。
研究も始める。試験管で iPS 細胞が薬にどう反応
今年サルでも実験し、安全を確認した。この薬は
するか調べ、遺伝的な性質など差を生む因子を調
半世紀前に別用途で発売されたが、今後治験を必
べる。効く患者を特定できれば治験は効率的にな
要とする。
るという。
放射線医学総合研究所は、タウたんぱく質を映
アミロイドβを生み出す脳内の「APP」と言う
し出すことに成功。当研究所が開発した「PBB3」
物質は、アミロイドβと脳神経に悪影響を与えな
を使って PET の画面に映した。タウはアミロイド
いたんぱく質が一体化したもので、アミロイドβ
βと共に認知症発症の原因とされているたんぱく
の動きを封じるが、βセクレターゼがこのたんぱ
質の一種。見える化が進めばメカニズム解明に繋
く質を切り取る。この動きを止めればアミロイド
がり、早期診断にも役立ち、新薬開発も進む。同
βは発生しない。この仮説に基づき米メルク社は
研究所は認知症患者の協力を得て PBB3 の効果を
新薬を開発中である。治験薬候補「BACE 阻害薬」
実証する臨床検査を開始した。
を投与した人の 8 割で、髄液中のアミロイドβが
東北大は、ベンチャーのクリノ、英 GE ヘルス
減少、効果を確認できたという。
ケアと共同で、タウと結びつく放射性薬剤
東大発創薬ベンチャーのペプチドリームは、た
「THK5117」の開発に着手。
1
GE ヘルスケアは、放射性薬剤の寿命が短いの
体価が高まるほど、脳内にたまるアミロイドβを
を克服するため、同位体の炭素では無く、半減期
減らすことに成功した。
の長いフッ素を使い寿命を数倍に延ばした。搬送
北海道大湯山特任助教授と五十嵐特任教授は、
が可能になり、生産規模が増え、コストが下がる。
アミロイドβが脳内で蓄積していく過程を調べた
17 年度 富士フィルムは関東・関西に流通拠点を
とろ、神経細胞から放出された物質「エクソチー
つくり、米イーライ・リリー社が開発したアミロ
ム」がアミロイドβの運搬除去に関わっているこ
イドβの PET 用薬剤「フロルベタピル」の配送を
とを突き止めた。エクソソームの放出が老化によ
開始する。
って減少しアミロイドβの運搬除去機能が衰える
国立長寿医療研究センターと島津製作所は、ア
との仮説のもとに実験、マウスの脳内にエクソソ
ルツハイマー型認知症発症前に検出できる可能性
ームを注入、注入しない場合と比しアミロイドβ
のあるバイオマーカーを発見した。同研究チーム
濃度が 45%減少した。体内でエクソソームを人為
はアミロイドβの蓄積がある高齢者と、ない高齢
的に増やす事が出来ればアルツハイマー病予防の
者の血液を、島津製作所の質量分析装置を使って
可能性が期待できる。
調べた結果、比率が変化する 2 種類のたんぱく質
大塚ホールディングスは、脳内の感情をコント
があることを発見した。この基礎研究を進める事
ロールするネットワークが崩れると感情を制御で
で早期診断や、新薬の開発に期待されている。
きなくなる、情動調節障害が 1~4 割に併発する事
東大大学院 石浦教授は「食べるワクチン」を提
に着目。米アバニア社買収し、治療薬ニューデク
唱している。遺伝子組み換え技術でワクチン米を
スタを獲得した。同改良薬を臨床試験中。
2010 年に開発、食べる事で体内に出来た抗体で、
(2/16~18 日経産業新聞より抜粋)
アミロイドβを蓄積し難くする。マウス実験で抗
◆
今月のホットニュース
●12/4
ニュータウン再生へ新法
◆
日経夕刊
国交省はニュータウンを活性化する法律を新
たに作る検討を始めた。1960 年~1970 年頃に入
居が集中したために高齢化が進んでいる、都市再
生機構が管理する団地では、65 歳以上高齢者の
いる世帯は 35%になる。法案の柱は、①医療福
祉の充実、②高齢者の活躍の場の確保、③居住環
境の整備、④生活を支えるサービスの充実となる。
が少なくない」と話す。介護が長引くことが多く、
再就職も難しい。
介護離職に「待った」 読売新聞朝刊
