1-1 伊方発電所における基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価について

資料1-1
伊方発電所3号機
原子炉建屋等の基礎地盤及び周辺斜面の
安定性評価について
平成27年3月26日
0
1.評価方針および評価概要
2.評価対象施設の整理
3.解析用物性値
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
5.周辺地盤の変状による施設への影響評価
6.地殻変動による基礎地盤の変形の影響評価
7.周辺斜面の安定性評価
8.まとめ
1
1.評価方針および評価概要
評価方針
○設置許可基準規則※1において,原子炉建屋等の耐震重要施設※2及び常設重大事故等対処施設※3は,
1.基準地震動による地震力が作用した場合においても当該施設を十分に支持することができる地盤に設けなければならない
2.上記地震の発生によって生ずるおそれがある斜面の崩壊に対して安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない
と定められている。対象施設の基礎地盤及び周辺斜面の安定性について,審査ガイドに準拠した評価を行い,基準に適
合していることを確認する。
【基礎地盤】
1.活断層の有無 (前回の部会にてご説明)
原子炉建屋等が設置される地盤には,将来活動する可能性のある断層等が露頭していないことを確認する。
2.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
原子炉建屋等が設置される地盤の安定性について以下の観点から確認する。
① 基礎地盤のすべり
② 基礎の支持力
③ 基礎底面の傾斜
3.周辺地盤の変状による施設への影響評価
地震発生に伴う周辺地盤の変状による不等沈下,液状化,揺すり込み沈下等の影響を受けないことを確認
する。
4.地殻変動による基礎地盤の変形の影響評価
地震発生に伴う地殻変動による基礎地盤の傾斜及び撓みの影響を受けないことを確認する。
【周辺斜面】
1.地震力に対する周辺斜面の安定性評価
基準地震動の地震力により周辺斜面が崩壊し施設に影響を与えないことを確認する。
※1 「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(解釈含む)」
※2 耐震設計上の重要度分類Sクラスの系統・機器及びそれらを支持する建物・構築物
※3 常設耐震重要重大事故防止設備又は常設重大事故緩和設備が設置される重大事故等対処施設(特定重大事故等対処施設を除く)
2
1.評価方針および評価概要
評価の概要
評価対象施設(耐震重要施設および常設重大事故等対処施設)の整理
・原子炉建屋(原子炉補助建屋、D/G貯油槽基礎含む)、緊急時対策所
・重油タンク、軽油タンク、空冷式非常用発電装置
・重油移送配管、軽油移送配管
・海水取水口、海水取水路、海水ピット、海水管ダクト
地盤物性値の整理
調査、試験結果から解析に用いる物性値を設定
基礎地盤の安定性評価
周辺斜面の安定性評価
評価断面の選定と解析モデル作成
評価断面の選定と解析モデル作成
代表として以下を選定し、地盤・斜面・構造物をモデル化
・原子炉建屋
南北方向断面(X-X’断面)
・緊急時対策所
南北方向断面(A-A’断面)
・重油タンク
南北方向断面(D-D’断面)
代表として以下を選定し、地盤・斜面・構造物をモデル化
・原子炉建屋
南北方向断面(X-X’断面)
(基礎地盤の安定性評価と同じ断面)
・海水ピット
斜面直交断面(C-C’断面)
対象施設の周辺斜面の安定性評価
対象施設の基礎地盤の安定性評価
代表断面について、対象施設の
① 基礎地盤のすべり安全率が1.5以上であること
② 基礎の接地圧が評価基準値7.84N/mm2を超えないこと
③ 基礎底面の傾斜が1/2000以下であること
代表断面について、対象施設周辺斜面のすべり安全率が1.2
以上であることを確認
を確認
周辺地盤の変状による施設への影響評価
対象施設は新鮮かつ堅硬な岩盤(塩基性片岩)に支持されていることから、不
等沈下、液状化,揺すり込み沈下等の影響が生じることはない
地殻変動による基礎地盤の変形の影響評価
地震動に加え、地殻変動による最大傾斜を考慮しても、対象施設の基礎底面
の傾斜は1/2000以下であり、重要な系統・機器の安全機能に支障はない
敷地内の活断層の有無につ
いては前回部会に説明済
重要な施設の基礎地盤および周辺斜面の安定性が確保されていることを確認
3
2.評価対象施設の整理
評価対象施設 配置図
○評価対象施設を以下に示す。
施設名称に下線あり:耐震重要施設※1であり、かつ、常設重大事故等対処施設※2
