講演時使用PP資料 - 障がい者ダイバーシティ研究会

障害者雇用率制度と
差別禁止・合理的配慮の
発展的統一を目指して
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
障害者職業総合センター
春名由一郎
[email protected]
障害者雇用政策の2大潮流

雇用率制度によるもの(日本、ドイツ、フランス等)


障害者雇用を事業主の義務と規定
企業コストは、国が社会的調整を行う


障害者を一定数雇用しない企業からお金を徴収し、雇
用している企業に配分する。
差別禁止法によるもの(米国、英国


+ドイツ、EU等)
障害自体、合理的配慮の必要性による雇用差別
の禁止(公正な採用、雇用機会均等)
追加的負担は当該企業の負担


過大な負担とならない範囲で
税制上の優遇等で配慮
2
障害者雇用率制度と差別禁止・合
理的配慮の発展的統一を目指して
1. わが国の雇用管理上の配慮と米国の合理的配慮
 効果的な配慮事項とは?
 米国における雇用管理上の配慮への取組
 米国の障害者雇用で感じた”戸惑い”
2. 障害の「医学モデル」と「社会モデル」の対立と統一
への動向
3. わが国の障害者雇用率制度の成果と課題
4. 障害者雇用率制度と差別禁止・合理的配慮の発展
的統一を目指して
3
「障害者の雇用の促進等に関する法律」に、
元来含まれている「合理的配慮」の考え方
(基本的理念)
機会均等
 第三条
障害者である労働者は、経済社会を構成する労働
者の一員として、職業生活においてその能力を発揮する機会
を与えられるものとする。
「有資格労働者」
 第四条
障害者である労働者は、職業に従事する者としての
自覚を持ち、自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、
有為な職業人として自立するように努めなければならない。
(事業主の責務)
「合理的配慮」 障害者雇用率制度
 第五条
すべて事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯
の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として
自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであ
つて、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与
えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定
を図るように努めなければならない。 公正な能力評価 4
http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/
shiryou/shiryou19.html
1998年
わが国の障害者雇用事業所の、障
害者雇用事例12,000事例から、障
害・職種別にどのような「就業上の配
慮」がなされているかをまとめたもの。
・レクリエーション、懇親会、ミーティ
ング等による「コミュニケーション支
援」「教育・訓練」が、どの障害でも
多い。
・下肢障害、体幹機能障害、等では、
「トイレの改造」が多い。
・知的障害では、「家族との連携」が
多い。
障害特性との関係で「効果的」と思
われる配慮が、必ずしも、事業所
で実施されている配慮とは、量的
にも質的にも同じではない。
効果的な「配慮」「環境整備」「
支援」とは?
適切な配慮・支
援がある時
適切な配慮・支
援がない時
平均的状況
0
50
最も問題が多い
100
最も問題が少ない
標準化した職業的課題レベル
(身体、知的、精神障害等の調査結果により、就労困難性を0~100で尺度化)
Job Accommodation Network
• 連邦労働省障害者雇用政策局の委託事業(技
術支援センターの一つ)
• 米国全土への障害者雇用の無料コンサルティン
グサービス
• 32,000件/年の電話相談(当時)
• 200万ページ/年のインターネットによる情報提
供(当時)
• 60回/年のセミナー/シンポジウム(当時)
JANの設立

1983年:障害者雇用大統領委員会に参加してい
た、AT&T、ITT、3Mが中心となって、障害者雇用
の共同の相談室設立を提言


障害者雇用大統領委員会の補助金を受けて、全
米の障害者雇用企業への無料相談機関として、
JAN設立


当時、障害者関連の組織で、大型コンピューターを保
有していた唯一の組織がウェストバージニア大学
看護師、人間工学エンジニアの2スタッフ
2001年のODEP(連邦障害者雇用政策局)の創設
により、その技術支援センターとして委託
JANのサービスの原則




カスタム化:どんなに似ている事例にも、
テーラーメイドの支援を提案する。
現時点で最新の情報を、今日提供する。
懇切丁寧なサービス
専門領域別のコンサルタントのチームによる
プロフェッショナルサービス。


