2015 年度AO選抜 理工学部 「理工セミナー方式」 学科 志願者数 物理科学科 電気電子工学科 電子情報工学科 機械工学科 ロボティクス学科 都市システム工学科 環境システム工学科 計 7 23 6 18 5 8 2 69 最終 合格者数 3 9 3 10 1 5 0 31 【選考講評】 1.実施状況 志願者数は合計 69 名、合格者数は合計 31 名となっています。 2.試験内容 「数学」および「物理」に関するセミナーを行い、それらの理解度を問う筆記試 験の結果と出願書類(志望理由書など)とを総合的に評価し、合格者を決定しまし た。ただし、物理科学科を志望する受験生には「数学」に関するセミナーを行い、 その理解度を問う筆記試験と出願書類(志望理由書など)および面接(口頭試問) の結果を総合的に評価し、合格者を決定しました。 学科 内容 評価方法 ① 「 数 学 に つ い て 、 高 等 学 校 で の 学習 から大学での学習につながる内容の セミナー(60 分)」を行うとともに、 「 出 願 書 類 」、 物理科学科 「セミナー内容に関する理解を問う 「 筆 記 試 験 」、 筆記試験(60 分)」を行いました。 「面接(口頭試 ② 面 接 ・ 口 頭 試 問 ( 約 30 分 ) を 実 施 問 )」 に よ る 総 し、大学で物理を学ぶための心構え 合評価 や物理の基本的な知識などについて 確認しました。 電気電子工学科 電子情報工学科 「 数 学 お よ び 物 理 に つ い て 、 そ れ ぞれ 高 等 学 校 で の 学 習 か ら 大 学 で の 学 習に 機械工学科 つ な が る 内 容 の セ ミ ナ ー (60 分 )」を ロボティクス学科 行 う と と も に 、「 セ ミ ナ ー 内 容 に 関 す 都市システム工学科 環境システム工学科 る 理 解 を 問 う 筆 記 試 験 (60 分 )」 を行 いました。 「 出 願 書 類 」、 「筆記試験」に よる総合評価 (1)数学セミナー 高校で学んでいる三角関数の基礎的内容から大学低学年時に学ぶフーリエ級数の 基礎(フーリエ係数の求め方)についてセミナーを行いました。まず高校の範囲の 三角関数と偶関数・奇関数の特徴について復習した後、フーリエ係数を求めるため の準備として三角関数の積の積分について説明し、関数の直交性の概念について紹 介しました。その後、フーリエ級数の実例である矩形波について説明し、最後にフ ーリエ級数展開の例題(三角波)を紹介し、その解答時に必要となる部分積分につ いて説明を行い、求めたフーリエ級数で円周率が無限級数で表現できることを紹介 しました。 (2)物理セミナー スマートフォン等の電子機器の中身には、大規模集積回路(LSI)が使用され ており、LSIでは、数億個のMOSトランジスタを使ってさまざまな機能が実現 されているという背景を紹介しました。トランジスタの動作を理解する入口として、 真空中の平行平板電極の作る電界中に配置されたときの電子の挙動を説明しました。 次に、固体中の電子は真空中とは異なった挙動をし、豆電球のフィラメントは非直 線抵抗として動作すること、さらに、電気回路中に非直線抵抗が挿入されたときに 流れる電流の求め方を、演習を含めて解説しました。最後に、MOSトランジスタ では、ソース・ドレイン電極間においては非直線抵抗として動作し、その抵抗値は ゲート電極の電圧によって変動する、これを利用して信号増幅回路が実現できると いう説明を行いました。 (3)物理科学科の面接 受験生の高校物理の学力の確認とともに、本学への志望動機とそれを裏付ける物 理への興味の内容、意欲、入学後、および、将来についての考え方を知るために、 受験生1名に対して教員 2 名で面接を行いました。本学への志望動機と物理の学習 意欲について 10 分、高校物理の基礎的な理解を問う口頭試問 20 分の計 30 分の面 接としました。 3.出題の意図 (1)数学セミナーの理解を問う問題 セミナーで説明したすべてy軸に線対称の偶関数のフーリエ係数を求める問題を 出題しました。まずセミナーで紹介した矩形波を写像したグラフについての問題を 出し、区間ごとに積分することで求めるように誘導しました。次にセミナーで紹介 した例題に近い三角波のフーリエ級数展開やその応用問題を出題しました。部分積 分を適用して求めることができるかを確認し、奇関数の積分が0となることを理解 していることと積分の能力を確認することに重点を置いて出題しました。 (2)物理セミナーの理解を問う問題 最初に、セミナーであつかった数式が理解できているかどうかを確かめるととも に、力学の基礎が身についているかを確認する意図で、真空中に配置された平行平 板電極内に配置された電子が一定の力を受けて等加速度運動をすることを数式で導 く問題を出題しました。次に、セミナー中にも演習した非直線抵抗を含む回路の電 流・電圧計算ができるかを確認する問題を出題しました。最後に、応用力を期待し て、MOSトランジスタを使った増幅回路の動作の計算問題を誘導形式で出題しま した。 (3)物理科学科の面接 受験生の学力、特に高校物理に対する理解力とその応用力を、質疑応答にとって 確認するとともに、本学への志望動機と物理への興味の内容、意欲、入学後、およ び、将来についての考え方を知るために、面接による選考を実施しました。単なる 公式の暗記に留まらず、基礎概念や基礎公式に対する深い理解をする訓練がなされ ているかを確かめるべく、特定のテーマについて、式と言葉による説明を受験生に 求めるような出題を行いました。 4.評価のポイント (1)物理科学科 前半部分では本学への志望動機やそれを裏付ける学習意欲が十分に認められるか どうかを評価のポイントとしました。後半の口頭試問では、受験生による説明の間 に必要に応じて提示される面接員の誘導を的確に理解し、正しく論理を展開し、言 葉や式で表現できるかが合否判定のポイントとなりました。面接による評価だけで なく、数学セミナーの理解を問う問題の点数も総合して最終評価としました。 (2)物理科学科以外 数学セミナーおよび物理セミナーの理解を問う問題に対し、解答全体の総合点で 評価しました。総合点がある一定の水準以上の者について、書類審査により評価し、 数学および理科の基礎学力を身につけていると判断されるかどうかを評価しました。 5.解答状況 (1)数学セミナーの理解を問う問題 部分積分を含めた積分の能力によって、特に問題2と問題3で点が大きく開きま した。問題1は、基本的な矩形波のフーリエ係数を求める問題で、全体的に正答率 が高かったものの、フーリエ係数 a n の算出では積分が必要になるため間違ってい る人が見受けられました。問題2では、セミナーで紹介した正弦を含めた部分積分 を余弦に変えた部分積分を求める問題で正解を答えた人が多かったものの、フーリ エ係数の算出では正解率は下がりました。ただフーリエ係数 b n が奇関数の積分と なることを理解していた人はきちんと正解していました。問題3は2次関数の周期 関数についてフーリエ係数を求める問題で、ほぼ問題2との同様の計算で算出でき るのですが、2次関数であることで多少計算が複雑になるため正解率は問題2を下 回りました。さらに算出したフーリエ級数展開の特徴点をとらえて無限級数の値を 求める問題はほとんど正解がありませんでした。 (2)物理セミナーの理解を問う問題 平均点は比較的高かったのですが、物理の初歩である等加速度運動の動作を理解 していたか、セミナーの内容をしっかり理解し実際の回路へ応用できるかという点 で、得点に差がつきました。 真空中に配置された平行平板電極内に配置された電子の挙動の問題では、全般に は正答率が高かったですが、等加速度運動をしている際の速さの位置依存性が理解 できていない答案が多く見られました。非直線抵抗を含む回路の計算問題は講義中 の演習問題とほぼ同一で正答率が高かったですが、講義中で演習した電流は計算で きても、それから出力の電位が導出できていない答案が散見されました。最後のM OSトランジスタを使った増幅回路の動作の計算問題も、講義をしっかり理解し計 算ミスをしない受験生はよくできており、たのもしく感じました。 (3)物理科学科の面接 面接では、単に公式を暗記するだけでなく、その意味を深く理解しているか、具 体的な問題のなかで応用できるかを確かめるべく質疑応答を行いました。受験生の 多くは、説明を求められると最初は言葉に窮したり、正しい方向に論理を進められ なかったりといった状況に陥りました。が、そうした状況の中でも、面接員の誘導 的質問をきちんと理解し、そこから軌道修正して論理を正しく展開できるかどうか という点が評価の分かれ目となりました。質疑では「どうしてそうなるか?」を重 ねて問うことで、受験生にはできるだけ緻密な論理展開を求めました。これができ た学生については、物理ひいては物理の考え方に対する理解度は十分であると判断 しました。 6.次年度受験生へのアドバイス 理工学部では、数学や物理学の基礎的な知識が実際の現象理解や社会問題の解決 に対してどのように活用されるのか、といった点に強い興味を持って取り組み、そ の実現を図ることのできる学生を求めています。ともすれば、数学や物理学は公式 を暗記して運用するテクニックが重要であるように誤解されますが、このような対 応では、大学に入ってから学習に困難を伴います。したがって、本学部が実施する AO 選抜入学試験では、高校では取り扱うことの無い新たな分野の知識を含むセミ ナーを実施し、その内容の理解力、初めて見る問題に対する知識応用力を測ること としています。 今年度の数学に関しては、セミナーでの演習問題の解き方を正しく理解し、やや 異なる問題設定へどのように対応したら良いのかを考えること、また、導出過程を 丁寧に導くことが重要です。物理に関しては、電極や電球あるいはトランジスタを 含む回路を見て、そこにはたらく電気的特性を理解することが重要です。 物理科学科の面接は、面接全体を通して、受験生の物理への興味の持ち方、モチ ベーション、論理的思考能力を判定することが趣旨ですので、その旨を理解した上 で受験されることが望まれます。 以上
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