施設名称に下線なし:常設重大事故等対処施設※2
海水取水口
海水取水路
海水ピット
軽油タンク
海水管ダクト
緊急時対策所
評価対象施設
設置 管理
設置 管理
名称
名称
位置 番号
位置 番号
1 原子炉建屋
6 緊急時対策所
2 海水取水口
7 軽油タンク
32m
盤以下
空冷式非常用
3 海水取水路
8
10m
発電装置
盤以下
4 海水管ダクト
9 軽油移送配管
84m 10 重油移送配管
盤以下
5 海水ピット
11 重油タンク
原子炉建屋
(原子炉補助建屋,D/G貯油槽基礎含む)
軽油移送配管
空冷式非常用発電装置
重油移送配管
重油タンク
主にEL.10m盤以下に設置される施設
主にEL.32m盤に設置される施設
主にEL.84m盤に設置される施設またはEL.84m盤~EL.10m盤に設置される施設
※1 耐震設計上の重要度分類Sクラスの系統・機器及びそれらを支持する建物・構築物
※2 常設耐震重要重大事故防止設備又は常設重大事故緩和設備が設置される重大事故等対処施設(特定重大事故等対処施設を除く)
4
2.評価対象施設の整理
敷地における断層の特徴
○評価対象施設と断層の位置関係は下図のとおりである。
海水取水口
海水取水路
海水ピット
54~77°
軽油タンク
39°
58°
65°
緊急時対策所
海水管ダクト
原子炉建屋
78-90°
(原子炉補助建屋,D/G貯油槽基礎含む)
25°
40~50°
54-58°
軽油移送配管
50°
空冷式非常用発電装置
67-82°
重油移送配管
38°
重油タンク
断層(軟質含)
断層(軟質無)
EL.+2.0mの位置を表示
旧海岸線
5
3.解析用物性値
解析用岩盤分類について
○解析用岩盤分類を実施するにあたってはまず,田中(土木技術者のための地質学入門、山海堂、1964)の分類法
を基本的な考え方とし,これを参考に地質調査結果に基づきCH級,CM級,CL級及びD級岩盤の4段階に岩盤分
類を行った。
名称
特
徴
CH
造岩鉱物及び粒子は、石英を除けば風化作用を受けてはいるが岩質は、比較的堅硬である。
CM
造岩鉱物及び粒子は、石英を除けば風化作用を受けて多少軟質化しており、岩質も多少軟らかくなっている。
CL
造岩鉱物及び粒子は、風化作用を受けて軟質化しており岩質も軟らかくなっている。
D
造岩鉱物及び粒子は、風化作用を受けて著しく軟質化しており岩質も著しく軟らかい。
○同一の岩盤分類においても,風化の程度,割れ目の状態等によって強度特性,変形特性及び動的特性に幅がある
ことから,工学的分類として以下のとおり解析用岩盤分類に整理し,これら分類に応じた解析用物性値を,調査結
果や試験結果をもとに設定した。
【岩 盤】
【断 層】
[解析用岩盤分類]
[岩盤分類]
[解析用岩盤分類] = [岩盤分類]
Ⅰ級 ①~③※1
CH級岩盤
軟質無 肉眼観察,物理試験,針貫入試験
Ⅱ級
CM級岩盤
の結果として断層内物質が岩石相
当の物性を有して粘土状の軟質部を介在しな
いと判断できる断層
または Ⅲ級①※3
CL級岩盤
軟質含
または Ⅲ級②※3
D級岩盤及び表土等
Ⅲ級※2
上記以外の断層
※1 工学的観点から動的特性に応じて分類(①Vs=2.7km/s ②Vs=2.3km/s ③Vs=1.7km/s)
※2 Ⅲ級 : 表土の物性を適用
※3 Ⅲ級①,② : 評価対象の基礎地盤・斜面に対して,地震時安定性に直接影響する範囲にCL級岩盤並びにD級岩盤及び表土等が分布
する場合は,より精緻な物性値として各々CL級岩盤の物性並びに非線形性を考慮した表土の物性を適用
6
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
評価方法
○下図に示す地盤の動的解析(周波数応答解析)により評価を実施する。動的解析は二次元動的有限要素法によ
り実施し,水平動及び鉛直動を同時入力する。また,等価線形化法により動せん断弾性係数及び減衰定数のひ
ずみ依存性を必要に応じて考慮する。
<周波数応答解析を用いた評価フロー>
【常時荷重】
周波数応答解析を用いた評価
においては,静的解析により求め
た常時応力と,動的解析により
求めた地震時増分応力とを足し
合わせることで地震時の応力を
求めて評価する。
基礎底面の傾斜については動
的解析から求まる基礎底面両端
の鉛直方向の変位を用いて評価
する。
【地震時荷重】
基準地震動
入力地震動
静的解析
動的解析
常時応力
地震時増分応力
基礎底面両端の
鉛直方向の変位
常時応力と地震時増分応力を足し合わせる
地震時の応力
静的非線形
(最小すべり安全率を示す時刻)
すべり安全率
[1.5 ※1以上]
基礎の支持力
[最大接地圧が
7.84N/mm2 ※2
を超えない]
基礎底面の傾斜