企業のビジネスセンスに合致( ADAによる強制ではなく、
障害者が生産的に働きやすい環境を作るアドバイス)
完全な守秘
1990年の障害のあるアメリカ人
法(ADA)施行の影響


問い合わせ数の急激な増加
問い合わせの内容・種類の性質の変化


当初は、障害のある人からの「ADAが施行された
ので、企業は雇わなくてはいけない。」といった要
望に対して、企業が防衛的になることも多かった。
「JANのようなサポートをすれば、企業にもプラス
になる。」という前向きな話し合いによる、障害の
ある人と事業主の歩み寄りのサポートをすること
が多くなった。

詳細なサポートが重要になってきた。
JANが受ける相談の内訳

質問内容

職場環境整備について: 電話の42%、ウェブの34%


法制度について: 電話の51%、ウェブの11%



機器の購入・改善35%, 職務転換21%, 職務再設計15%, 柔軟な休暇
12%・・・
ADAの規定64%, 権利と義務55%, 就職後のこと26%, リハビリテー
ション法19%
一般的質問: 電話の23%、ウェブの56%
電話



雇用者30%, 従業員38%, 友人・家族10%, リハ専門家6%
肢体45%, 感覚15%, 行動11%, 神経・認知10%, 他19%
大企業(1000-)73%, 99人以下24%
質問

Q 米国の企業がADAを遵守するた
めに、JANのようなコンサルティング
サービスが果たしてきた役割とは?

A JANは、企業からの質問に対して、
必要な回答を迅速に提供し、その実
施により、企業はADAを遵守できる。
• 2000年の「国家防衛権限法」に基づく電子支援機
器の支給・便宜供与
• 57連邦政府省庁/機関の従業員が対象
• ニーズ評価から現物支給、訓練まで一体的に実施
• 4,800件/年の支給実績
• 顧客満足度99%
コンピュータ/電子機器便宜供与プログラム
2000年「国家防衛権限法」
連邦議会
国防総省
57連邦政府省庁/機関
プログラム
利用契約
契約機関の従業員か
らの申請書(上司のサ
インが必要)を審査の
上、必要な支援機器を
現物支給
Access Board
Agency for International Development
American Battlefield Monuments Commission
Committee for Purchase
Commodity Futures Trading Commission
Consumer Product Safety Commission
Corporation for National and Community Service
Court Services/Offender Supervision for DC
Department of Agriculture
Department of Commerce
Department of Energy
Department of Health and Human Services
Department of Homeland Security
Department of the Interior
Department of Justice
Department of Labor
Department of State
Department of the Treasury
Department of Veterans Affairs
Environmental Protection Agency
Equal Employment Opportunity Commission
Executive Office of the President
Export Import Bank of the United States
Farm Credit Administration
Federal Communications Commission
Federal Deposit Insurance Corporation
Federal Energy Regulatory Commission
Federal Labor Relations Authority
Federal Maritime Commission
Federal Trade Commission
General Services Administration
Holocaust Memorial Museum
Institute of Museum and Library Sciences
International Trade Commission
National Aeronautics and Space Administration
National Archives and Records Administration
National Council on Disability
National Credit Union Administration
National Endowment for the Humanities
National Gallery of Art
National Labor Relations Board
National Science Foundation
Nuclear Regulatory Commission
Occupational Safety and Health Review
Office of Government Ethics
Office of Personnel Management
Office of Special Counsel
Overseas Private Investment Corporation
Peace Corps
Pension Benefit Guaranty Corporation
Railroad Retirement Board
Securities and Exchange Commission
Selective Service System
Small Business Administration
Smithsonian Institution
Surface Transportation Board
Trade and Development Agency
支援機器の供与の重要性



支援機器以外の合理的配慮(スロープ、短時
間雇用、手話通訳者等)は各省庁で対応する。
連邦政府のほとんど全ての仕事はコンピュー
ターや電子機器を使う仕事になっている。
電子支援機器は日進月歩であり、しばしば高
価である。
CAPの方針