法定の介護休暇に加えて、企業独自の休暇制度
総務省の調査では仕事と介護を両立している
を設ける会社も少なくない。日々の介護はサービ
人は 2012 年 10 月時点で 291 万人いる。
うち 160
スを利用し、突発的な事態にどのように対応する
万人が女性。11 年 10 月からの 1 年間で介護を理
か。職場の理解が求められる。ケアマネとの連携
由に離職した人は、10 万 1 千人おり女性が 8 割
も重要だ。ケアマネに相談することで、サービス
を占める。
利用の変更を検討してもらえるなど対策ができ
●12/9
る。
介護者支援団体ワーク&ケアバランス研究所
※普段は日経と京都新聞の記事のみ閲覧していますが、
の和気美枝さんは「職場では介護の話はし辛く、
今回は取材を受けた和気様より直接連絡をもらった関
両立は難しいと、誰にも相談せず辞めてしまう人
係で、読売の記事を紹介しています。
2
●12/11
静岡・南伊豆町に杉並区が特養開設
ある。
杉並区は、静岡県の南伊豆町などと共同で
共依存は専門家など他人に指摘されないと気
2017 年度にも区民が入所できる特養を同町に整
づくことは難しい。このような事態に陥らぬよう
備する。都道府県の枠を超えた特養は初という。
「自分の為の時間を確保すること、自分を褒める
杉並区は待機者の解消に、南伊豆町は雇用創出が
練習もすること」を専門家は助言する。
期待できる。
●12/11
介護、見えぬ処遇改善
●12/22
日経夕刊
高齢者スマホで見守り
日経夕刊
認知症高齢者の見守りを行うシステムの開発
が進んでいる。
厚労省によると 10 月の介護の有効求人倍率は
2.41 倍と全産業の 2 倍以上。その要因として待
メディカル・ケアはグループホームを 220 カ
遇があげられる。介護職員の月収の平均は 23 万
所運営している。NTT やデンソーと連携して徘
8 千円で、全産業の 32 万円を大幅に下回る。離
徊する高齢者を捜すシステムを開発。15 年度に
職率も 16.6%と高い。
全施設で導入する。500 円玉ほどの発信機を高齢
介護現場を取材すると、様々な仕事を 1 人 1
者に持ってもらい、施設周辺の住民に協力しても
人が行い、求人をしても思うように集まらないと
らい、専用のアプリを入れたスマホを持てば、80
いう。
メートル離れた高齢者とすれ違うと検知できる。
オリックス・リビングは、赤外線センサーを使
●12/20
認知症初期支援に力点
京都朝刊
う。現在はベッド周辺で起床や転落を把握してい
認知症対策の国の戦略の素案が明らかになっ
るが、室外に出てもわかるように機能を増強する。
た。新戦略は 2013 年度から始まった厚労省のオ
●12/24 要介助者ら安心介護付ツアー
レンジプランを発展させた。警察庁や国交省など
京都朝刊
介護が必要な高齢者や障害者の旅行に同伴す
省庁横断の取り組みを進めるため、来年度予算に
る介護サービス会社「どこでも介護」が滋賀県の
必要経費を盛り込む。
ポイントは 7 つあり、①認知症への理解を深め
委託を受けてユニバーサルツーリズムモニター
る啓発、②容体に応じた適切な医療・介護の提供、
ツアーを実施。湖南市の長寿寺などに要介護 5
③若年性認知症への対応強化、④介護者支援、⑤
の高齢者を含む 10 人とその家族が向かった。同
認知症の高齢者に優しい町づくり、⑥予防からリ
社スタッフ 3 人にボランティア 7 人が付き添い、
ハビリまでのモデルの研究、⑦本人や家族の視点
体調急変に備えて看護師も同行した。要介護者 1
の重視となっている。
人あたり 1 万 8 千円と日帰り旅行には割高だが、
同社社長は手応えを感じたという。
●12/21
「共依存」の恐れあり
日経夕刊
●12/28
「人のために」と世話を焼きすぎてしまうと相
骨粗しょう症サインかも
日経朝刊
手の自立を妨げることになる。人から感謝されて
普段離れて暮らす親に久しぶりにあったら背
得られる快楽に依存してしまい世話を焼くのを