[1/2,000 ※1以下]
安定性の評価
※1 基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価に係る審査ガイドに記載されている値
※2 審査ガイドの記載「原位置試験の結果等に基づいて設定されていること」に従い、
原位置試験(平板載荷試験)結果に基づき設定
7
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
評価断面の選定
○全評価対象施設の基礎地盤から,施設の設置位置、構造物の規模、簡便法による地盤のすべり安全率等を踏ま
え,代表断面を選定し,評価を行う。
○原子炉建屋に対する評価断面としては,地形・地質や周囲の斜面が基礎地盤に与える影響も踏まえ斜面に正対
する断面としてX-X’,Y-Y’断面(原子炉建屋) を選定する。緊急時対策所及び重油タンクに対する評価断面と
しては,地形・地質・法肩までの距離を考慮し、断面としてA-A’,B-B’,C-C’断面(緊急時対策所),D-D’,EE’断面(重油タンク) を選定する。
設置
位置
10m盤
以下
32m盤
以下
84m盤
以下
管理
番号
評価対象施設
1
原子炉建屋
2
海水取水口
3
海水取水路
4
海水管ダクト
5
海水ピット
6
緊急時対策所
7
軽油タンク
8
空冷式非常用
発電装置
9
重油タンク
10
重油移送配管
11
軽油移送配管
評価対象断面
代表断面の選定
X-X’(南北断面)
Y-Y’(東西断面)
代表断面として評価
すべり安全率の最も厳しいX-X’断面で代表
-
原子炉建屋の評価で代表
代表断面として評価
A-A’(南北断面)
B-B’(東西断面)
すべり安全率の最も厳しいA-A’断面で代表
C-C’(斜面直交断面)
-
緊急時対策所の評価で代表
D-D’(南北断面)
E-E’(東西断面)
代表断面として評価
すべり安全率の最も厳しいD-D’断面で代表
-
重油タンクの評価で代表
8
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
評価断面の選定
○原子炉建屋に対する評価断面としては,地形・地質や周囲の斜面が基礎地盤に与える影響も踏まえ斜面に正対する断面として
X-X’,Y-Y’断面(原子炉建屋) を選定する。緊急時対策所及び重油タンクに対する評価断面としては,地形・地質・法肩まで
の距離を考慮し、断面としてA-A’,B-B’,C-C’断面(緊急時対策所),D-D’,E-E’断面(重油タンク) を選定する。
○軽油タンク及び空冷式非常用発電装置は緊急
時対策所と同様の標高・岩種・岩級の地盤に
支持されており,構造物の規模も緊急時対策
所のほうが大きい,またはこれと同等であること
から,軽油タンク及び空冷式非常用発電装置
の評価は緊急時対策所の評価に代表させる。
○重油移送配管及び軽油移送配管はEL.84m~
10m盤にかけて位置している。一方、重油タン
クはEL.84m盤に位置しており,EL.84m~10m
盤にかけて基礎地盤の安定性評価を行うこと
から,重油移送配管の評価は重油タンクの評
価に代表させる。
○海水取水口・海水取水路・海水ピット・海水管ダ
クトは,以下の理由により原子炉建屋の評価に
代表させる。
① 原子炉建屋と同様の標高・岩種・岩級の地盤
に支持されている。
② 構造物の規模は原子炉建屋のほうがはるか
に大きい。
③ 原子炉建屋と異なり,岩掘削による掘り込み
式の構造物である。
④ 断層性状(位置・形状等の分布状況,断層内
物質による区分等)の観点では,原子炉建屋
のほうが厳しい。
9
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
原子炉建屋(簡便法による断面の絞り込み)
○周囲の斜面に正対する断面として一次選定したX-X’断面・Y-Y’断面について,設置変更許可申請時(3号炉増
設時)に実施した簡便法による評価結果を参考に,最小すべり安全率が厳しくなる1断面を選定する。
設置変更許可申請時(3号炉増設時)における評価結果
X
Y
Y’
X’
【簡便法による評価方法(静的解析)】
・基礎地盤に作用する地震力: KH=0.2,KV=0.1
簡便法
X-X’(南北方向)
2.4
Y-Y’(東西方向)
3.1
○X-X’断面(南北断面)のすべり安全率が厳しいことから,X-X’断面(南北断面)を評価断面として選定する。
10
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
簡便法のイメージ
○複合すべり面法
○円弧すべり面法
・ すべり面の形状を円弧と仮定し,円弧の中心(格子
位置)および半径を変化させて,対象斜面に対して