情報環境への参加の機会均等が重要。
効率的かつ中央政府の費用による便宜供
与を提供するプログラムは、障害者雇用に
強力なインパクトがある。
管理者に障害を理由とした弁解をできない
ようすることが重要。支援機器を雇用者に対
して文字通り無料で提供することが重要。
労働者に労働環境を理解させ、「資格のあ
る労働者」にすることが重要。
CAPによる支援機器の無償供与

「CAPは支援機器やサービスを無料
で提供します。あなたにもあなたの組
織にも全く費用はかかりません。私
たちが、それを買い、支払いをし、利
用者に届けます。実に単純です。」
(「Real Solutions for Real Needs」より)
CAPの成功例(「・・・・・。多すぎる!」)

音声認識システム


国防総省の障害者問題の統括者は、四肢麻痺の
人である。頭脳明晰だが、これまで秘書の助けが
ないと仕事ができなかった。現在、音声認識システ
ムを使って、従来より効率的に、自宅でも仕事がで
きるようになった。
911のペンタゴン攻撃で指と耳を失い、70%の火傷
で、リハ専門家は仕事は無理と言った。CAPTECに
きて音声認識システムを知って、会計の仕事に復
帰した。
CAPの成功例

音声拡大機


イラクからの帰還兵で爆音による高度の難聴で、
鼓膜の回復中のため補聴器が使えず、誰の言うこ
とも聞こえなかった。CAPでは医師、看護婦、配偶
者などの言うことは聞こえる支援機器を提供した。
視覚障害者の読上げ機等々

全盲の情報分析官。以前は、文書を読んだり書い
たりするのに介助者が必要だったが、現在は、文
書読上げ機を職場でも外出先でも使えるようにな
り、国防総省からの表彰も受けている。
質問

Q. CAPで提供されている支援機器等は、厳選されて
いるようにみえるが、この事情は?

A. 支援を重ねてきて、本当によい支援機器が明ら
かな場合がある。

いろいろな会社が支援機器を出しているが、明らかな優劣
があるものがある。(業者による訓練が必要な支援機器に
ついては、訓練を含めて選定する。)



ただし、お墨付きにはしない。
それ以外は、複数から利用者が選択できるようにしている。
利用者が自分で調べてきた支援機器や、新発売の機器な
ど、新しい情報にも柔軟に対応する。
質問

Q. 審査やニーズ評価にどの程度時間がかかる
のか?

A. 障害が生まれつきがどうかによって違う。


生まれつきの障害等で、これまで地域や学校で生
活してきた人は、本人が必要な支援を知っており、
その場合(90%)には、直ちに支給する。
支援ニーズを本人も分からない場合には、より長い
ニーズ評価期間が必要となる。(最大1ヶ月)

CAPTEC、ビデオ会議での相談、医師の診断書が必要と
なる場合もある。
質問

Q. 各部署で選んだ支援方法に対して費用を助
成するのではなく、現物支給する利点は?

A. 支援策への費用の妥当性を保障するには、
ニーズ評価と費用を一括して扱うことが必要で
ある。



良い支援法を提案しても、費用の解決がないと
「Real Solutions for Real Needs」にならない。
調査でも、支援策が間違っていたとか、期待に沿わ
なかったとの回答は1%にならなかった。
支援策が「非常によい」との評価は91%であった。
質問

Q. 支給1ヶ月後に支給対象者に調査を実施
しているが、その活用方法は?

A. サービスが常にうまく機能しているかを常
にチェックする。



機器等がちゃんとセットできたか、必要な訓練が
終了したか、機器は機能しているか、満足してい
るか、期待に沿っているか、を調べる。
満足されない業者は取り扱いをやめる。
訓練を含めて支援機器の有効性を検証する。
質問