が縮んだように感じる…。骨粗しょう症や要介護
止められなくなるのを共依存という。
のリスクが高まっていることもあり、注意が必要。
共依存はアルコールやギャンブルに依存する
要支援・要介護になるきっかけは、脳血管障
患者の面倒を見る家族や家族介護者などに起こ
害・認知症・高齢による衰弱と並び、骨折・転倒
りがち。共依存に陥る人は「自分に自信がなく自
と関節疾患。
己評価が低い」ことが特徴で、幼少期に褒めても
骨粗しょう症は、70 代女性の 2 人に 1 人がか
らえなかったり、虐待を受けたりした事も原因と
かるといわれる。骨の強度を示す骨密度は 20~
なっているという。このような人は、自分がどう
30 代がピークで、女性は特に 50 代以降急速に骨
したいか、どうすべきかを考える事が苦手で、世
密度が低下してしまう。
骨密度を測るには、
(体重-年齢)×0.2 で-4
話を必要としている人を自ら探してしまう例も
3
より小さい場合は骨粗しょう症の危険が高い。
骨粗しょう症の対策は、食事と運動。カルシウ
-1 なら危険度は低い。危険な数値はもちろん、
ムやビタミン D、ビタミン K を摂取すること。
-1 以上の数値でも骨密度検査を受けることを
また転倒しないためにスクワットなどの運動も
専門化は薦めている。
有効。
◆
福祉の現場から
●12/10
◆
学童保育変わらなきゃ
日経夕刊
厚労省によると学童 保育所の待機児童は、
2015 年 4 月に始まる子ども・子育て支援新制
9,945 人、3 年連続で増加。都市部では民間企業の
度で、学童保育所の位置づけが大きく変わる。市
学童保育所(民間学童保育)も増えてきたが、週 5
町村が行う事業として自治体の責任が明確にな
日 5 万円で、かなり高額(通常は月 1 万円)
。量の
る。学童クラブ(自治体が運営する従来からの学
確保だけでなく、質の確保も今後の課題になって
童保育)
いる。
子どもが小学生になると預け先に困り、仕事を
●12/24
続けにくくなることを「小一の壁」という。学童
保育所の不足に加え、終了時間も早いことが課題。
19 時以降の預かりを行う学童保育所は全体の
京都府は 2013 年度に虐待と認定した事件が、
施設・家庭と合わせて 58 件あったことを発表
12 年 10 月以降実施している。
る自治体もある。(学校での放課後子ども教室)
認定件数のうち 4 件が事業所・施設、それ以
4 月からの制度変更では、19 年度末までに 30
外が家庭だった。
万人の受け入れ確保を目標にしている。
活 動 報 告
京都朝刊
した。調査は障害者虐待防止法が施行された
6%。19 時以降の預かりに補助金を出して助成す
◆
障害者虐待被害 58 件
◆
 フレアス舞鶴で、ワーク・ライフ・ケアバランスセミナー開催。2015/2/25 13:30~15:30
介護と仕事の問題をテーマに開催。山内は男性介護の実態と問題点、新しい介護保険制度で何が変わ
るかを話しました。津止先生はワークショップのテーマと
して「介護される時・介護する時
自分はどう考えるか?」
を問題提起し、グループ別に意見交換。時間が足りない中
でも、楽しく深刻に話し合われました。林次期代表も同行
参加しました。
 料理教室#2「男がつくる介護食」開催
ウィングス京都調理コーナー 2015/ 2/ 27 10:00~13:00
16 名の参加男性達で、鶏ささ身とクリームコーンのとろ味
煮・カニ身と白菜の煮もの等、4 品に挑戦。谷岡 瑞穂先生
のご指導と、息子さん・娘さんの応援を得て、予定の時間よ
りも早く出来、皆さんとテーブルを囲み頂きました。谷岡
先生・ウィングス市原さんから、「美味しい・上手」と好評で
した。
4

男性介護ネット第 7 回総会・記念講演・リレートーク 開催。2015/3/8 10:30~16:00
男性介護ネット発足 6 周年を迎え、全国から男性介護者の会活動の仲間が参集、
「荒川オヤジの会」立
ち上げから 21 年の太田貞司氏に記念講演を頂き、全国の仲間から介護問題が提起されました。