想定される様々なすべり面を網羅的に検討し,すべ
り安全率が最小となるすべり面を抽出する
・ 基礎底面沿いのすべり面
評価対象施設
・断層沿いのすべり面
(断層を通り地表面に抜ける角度をパラメトリックに想定)
最小すべり安全率を示すすべり面
評価対象施設
評価対象施設
:断層
〇すべり安全率の算出方法
想定したすべり面上の応力状態をもとに,すべり面
上のせん断抵抗力の和をすべり面上のせん断力の
和で除して求める。
Σ(すべり面上のせん断抵抗力)
すべり安全率=
Σ(すべり面上のせん断力)
11
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
緊急時対策所(簡便法による断面の絞り込み)
○周囲の斜面に正対する断面として一次選定したA-A’断面・B-B’断面・C-C’断面について,簡便法による評価結
果を参考に,最小すべり安全率が最も厳しくなる1断面を選定する。
A-A’断面
A
B
復水
タンク
緊急時対策所
法肩までの距離:約40m
C’
緊急時対策所
一次系
純水タンク
全すべり面のうち最小すべり
安全率を示すすべり面
B’
Fs=5.6
20m
B-B’断面
C
緊急時対策所
A’
C-C’断面
燃料取替用水
タンク
緊急時対策所
法肩までの距離:約40m
法肩までの距離:約30m
全すべり面のうち最小
すべり安全率を示すすべり面
Fs=7.3
【簡便法による評価方法】
・基礎地盤に作用する地震力: KH=0.3,KV=0.15
燃料取替用水
タンク基礎
Fs=7.0
全すべり面のうち
最小すべり安全率を示すすべり面
20m
5.6
B-B’(東西断面)
7.3
C-C’(斜面直交断面)
7.0
1.3m
A-A’(南北断面)
4.6m
簡便法
16.3m
緊急時対策所構造図(A-A’断面)
○A-A’断面(南北断面)のすべり安全率が最も厳しくなったことから,A-A’断面(南北断面)を評価断面として選定
する。
12
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
重油タンク(簡便法による断面の絞り込み)
○周囲の斜面に正対する断面として一次選定したD-D’断面・E-E’断面について,簡便法による評価結果を参考に,
最小すべり安全率が最も厳しくなる1断面を選定する。
D
D-D’断面
重油タンク
E
Fs=2.8
E’
D’
全すべり面のうち最小すべり
安全率を示すすべり面
0
20m
EL.84m
タンク
Φ3.3m
EL.84m
16.6m
1.0m
タンク
(重量:約153 tf)
1.0m
13.5m
6.9m
E-E’断面
重油タンク構造図
【簡便法による評価方法】
・基礎地盤に作用する地震力: KH=0.3,KV=0.15
簡便法
D-D’(南北方向)
2.8
E-E’(東西方向)
14.9
Fs=14.9
0
10m
全すべり面のうち最小すべり
安全率を示すすべり面
○D-D’断面(南北断面)のすべり安全率が最も厳しくなったことから,D-D’断面(南北断面)を評価断面として選定
する。
13
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
解析用要素分割図例:原子炉建屋(X-X’断面 )
敷地内断層や物性値の異なる岩盤分類等に配慮し、選定した断面のモデル化を行う。
X
原子炉建屋
X’
解析用要素分割図(X-X’断面)
14
すべり面の設定方法(基礎地盤)
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
①基礎地盤のすべり
~原子炉建屋基礎地盤を例に概説~
すべり面の設定
(1)基礎底面のすべり面
原子炉建屋基礎底面を通るすべり面を想定
(2)断層沿いのすべり面
原子炉建屋直下すべり面(タービン建屋を含まない)と,タービン建屋を含むすべり面の2種類を想定
① 地表面に抜ける位置を設定(下図青丸)
②断層(軟質含)および(軟質無)
沿いのすべり面を想定
Fa-1:断層(軟質無)
Fa-2:断層(軟質含)
(タービン建屋を含まない
浅いすべり面を想定)
(タービン建屋を含む
深いすべり面を想定)
②断層(軟質含)を通り地表面に抜ける
角度をパラメトリックに設定
②断層(軟質含)を通り地表面に抜ける
角度をパラメトリックに設定
③ 基礎地盤周辺の応力状態に基づき
すべり面を設定
③ 基礎地盤周辺の応力状態に基づき
すべり面を設定
※要素の局所安全係数やモビライズド面※を参考
※要素の局所安全係数やモビライズド面を参考
※ モビライズド面(潜在すべり面):岩盤がせん断破壊しやすい面
15
評価内容および評価結果 すべり安全率