Q. 申請者からの要望と、CAPの専門家の判断とのず
れは生じないのか? ズレが生じた場合どう調整する
のか?

A. ズレはいつもある。ここに、「合理的配慮」という考
え方が適用される。



連邦政府の場合は、「過度な負担」という条件は適用されな
い。
しかし、CAPは連邦政府の仕事内容を熟知しており、「必須
職務機能」を遂行するために必要なレベル以上の支援機器
は提供することはない。
雇用機会均等委員会(EEOC)から具体例が出されている。
(翻訳http://www.nivr.jeed.or.jp/download/shiryou/shiryou34_06.pdf)
EEOCガイダンス
合理的配慮の要求



事例A:従業員が上司に、「受けている治療のた
め時間通りに仕事を開始することが難しい。」と
話した。これは合理的配慮の要求である。
事例B:従業員が上司に、「腰痛の治療のために
6週間の休暇が必要」と話した。これは合理的配
慮の要求である。
事例C:車椅子を使用する新任の従業員が雇用
主に、車椅子が机の下に入らないと言った。これ
は合理的配慮の要求である。
P.100
EEOCガイダンス
合理的配慮の要求



事例D:従業員が上司に、現在使用している椅子の座り心
地がよくないので新しい椅子に変えて欲しいと言った。こ
れは職場の変更を求める要求であるが、雇用主への合理
的配慮の要求としては不十分な発言である。彼は、新しい
椅子が必要であることと病状との関連性を示していない。
事例A:月曜日の朝、従業員の配偶者から上司に電話が
あり、多発性硬化症のため緊急治療が必要で、入院しな
ければならないので休暇をとりたいと連絡があった。この
電話は合理的配慮に対する要求といえる。
事例B:従業員が労働災害補償の対象となる怪我のため
6ヶ月間休職していた。従業員の担当医から雇用主に対し、
従業員は復職できる状態であるが、職務遂行上の制約が
ある旨の文書が送られてきた。(担当医が、従業員は軽度
な職務への復帰が可能である旨の文書を送る場合もあ
る)。その文書は合理的配慮に対する要求とみなされる。 P.101
EEOCガイダンス
合理的配慮に関するコミュニケーション


従業員が雇用主に対し、「その従業員は喘息患者
であり空気清浄機を必要とする」と述べた医師か
らの文書を提出した。
この文書は、従業員の喘息について、深刻度(主
な日常生活に相当な制限を受けるか否か)に関す
る情報を提示していないため、ADAにいう障害で
あるかを判断するには不十分な内容である。さら
に、文書は、空気清浄機やその他の合理的配慮
を必要とする、どのような問題が職場に存在する
か明確に述べていない。したがって、雇用主は追
加的な文書を要求することができる。
P.104
EEOCガイダンス
合理的配慮の具体例

肺気腫の従業員が障害にかかわる手術と静養
のため10週間の休暇を要請した。この要請に関
する雇用主との話し合いにおいて従業員は、最
初の3週間はパートタイム勤務とし、頻繁に歩き
回らなければならない2つの付帯的機能を果た
す必要がなければ、7週間の休暇で職場に復帰
できるだろうと語った。雇用主は、これら「配慮」を
講じることを条件に、従業員に対し7週間後に職
場復帰することを要求できる。
P.112
米国の障害者雇用関係者との
対話での戸惑い

常識・基本事項としての「合理的配慮」


障害者雇用率制度への嫌悪感、軽蔑


日本では「accommodation」の定訳すらない・・・。
「障害者は一般就業できない」との前提での差別的
制度である
「障害種類・程度にかかわらず誰もが一般就業
できる」という「建前?」


「どの程度の障害なら一般就業が可能か?」という質
問には、全員が「そんな基準はない」
「今は無理でも時間の問題」、等々
32
支援・援助
居場所・住居
「配慮」?
個別調整・変更
調停・和解
合理的(Reasonable)

