造血器悪性腫瘍と凝固異常

造血器悪性腫瘍と凝固異常
岡山医療センター 久保西 四郎
悪性腫瘍(癌)と血栓症
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静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)を
初めて発症した患者の約2~3割で癌の合併がみられ
る。
癌患者におけるVTEの発症率は、13/1,000人・年と見
積もられている。
癌の種類と VTE 発症頻度
VTE
の
発
症
1年相対死亡率 (Blood. 2013; 122: 1712-23)
癌と VTE 発症
予後が悪くて転移しやすい生物学的に病勢が
ある癌においてVTEの発症が多い。
 治療内容もVTEの発症に影響を与えており、
手術、化学療法、ホルモン療法、血管新生阻害
剤、免疫調節剤、赤血球造血刺激因子製剤、
赤血球輸血、中心静脈カテーテルは、いずれも
VTEの発症を増加させることが知られている。
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癌の種類と VTE 発症頻度
VTE
の
発
症
1年相対死亡率 (Blood. 2013; 122: 1712-23)
組織因子保有マイクロパーティクル
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マイクロパーティクル(microperticles: MPs、0.1~1.0μm)
多くの細胞から活性化に伴い遊離
腫瘍由来MP(tumor-derived MPs: TMPs)
(Blood. 2013; 122: 1873-80)
造血器悪性腫瘍 : 血液がん
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白血病
・急性白血病
・急性骨髄性白血病
・急性リンパ性白血病
・慢性白血病
・慢性骨髄性白血病
・慢性リンパ性白血病
悪性リンパ腫
多発性骨髄腫
造血器悪性腫瘍 : 血液がん
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白血病
・急性白血病
・急性骨髄性白血病
・急性リンパ性白血病
・慢性白血病
・慢性骨髄性白血病
・慢性リンパ性白血病
悪性リンパ腫
多発性骨髄腫
血小板減少と末梢血中に幼弱球
Peripheral blood
Blood chemistry
Coagulation test
WBC
10.9×10E3/μl
TP
7.2g/dl
APTT
RBC
3.12×10E6/μl
Alb
3.9g/dl
PT
Hb
11.1g/dl
T-Bil
1.2mg/dl
PT(%)
Ht
31.6%
GOT
157IU/l
PT-INR
GPT
15IU/l
Plt
34×10E3/μl
LDH 7,092IU/l
ALP
245IU/l
UN
34mg/dl
Cr
1.78mg/dl
UA
6.0mg/dl
Na
140mEq/l
K
3.9mEq/l
Cl
105mEq/l
CRP
22.28mg/dl
68.4sec
>30.0sec
18%
4.15
骨髄検査中に意識障害顕在化
急性前骨髄性白血病と DIC
MP/TF活性と DIC
症例1、3、4:
急性前骨髄球性白血病
MP/TF
活
性
症例2、5:
急性骨髄性白血病
症例6:
急性単球性白血病
症例7:
急性骨髄単球性白血病
D
血
中
ダ
イ
マ
ー
(Thromb Res.
2014; 133: 303-5)
造血器悪性腫瘍 : 血液がん
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白血病
・急性白血病
・急性骨髄性白血病
・急性リンパ性白血病
・慢性白血病
・慢性骨髄性白血病
・慢性リンパ性白血病
悪性リンパ腫
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫に対する
サリドマイド及びその誘導体
(臨床血液44巻5号302-312、2003年)
多発性骨髄腫に対する
サリドマイド及びその誘導体
(レブラミド適正使用ガイド)
がん患者の治療における深部静脈血栓症
のガイドライン
(J Clin Oncol. 2013 ; 31 : 2189-204.)
がん患者の治療における深部静脈血栓症
のガイドライン
(Thromb Haemost 108 : 225〜35, 2012.)
VTE と D-ダイマー
癌患者におけるVTE発症のKaplan-Meier曲線
(Blood. 2013; 122: 2011-8)
がん患者の治療における深部静脈血栓症
のガイドライン
(J Clin Oncol. 2013 ; 31 : 2189-204.)
がん患者の治療における深部静脈血栓症
のガイドライン
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一方、わが国での癌患者における血栓症に対しての
抗凝固薬の予防的投与や治療におけるエビデンスは
乏しく,また非常に限られた薬剤しか使用できない。
欧米の静脈血栓症の発症リスクとアジアにおけるリス
クでは大きな隔たりもある。