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
①基礎地盤のすべり
【基礎地盤のすべり】
○基準地震動Ss-1,2,3全てに対してすべり安全率を評価する。入力地震動は,水平・鉛直方向
を同時入力する。入力地震動の位相特性にも配慮し,基準地震動の時刻歴波形を正負反転させ
た評価も実施する。
○すべり面は,簡便法によるすべり,応力状態を考慮したすべり,断層沿いのすべり等を想定する。
○想定したすべり面上の応力状態をもとに,すべり面上のせん断抵抗力の和をすべり面上のせん断力
の和で除して求める。
すべり安全率=
Σ(すべり面上のせん断抵抗力)
Σ(すべり面上のせん断力)
すべり面上のせん断抵抗力 :想定すべり面に沿って地盤がすべりはじめるまでに必要となる力
すべり面上のせん断力
:地震時に想定すべり面に沿って地盤をすべらせるようにはたらく力(せん断力)
○地震時最小すべり安全率は,評価基準値(最小すべり安全率1.5)を上回っており,すべりは生じ
ず,安定性は確保される。
対象施設
最小すべり安全率
原子炉建屋
1.8
(X-X’断面)
緊急時対策所
(A-A’断面)
重油タンク
(D-D’断面)
2.1
評価基準値
≧1.5
2.0
16
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
②基礎の支持力
評価内容 支持力
【基礎の支持力】
○審査ガイドには,基礎の支持力について,「原位置試験の結果等に基づいて設定されていることを確認
する」と記載されている。
○審査ガイドに従い,原子炉建屋設置位置の試掘坑において実施したCH級岩盤の平板載荷試験,及び
斜面部の調査坑で実施したCM級岩盤の平板載荷試験の結果,いずれも80kgf/cm2(7.84N/mm2)
の高応力域においても弾性的挙動を示していることから, 80kgf/cm2(7.84N/mm2)を評価基準値と
して設定した。
○基礎底面の地震時最大接地圧が,評価基準値(CM級以上の地盤の許容支持力7.84N/mm2)を超え
ないことを確認する。
3号炉炉心
原子炉建屋設置位置の試掘坑
斜面部の調査坑
試掘坑(調査坑)内における平板載荷試験の位置図
(左:原子炉建屋設置位置の試掘坑 右:斜面部の調査坑)
伊方発電所原子炉設置変更許可申請書(3号炉)に加筆
平板載荷試験結果例(応力-変位曲線図)
平板載荷試験の試験装置図
17
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
②基礎の支持力
評価内容および評価結果 支持力
○基準地震動Ss-1,2,3全てに対して支持力を評価する。入力地震動は,水平・鉛直方向を同時
入力する。入力地震動の位相特性にも配慮し,基準地震動の時刻歴波形を正負反転させた評価
も実施する。
○地震時に施設基礎底面の地盤に伝わる最大接地圧を求める。
○地震時最大接地圧は,評価基準値(7.84N/mm2)を下回っていることから,基礎地盤は十分な
支持力を有している。
対象施設
原子炉建屋
(X-X’断面)
緊急時対策所
(A-A’断面)
重油タンク
(D-D’断面)
基準地震動
Ss-1(-,+)
Ss-3-2NS(-,+)
Ss-1(-,-)
地震時最大接地圧(N/mm2)
[発生時刻(秒)]
2.15
[43.74]
0.23
[25.69]
0.24
[33.74]
※ 基準地震動の(+,+)は位相反転なし,(-,+)は水平反転,(+,-)は鉛直反転,(-,-)は水平反転かつ鉛直反転を示す。
※ 許容支持力は,平板載荷試験結果において,載荷強さ7.84N/mm2までの範囲では破壊に至らず,変曲点も認められな
いことから,7.84N/mm2以上であると評価する。
18
4.地震力に対する基礎地盤の安定性評価
③基礎底面の傾斜
評価内容および評価結果 傾斜
【基礎底面の傾斜】
○基準地震動Ss-1,2,3全てに対して基礎底面に生じる傾斜を評価する。入力地震動は,水平・
鉛直方向を同時入力する。入力地震動の位相特性にも配慮し,基準地震動の時刻歴波形を正負
反転させた評価も実施する。
○基礎底面の両端それぞれの鉛直方向の変位の差を基礎底面幅で除して傾斜を求める。
○基礎底面に生じる傾斜は,評価基準値1/2,000を下回っていることから,重要な系統・機器の安
全機能に支障を与えるものではない。
対象施設
原子炉建屋
(X-X’断面)
緊急時対策所
(A-A’断面)
重油タンク
(D-D’断面)
基準地震動
Ss-1(+,+)
最大傾斜
最大相対変位
|ΔAy-ΔBy|
|ΔAy-ΔBy|
[発生時刻(秒)]
L
0.25cm
1/29,000
(L=76.4m)
[51.74]
地震時
ΔAy