一般的見地や状況からみて、一見して合
理的と考えられる場合



実現可能/実現の可能性が高い
企業にとって過度の負担でない
障害のある人のニーズを満たす効果



職務において本質的機能を果たすことができ
るようになる
就職活動への公平な機会を得る
便益・権利を享受できる公平な機会を得る
有資格労働者



就労中/求職中の職位に関する、技能、経験、教
育、その他の職務に関連した要件を充たしつつ、
職務の本質的機能の遂行を合理的配慮があれば、
あるいはなくとも(但し合理的配慮が使用者にとっ
て過度の負担となる場合を除く)できる者
本質的機能以外の周辺職務や付随した機能を遂
行できないという理由のみによって資格がないと
はされない。
パートタイム、試用期間等も含む。
「合理的配慮」と障害者差別禁止

障害のある人の公正な能力評価



単純な「差別禁止」「機会均等」の限界
「障害で差別をしているわけではない。他の人と
公正に能力を比較した結果である・・・。」
合理的配慮(Reasonable Accommodation)


過大な負担にならない限り、障害や病気による
能力への影響をなくす配慮を行う社会的責務
その欠如は「障害を理由とした差別」の一つであ
るとみなされる。
職業上の差別と合理的配慮






応募手続き
従業員の採用
昇進や解雇
給与・報酬
業務訓練
その他の雇用条件及び待遇等

休暇取得、病休、福利厚生、レクリエーション等
有資格労働者を、障害を理由にして差別しないものとする。
過大な負担


変更や改変が事業主にとって「過度の負担」
となる場合、合理的配慮が免除される。
過大な負担とは;

著しい困難及び出費(広範、本質的、破壊的)





必要な総費用(税制優遇等を考慮)
資金源、従業員数、事業全体の状況
同一企業での事業所の構成や管理体制等
他の従業員への影響(例.スロープ設置は他の従業員
にも益になる)
企業の事業内容への影響
障害者雇用率制度と差別禁止・合
理的配慮の発展的統一を目指して
1. わが国の雇用管理上の配慮と米国の合理的配慮
2. 障害の「医学モデル」と「社会モデル」の対立と統一
への動向
 障害者雇用率制度アプローチと障害者差別禁止アプローチ
 障害の医学モデルと社会モデルの統合
 合理的配慮と援助付き雇用
 障害モデルの統合への世界的動向
 障害者権利条約への各国の対応
3. わが国の障害者雇用率制度の成果と課題
4. 障害者雇用率制度と差別禁止・合理的配慮の発展
39
的統一を目指して
障害モデルの焦点の違い
障害者差別禁止
北米、北欧等
「配慮があれば働けるのだから差別は禁止」
+障害者雇用
「障害があると一般企業では働けないから、支援が必要」
障害者雇用率制度
日本、独、仏等
ICIDH(1980年, WHO)
障害の構造化の画期的モデル(ただし、「医学モデ
ル」として批判される)
疾病又は変調
(内的状況)
Impairment
機能障害
impairment
(顕在化)
能力障害
disability
(客観化)
Disability
社会的不利
handicap
(社会化)
Handicap
ICIDHモデルへの
社会モデルからの批判
DPI:障害者インターナショナル、1980
Disabled People’s International
機能障害
インペアメントをもつ
人を閉め出す社会
能力障害
?
物理的・社会的障壁
社会的不利
医学モデル vs. 社会モデル
障害=個人の問題
福祉・保健政策
父権主義
障害者のリハビリ
障害=社会の問題
機会均等政策
消費者主義
社会側の環境改善
ICIDH改定ネットワーク
(1995~2001)
WHOタスクフォース
精神保健
小児・学童
英国 北欧
カナダ
オランダ EU
フランス
米国
日本
環境因子
NGO
アメリカ心理学協会
障害者インターナショナル
欧州障害フォーラム
世界精神保健連盟欧州協議会
統合インターナショナル
リハビリテーションインターナショナル
スペイン語圏
オーストラリア
+各国の個別研究者、インターネットで
のモニター登録
生活機能と障害は個人と環境の
相互作用によるダイナミックな現象
健康状態
心身機能・
構造
活動
参加
個人因子
環境因子
ICF国際生活機能分類=医学モデルと社会モデルの統合
障害認定のための評価と、
処遇に関わる公正な評価の違い
VS.
バリア
の除去
障害認定のためには、
問題があることを示す必要
個別配慮
の実施
処遇上に関わる評価では、
問題がないことを示す必要 46
障害者差別禁止、合理的配慮
の普及