「介護退職ゼロ作戦」
「ケアメン☆サミット」を京都・長野で開催。全国のブロックが立ち上げられ、
今後一層の連携を強化し、交流を深める。改定介護保険制度がスタートするが、地域包括ケアの問題
点(よりコスト高、施設よりも複雑・運営困難)が懸念される。要介護者と介護者への分厚い社会的支援
による介護システムへの課題を問う。
報告内容
調査研究・政策提言の取組を行った。介護 OB の退会が増えているが、現在 686 名の在籍会
員がいる。団体会員は 32 団体ある。認知症の人と家族の会・日本ケアラー連盟・全国パーキンソン病友
の会・全国介護者支援団体連合会等との連携・協力を図った。全国男女共同参画センター・社協・地域包
括支援センターとの交流。メディアへの情報提供。企業・団体・労働組合等と交流があった。
下は交流会に参加頂いた皆さん
5
◆
これからの 予定
◆
 葉月ブラナスの会勉強会「がん・医療体験談」主催:NPO 京都がん医療を考える会
◌ 平成 25 年 3 月 25 日 18:00~20:00 京都府庁旧本館 1 階 NPO パートナーシップセンター会議室 参加費:¥300◌ ①医療現場報告:坂田 智子氏(医療ソーシャルワーカー) ②がん体験談:宇野喜多男氏(がん医療を考える会
理事)
③介護体験談:山内輝昭(男性介護者を支援する会代表)
④質疑応答
◌ 申込:がん医療を考える会 藤井(090-1221-6779) Email:[email protected]

◌
◌
◌
総会 H26 年度事業決算報告・H27 年度事業予算提案
平成 27 年 3 月 26 日(木)
11:30~12:30
場所:「Gin yuba KYOTO」アパホテル<京都駅堀川通り>1階
参加費:900 円 (昼食費として。メイン料理 酢豚・カレーどちらかをお選びください。)
 今年度最後の研修会
◌ 平成 27 年 3 月 26 日(木) 13:00~15:00
◌ 場所:「松下資料館」 PHP ビル 3 階。総会終了後ご一緒に行きましょう。
松下電器産業・PHP 研究所・松下政経塾等を作り育て上げた松下幸之助氏の人柄に触れたいと思
います。松下氏と共に過ごされた川越森雄氏(顧問)にお話を伺います。
◌ 参加費:無料
共に語り、
伝 言 板
友になろう!!
TOMO(4月~7月)
男性介護者のつどい
開催日時 ※毎月 第2水・木曜日に開催
平成27年
4月 8日(水)・ 9日(木) 11時30分
5月 13日(水)・ 14日(木) 11時30分
6月 10日(水)・ 11日(木) 11時30分
7月 8日(水)・ 9日(木) 11時30分
会
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14時
14時
14時
14時
場:喫茶「ほっとはあと」(御池通西大路西入る北側、地下鉄東西線「西大路御池」3番出口横
市バス「西大路御池」から徒歩すぐ)
*コインパークが近くにあります。
参 加 費 :実費(ご注文の飲食代をご負担ください)
参 加 条 件:男性介護者とその家族・支援者
※ 事前申込み不要、当日直接会場へお越しください
発行 男性介護者を支援する会 代表 山内輝昭
〒616-8415 京都市右京区嵯峨大覚寺門前宮ノ下町 11
E-mail:[email protected]
TEL:075-882-2256
FAX:075-882-2257
URL: http://www.kaigo68.sakura.ne.jp/
お知らせ
4 月 1 日から会代表・連絡先は下記に変わります。
男性介護者を支援する会 代表 林 政廣
〒603-8814 京都市北区西賀茂南川上町 47 TEL:075-492-4060
FAX:075-492-4060
E-mail:[email protected] URL:http://www.kaigo68.sakura.ne.jp/
6
7
《 多数のご支援を頂き有難うございました。
8
山内 輝昭 》