ΔBy
A
Ss-1(-,+)
Ss-1(-,+)
0.03cm
[43.75]
0.14cm
[51.72]
1/54,000
(L=16.3m)
1/35,000
(L=50.2m)
B
常 時
基礎底面幅 L
※ 基準地震動の(+,+)は位相反転なし,(-,+)は水平反転,(+,-)は鉛直反転,(-,-)は水平反転
かつ鉛直反転を示す。
19
5.周辺地盤の変状による施設への影響評価
周辺地盤の変状による施設への影響評価
○原子炉建屋等の耐震重要施設及び常設重大事故等対処施設は,新鮮かつ堅硬な岩盤(塩基性片
岩)に支持されていることから,不等沈下,液状化,揺すり込み沈下等の影響が生じることはない。
岩掘削により塩基性片岩に着岩している
凡例
塩基性片岩(Bs)
30
片理面の走向・傾斜
地層境界
耐震重要施設
常設重大事故等対処施設
20
6.地殻変動による基礎地盤の変形の影響評価
地殻変動による基礎地盤の変形の影響評価
○地震発生に伴う地殻変動による地盤の傾斜について,敷地に比較的近く,規模が大きい断層(中央構造
線断層帯及び別府-万年山断層帯)に想定される地震を対象に評価を実施する。
○地震発生に伴う地殻変動による地盤変動量は,半無限均質弾性体を仮定した地震断層運動に伴う周辺
地盤の変動分布を計算する手法(Mansinha and Smylie, 1971)を用いて算出する。
○評価にあたっては,地盤の隆起・沈降を考慮する必要があるため,津波評価に用いたモデル(地震動評価
における基本震源モデルの配置を踏まえ,別府-万年山断層帯と中央構造線断層帯の遷移域を右ステッ
プさせたモデル)を用いる。
敷地前面海域の断層群
別府-万年山断層帯
伊予セグメント
伊方発電所
別府-万年山断層帯と中央構造線断層帯の遷移域を右ステップさせたモデル
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6.地殻変動による基礎地盤の変形の影響評価
地殻変動による基礎地盤の変形の影響評価結果
②地震動による
最大傾斜
(再掲)
①地殻変動による最大傾斜
③地殻変動及び
地震動を考慮した
最大傾斜
(①+②)
全体図
拡大図
・原子炉建屋
1/29,000
・重油タンク
1/35,000
・緊急時対策所
1/54,000
・原子炉建屋
1/14,000
・重油タンク
1/15,000
・緊急時対策所
1/18,000
1/28,000
○基礎底面に生じる傾斜は,評価基準値1/2,000を下回っていることから,重要な系統・機器の安全機能
に支障を与えるものではない。
22
7.周辺斜面の安定性評価
評価方法
○下図に示す地盤の動的解析(周波数応答解析)により評価を実施する。動的解析は二次元動的有限要素法によ
り実施し,水平動及び鉛直動を同時入力する。また,等価線形化法により動せん断弾性係数及び減衰定数のひ
ずみ依存性を必要に応じて考慮する。
<周波数応答解析を用いた評価フロー>
【常時荷重】
周波数応答解析を用いた評価
においては,静的解析により求め
た常時応力と,動的解析により
求めた地震時増分応力とを足し
合わせることで地震時の応力を
求めて評価する。
【地震時荷重】
基準地震動
入力地震動
静的解析
動的解析
常時応力
地震時増分応力
常時応力と地震時増分応力を足し合わせる
地震時の応力
静的非線形
(最小すべり安全率を示す時刻)
すべり安全率
[1.2以上※]
安定性の評価
※ 基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価に係る審査ガイドに記載されている値
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7.周辺斜面の安定性評価
評価断面の選定
○全評価対象施設の周辺斜面から,施設の設置位置、構造物の規模、簡便法による斜面のすべり安全率等を踏ま
え,代表断面を選定し,評価を行う。
○対象施設周辺斜面の評価断面としてX-X’・Y1-Y1’・Y2-Y2’・C-C’・E-E’断面を選定する。
設置 管理
評価対象施設
評価対象断面
代表断面の選定
位置 番号
10m盤
以下
32m盤
以下
1
原子炉建屋
2
海水取水口
3
海水取水路
4
海水管ダクト
5
海水ピット
6
緊急時対策所
7
軽油タンク
8
空冷式非常用
発電装置
9
84m盤
以下
X-X’
Y1-Y1’
Y2-Y2’
E-E’※1
重油タンク
代表断面として評価
すべり安全率の最も厳しい
X-X’断面で代表
-
地下に設置されているため
施設が直接崩壊土を被ることはない
C-C’
代表断面として評価
-
周辺斜面は存在しない
X-X’
原子炉建屋代表断面と同じ
-