米国リハビリテーション法(1973)
障害のあるアメリカ人法(ADA) (1990)
英国障害者差別禁止法(DDA)(1995)
EU雇用均等一般枠組指令 (2000)
国連障害者権利条約(2006)


2008年20ヶ国の批准により発効
日本は2014年1月に批准


その前に、障害者差別解消推進法制定、障害者
雇用促進法改正(H28=2016年度から施行)
2015年現在 159ヶ国が批准
47
障害者基本法(H23年8月改正)
での障害者の定義

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を
含む。)その他の心身の機能の障害(以下
「障害」と総称する。)がある者であって、障害
及び社会的障壁により継続的に日常生活又
は社会生活に相当な制限を受ける状態にあ
るものをいう。

社会的障壁:障害がある者にとつて日常生活又
は社会生活を営む上で障壁となるような社会に
おける事物、制度、慣行、観念その他一切のもの
をいう。
「生活機能」(生命・生存、生活、人生)の重視
⇒ノーマライゼーション、インクルージョン、インテグレーション
医学モデルに影響された
障害者支援
障害のある「人」の
生活・人生の支援
⇒
障害者の、健常者とは異なる特別
⇒
な生活状況や支援ニーズに着目
障害のある人の、健常者と同様の生
活・人生を送るというニーズに着目
(Normalization)
一人一人異なる生活・人生の目標に向
個人としての「障害者」の認定に基
けての、多様な困難性や支援ニーズに
づく、定型的な措置や支援
⇒
対する個別的な支援サービスメニュー
(一般とは別枠の制度やサービス)
(Inclusion)
「障害者」の一般社会からの分離
と特別な支援につながる
⇒
障害のある人の一般社会への統合に
つながる(Integration)
例: 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するため
の法律(障害者総合支援法)H25.4.1施行」 (「障害程度区分」
→「障害支援区分」、難病を障害者に加える、等)
「援助付き雇用」による
Breakthrough
生産性
仕事とのマッチング
ジョブコーチ、合理的配慮
職場内外の支援
援助付き
雇用
最低賃金水準
最低賃金除外時
雇用可能性
の判定
医療、介護、生活支援
機能状態
一般雇用
雇用の下での福祉的就業
保護雇用
福祉的就労
50
米国と日本に共通する、障害者
福祉の転換に関する動向
共通する動向
米国
日本
永久的な職業準備訓練では
なく、実際の職業生活を支援
援助付き雇用(1986)
ジョブコーチ支援(2002)
権利としての合理的配慮、公
正な能力評価
障害のあるアメリカ人
法(1990)
差別解消推進法、障害者雇
用促進法改正(2013~)
隔離的な障害者福祉から就
労を含む自立支援への転換
Olmsted判決(1999)
障害者自立支援法(2006)
地域の医療、生活、教育訓練 労働力投資法による
等と連携した就労支援
One-Stopセンター
(1998)
関連動 就業形態の多様化
向(例) 成人前後の移行
精神科医療
(→障害者総合福祉法(2013))
ハローワークのチーム支援
(2006)、障害者就業・生活
支援センター(2002)
(1990年代~)
(2000年代~)
個別支援教育(1997)
個別教育支援計画(2004)
根拠に基づく実践
(EBP)の普及(2005~)
医療と労働支援の連携の推
進(2012~)
51
近年の、障害モデルの収斂
「環境整備や配慮があれば働けるのだから差別は禁止!」
社会モデル
専門的支援や「合理的配慮」によって、各人が仕事ができ
るようにして、公正に能力を評価される就業を実現する
医学モデル
+障害者雇用率制度
「働けない人に雇用機会の保障を!」
52
障害者雇用率制度と差別禁止・合
理的配慮の発展的統一を目指して
1. わが国の雇用管理上の配慮と米国の合理的配慮
2. 障害の「医学モデル」と「社会モデル」の対立と統一
への動向
3. わが国の障害者雇用率制度の成果と課題
 ○重度障害者の高い一般就業率の達成
 ×職業上の問題や低パフォーマンスの放置(事業主にも障
害者にも×)
4. 障害者雇用率制度と差別禁止・合理的配慮の発展
的統一を目指して
53
障害者の一般就業率の日米比較
身体障害者
知的障害者
米国
32.6%
19.3%
日本
36.2%
38.7%
障害者権利条約