すべりの方向が対象施設に向かない,
または離隔距離が十分※2
(斜面高さ約30mに対し離隔距離が約90m)
10
重油移送配管
11
軽油移送配管
※1 EL.84m以上の斜面の代表として,斜面高さが約30mと高いE-E’
断面を選定
-
対象施設の設置位置を踏まえ,
原子炉建屋,重油タンクの評価で代表
※2 斜面崩壊土砂の到達距離に関する各種文献の記載は以下のとおり。
原子力発電所の基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価技術 :斜面高さの1.4倍(50m未満となる場合は50m)
宅地防災マニュアルの解説 :斜面高さの2.0倍(上限は50m)
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7.周辺斜面の安定性評価
評価断面の選定
○対象施設周辺斜面の評価断面としてX-X’・Y1-Y1’・Y2-Y2’・C-C’・E-E’断面を選定する。
X
C’
海水取水口
海水取水路
海水ピット
軽油タンク
海水管ダクト
緊急時対策所
原子炉建屋
(原子炉補助建屋,D/G貯油槽基礎含む)
Y1
軽油移送配管
Y1’ Y2
Y2’
空冷式非常用発電装置
C
重油移送配管
重油タンク
E
E’
X’
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7.周辺斜面の安定性評価
原子炉建屋(簡便法による断面の絞り込み)
○一次選定したX-X’・Y1-Y1’・Y2-Y2’・E-E’断面について,簡便法
による評価結果を参考に,最小すべり安全率が最も厳しくなる1断面
を選定する。
【X-X’・Y1-Y1’・Y2-Y2’断面】
(設置変更許可申請時(3号炉増設時)における評価結果を再掲)
X
Y1 Y1’
【E-E’断面】
Y2’
斜面高さ
X’
(簡便法により,最小すべり安全率を示すすべり面を抽出)
【簡便法による評価方法(静的解析)】
・周辺斜面に作用する地震力: kH=0.483
約30m
Y2
Fs=3.5
全すべり面のうち最小すべり
安全率を示すすべり面
簡便法
X-X’(南側斜面)
2.0
Y2-Y2’(東側斜面)
2.3
Y1-Y1’(西側斜面)
4.3
【簡便法による評価方法(静的解析)】
・周辺斜面に作用する地震力: kH=0.483
簡便法
E-E’(e・fブロック)
3.5
○ 簡便法により,最小すべり安全率を示すすべり面を抽出した結果, X-X’断面(南側斜面)のすべり安全率が最も
厳しいことから,X-X’断面(南北断面)を評価断面として選定する。
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7.周辺斜面の安定性評価
すべり面の設定方法(周辺斜面(斜面に近接する基礎地盤を含む))
~原子炉建屋周辺斜面を例に概説~
すべり面の設定
(1)簡便法によるすべり面
・すべり面の形状を円弧と仮定し,中心と半径
を変化させ,すべり安全率が最小となるすべり面
を抽出する。
・作用させる地震力は KH=0.3,KV=0.15※
(2)建設時の検討結果を参考に設
定したすべり面
・建設時時の検討(簡便法,静的FEM解析)に基
づき,すべり面を設定する。
EL+32m
(3)応力状態を考慮したすべり面
・(1),(2)で設定したすべり面について地震時
安定性検討を行い,得られた要素の応力状態に
基づいて,すべり面を設定する。
要素の安全率が低い領域を考慮
引張応力が発生した要素,せん断強度に達した要
素を通るようにすべり面を設定
EL+2.6m
:引張応力が発生した要素
:1.0≦局所安全係数<1.5
:せん断強度に達した要素
:1.5≦局所安全係数<2.0
:引張応力が発生し,かつ,
せん断強度に達した要素
:2.0≦局所安全係数
EL+32m
EL+2.6m
EL+84m
※ JEAG 4601-2008
モビライズド面を考慮
モビライズド面を連ねるようにすべり面を設定
EL+32m
EL+2.6m
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7.周辺斜面の安定性評価
評価内容および評価結果 すべり安全率
【周辺斜面のすべり】
○基準地震動Ss-1,2,3全てに対してすべり安全率を評価する。入力地震動は,水平・鉛直方向
を同時入力する。入力地震動の位相特性にも配慮し,基準地震動の時刻歴波形を正負反転させ
た評価も実施する。
○すべり面は,簡便法によるすべり,応力状態を考慮したすべり,断層沿いのすべり等を想定する。
○想定したすべり面上の応力状態をもとに,すべり面上のせん断抵抗力の和をすべり面上のせん断力
の和で除して求める。
すべり安全率=
Σ(すべり面上のせん断抵抗力)
Σ(すべり面上のせん断力)
すべり面上のせん断抵抗力 :想定すべり面に沿って地盤がすべりはじめるまでに必要となる力
すべり面上のせん断力
:地震時に想定すべり面に沿って地盤をすべらせるようにはたらく力(せん断力)
○地震時最小すべり安全率は,評価基準値(最小すべり安全率1.2)を上回っており,すべりは生じ
ず,安定性は確保される。
対象施設
最小すべり安全率
原子炉建屋
1.3
(X-X’断面)
評価基準値
≧1.2
海水ピット
(C-C’断面)
2.3
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8.まとめ
まとめ
○原子炉建屋等の耐震重要施設※1及び常設重大事故等対処施設※2が設置される地盤には,将来
活動する可能性のある断層等が露頭していないことを確認した。
○原子炉建屋等の耐震重要施設※1及び常設重大事故等対処施設※2が設置される地盤は,基準地
震動による地震力に対して,基礎の支持力,基礎地盤のすべり,及び基礎底面の傾斜について,
いずれも評価基準値を満足することを確認した。
○原子炉建屋等の耐震重要施設※1及び常設重大事故等対処施設※2は,新鮮かつ堅硬な岩盤に支
持されていることから,不等沈下,液状化,揺すり込み沈下等の影響が生じないことを確認した。
○地殻変動による基礎底面の傾斜について,評価基準値を満足することを確認した。
○原子炉建屋等の耐震重要施設※1及び常設重大事故等対処施設※2の周辺斜面は,基準地震動
による地震力に対して,すべり安全率が評価基準値を満足することを確認した。
○以上のとおり,伊方発電所3号炉の耐震重要施設※1及び常設重大事故等対処施設※2の基礎地
盤及び周辺斜面は,基準地震動による地震力に対して十分な安定性を有しており,設置許可基準
規則※3 に適合していることを確認した。
※1 耐震設計上の重要度分類Sクラスの系統・機器及びそれらを支持する建物・構築物
※2 常設耐震重要重大事故防止設備又は常設重大事故緩和設備が設置される重大事故等対処施設(特定重大事故等対処施設を除く)
※3 「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」(解釈含む)
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参考
■ 耐震重要施設
設計基準対象施設のうち、地震の発生によって生ずるおそれがあるその安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影
響の程度が特に大きいもの。(耐震Sクラスに属する施設)
■ 設計基準対象施設
発電用原子炉施設のうち、運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故の発生を防止し、又はこれらの拡大を防止するために
必要となるもの。
[運転時の異常な過渡変化]
通常運転時に予想される機械又は器具の単一の故障若しくはその誤作動又は運転員の単一の誤操作及びこれらと類似の頻
度で発生すると予想される外乱によって発生する異常な状態であって、当該状態が継続した場合には発電用原子炉の炉心又は
原子炉冷却材圧力バウンダリの著しい損傷が生ずるおそれがあるものとして安全設計上想定すべきもの。(例:外部電源喪失)
[設計基準事故]
発生頻度が運転時の異常な過渡変化より低い異常な状態であって、当該状態が発生した場合には発電用原子炉施設から多量
の放射性物質が放出するおそれがあるものとして安全設計上想定すべきもの。(例:1次冷却材喪失事故)
■ 重大事故等対処施設
重大事故に至るおそれがある事故(運転時の異常な過渡変化及び設計基準事故を除く。)又は重大事故に対処するための機能
を有する施設。
■ 重大事故防止設備
重大事故等対処設備のうち、重大事故に至るおそれがある事故が発生した場合であって、設計基準事故対処設備の安全機能
又は使用済燃料貯蔵槽の冷却機能若しくは注水機能が喪失した場合において、その喪失した機能(重大事故に至るおそれがあ
る事故に対処するために必要な機能に限る。)を代替することにより重大事故の発生を防止する機能を有する設備。
■ 常設耐震重要重大事故防止設備
重大事故防止設備のうち常設のものであって、耐震重要施設に属する設計基準事故対処設備が有する機能を代替するもの。
■ 重大事故緩和設備
重大事故等対処設備のうち、重大事故が発生した場合において、当該重大事故の拡大を防止し、又はその影響を緩和するため
の機能を有する設備。
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