第五条 平等及び無差別
1 締約国は、全ての者が、法律の前に又は法律に基づ
いて平等であり、並びにいかなる差別もなしに法律による
平等の保護及び利益を受ける権利を有することを認める
。
2 締約国は、障害に基づくあらゆる差別を禁止するもの
とし、いかなる理由による差別に対しても平等かつ効果的
な法的保護を障害者に保障する。
3 締約国は、平等を促進し、及び差別を撤廃することを
目的として、合理的配慮が提供されることを確保するため
の全ての適当な措置をとる。
4 障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために
必要な特別の措置は、この条約に規定する差別と解して
はならない。
55
最近の米国の積極的差別是正措置の強化






リハビリテーション法503条の近年の改正により、連邦政府と契約する
企業には能力のある障害者の雇用や就業継続への積極的差別是正
措置を要求。
2013年8月、連邦政府と契約する企業に対して、(各職種で)職位数の
7%の障害者雇用を契約の条件とする方針を連邦政府は明らかにした。
(2014年4月実施)
本要求は、連邦政府との契約を希望する企業にとっての「利用目標
(utilization goal)」であり、雇用率制度とはみなされていない。
各雇用主が、条件を満たすために従業員の障害開示を奨励することが
想定されている。
2000年には15%であった連邦政府での障害者雇用率が、2009年には
4%と大幅に減少したことに対して、2015年までに10万人の障害者の新
規雇用を公約として掲げた。2012年には、11%に回復。
全米州知事会も、より多くの障害者、特に知的・発達障害者 が民間や
公的部門で就労するべきであるという立場をとっている。いくつかの州
では公的部門での障害者雇用への 差別是正措置がとられている。
「統合失調症」における効果的な取組の影響の例
職業的課題「職務として決められた課題を達成すること」 :
現状で問題のない人=60.6%
課題に問題のない人の割合
取組
の実
施率
効果的な取組
がない場合
効果的な取組
がある場合
16.3%
56.6%
81.2%
上司・同僚の病気や障害についての正しい理解 34.1%
51.9%
77.4%
通院への配慮
49.4%
69.1%
効果的な取組
職場介助者などの専門的支援者
56.9%
職場介助者などの専門的支援者
上司・同僚の病気や障害についての
正しい理解
100%
0%
通院への配慮
40%
50%
60%
70%
80%
90%
日本では合理的配慮の取組は今
後の大きな課題(聴覚障害の例)
最も問題が多い
最も問題が少ない
職業斡旋・紹介
仕事内容の確認
職場見学・体験
就労相談
上司・同僚の障害
への正しい理解
障害にかかわらな
い人事方針
生活全般の相談員
キャリアアップのあ
めの職業スキル支
援
医師と職場担当者
を交えた仕事内容
のチェック
効果的な取組との関係による職業的課題の概況 聴覚障害
障害者雇用率制度と差別禁止・合
理的配慮の発展的統一を目指して
1. わが国の雇用管理上の配慮と米国の合理的配慮
2. 障害の「医学モデル」と「社会モデル」の対立と統一への動向
3. わが国の障害者雇用率制度の成果と課題
4. 障害者雇用率制度と差別禁止・合理的配慮の発展
的統一を目指して







障害者と事業主のWin-Win関係
暖かさと厳しさ(保護・甘え ⇒ 共生社会・お互い様)
健常者と障害者のグラデーションへの対応
差別是正措置としての障害者雇用率制度
社会的負担調整のための納付金制度
合理的配慮の指針づくりに向けて
障害者雇用支援サービス・制度の活用
59
就労支援の目的:本人と企業の
Win-Win関係
企業
Win
従業員の能力・興味と
企業ニーズが合致。健
Win 康的な仕事で、生産に
貢献し、報酬を得る。
雇用
者(従
苦役、搾取、使い捨て
業員) Lose
Lose
「生産性が低い」「負担
が大きい」障害者を社
会的責務として雇用
企業は無理して雇用す
るが、本人は不満足
60
企業 Win – Win 従業員
「障害者とか健常者とか、違いはない」
「障害のある人も立派な戦力だ」
“Decent work”(働きがいのある人間らし
い仕事、ILO[国際労働機関])
61
暖かさと厳しさ(保護・甘え ⇒ 共
生社会・お互い様)


社会的環境整備、職場の合理的配慮は、障害自体に
よる職業能力への影響を少なくし、公正な競争のス
タートに立たせるもの。
社会の責務を明確にすることで、障害のある人本人
の責任も明確になる。


「車いすだから」「聴覚障害だから」「内部障害だから」「知
的障害だから」「精神障害だから」・・・採用されないわけで
はない。当該の仕事ができることが求められる。
他罰的傾向のある「現代型うつ病(未熟な人格発達によ
る)」、障害年金や生活保護を目的とした「発達障害」「精
神障害」による、似非「社会モデル」の主張(「社会に理解
がないから仕事ができない」)の見極めの必要性
62
「障害者」と「健常者」のグラデー
ション
障害
者
健常者
障害者雇用義
務の対象
障害
者
健常者
障害者差別禁止や合理
的配慮の対象
医学モデル起源の制度や支援の成
果や利点を活かし、弊害から脱却

障害者雇用率制度=積極的差別是正措置


重度の知的障害者等の一般就業率を世界一の水準に高めて
いる。
×一般雇用ができない人の「雇用枠」?



男女差別や人種差別の解消のためものと同様、障害のある人が一般
に職業能力が劣るということを前提とするものではない
単に雇用率達成だけでなく、能力を発揮できる雇用が重要。
各種助成金


合理的配慮の費用負担の社会的調整。
×低い生産性を前提とした「賃金補填」?
障害者への効果的な配慮は、過大
な負担とは言えない。(ただし、普及
率が未だ低い⇒指針の重要性)

就職前


就職先のあっせん・紹介、職業相談・カウンセリング、職場体験、仕事内
容や職場状況の確認・相談、キャリア相談・進路支援、雇用率制度での
雇用、職業能力評価/本人に向く仕事のテスト、就職後の日常生活・地
域生活の支援
就職後


仕事上の相談にのってくれる同僚・上司、上司・同僚の障害についての
正しい理解、通院への配慮、障害にかかわらずキャリアアップできる人
事方針
キャリアアップのための職業スキル取得のための支援、コミュニケーショ
ンに時間をかける、社内の親睦会への参加しやすさ、本人の意見を積
極的に聞いて業務内容を改善、マンツーマン実務指導、等
65
企業の合理的配慮を支えるジョブコ
ーチ支援や助成金制度
効果
順位
重度知的障害者雇用の職場の配慮や環境整備
整備率
1
本人の意見も重視した職場全体で仕事の品質管理への取組
21%
2
避難設備の障害者対応
19%
3
マニュアルやテキストの整備
18%
4
時間をかけたコミュニケーション
63%
5
親睦活動
60%
5
エアコン整備
43%
7
関係者による職務内容の検討
34%
7
マニュアルやテキストの障害者対応
13%
7
研修条件の配慮
32%
66
障害者雇用率制度と差別禁止・合理的配慮
の発展的統一を目指して
まとめ


障害者雇用の量 ⇒ 量と質の両面での
充実=障害者と事業主のWin-Win
障害のある人が能力を発揮して職業人と
して貢献できるような効果的な配慮や支援
を、全ての職場に普及し、障害者と事業主
のWin-Winとなるような雇用関係を構築・
継続できるようにする。
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